クラン「よし、こんなもんだろ」
フロウ「おおー」
朝食を食べ終えた後、お世話になったお礼のつもりで俺たちはフロウの家を改築していた。ルルトが材料を調達し、俺とフレインが組み立てる。ルーとフロウはお昼の食材の調達、といった感じで作業を分担した。
ルルト「いやー、立派なモンだね。クランってこういう工作も得意だったっけ?」
クラン「得意、というより知ってるだけだ。本だけはたくさん読んだからな。建築についても一通りは」
とはいえ、やはり知っているだけだ。技術が伴っておらず、見た目は歪だし、断熱性もぜんぜんない。(ジャックフロストからすればそちらの方がいいのかもしれないが)
フレイン「まあ、強度は保証するわよ。もともとの木材が頑丈なのもあるけど、蔦も絡ませておいたから。ブリザード程度じゃ吹き飛ばないわ」
ルー「(*‘∀‘)」
フロウ「ルーちゃんが魚を取ってくれたし、私は木の実を集めて来たし、これでごはんが豪華になりそう!楽しみにしてるよ!」
クラン「よし、じゃあさっそく作るか」
さて、フロウは豪華な食事を期待しているようだし、俺も本気を出すことにするか。豪華ってのがどういうものなのか、みせてやるぜ!
ルルト「作ってもらってる側だから言うのもアレなんだけどさぁ、正直調子に乗ってたよね?」
クラン「はい、おっしゃる通りです・・・・」
ルー「<`ヘ´>」
調子に乗って料理を作りまくった結果、材料を全て使い切ってしまった。いや、これに関しては完全に俺が悪い。
フロウ「おいしかったからいいと思うんだけどなー」
フレイン「だからといって全部使い切る必要はなかったわよねって話なの。ルーちゃんたちは夜の分も含めてとってきてたのに・・・・」
苦言はすべて受け入れよう。俺が悪いんだから。そういえば、サーナさんのとこでも同じようなことやったことあるな・・・・あの時は軽くたしなめられた程度だったか。どうも俺はおだてられると調子に乗りやすいタイプのようだ。
フロウ「家も立派になったし、おいしいごはんも食べられるし、夢みたいな生活だな~」
クラン「・・・・・・」
彼女―フロウは、なぜひとりで生活しているのだろうか。彼女に案内されたこの場所は、集落からは離れた場所にある。魔力探知を行うと多数の反応があるから、おそらくあの場所にはジャックフロストが多数住んでいるのだと思う。おそらく彼女はそこの住人だったんだろう。ではなぜ、彼女は集落から離れて暮らしているのか。
クラン(1人が好き、というわけではないな。絶対に。彼女の生活力から考えても、決して自ら一人で過ごそうだなんて考えるはずもない)
クラン(推測材料が少なすぎて何とも言えないな。もうしばらく観察してみるか)
時間があれば、集落の方へ訪ねてみるのもいいだろう。快く、とは言わないが、きっと答えてくれると思う。
「あの子は、忌み子ですから」
広くなった家で一晩を過ごした翌日のこと。俺はこっそりと集落の方へ行ってみた。なぜ、フロウは独りでいるのか。そこで言われた言葉がこれだ。
クラン「忌み子・・・・ねぇ」
あの天真爛漫な少女が、忌み嫌われるような存在だとはとうてい思えない。しばらく話を聞いて回ってみたが、どうにも納得できる話が聞けなかった。
ルルト「クラン、どうしたの?」
クラン「ん、ちょっと考え事をな」
ルルトにこのことを言ったら、きっと「文句言ってくる!」とか言って突撃するだろう。こいつには言わない方がいい。
クラン「そういえば、いつ出発しようか」
ルルト「あー、そうだね・・・・何も考えてなかったや」
クラン「いつまでもここで、っていうわけにはいかないからな。一応、俺たちには目的地があるんだし」
ルルト「極東の島にある黄金の国、ジパング。忘れてないよ」
クラン「ああ。急ぐ旅でもないが、あまり留まっているのも・・・・な」
ひとつ、気がかりなことがある。ルーの村を滅ぼした勇者一行、彼女らがきっと俺を追いかけてくるだろう。仲間を一人殺したんだ、その覚悟はしている。とはいえ、俺個人の事情にこの村を巻き込むわけには行かない。だから、早めに出立したいのだが・・・・
ルルト「まあ、出るなら朝だよね。となると、少なくとも明日、かな」
クラン「だな。さて、今の内に装備を整えておくか」
ルルト「僕はちょっと狩りにいってこよーっと」
あとでフレインとルーにも伝えておかないとな。さて、準備を始めるか。
フロウ「・・・・・・」
そしてさらに翌朝。朝食だけ食べて出発しようと思いながら、外に出たときのことだった。家の外が、大きな壁に囲まれていた。
クラン「・・・・・・!?・・・・・・・・・・!?!?!?」
いや、まったく理解ができない。なんだこれは。この家と、湖を、巨大な氷のドームが覆っている・・・・のか?
