クラン「ここがシルクロードの出発点、支那か」
俺たちはおそらく明であろう国に到着した。おそらく、というのはここが広すぎて本当に到着しているのかどうかわからないというところがあるからだ。
フレイン「にしても、人多いわねー」
フェア「ルー、フロウ、はぐれちゃだめよー」
フロウ「はい!」
ルー「(>_<)ゝ」
クラン「まずは宿を探そう。んで、港までの道を聞いて準備が整ったら出発するって感じかな」
フレイン「港・・・・・つまり、海にでるのよね」
フェア「海?海ってもしかして、あの海!?」
クラン「ああ。多分その海だ。といっても、俺もちゃんと見たことはないけどな」
ルーのいた集落で少し見ただけだ。しかもあの海は血に染まって真っ赤になっていた。・・・・あまり思い出したくないな。
フロウ「海かー、私も見たことないけど、どんなかんじなんだろう?」
ルー「!(^^)!」ピョンピョン
ルーが一生懸命その様子を伝えようとしてくれている。腕をいっぱいに広げ、飛び跳ねて・・・・
クラン「かわいいけど何を言いたいのかさっぱりだ」
ルー「Σ(・д・ )」
「港を探してるんですか?」
突然、謎の少女に話しかけられた。ロングヘア―の栗色の髪をなびかせた上品そうな少女。
クラン「確かにそうだけど、君は?」
「私はピピと申します。かつてあなたたちに助けられた者です」
そう言われはしたものの、やはり記憶にない。そもそも誰かを助けたという記憶がない。
フレイン「私たち、人助けとかしていたかしら?記憶にないわ」
フェア「かつて、っていうぐらいだから私が知るわけないわよね」
フロウ「私も知りませんよー」
ルー「(´・ω・)?」
クラン「やっぱり、人違いじゃないかな。いや、港の場所はぜひとも教えてもらいたいけれども」
人違いだったとして、それを利用するのは良心が痛む。だから一応知ってもらったうえで教えて欲しいのだが・・・・
ピピ「いえいえ、人違いではありませんよ。そうですね、私が助けられたのは盗賊たちに捕まっていた時の事です」
盗賊、捕まる・・・・・
クラン「あー!思い出した!ファイスと出会ったあれかー!」
フレイン「あー、路銀稼ぎのあれね。忘れてたわ」
確かにあのときついでに捕まっていた人たちを解放したはずだ。その後のことは知らないが、まさか―
クラン「まさかとは思うけど、ずっと尾けてきてたのか?」
ピピ「はい」
真っすぐな瞳でこちらを見つめ、そう返す少女。
ピピ「妖精の森に入った時とか、天使に襲われたときとか、雪国に行った時とか、全部先回りしてました!」
いや、流石にそれはないだろう。先回りしていたのならどこかで見たことがあるはずだし、何度も見た姿ならどこかデジャヴを感じるものだ。
ピピ「とはいえ、毎回姿は変えていましたけれどね」
フェア「あ、そういう魔法なの?」
ピピ「はい。私の魔法は変身する魔法なので」
ただの人化の魔法ではなくて、姿を自由自在に変える魔法を彼女は使うらしい。
ピピ「ただし魔法を使う条件として、誰の目にも映っていないというものがあります。強すぎる魔法はこうやって条件をつけてあげることで魔力の消費を抑えることができるのです」
個別魔法にそんな抜け道があるのか。いや、しかし条件を付けると限定された状況でないと使えないというのもあるし、汎用性は下がってしまう。だからこそ強力なのだろうが・・・・
ピピ「で、港に関してなんですが、港まで行くための馬車があります。それに乗ると割とすぐ着きますよ」
フレイン「へぇ、それはどこにあるの?」
ピピ「案内します・・・・・・が、倭国に行くのはそう簡単ではありませんよ」
倭国・・・・・たしかジパングの別の呼び名だったか。これから向かう港ではあまり倭国と交流していないということなのだろうか。
ピピ「とはいえ、船にさえ乗ることができれば何とかなるのは事実です。ですから、とりあえず向かってみましょうか」
そう言って先導してくれるピピ。もしかして恩返しのためにここまで調べてくれているのだろうか。だとすれば本当にありがたい。人助けもしてみるもんだ。
クラン(人助けのつもりはなかったんだけどな)
