東北地方

東北大学

量子ビーム地球科学研究室「地球内部の謎を解き明かす」

アストロバイオロジークラブ東北支部 : 野崎舜介

アストロバイオロジークラブ東北支部の野崎です。2020年5月現在、東北大学理学部の4年生です。私の所属する量子ビーム地球科学研究室について、簡単に説明します!

【研究室概要】

量子ビーム地球科学研究室は、東北大学理学部地球科学系の地球惑星物質科学という学科 (学部)、および理学研究科地学専攻 (大学院)に属しています。研究室自体は宮城県仙台市、青葉山キャンパスという自然豊かな場所にあり、地下鉄の駅 (青葉山駅)から徒歩5分程度です。

研究室でやっているのは、大まかに説明すると「量子ビームを用いて地球などの内部を調べる」ということです。具体的にはどういうことか。HPの表現がわかりやすかったので、そのまま引用すると「地球や惑星を構成する物質の構造・物性を実験的に調べることにより、それを用いて地球や惑星の内部を明らかにする研究をしています。この分野のカバーする領域は、いわゆる実験岩石学と鉱物物理学と呼ばれている分野です。特徴は鉱物や岩石のミクロな性質を実験に基づいて解明すること、またその結果をマクロな対象である地球・惑星の現象に適用することです。私たちはこの実験室で得られた成果をもとに、地表から観察できることだけでなく、地球や惑星の見えない内部構造や、何十億年に及ぶ形成史を総合的に理解することを特に重要なことであると考えています」ということです。ちなみに「量子」とはいわゆる陽子や電子などといった、ナノサイズ以下の物質です。これを試料に照射することで、いろいろなことがわかります (ざっくり)。これを用いて、地球のことを中心に、様々な天体の「内部」を実験的に明らかにするという、ドキドキワクワクの研究室です。

アストロバイオロジーとは、主に私の研究と関わってきます。研究室で唯一、私は氷天体の内部海を模擬した「物性 (今は粘性です)」を実験的に求める研究をしているのですが、この内部海とはアストロバイオロジー的にも注目されている場所になります。例えば木星の衛星であるエウロパの内部海では、氷地殻からの沈み込み、海底熱水活動、水岩石反応、潮汐加熱、放射壊変による加熱などなどによって、「材料物質」「エネルギー」が供給されるといえます。水はそもそも大量にあるわけですから、まさに生命が発生しそうな環境ですよね。私の研究がこの界隈にどれだけ貢献できるかはわかりませんが、研究を進める上で常に意識している部分ではあります。

実験設備は大学内にもありますが、全国各地にある放射光施設 (より「高輝度な=質の良い」放射線を使える施設)や、提携しているドイツのバイロイト大学バイエルン地球科学研究所 (BGI)に赴いて実験をすることも多々あります。ちなみに私は2020年3月にこのBGIを訪れる予定でしたが、コロナウイルスの影響を受けて無くなってしまいました。

【量子ビーム地球科学分野 鈴木先生との出会い】

私が現在ここの研究室に所属するまでには、いくつもの偶然の出会いがありました。この話、ちょっと長くなります。一浪かつ後期受験で東北大学理学部地球科学系に入った私は、「色々な分野を勉強して、自分が本当にやりたい分野を見つけよう!」と意気込んで勉強に励んでいました。その熱意が徐々に宇宙の方面へ傾き始めたのが2年生のころ。中村智樹先生という、「はやぶさ」などの宇宙探査ミッションにも深く関わっていらっしゃる大先生のもとで研究をしたい!と強く思うようになり、研究室などにも伺っていました。当時は自分がこの研究室に入るだろうと確信していました。ところが、忘れもしない2019年5月某日。学部3年生の時です。JpGU (地球惑星科学連合大会)という、地球惑星科学の大きな学会 (5日間も続きます!)で運命的な出会いを果たしました。目的のセッションが終わり、会場内をぶらぶら歩いていたところ、気づいたら「惑星火山学」というセッションの部屋に偶然入り込んでしまいました。火山学も好きだったこともあり、とりあえずセッションが終わるまでは居ようと思って聞いていると、現東工大ELSI教授の関根先生の発表で「氷火山」なる、「なんだかよくわからないけどカッコイイ」モノに出会いました。そもそも氷天体という存在すらよく知らなかったし、その中に内部海があることも知らなかった。そもそも液体の水って他の天体にあったの⁉氷火山カッコイイ!っていう感じで、私はこの「氷天体」に一目惚れをしてしまいました。

そこから先は早かったです。東北大学の中村美千彦先生という、火山・流体の研究をしてらっしゃる教授に (「氷火山」というくらいだし、火山の研究室で間違いないだろう!という安直な考えで)メールをし、これについての研究が出来るかどうかを伺いました。先生にはご快諾いただけた(この方は本当に素晴らしい先生です) のですが、後日メールで「鈴木先生が氷衛星の内部海に関する研究をするそうだから、話を聞いてみたら」と情報を頂き、鈴木先生の元を訪ねることにしました。そして、鈴木先生と様々な話をして、よし、ここでやってみよう、と奮起して今に至ります。

ちなみに、「アストロバイオロジー」という概念に出会ったのはその更に後。論文を読んでいて、「内部海に生命がいるかもしれない!?!?!?え???」って驚いたことを覚えています。今では立派な(?)アストロバイオロジストです笑

