基盤研究(B)(2019-2024)

「社会心理学の基盤を裾野から確認する:メタ分析と追試による再現性検証」

社会心理学の教科書に載るような知見の頑健性が疑われると同時に、その背景に「問題のある研究慣習」のあることが指摘されている。科学としての社会心理学の進展のために、それを支える「確実な知見」を確認する作業が必要である。本研究は、国内学会大会発表において蓄積されて来た情報のメタ分析を行う。更に必要性が認められたテーマについて追試を実施し、全てのデータを国内外に公開する。日本という独自の文化的背景を持つ母集団についての、公刊バイアスの影響の小さい、日本語圏外に閉じられてきた情報を、整理・分析・追試・公開することで、社会心理学の基盤の確認と再構築に向けた国際的な動きに、独自性のある貢献を果たす。 [KAKEN]

研究代表者:平石界(慶應義塾大学)

研究分担者:三浦麻子(大阪大学)・樋口匡貴(上智大学)・藤島喜嗣(昭和女子大学)

研究協力者:中村大輝(広島大学教育学研究科→同 AI・データイノベーション教育研究センター)・須山巨基(慶應義塾大学→安田女子大学)

2022.3.31

平石界・中村大輝「心理学における再現性危機の10年―危機は克服されたのか,克服され得るのか―」が『科学哲学』誌の依頼論文として刊行されました.

2020.9.9

日本心理学会第84回大会・日本心理学会企画シンポジウム「若手が聞きたい再現可能性問題の現状とこれから」で平石と中村が話題提供をしました.内容はこちらの動画をご覧ください.

2020.9.9

本科研費で実施する研究プロジェクトの事前登録(Stage 1)を行いました.

Pre-registration of a systematic review protocol for meta-analyses of conference papers presented at Japanese Psychological Association and Japanese Society for Social Psychology in 2013 and 2018 (stage 1)

2020.3.13

研究ミーティングを実施しました(参加者:平石界・藤島喜嗣・樋口匡貴・三浦麻子・中村大輝・須山巨基).

2019.12.25

研究ミーティングを実施しました(参加者:平石界・藤島喜嗣・中村大輝・須山巨基).

2019.11.10

日本社会心理学会第60回大会(立正大学品川キャンパス)にて,自主企画ワークショップ「社会⼼理学における実験結果の再現可能性(2)︓5 年間の実践の歩み」を開催しました.たくさんのご参加および討論をありがとうございました.全員の話題提供資料を結合したPDFをダウンロードしていただけます.なお,当日会場のみの報告とさせていただく部分が数カ所ございます.ご寛恕ください.

社会⼼理学における実験結果の再現可能性(2)︓5 年間の実践の歩み

企画者・話題提供者︓ 平⽯ 界 (慶應義塾大学)・ 三浦 麻子(大阪大学)・ 樋口 匡貴(上智大学)・ 藤島 喜嗣(昭和⼥子大学)

概要

日本心理学会第79 回大会(2014 年度)において「社会心理学における実験結果の再現可能性」と題する自主企画ワークショップを開催してから5 年が経過した。この間、主要雑誌に掲載された100 研究の組織的追試における低い再現率(< .5)が報告され(OSC, 2015 )、並行して低い再現率の「犯人探し」が行われ、様々な「問題のある研究慣習」が指摘され(藤島・樋口, 2016, 心理学評論)、「治療」のための研究計画の事前登録制度、直接的追試の実施が提案されてきた(池田・平石, 2016, 心理学評論)。その結果、自我消耗、顔面フィードバック仮説、特性プライミング、目の画像による向社会性の向上など、専門書や教科書はもちろん、一般メディアでも紹介され、消費されてきた効果の頑健性に疑問を投げかけるメタ分析や追試が続々と報告されるに至った。一方で、それら否定的な報告へ反論するメタ分析や追試も行われるなど、活発な議論が行われている。本ワークショップでは、こうした5 年間の動きを踏まえつつ、知見の再現可能性(replicability)を確認、向上させる事前登録制度(pre-registration)と直接的追試(direct replication)を実施する上での問題点とそれへの対応、そして今後の展開について、参加者と議論し、できれば共同研究のきっかけとしたい。議論の呼び水として以下の話題を提供する予定である。

  1. ワークショップ企画メンバーによる科研費プロジェクトで計画中のメタ分析ならびに追試研究について紹介する(平石)。

  2. 複数ラボ共同による直接的追試。追試において十分な検定力を確保するために求められるサンプルサイズは非常に大きなものとなりがちである。この問題に複数ラボ での共同実験によって対応したプロジェクトを紹介する(藤島)。

  3. 追試研究と心理学教育のコラボレーション。追試研究を学部教育プログラムに組み込むことで、教育と研究との相乗効果を目指す試みについて報告する(樋口)。

  4. 事前審査つき追試の審査・刊行プロセス。データ取得前の研究計画を審査することで公刊バイアスを避ける事前審査制度の実際と問題点について、エディターとして関わっている立場から報告する(三浦)。