フレイン(はたからみたら私たちの方が悪役だっただろうし)
クラン「そういえば、魔法を使うってことは・・・・・君は魔物なのか?」
ピピ「はい、そうですよ。私はハーピーです」
フェア「ハーピー、っていったら半人半鳥ね」
人間の身体に腕が翼で、脚が鳥と同じものを持つ魔物、ハーピー。今の姿からはその様相は全く見えない。
フレイン「姿を変化させる魔法って、それ自体を維持するのにかなり魔力を消費するものじゃないの?」
フロウ「そうなんですか?」
ルー「(´・ω・)?」
クラン「俺はもともと人間だし、フロウやルーは見た目からは魔物と判断できないからな。で、そこんところどうなんだ?」
フェア「私も普通に使ってるわよ。歩いてるだけでじわじわと」
ピピ「あ、私の場合はですね、姿を変え続けるわけじゃなくてこう、錬成する感じというか、まあ変える時にしか使わないんですよ、魔力」
身体を錬成する、ということは召喚のようなものだと思っていいのだろうか。
クラン「じゃあフレインたちみたいに魔力切れで急いで姿を隠さないといけない、とかはないわけか」
ピピ「そうですね。でも、フレインさんはともかくフェアさんはクランさんと契約してるのもあって魔力切れなんてそうそう起きませんよね」
フェア「えっと、あなた本当にどこまで知っているの?」
ピピ「私が調べられることは何でも、です」
そんなこんなで、港までは難なく行くことができた。のだが・・・・
クラン「ここからジパングに向かう船はしばらくでないのか」
ピピ「そう短期間に何度も船を出すわけにもいきませんから。途中で嵐にあったら沈んでしまうかもしれませんし、船を出すのも命がけです」
フレイン「となると、しばらくは待ちぼうけ?」
クラン「ってことになるのか。アリスに会えるのはいつになるのやら」
フェア「んー、これって私たちが自分で渡るわけにはいかないの?」
ピピ「無理です無理です。ここからどれだけ遠いと思ってるんですか。海と川は違います。黄河やナイル川の川幅よりも広いんですよ」
フェア「黄河?ナイル川?」
クラン「共にすごく広い川、とだけ言っておこう。しかしまあそうなると本当に待つしかないんだな」
フロウ「ぶー、残念です・・・・・」
ルー「(>_<)」
クラン「とりあえずは宿を探そう。長期滞在できそうなところをだ」
ピピ「それでしたら、案内しますね」
フェア「ほんと、何から何まで調べてあるのね」
ピピ「そりゃあそうですよ。クランさんたちにはまだまだ恩を返しきれていないんですから」
クラン「それで、だ。情報通な君に聞きたいことがある」
ピピ「はい、なんでしょう?」
クラン「腕のいい医者を探しているんだ。ルーの声を治すことができる医者を」
ピピ「・・・・・あー、そうですね。確かに私はいろいろ調べてはいますが、それもこれもクランさんたちの旅のルートがわかっていたから先回りして調べられていたわけです」
ピピ「で、それ以外の事は調べていないのでわからない、というわけですよ」
フェア「要は知らないってことね」
ピピ「まあ、そうなりますね。しかし、探すことはできます」
クラン「本当か!?」
ピピ「はい。私はハーピー、文字通り世界中を飛び回ることができる魔物です。ですから、世界中を回って調べることは可能ではあると思いますが・・・・」
クラン「時間はいくらかかってもいい。報酬なら俺が用意できる分ならいくらでもだす。だから、頼む」
フレイン「クラン・・・・」
フロウ「ルーちゃん、愛されてるね」
ルー「( ///・ω・///)」
ピピ「お、落ち着いてください。クランさんからお金なんて受け取れません。ですが、時間は本当にかかると思っていてください」
クラン「ああ、大丈夫だ。何年かかってもいい」
ピピ「わかりました。このピピ=ハルピュイア、あなたのご期待に沿えるよう全力を尽くします!」
フレイン「で、あんたの本当の姿ってどんな感じなの?」
ピピ「あ、見たいですか?見たいですか?気になっちゃいますか?やっぱり気になっちゃいますか?」
フェア「まあそりゃあね」
フロウ「私、気になります!」