ルルト「んー・・・・クラン、どうしたの・・・・・おおっ!?」
フレイン「なによ、朝からうるさいわね・・・・・ぇ!?」
ルー「?」
やはり、全員面くらっているようだ。いや、ルーはあまりわかっていない感じか。それにしても、いったいなんなんだこれは・・・・。
フレイン「・・・・だめね。土の下にも氷が張っているわ。これじゃ掘ることもできないわ」
フロウ「わー、なんでしょうこれー。これじゃあここから出ることなんてできませんねー。出発は氷が解けてからにした方がいいですよー」
・・・・怪しい。棒読みだし、今まで使ってこなかった敬語を使っている。と、いうことは、だ。これを引き起こした張本人か、そうでなくとも関わってはいるってことだろう、
クラン「・・・フロウ、一つ聞きたいことがある」
フロウ「は、はい!なんでございまするか?」
質問しただけでその返事は怪しすぎるだろう。この3日フロウという少女と一緒に過ごしてわかっているが、彼女はとても素直な子だ。だからこそ、その反応で何をしたのかがすぐにわかる。
クラン「なにをそんなに動揺しているんだ?」
フロウ「べ、べべ別に動揺してなんか・・・・」
ルルト「・・・・・・」
フレイン「・・・・・・」
さすがにそれは無理があるだろう。
クラン「・・・・そういえば、フロウ。君は、凍った湖がほんの一瞬で溶けたときのことを覚えているか?」
フロウ「え?い、いやー、なんのことだか!」
クラン「昨日の朝のことだ。確かに朝起きて、寝床から出た時点では湖は凍っていた」
フロウ「み、見間違いじゃないかな?」
クラン「そして、ほんの一瞬目をそらしている間に、湖の氷は全て溶けていた」
フロウ「い、いやー、世の中不思議なこともあるもんだよねー!」
クラン「そこでフロウ、一つ聞きたい」
フロウ「こ、これ以上私に聞いたってなにもいいこと・・・・」
クラン「君の個別魔法って、どんなものだ?」
フロウ「・・・・・・・・・・・・」
ジャックフロストである彼女は、凍らせることは得意でもその逆は苦手のはず。ただし、それは基本魔法の話だ。
クラン「サーナさんは、個別魔法はどんなことでもできると言っていた。想像しうる限り、どんな魔法をも作れると」
フロウ「わた、しは・・・・」
クラン「たいていは普通に生活していくうちに生活に合ったものを作ってしまうらしいが、それは絶対ではない」
クラン「・・・・今から炎の魔法を使ってこの氷の一部を溶かす。まあ軽く穴をあけられれば出られるだろう」
フロウ「・・・・・・」
フロウは黙ってしまった。少々大人げなかったかもしれないが、こうでもしないと邪魔されるかもしれないからな。
ビュオオオオオッ
壁に向かおうとすると、氷に覆われたこの場所にブリザードが吹き付けて来た。ああ、こんなことはありえない。
ルルト「・・・・・フロウちゃん、どういうつもりなの?」
フレイン「さ、さささ寒い・・・・・は、早く止めて・・・・」
ルー「・・・・・・」
フロウ「・・・・・いいじゃんか。ここにいたって。ごはんもあるし、お家もある。わざわざ出ていかなくたって、いいじゃんか」
クラン「悪いが、それは無理な話だ。俺たちはここを出ないといけない。出来る限り早くな」
