project22 GroupA

MonoZoom

図1. デバイスの外観

目次

概要

背景

 大きなスタジアムなどの広い場所で野球やサッカーなどのスポーツ観戦をする際に、双眼鏡を使うサポーターをよく見かける。これらのフィールドを大きく使うスポーツは全体を俯瞰したい状況と一部分を見たい状況が変化しやすい。視界を変化させる際に双眼鏡を操作する場合や、長時間使用する場合は、腕の疲れを感じて観戦に身が入らないと考えられる。そこで、双眼鏡が目の前についた状態で手を使わず意のままに視界を切り替えることができれば、この課題を解決できると考え、本製作物の着想に至った。

目的

腕を使わずにズームイン・ズームアウトできるデバイスを製作する。

達成目標

 目の周辺に生じる筋電位の変化に応じてカメラ映像の拡大率を意のままに変更できるデバイスを製作し、身体機能の一部として双眼鏡の機能を獲得する。

製作物について

図2. デバイスの構成



①カメラ

②信号処理用回路

③Raspberry Pi(マイコン)

ディスプレイ

凸レンズ

⑥筋電位を計測する部位に装着する電極

動作説明

図3. 動作の流れ

(1)使用者はディスプレイを見る

(2)映像を拡大・縮小したいと思ったら、目を細める・見開く動作を行う

(3)電極が目周辺の筋電位信号を読み取ってRaspberry Piに入力する

(4)Raspberry Piは筋電位信号が一定以上であれば、映像を拡大・縮小する

使用者が見る映像について

 ディスプレイには、カメラモジュールから取得する映像をプログラムによって二つ表示する。それぞれの目が凸レンズを通して一つずつ映像を見ることで、両眼視することができる。

生体信号を用いる意義

 目の動きをコンピュータで捉えるためには、カメラ映像から画像処理によって目の動きを認識し制御することも想定できる。しかし、目であること判別するまでに時間がかかったり、動かしたことを映像から読み取るには正確性に欠けるといった問題点がある。そこで、生体信号を用いることで、目を動かすという意志に基づいた制御を高い即時性で行えると考えた。

身体拡張の位置づけ

 視力にズーム機能を持たせること身体拡張であると考えた。

使用方法

装着手順

(1)電極を貼り付ける

(2)ヘッドマウントディスプレイを装着する

図4. 装着手順

操作方法

図5. 操作時の顔の筋肉の動きとディスプレイの映像の対応

(1)平常時

(2)使用者が目を細めた時の筋電位(の位置)を検出したら、装置が映像の拡大を行う

(3)使用者が力を抜いても、拡大率は維持される

(4)使用者が目を見開いた時の筋電位(の位置)を検出したら、装置が映像を縮小する

動作時の画面

GroupA_sride_最新版.mp4

動画1. 左:動作時の画面 右:使用者による操作

実験について

図6. 実験概略

目的

 被験者に製作したデバイスを装着させ、一定間隔に配置した対象物に記された文字を見てもらうことで、どの程度の距離まで文字が認識可能か調査する。また、文字を正しく認識することができるか、頭部や頸部にどのような負荷が生じるか、操作しやすいかといった使用感や装着感、操作性を調査する。


方法

被験者は、デバイスを装着し立位の状態で以下の作業を行う。


(1)10m前方に設置したパネルに記された文字を見る。

(2)文字が認識できたら記録者に伝える。

(3)パネルを被験者から 5m 離す。

(4)パネルとの距離が 30m になるまで(2)、(3)を繰り返し行う。


この一連の作業を 1 回の休憩をはさみ 2 回行う。

文字はA4 の用紙に 200ptで印刷し、用紙の上辺の高さが地面から160cmになるように貼り付ける。

結果・考察

10mの距離において文字が認識できず、それ以上の距離においても同様であった。


インタビュー調査によって以下のような意見が得られた。

  • 手軽に操作でき、意図せず拡大縮小してしまうことはなかった

  • 操作方法が面白い

  • 解像度が低く、映像が粗いため文字は読めない​(観客や選手自体は見えるが、ユニフォームの文字などは見えない程度)

  • プログラムの動作が重く、映像に遅延がある​

  • デバイス全体の重量が大き

  • 電極は今よりも細い方が貼りやすい

  • 画面酔いを感じる


目の周辺の筋電位で操作することで、手軽な操作と面白い体験を実現できたため、良い操作性を得られた。しかし、遠くのものを大きくはっきり見るには映像の解像度が低く、グがあるため、使用感は悪かった。デバイス全体が重く、電極が邪魔であったため、装着感も悪かった。従って、目の周りの筋肉の動きを用いることで身体の一部のように操作できたが、デバイスの設計と映像の表示プロセスを変更しなければ実用は困難であると考える。

現状の問題点・今後の展望

現状の問題点

  • 解像度が低く、映像が粗い​

  • プログラムの動作が重く、映像に遅延がある

  • デバイス全体の重量が大きく、頭部や頸部へ負担がかかる

  • 画面酔いしやすい

今後の展望

  • デジタルズームであると解像度が低下するため光学ズームに変更​

  • 画像処理アルゴリズムの改良​

  • 液晶を小さくしてデバイス全体の軽量化​

  • カメラを2つに増設​