ジャックフロストの少女に導かれ、俺たちは彼女の家へとたどり着い・・・・・いや、これは家、なのか?
ルルト「・・・・え、これが家?」
フロウ「そうだよー。これが私の家。まあ自分で作ったから粗末なんだけどねー」
自分で作った?というか、これは家というより・・・・
クラン「雪を積んで穴を掘っただけなんじゃ・・・・?」
フロウ「んー、まあそうかな。普通の家なんて作れないしね」
フレイン「なんでもいいから早く入りましょう。寒い。ものすごく寒いわ」
ルー「?」
フロウ「そうそう。こんな寒い中ずっと突っ立ってたら凍えちゃうよ!ほら、入って入って」
ルルト「わわっ、押さないでって」
フロウラルフロストに促されて(というか押されて)渋々家(仮)に入る。中は外見通りの広さで、俺たち全員が入るにはあまりにも狭く―
ルルト「ちょっ、狭っ、お、押さないで、ひゃっ!冷たいっ!壁が冷たいっ!」
フロウ「そりゃあ雪の壁を氷で覆ってるだけだからねー」
フレイン「でも風が無い分外よりは温かいかも。というか、結構温かい?」
クラン「思っていたより熱がこもるみたいだね。ルー、大丈夫?つぶれてない?」
ルー「(*-ω-)」
ルルト「きゃあっ!今おしり触ったの誰!?クラン!?」
フレイン「ごめんなさい、それ私のツルよ」
フロウ「えへへ・・・・いっぱい人がいる・・・・楽しいな・・・・・」
そんな状況の中でも、旅で疲れていたのもあってか俺たちはぐっすり眠ることができた。・・・・ルルトが寝ぼけて放電しなくてよかった。
翌朝、朝から元気なルーに起こされて、俺たちは目を覚ました。外に出てみると、まぶしい光と寒い空気が相まって眠気は一気に吹っ飛んでしまった。
フロウ「みなさん、おはようございます!私は今から朝食を取りに行ってくるので、皆さんはゆっくりしてて!」
フロウラルフロスト・・・・長いからもうフロウでいいか。フロウはそういうと湖の方へかけていった。
クラン「ま、あんなこと言われて何もしないわけには行かないよね」
ルルト「朝食を取ってくるって、狩りでもするのかな?」
フレイン「このあたりに獣はいなさそうだし、湖は凍っているし・・・・」
ルー「(;゚Д゚)」
ルーが目を見開いて何かを見ている・・・・あっちは湖か?いったいなにが・・・・?
クラン「・・・・・・え?」
あの湖は、さっきまで、ほんの少し前まで歩けるぐらいに凍り付いていたはずだ。その湖が、ほんの少し目を離している間に―
クラン「な、なんで湖が全部溶けてるんだ!?」
いや、確かにあの湖を凍らせたのはフロウ本人だ。だが、凍らせるのと溶かすのとでは労力は全くの別ベクトルであり、ましてやジャックフロストが氷を溶かすなんてことをできるわけが・・・・。
クラン「どちらにせよ、一度行ってみるか。ルーはどうする?」
ルー「(/・ω・)/」
クラン「よしよし、それじゃあいっしょにいこうか」
ルルト「って、なんでルーちゃんだっこしてるのさ!」
クラン「え?ほら、今だっこしてってアピールしてきたし」
ルルト「ずるい!」
フレイン「子供相手に嫉妬は見苦しいわよ」
ルルト「そっちじゃない!ボクもルーちゃんをだっこしたい!」
クラン「って言ってるけど」
ルー「((゚д゚○))三((●゚д゚))」
フレイン「いやだって」
ルルト「なんでさー!」
たぶんルルトはビリビリするから嫌なんだろうなと思う。ルルトを気兼ねなく抱きしめられるのはサーナさんとか、もう慣れた俺ぐらいなもんだろう。
湖の側まで近づくと、フロウが釣り糸を垂らして静かに座っていた。この湖で食材を手に入れるとなると、魚ぐらいしかないので当然か。
フロウ「あれ、みなさん。まだゆっくりしていてくれてよかったのに」
クラン「宿を提供してもらって、さらに食事までなにもかもさせるってのは気が引けるからね」
ゆっくりしている、といってもあの家の中にいるわけにもいかないし、どうしても
ルルト「ま、魚とりは任せてよ!こうみえてボクは潜るのも得意なんだ」
そういうとルルトは薄着になり、勢いよく水の中へと飛び込む。鳥の魔物であるルルトは空気の薄い高高度の空を飛ぶことができるように、肺機能が発達している。空気抵抗を少なくするための身体は、水の抵抗も受けにくい。水の中を泳ぐ事に関しては普通の人間や魔物よりかは秀でているといえるだろう。
フロウ「あっ、待って!」
しかしそれは・・・・・
クラン「・・・・・・よいしょっと」
ザバァ
ルルト「むりむりむりつめたいさむいしぬしぬしぬ」
常温の水での話だ。
パチパチパチ
ルルト「ああ・・・・火・・・・・あったかい・・・・・」
フレイン「バカね。こんな寒い地域の湖に飛び込んで大丈夫なわけがないじゃない。魚を捕まえるのに潜る必要なんかないわ。罠を仕掛ければいいのだから」
フレイン「ローズネット!」