また、きっかけとなった関根先生には、先日の「水惑星学国際スクール」でお会いし (同室でした笑) 感謝の気持ちを伝えて参りました。

【量子ビーム地球科学研の受け入れ体制】

学部であれば、東北大学理学部の「地球科学系→地球惑星物質科学科」と進むと、3年末での研究室配属の選択肢にこの研究室があります。また大学院においても、東北大学の地学専攻を選択すれば、この研究室に入ることが出来ます。鈴木先生は学生のことを非常に考えてくださる素晴らしい方ですので、何かあればメールをしてみると良いかなと思います。より詳細に知りたい方は、研究室のHPを是非ご覧ください。また、理学部の広報誌「理学部物語」も是非読んでみてください (私も出ています)

資源・環境地球化学研究室「生命分子の起源を探る」

アストロバイオロジークラブ東北支部 : 平川祐太

東北大学理学研究科地学専攻修士2年 (2020年7月現在)の平川祐太です。ここでは私が所属する資源・環境地球化学研究室(通称: 資源研)について紹介いたします。

研究室概要

資源・環境地球化学研究室は、東北大学の理学部地球惑星物質科学科・理学研究科地学専攻に属する研究室です。所在地は宮城県仙台市の青葉山キャンパスで、地下鉄青葉山駅から徒歩5分です。研究内容は、地球における生命の起源と進化です。本研究室の特徴は、フィールド調査と室内実験の両方から生命の起源に迫っている点です。フィールドを専門とする掛川先生と実験を専門とする古川先生が協力して指導してくださいます。フィールド調査では岩石から生命の痕跡を探し出し、周囲の環境と照らし合わせて、当時の生命がどのような生活を送っていたのかについて明らかにしていきます。調査地域はカナダ、オーストラリア、南アフリカなど多岐にわたります。フィールドで採取した岩石を大学で分析し、鉱物組成や同位体比などから当時の環境を復元していきます。最近では、太古代の微化石や秋田県の温泉微生物の研究にも力を入れています。室内実験ではフィールドから得られた情報を元に初期地球環境を再現し、生命を構成するのに必要な有機分子の合成を行っています。初期地球における有機物の生成プロセスは複数考えられますが、本研究室では海洋へ隕石が衝突することで生成するというプロセスを提唱しています。また、最近では初期地球における糖の起源という問題に積極的に取り組んでおり、鉱物を用いた糖の生成や隕石中の糖の検出などを行っています。

【研究生活】

資源研に興味を持ったきっかけは、学部2年の掛川先生の授業です。その授業では地球の成り立ちから生命の誕生までを解説していただきました。授業を通して生命の起源という大きな問題に解明されていない点がたくさんあるということを知り、自分もその研究に携わりたいと考えるようになりました。学部4年の研究室配属で資源研に配属され、そこから本格的に生命の起源とアストロバイオロジーについて勉強を始めました。

私は研究室で室内実験を担当しており、古川先生に指導していただいています。普通の化学と異なり、初期地球に存在したと考えられる物質・条件のみを用いて生命構成分子を作り上げていく作業はまるでパズルのようで非常に複雑です。どのような反応が起こっているのかを少しずつ明らかにしていき、試行錯誤の末、目的の物質を合成できたときの喜びは忘れられないものになりました。初期地球環境を想定した有機物合成は生成物が微量ということが多々あるため、いかに分析を行うかという点が問題となります。資源研では分析に必要な装置・テクニックは非常に充実しており、測りたい物質に合わせてあらゆる分析を行うことができます。また、同じ理学研究科に属する巨大分子解析センターに依頼することにより、普通の研究室では導入できないような大規模な装置を用いて分析することができます。

普段の研究室生活は比較的自由な環境となっています。コアタイムなどは特に設けられておらず、各々が実験や分析の計画を立てて研究を進めています。一方で、先生がたは非常に指導熱心なので、声をかければすぐに時間をとってもらえます。学生同士の交流も盛んで、先輩後輩問わず活発に議論が行われています。季節ごとのイベントも盛り沢山です。春は東北の海産物を贅沢に使った花見、夏は河川敷でのバーベキュー&花火大会と夏旅行、秋は仙台&山形名物の芋煮会、冬は掛川先生主催の蔵王温泉スキー旅行兼忘年会を行います。その他、突発的な飲み会や卓球大会も頻繁に開催されます。

【資源・環境地球化学研究室の受け入れ体制】

資源研では幅広い分野から学生を募集しています。卒業生の中には、学部のときは地学を専攻せず、生物や化学が専門だったという人もいます。そもそも文科系の学部だったという人もいます。学部から入る場合、東北大学理学部の地球科学系に合格し、学部2年の学科配属で地球惑星物質科学科を選択してください。学部3年の終わりに研究室を決め、4年から研究が始まります。修士・博士からの研究は、理学研究科地学専攻の大学院入試に合格する必要があります。東北大学の地学専攻のHPに詳しい日程や過去問等が載っているので、参考にしてください。資源研に興味がある・研究について詳しく聞いてみたいという方は、フィールドに関することであれば掛川先生、実験に関することであれば古川先生にメールしてみてください!