フロウ「・・・・・・・どうして?」
クラン「それは―」
フロウ「どうして、みんな私から離れていくの?ドウシテ、みんな私を独りにするの?」
フロウ「もう、ヒトリボッチはイヤ・・・・ずっとずっと、イッショだ!氷漬けにしてでもここからは出させない!」
吹雪がさらに強くなる。子供にしては強すぎる力。忌み子というのはこれが原因なのか?扱いきれない力をもっているからこそ忌み嫌われているのか?だが、今はそんなことを考えている余裕はない。
クラン「ファイアフォース!悪いが、黙ってやられるほどお人よしじゃないんでね!抵抗させてもらうぜ!」
ルルト「氷漬けになんてなってたまるか!」
フレイン「ふう、やっと暖かく・・・・さて、私も枯れたくはないから容赦はしないわよ?」
ルー「(´・ω・)」
ひとまずはフロウを落ち着かせないとな。疲れ果てるまで相手してやる!
フロウ「まずはその炎の鎧を取っ払う!エターナル・ブリザード!」
フレイン「シュー・ウォール」
クラン「フリーズ!」
フレインの土壁を氷で覆う。風と冷気を防ぐにはこっちの方が効果覿面だ。さて、これで向こうはどうでる・・・・?
フロウ「ジャックプロミネンス」
フロウがそう唱えると同時に、フロウの手から光線が放たれ、凍らせた土壁が崩壊した。
クラン「今のは、超高温の光線か・・・・!それが君の個別魔法か、フロウ!」
フロウ「えへへ、そうだよぉ。これがあるから、私はみんなに嫌われてるの。私は、温かいものが好きなだけなのに」
忌み子・・・・そういうことか。種族の特性に反した魔法を身に着けたが故に、忌み子。もし癇癪でもおこされて、今のをぶっ放されたらジャックフロストはひとたまりもないだろう。
ルルト「クラン、早めに決着を付けよう。あれ、使わせすぎたらまずい」
クラン「どうしたんだ、何が見えてるんだ」
ルルト「今の一発で、フロウちゃんの手が『溶けている』。ジャックフロストに身体には、あの魔法は反動が大きすぎるんだ」
クラン「自分で自分の身を滅ぼしかねない魔法か・・・・」
俺もサーナさんがいなければ、今の魔法を制御できずに自分の魔法に押しつぶされたりしていたかもしれない。そしてフロウは今、自分の魔法で溶けている。
クラン「制御訓練でなんとかなるかはわからんが、やるだけやらせてみるか!」
まずは・・・・
クラン「その手をこちらへ向けさせない!手に重力を!」
フロウの手にのみ5倍の重力をかける。
フロウ「あっ、お、おも、い・・・!」
あのビームは、手から放っていた。魔法ってのはイメージできなけりゃ使えない。『手から放つ』イメージしかなければ、あの魔法は手からしか放てないのだ。
フレイン「キャッチネット」
そしてフレインのツルで縛り上げ、
ルー「!」
フロウ「わっ、冷たいっ!み、水?」
ルーが水をあびせ、
ルルト「ビリっといくから、覚悟しててね」
フロウ「え、まっ」
ルルト「サンダーフィスト!!!!」バリバリバリバリ
フロウ「ああああああっ!!!!」
ルルトの電撃で痺れさせる
フレイン「いった~・・・・ルルト!出力上げ過ぎよ!」
ルルト「あ、ごめんごめん、つい・・・・」
フロウ「」
フロウを無力化することに成功した。・・・・・・生きてるよな?