花をつけたツルを網状に絡め、水の中に沈める。花の香りによって集まってくる魚たちを、網と化したツルで一気に捕まえる。ツルは彼女の手足のようなものだから、魚がいるかどうかは感覚ですぐにわかるので、普通の網をつかうよりも確実だ。ただし―
フレイン「むりむりむりつめたいつめたいこごえるかれる」
常温の水ではの話である。
クラン「さて、北方の脅威を舐めていた二人に代わって、俺は地道に釣りを手伝うとするか」
荷物の中から簡易の釣り竿を取り出し、湖面に向かって針を投げる。地味だが、俺に出来る芸当はこんなものだ。重力操作を使っても水を持ち上げるだけで魚はとれない。魚だけを持ち上げようと思ったら先に見つけなければならないが、この広く深い湖でそれは不可能だ。
フロウ「そうだよー。なのになんかいきなり飛び込んだりするから、私びっくりしちゃった」
ルルト「ボクはこれしかできないんだよぅ!」
フレイン「私もこれぐらいしか能がないから・・・・」
ルー「(*'▽')」
クラン「うん?ルー、どうしたの?」
ルー「(*'ω'*)」
ルーは、俺が持っているナイフを使いたいようだ。だが、彼女に渡すには危険すぎる。まだ刃物を扱っていい年齢じゃないだろう。
クラン「え、これ?いやいやいや、このナイフはルーには危ないって」
ルー「(*'▽')」
クラン「・・・んー、何する気かしらないけど、危ないことはしないでくれよ」
とはいえ、ルーも何か手伝いたいのだろう。なにをするのかはわからないが、ちゃんと見張っていれば・・・・
ルー「( #^^#)b」
クラン「え、いや、親指立てられても、え、ちょ、ルー、ストップ!」
チャポン
俺が止める間もなく、ルーは湖の中に飛び込んでしまった。早く引き上げないと、凍えてしまう!
ルルト「クランが戦闘以外であんなに焦ってるの、初めて見た気がする」
フレイン「でも、私も心配だわ。あんな冷たい水の中に潜っていって、どこぞの鳥が死にかけていたのを見ていたはずなのに」
ルルト「そういえば、どこぞの花も枯れかけてたね。なんでルーちゃんはそんな中に?」
バシャッ
俺がルーを探し出そうとしているうちに、水面にルーが上がってくる。そしてその手には、俺が貸したナイフと、ナイフに刺さった大きな魚が握られていた。
フロウ「うわ、すごーい!この冷たい水の中を泳いで魚を捕まえるなんて!」
クラン「・・・・正直驚いたな。そういえば、ルーはセルキーだ。冷たい水の中での漁は文字通り朝飯前なわけか」
セルキーは極寒の海の中で漁をする魔物だ。幼いとはいえ、ルーもセルキーとして生まれた以上その経験はあの集落のなかでもあったのだろう。そして今、その能力を発揮してくれているわけだ。
ルルト「あんな冷たい水の中を、どうやって!?ルーちゃん、すごいよ!」
フレイン「驚いたわ。ただの愛玩マスコットキャラじゃなかったのね」
ルー「(´・ω・)b」
元気そうに親指を立てるルー。朝食の調達に関しては、もうこのまま彼女に任せてしまっていいだろう。となれば、俺がすることは一つしかない。
クラン「さて、じゃあ料理の準備をするか!」
ルルト「待ってました!」
フレイン「いえーい」
フロウ「料理、料理できるの!?」
ルルトとフレインにもそろそろ手伝って欲しいんだけどな。あとフロウはいったい今まで何を食べて生きていたんだ。お兄さんちょっと心配になってきたぜ。
ルーが取ってきてくれた魚の内臓を取り、三枚に卸す。小麦粉とハーブ、塩をまぶして油を引いた鍋で炒めれば、
クラン「誰にでもできる簡単ムニエルのできあがりだ。さ、冷めないうちに食べちゃおう」
ルルト「はーい!」
フロウ「なるほど、料理ってこうやって・・・・・」
ルー「(*'▽')」アーン
フレイン「はい、あーん」
フロウ「あれ、食べさせてもらってる・・・・・あ、あーん」
クラン「うん?はい、あーん」
ルルト「ああっ!ボクもまだしてもらったことないのに!ルーちゃんに加えてフロウラルフロストちゃんにも先を越されたぁ!」
クラン「あー、それなんだけどさ。フロウラルフロストってのはちょっと長いと思うんだ。だから、勝手ながらフロウって呼ばせてもらってもいいか?」
フロウ「もぐもぐ・・・・・え、いいよー?」
ルルト「むー、クラン、ボクにも!」
クラン「自分で食べられるだろう」
ルルト「ルーちゃんとフロウちゃんにはやってあげるのに!?」
クラン「年齢を考えろ年齢を。ルーもフロウも推定一桁だろう」
フロウ「私ギリギリ10だよー?」
ルー「(-_-)/」
フレイン「あら、ルーは12歳らしいわ。・・・・・えっ、フロウよりルーの方が年上なの?」
フロウ「えっ、そうなの!?」
ルー「<( *・ω・*)>」フンス
ルルト「えー、意外・・・・ルーちゃんの方がちっちゃく見える・・・・・」
ルー「( ゚Д゚)!」ガーン
クラン「まあルーはちっちゃくてかわいいから。とにかく、こんな子供に張り合おうとするなよ」
ルルト「ふーんだ」
なにがしたいんだ、こいつは。
そうやって騒がしい朝はすぐに過ぎていった。さて、昼からはどうしようか・・・・・