ピピ「では、変身させていただきますか。あらよっと」
ピピが服を脱ぐかのようなしぐさで腕を腹部から頭まであげる。そうすると、先ほどまでとは打って変わって青紫色のショートヘアーをした少女が目の前に現れた。
フェア「・・・・・ええっ!?誰にも見られないっていう条件は!?」
ピピ「見られてませんよ。この腕の内側は」
そして、今度は腕を後ろに回し、再び前に持ってくる。そうすると腕が翼に変貌していた。その翼で下半身を隠し、翼を広げるとそこには鳥の足をもったピピの姿があった。
ピピ「そして最後にくるりと一回転」
くるっと一周したと同時に、先ほど背中に隠せなかった二の腕部分も翼へと変わった。これが、本来の彼女の姿。
クラン「これが君の魔法か」
ピピ「はい!諜報活動においては右に出る者はいないという自信があります!」
フレイン「それって、もしかして私と全く同じ姿になったりもできるの?」
ピピ「できますよー。別に変身対象は人や魔物だけじゃありませんし、小鳥とか虫とかそういった物にもなれます。あまりやりませんけど」
そんなことができるのなら、情報を得るという点では彼女に敵う者はいないだろう。
フレイン「私もそういう魔法にすればよかったかしら」
ピピ「いやー、これ使いすぎるとたまに自分の本来の姿を忘れて元に戻れなくなるんで大変ですよー?」
さらっと恐ろしいことを言ったな。しかも経験済みっぽい。
クラン「ま、しばらくは船待ちでゆっくりすることになるなー」
フレイン「そうね。私、大きな船って乗るの初めてだから少し楽しみだわ」
フロウ「わたしもです!」
ルー「(>_<)」
フェア「それで、クランはどうしてそのジパングに行きたいの?」
クラン「あれ、言ってなかったっけ。俺の妹分がそこにいるんだよ」
ピピ「そうなんですか?」
フレイン「それは知らなかったのね」
ピピ「ええ、私が知っていたのは向かっている場所だけでその目的までは知りませんでしたから」
クラン「まあ、そりゃそうだよな」
アリス・・・・・俺の2つ下だから今は17歳になるのか。
クラン「フレデリア夫人はきれいな人だったから、アリスもきっと美人になってるんだろうなぁ」
そういった瞬間、フレインとフェアがすこしむっとした。
クラン「あ、えーと、今のはなんかまずかったか?」
フレイン「別にー」
フェア「今私はちょっと危機感を覚えているのよ。幼い頃別れた妹分が成長して美人になって目の前に現れたら、はたしてクランは正気を保っていられるのでしょうかって」
クラン「何を言っているんだお前は」
ピピ「ちなみにクランさん、女性の好みとかありますか?」
クラン「特にない」
ピピ「なるほど・・・・・・ルーちゃんを気に掛けることが多いことからクランさんは庇護欲をそそられる女の子に弱いと見ました」
フェア「庇護欲をそそられる女の子・・・・・」
フロウ「と、いうと?」
ピピ「ずばり!クランさんは守られるより守ってあげたいタイプでしょう!」
クラン「んー、まあそれはそうかな」
幼い頃は守られてばかりだった。姉さんに、テトラに、アリスに。あのときの俺には力が無かった。今は力があるのだから、俺が守ることができるだろう。
クラン「大事なものを全部守る・・・・・そのために力をつけたんだ。守られるよりは守る方がいいにきまってるさ」
フレイン「ふーん・・・・・ちなみに私はかよわい女の子なんだけど」
クラン「初対面から俺を拉致しようとした奴が何を言うか」
フロウ「はいはいっ!私、まもってもらいたい系女子ですっ!」
クラン「初対面で監禁しようとした奴が何を言うか」
フェア「私、実はものすごく弱い女の子なの」
クラン「初対面で無理矢理婚姻させようとした奴が何を言うか」
ルー「(/・ω・)/」
クラン「ほら、みろ!かよわいっていうのはこういう子のことを言うんだ!」
ピピ「やっぱりひいきがありますよねー」
フレイン「ずるいわねー」
フロウ「ねー」
フェア「ねー」
クラン「何とでも言え」
初対面がアレな以上、ルーは守ってあげないといけないっていう気分がすごいんだ。そこはもう諦めて欲しいんだがな。