プロジェクトの目的
ブータンは、ネパール、インド、中国に囲まれた人口70万人の国である。国民総幸福度(Gross National Happiness)という独自の尺度で国を運営していることでも知られている。ブータンは、憲法によって国土の60%の森を維持することが定められている。現在の森林率は70.46%に及び、10か所の国立公園などから構成される保護地域は、国土面積の51.44%となっている。このように、ブータンでは自然を守るための制度がかなり充実しており、こうした自然資源を基盤としたツーリズムが国の経済を支える柱ともなっている。
一方、ブータンの生物多様性に関する科学的情報はまだまだ十分ではない。また、動植物等がどの程度保全されているのか、また、危機的状況にあるのかといった情報もよくわかっていない。こうしたことから、生物多様性JAPANでは2013年からブータンの植物に関するレッドリスト作成の支援をIUCNのレッドリストチーム、ブータン政府、主要NGOなどと協力して実施してきた。この間に、レッドリストに関するキャパシティビルディングや、レッドリスト作成の基盤となる植物標本データベースの整備作業などを行ってきた。
こうした活動の結果、カウンターパートであるブータン政府、NGO、その他国内専門家のレッドリスト作成に関する能力が強化された。また、2015年には、ブータンの固有植物種に関するアセスメントが終了し、IUCNのSpecies Information Systemにデータ入力が完了している。本プロジェクトは、こうしたこれまでの活動成果をもとに、ブータンの植物保全と持続可能な利用に向けた取り組みをさらに一歩進めるための活動となっている。このために、昨年度から着手した東大・京大博物館に収蔵されている植物標本のデータベース化による活用促進を完成させるとともに、ブータン生物多様性センターにこうしたノウハウを移転して、ブータン側カウンターパートが自分たちで持続可能に収蔵されている植物標本のデータベース化も行いことができるようにする。さらに、こうしたデータを活用してブータンの貴重な植物固有種の保全と持続可能な利用が進むよう、生息地のコミュニティーと連携した保全活動やエコツーリズムを、日本とブータンの経験交流などを図りながら進めていく。
ブータンの植物標本
ブータンの植物
ブータン生物多様性センター
プロジェクトで寄贈した標本デジタルデータ化機材
※本プロジェクトは経団連自然保護基金の支援を受けています。