研究・プロジェクト
研究テーマ
相互行為における身体・物質・環境
会話分析と呼ばれる相互行為を緻密に記述・分析する質的研究手法を用いて、共同行為や活動における身体・物質・環境の役割に着目し、人々が社会性を育み維持するメカニズムの一端を明らかにしようとしています。とくに、同じジェスチャーが2人以上の間で同期する現象(ジェスチャーの同期)については、以下の2点を明らかにしてきました。
本現象が偶然の産物ではなく、特定の状況および相互行為的位置において産出され、産出者らによる状況予測と動作の微調整でもって達成する社会的達成物である。
本現象は1で述べた過程を経て産出されることにより、コミュニケーション上の滞りを払拭することに寄与する。
人とのふれあい・関わり合いが重要な職業の専門性の記述
相互行為を緻密に記述・分析する会話分析は、現代社会の理解や諸問題に切り込むのにも有用です。身体的・物質的資源を動員して相手との心の通った交流と専門的実践とを両立することを社会的に望まれているにもかかわらず、いまだ十分な評価をされていない介護職員や科学コミュニケーターを対象に、彼ら柔軟で臨機応変な諸実践の分析を通して、こうした職業の地位向上と社会定着に貢献することを目指しています。
(図は城(2017 ミネルヴァ書房)より抜粋)
観察科学の探究
映像や音声の収録、編集技術の発展とともに、会話分析の精度も向上し、分析可能になる研究トピックも増えてきました。一部の職人芸としてではなく、ある程度の訓練をすれば誰もが収録したデータを適切に、説得力のある形で分析するために、整備すべきことは何かを明らかにしたり、教育・研修プログラムを開発したり、利用可能なツールを紹介したりしていきたいと思っています。
また、フィールドワークをさせていただく場所・施設によっては、収録機器を使用できない場合もあります。そのような場合に......といったことも、少しずつ考えていけたらと思っています。
(適宜追記・修正予定)
進行中のプロジェクト
立命館大学・個人研究「ある種の序列や非対称性、非協調性が生じうる場面に着目したジェスチャーの同期」【2021.4〜】
過去のプロジェクト
早稲田大学・人間総合研究センター・若手グループ研究支援プロジェクト「可変展示空間における科学職員と来館者の共通基盤構築と相互行為の多角的研究」(研究協力者)【2022.4-2023.3, 研究代表者:石川奈保子】
早稲田大学・人間総合研究センター・若手グループ研究支援プロジェクト「教育の場としての科学館における来館者-職員/展示物間の相互行為の多角的研究」(研究協力者)【2020.4-2022.3, 研究代表者:宗政由桐】
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B「レジリエントな手術チームのシステムダイナミクスの解明」 (研究分担者 2019.4〜2021.3)【2018.4-2021.3, 研究代表者:中島和江】
国立情報学研究所共同研究「コミュニケーション実践職を対象としたビデオリフレクション環境デザインのための異分野融合的調査」(共同研究者)【2016.4-2017.3, 研究代表者:高梨克也】
国立情報学研究所共同研究「コミュニケーション実践者によるビデオを用いたリフレクション環境のデザイン」(共同研究者)【2015.4〜2016.3, 研究代表者:高梨克也】
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B「科学教育と科学コミュニケーションをつなぐ科学者の対話力トレーニングプログラム開発」 (研究分担者 2015.4〜2018.3)【2014.4〜2018.3, 研究代表者:加納圭】
科学技術振興機構・社会技術研究開発センター(JST・RISTEX) 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発) 「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」「STIに向けた政策プロセスへの関心層別関与フレーム設計(PESTI)」(研究開発実施者 2015.4〜2015.9)【2012.10〜2015.9, 研究代表者:加納圭】
日本学術振興会・科学研究費基金・若手研究B「「定式化」作業の相互行為分析に基づく介護職員の専門性の確立」 (代表)
国立情報学研究所共同研究「多様なコミュニケーション実践フィールドを対象としたリフレクション・デザインと支援ツール開発の相互適応」(共同研究者)【2014.4〜2015.3, 研究代表者:高梨克也】
日本生命財団・高齢社会実践的研究助成「認知症ケア実践の構造から介護職の専門性を確立する方法の提案」 (代表)
国立情報学研究所・H25年度研究プロジェクト(成長未来投資課題)「ロボットは井戸端会議に入れるか(井戸ロボ):セミオープンスペースでの出会いに着目したサービススキルの抽出と継承」(研究協力者)【2013.10〜2014.3, 研究代表者:坊農真弓】
日本学術振興会・科学研究費基金・研究活動スタート支援「専門職従事者の実践知を定量的に抽出可能にするための言語・身体表現パターンの解明」 (代表)
総合研究大学院大学・学融合研究事業・育成型共同研究支援「科学技術コミュニケーションの実践知理解に基づくディスカッション型教育メソッドの開発」(研究分担者)【2013.8〜2016.3, 研究代表者:坊農真弓】
国立情報学研究所共同研究「「当事者を交えたデータセッション」を支援するビデオ再生・分析ツールを利用したコミュニケーション実践知の解明」(共同研究者)【2013.4〜2014.3, 研究代表者:高梨克也】
日本学術振興会・科学研究費基金・ 挑戦的萌芽研究「知識伝達インタフェースとしての科学コミュニケーターの活動実践の理解と支援」 (研究協力者)【2013.4〜2016.3, 研究代表者:坊農真弓】
日本学術振興会・科学研究費基金・特別研究員奨励費 「会話における同期現象分析 -身体経験を表し合う相互作用の解明-」 (代表)
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究C「日本語と日本手話の「発話」に含まれる統合的関係と連鎖的関係のマルチモーダル分析」 (研究協力者)
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究C「介護施設において高齢者・介護職員間で交わされる身体動作を用いた空間表現の研究」 (連携研究者)
日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究C「音声言語・手話・ジェスチャーの「発話」構造の研究」 (研究協力者)