ルー「(*‘∀‘)」ペシペシ
クラン「ルー、気絶してるんだからそれじゃ意味ないって」
とりあえず、フロウは無事だ。しばらくは痺れて動けないだろうが、命に別条はない。
バサッバサッ
クラン「さて、あいつは来て欲しい時に来てくれるな」
存在を示すかのような大きな羽音を立て、その白い翼を大きく広げ、そいつは俺たちの前に降り立った。
ワグラエル「どもどもー、みんなのお母さんワグラエルさんですよー」
ルルト「お母さんにしては貧相じゃない?」
ワグラエル「お前が言うな」
ルルト「しまった、ブーメランだった!」
さて、軽く挨拶も済ませたところで、質問してみるか。
クラン「ワグラエル、一つ聞きたいことがある」
ワグラエル「え、なになに~?スリーサイズは上から67・50・74だよ~?」
ルルト「んなこと聞いてないよ!・・・・え、聞かないよね?」
クラン「当たり前だ。さて、ワグラエル。このジャックフロストが、炎の魔法をつかっても大丈夫にするにはどうしたらいい?」
フレイン「え、それをあいつに聞いちゃうの?」
ワグラエル「・・・・あー、なるほど、そっちかー。いや、わたしゃてっきり前に渡した宝石について聞かれるのかと」
クラン「それも気になるけど、まあ些細なことだし」
フレイン「些細なの?」
ワグラエル「まあせっかくだしお答えしましょうじゃありませんか。まず、魔物の種族の特性って打ち消すのはどうやっても無理なんだよね」
クラン「・・・・つまり、フロウが炎魔法を使うすべはないと?」
ワグラエル「まあまあ最後まで聞いてよ。特性を打ち消すのは無理なんだけど、特性を追加してあげることは出来るんだよ」
ルルト「えっ、ど、どうやって?」
ワグラエル「必要なものは三つ。まずは魔力の塊。まあ魔物の魂って呼ばれてるやつだね。私があげたフェアリーの魂みたいなのの中で、追加してやりたい特性を持つ魔物のものを用意する」
ワグラエル「次に必要なのは魔力を流し込むための装置。魂をはめこんで、魔力を流して魂内の魔力をその魔物に注入するような造りのものを用意してあげなきゃならない」
ワグラエル「そして最後に場所。これは純粋な魔力が満ちる場所じゃないといけない。魔界みたいなどろどろした魔力のとこはだめだし、このあたりだと魔力が薄すぎる」
クラン「純粋な魔力・・・・妖精の森か!」
フレイン「なにそれ?」
ルルト「妖精の森・・・・名前からして妖精が住んでるの?」
ワグラエル「そうそう。妖精ってのは純な魔力を好む種族でね。私が渡したそれは、純な魔力をそのまま魔法攻撃として吐き出せるやつなの。言うなれば無属性の魔法かな」
ワグラエル「純な魔力ってのは魔法で打ち消しづらくてね。魔物同士の戦いだとすっごい効果を発揮してくれるよ」
クラン「はあ、これが・・・・」
ルー「(/・ω・)/」
クラン「はいはい、だっこだね」
ワグラエル「・・・・さて、それじゃあいつも通り」
クラン「え、やるの?」
ワグラエル「まあ私も仕事しにきてるわけだしねー。ってことで、浄化始めちゃいま~す」
クラン「ルー、すぐで悪いけど降りてくれ。たぶんあいつはお前のことは狙わないから、フロウといっしょに離れたところで待機してくれ。いいな?」
ルー「((゚д゚○))三((●゚д゚))」
ルルト「僕からも頼むよ。巻き込んだら危ないから・・・・ね?」
ルー「・・・・・」
ルーは納得してない様子で、離れてくれた。さて、じゃあ戦いを始めるとするか。