四国地方

高知大学

高知コアセンター鈴木研究室「極限環境に住む生命の謎を解き明かす」

寄稿者 : 下村基さん

初めまして、高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科海洋生命科学コース4年 (2020年6月現在)の下村基です。私の在籍するコースは2017年に高知大学が改組されてできた比較的新しいコースです。海洋生物を主軸とした研究をされている先生が多く、進化生態学、天然有機化合物の生合成や薬理作用、ウイルス学など生命科学に関して広く学ぶことができます。しかしながら、残念なことにアストロバイオロジーに関して直接携わっている先生はいません。アストロバイオロジーと出会う事なく終えてしまう大学生活を私は送るところだったのです。ところが高知大学には「高知コアセンター」という特筆すべき研究施設があり、そのおかげで私は生命起源の探究というワクワクする分野に足を踏み入れることになったのです!

高知コアセンターとは、物部キャンパス内にあるJAMSTECと高知大学が共同で運営する建物で、掘削船によって海底から掘削されたコア資料を保管し、それらを最先端の分析機器や設備を用いて研究する世界でも有数の超先端地球科学研究施設です。海底の岩石や地層を用いて地球の環境変動や地震、地下生命圏の研究が行われています。理工学部や農林海洋科学部にはこの施設内に研究室を持つ先生もおられ、所属すれば地方国立大学とは思えないような研究生活ができます。私はJAMSTECの研究生として、地球微生物学研究グループの研究員である鈴木志野 (第6回アストロバイオロジーセミナー講師) さんと共同研究という形で卒業研究を進めています。内容をざっくり説明しますと「蛇紋岩化反応サイトにおける生命のリン獲得メカニズムの同定」です。The Cedarsという蛇紋岩化反応が活発に起こっている超還元的な湖では、生命に欠かせないリンや炭素が不溶性の鉱物としてしか存在できず、一見すると生命は存在できないのではないかと思えてしまいます。しかし実際には鉱物性のリンや炭素を利用して生きる微生物が存在し、鈴木さんによって単離、解析されました。私の研究ではリン獲得に注目して、その機構に関する遺伝子同定を試みています。岩石を食べて生きる生命体が存在するなんてとてもワクワクしませんか?

【鈴木志野さんとの出会い】

私は当初、サツマハオリムシなどの熱水生物の長期飼育に興味があり、水族館で研究を行うために学芸員資格の取得を念頭において大学の講義を組んでいました。しかし大学で講義を受けるうちに熱水生物→共生細菌→化学合成→極限微生物→生命の進化→生命の起源!という風に興味がどんどん移っていきました。そして2年生での研究室訪問の際に「変なところに住む細菌について研究したい!」と訴えてみたところ偶然にも当時志願していた研究室の先生と鈴木さんがお知り合いで、紹介していただき、現在に至ります。未熟も未熟だった私は高知コアセンターで生命科学の研究が行われているとは露ほども知らず、この出会いがきっかけで身近に地下生命圏や生命起源の研究をする方々がいることを知りとても興奮したのを覚えています。3年生後期での研究室分属で分子生合成や放線菌の二次代謝産物を研究されているウラノバ先生の研究室に入り、鈴木さんと共同研究という形で充実した研究生活を送っています。

【高知大学でアストロバイオロジーに関わるには】

高知大学所属で高知コアセンターを利用して研究を行っている教員は理工学部、農林海洋科学部に複数いらっしゃいます。また高知コア研究所の研究員の方々と共同研究もできるので、やりたいことや興味がある程度明確ならグイグイ自分からアタックすることが可能です。高知大学は四国では数少ないアストロバイオロジー研究への入り口を持っている大学で、ジオロジーからもバイオロジーからも先端設備に囲まれて地球を科学できるとてもいい物件だと思います!