私たちは平成17年から平成19年の3年間に渡って、環境省からの交付金事業として、備前市内の一般家庭や公共・民間施設を対象に環境にやさしいエネルギー設備の導入を進めました。
環境にやさしいエネルギーとは自然エネルギーと省エネルギーのことです。
自然エネルギーとは、太陽光、風力、小水力発電など、原子力発電や石油・石炭等の化石燃料とは対照的に環境負荷が少なく枯渇しない“再生可能なエネルギー”のことをいいます。二酸化炭素を排出せず地球温暖化防止に貢献する“環境にやさしいエネルギー”として、地域の資源を活用した“地産エネルギー”として、市民が参加し取り組むことができる“人間に優しいエネルギー”として、世界的に利用を拡大することが課題になっています。
今回私たちは、主に備前に恵まれている“太陽光”と“木質バイオマス”(薪などの森林由来のエネルギー資源)を利用した「太陽と森のエネルギー」の普及に取り組みました。具体的には、給湯、暖房、動力等として私たちが必要とする“熱”のエネルギーを、自然エネルギーから生み出して利用するための設備の導入を、日本で初めての「グリーン熱サービス」(=自然エネルギーの熱供給サービス)事業として進めました。
【ペレット】
ペレットとは木のおがくず等を固めた木質燃料です。石油に代わる環境にやさしい燃料として、ストーブやボイラーでの利用が進んでいます。
【市民太陽光ステーション】
事業参加地域の公共施設などに、約335kW相当の発電出力の太陽光発電設備を設置し、1年間におよそ3.5万kWhの電力を生み出す市民発電所 「おかやまさんさん発電所」をつくりました。これにより、約60世帯分の電気を供給できることになります。
*平均的な世帯での1年間の消費電力量を5,540kWhと して計算。 (出典:資源エネルギー庁)
省エネルギーとは、無駄なエネルギーの使用をなくすことで、エネルギー消費量を削減することをいいますが、最も“環境にやさしいエネルギー”と考えることができます。なぜなら、エネルギーの消費量を削減すれば、その削減した分だけのエネルギーを他の必要とされるところで使用することができるため、“全く環境負荷のないエネルギーを生み出している”と考えることができるからです。省エネルギーとは、無駄なエネルギー消費を“減らす”ことによって、エネルギーを“生み出す”ことを意味するのです。
今回、私たちは、つけた電気を消してまわるといった使用者側の心がけによる「こまめな省エネ」「我慢の省エネ」という方法ではなく、技術的な工夫でエネルギー消費量を確実に削減する「省エネルギーサービス」という方法を普及しました。今までの暮らし方を変えずに、暖かさや明るさといった利便性を維持しながら、エネルギー消費量を削減できるよう、各種の機器を施設に取り付け、光熱費の削減に見合った金額をサービス料として支払うことによって、経済的にも心理的にも負担がほとんどない形で、無理なく省エネルギーができるという仕組みです。
この「太陽と森のエネルギー事業」(グリーン熱サービス事業)と「省エネルギーサービス事業」を実施するために、「備前みどりのまほろば協議会」は平成17年12月に「備前グリーンエネルギー株式会社」を設立しました。
この事業会社は、環境省「環境と経済の好循環のまちモデル事業」交付金と、備前市内外の市民のみなさんからの出資(市民出資)を資金として、備前市市内の施設を対象とした日本で初めてのエネルギーサービス事業を展開しました。
地域の行政、民間、市民のパートナーシップ団体である協議会が事業会社を設立し、さらに、その事業資金を全国からの市民から出資によってまかなうという全国的にも珍しい市民参加型の環境エネルギー事業になっています。
※事業内容について詳しく知りたい方は「備前グリーンエネルギー株式会社」 ホームページをご参照ください。
“市民出資”は、「環境のために何かしたい」という市民の想いを、事業への「出資」というかたちで実現する、市民参加の新しい方法です。市民から出資された資金は、環境エネルギー設備の建設や導入のための初期投資資金として活用され、その設備を利用して実施される事業から得られた収益は、出資者である市民に還元される仕組みになっています。
日本における市民出資型の環境エネルギー事業は、2001年に北海道の浜頓別に2億円以上の市民出資を集めて建設された風車(“市民風車”)が誕生したのがはじまりです。市民風車は、その後、北海道・東北地方を中心に広まり、2006年には関東にも誕生しました。2006年1月には、合計10基の風車に対して、延べ3500名の市民から総額20億円が出資されました。
また、市民風車と同じ方法で、約500名の市民から合計2億円の市民出資を募って2005年から行われているのが、長野県飯田市の「おひさま発電所事業」です。こちらは、市内の公民館や保育園等38の施設に合計208kW(畳千畳分)の太陽光パネルを分散して設置して太陽光発電事業を行うとともに、地域の商店や事業所を対象とした“省エネルギーサービス事業”を実施しています。
市民出資で“市民風車”や“おひさま発電所”などに取り組む全国のパイオニアたちの協力も得て、備前グリーンエネルギー株式会社を設立し、日本初の“グリーン熱サービス”(自然エネルギーによる熱供給)事業に取り組みました。
市民風車
おひさま発電所