近畿地方

神戸大学

谷研究室 氷衛星におけるガスハイドレートとアストロバイオロジー

寄稿者: 工藤久志さん

神戸大学人間発達環境学研究科で学術研究員(20211月現在)をしております、工藤久志と申します。

[研究室概要]

地球や火星、木星をはじめとした惑星や、それらの周囲を回る衛星の環境を物質科学の観点から解明する研究を中心に取り組んでいます。特に、ハビタブルプラネット(生息可能な惑星)の指標となる「水」に着目して、水、氷、ハイドレートについて重点的に研究を進めております。こうした惑星環境にまつわる水の挙動について物理や化学などの基礎知識を駆使した考察を進め、工学や地球惑星科学への応用・展開をしております。最近では、「氷衛星」と呼ばれる表面を氷で覆われ、内部には液体状の海が存在すると考えられている天体に着目したテーマの研究にも取り組んでおります。氷衛星の中でもエンケラドス やタイタンでは、プリュームと呼ばれる間欠泉のようなものが噴出していることが人工衛星(カッシーニ)によって観測され、生命活動の指標となりうる有機物やメタンガスなどが含まれていることが知られております。本研究室では、氷衛星におけるメタンガスの挙動の鍵を握る氷地殻中のメタンハイドレートに着目し、現在模擬条件を作り出すための高圧セル装置を用いた室内実験に取り組んでおります。室内実験の結果から、将来の惑星・衛星探査に必要となるメタンガスがプリュームとして放出されるまでの履歴を読み解くための基本的なデータを出すことを目指しております。

[谷さんとの出会い]

私が谷先生と初めてお会いしたのは、大学院博士課程の時、都内の大学にて開催されたガスハイドレート関連の研究集会に参加した時でした。私は、修士課程ではラマン分光法を用いたゲル中の水分子の挙動解析、博士課程では安定同位体を用いた北極のメタンガスの起源解析をテーマとした研究にそれぞれ取り組んできました。上記の研究集会で谷さんのラマン分光法を用いたガスハイドレートの構造解析や、ゲスト分子(ハイドレートに包摂されるメタン などのガス分子)の生成過程についての研究発表を聴き、「これは今まで私が取り組んできた研究内容を総括的に発展させられそうな内容だ」との切り口で興味をそそられ、質疑応答の際に真っ先に質問させていただいたことは今も鮮明に覚えております。それから数年経ち、博士号を取得してから間もない頃、氷衛星のメタンガスの起源推定に応用するテーマの研究を提案し、就職活動をかねて関連する研究室を回ってそのアイデアを売り込んでいきました。すると、「もし氷やガスハイドレートによる影響も考察したいのであれば、ちょうど神戸大学の谷さんのところでポスドクを募集しているので、公募の書類を出してみませんか?」と声がかかり、「これはまたとないチャンスだ」との思いで、公募にトライ致しました。数日後、谷さんから電話で直接採用のお知らせをいただき、「これで以前から望んでいた谷さんとの共同研究に取り組める」との嬉しさを噛み締めたものでした。これより今に至るまで谷さんとともに、上記の項目に記した研究テーマに従事させていただいております。

[谷研の受け入れ体制]

・学部:発達科学部

・大学院:人間発達環境学研究科