不動産取引の安全性と公正性を確保するために制定された法律で、不動産業者の業務を規制し、消費者を保護することを目的としています。
主な規制内容
・免許制度: 不動産業を行うには国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要
・宅地建物取引士の設置: 事務所ごとに一定数の有資格者の配置が義務
・重要事項説明: 契約前に物件の重要な事項を書面で説明する義務
・報酬額の制限: 受領できる仲介手数料に上限を設定
・供託・保証協会: 営業保証金の供託または保証協会への加入義務
消費者保護の仕組み
・契約書面の交付義務
・クーリングオフ制度
・営業保証金による損害補償
・行政による監督・処分
宅建業法により、不動産業者が受領できる仲介手数料には明確な上限が定められています。
売買仲介の報酬上限(片方当事者あたり)
簡易計算式(400万円超の物件)
売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
具体例
3,000万円の物件の場合
(3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円
基本原則: 借主・貸主双方から受け取る報酬の合計は賃料1カ月分+消費税が上限
居住用: 各当事者から0.5カ月分+消費税が原則(事前承諾があれば1カ月分可能)
非居住用: 1.1カ月分の範囲内で自由配分
これらは上限額であり、業者は上限内で自由に料金設定が可能です
定義: 1つの不動産会社が売主・買主双方を担当し、両方から手数料を受領する取引形態
メリット
・ 業者側: 手数料収入が2倍(最大211.2万円)
・ 取引: 社内調整で交渉がスムーズになる場合がある
デメリット・リスク
・ 利益相反: 売主は「高く売りたい」、買主は「安く買いたい」
・ 囲い込みリスク: 両手を狙って他社の買主を排除する可能性
・ 調整による妥協: 双方の「中間点」での成約になりがち
定義: 売主側業者と買主側業者が別々で、各々が片方から手数料を受領する取引形態
メリット
・ 利益相反なし: 各業者が担当顧客の利益を最優先
・ 情報流通: 囲い込みが発生しない
・ 専門性: 売却・購入それぞれの専門知識を活用
デメリット
・ 業者側: 手数料収入が半分
・ 取引: 業者間調整で時間がかかる場合がある
買取業者は「安く買って、高く売る」ことで利益を得るビジネスモデルです。
利益の構成要素
主な諸経費
・ リフォーム、リノベーション費用: 100万円~500万円
・ 仲介手数料: 売却時に発生(売却価格×3%+6万円+税)
・ 保有コスト: 固定資産税、管理費、金利等
・ その他: 登記費用、広告費、人件費等
基本的な計算式
買取価格 = 想定売却価格 - 必要経費 - 利益 - リスクプレミアム
具体例(3,000万円で売却予定の物件)
一般的な買取価格水準
居住用不動産: 市場価格の60~80%
投資用不動産: 市場価格の70~85%
商業用不動産: 市場価格の65~75%
価格に影響する要因
プラス要因
・人気エリア・駅近
・築浅・状態良好
・標準的な間取り・面積
・権利関係が明確
マイナス要因
・築古・要大規模修繕
・特殊な立地・間取り
・権利関係が複雑
・事故物件等の瑕疵
仲介がおすすめのケース
時間に余裕がある
できるだけ高く売りたい
物件の状態が良好
立地・条件が良い
買取がおすすめのケース
急いで現金化したい
確実に売却したい
内見対応が困難
瑕疵担保責任を負いたくない
リフォーム費用をかけたくない
確認すべき事項
① 免許番号と有効期限
② 宅地建物取引士の在籍状況
③ 保証協会への加入状況
④ 過去の行政処分歴
⑤ 両手仲介の比率と方針
良い業者の見分け方
・透明性: 報酬体系や取引の流れを明確に説明
・専門性: 市場知識と法的知識が豊富
・誠実性: 囲い込みを行わない方針を明示
・実績: 同種物件の取引実績が豊富
媒介契約の種類
専属専任媒介: 1社のみ、自己発見取引も不可
専任媒介: 1社のみ、自己発見取引は可能
一般媒介: 複数社に依頼可能
相談窓口
都道府県の宅建業指導部門
消費生活センター
宅地建物取引業協会・不動産協会
不動産取引は法律に基づいた厳格なルールの下で行われており、消費者の権利は法的に保護されています。しかし、取引の複雑さや高額性から、業者選びと十分な理解が成功の鍵となります。
宅建業法による保護制度を理解する
報酬体系の仕組みを把握する
両手・片手仲介の違いを認識する
買取と仲介の特徴を比較検討する
信頼できる業者を慎重に選択する
不動産取引は人生で最も大きな取引の一つです。充分な知識を持って、慎重に進めることが重要です。