Replicability in Psychological Science (心理学の再現可能性)

近年大きな問題となっている,心理学における実験結果の再現可能性について様々なアプローチで具体的な取り組みを行っています.ここではその成果を報告します.

科研費

日本学術振興会科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)に「社会心理学研究の再現可能性検証のための日本拠点構築」が採択されました.2015年度から3年間の予定でしたが,2018年度までの繰り越しをお認めいただき,現在も研究を推進中です.

科研費の補助を得て実施したプロジェクトは,こちらから一覧できます.

代表的なプロジェクトは,以下の2件です.

『心理学評論』特集号

2016年7月28日に『心理学評論』第59巻1号が「心理学の再現可能性:我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」と題した特集号として刊行されました.三浦が担当編集委員を務め,原著論文9本,コメント論文7本から構成されますが,上記科研費研究のメンバーからは池田・平石および藤島・樋口の原著論文,佐倉と平井のコメント論文が掲載されています.すべての論文はオープンアクセスで,J-STAGEおよび特集号特設サイトからダウンロード・閲覧が可能です.

Web連載記事

ちとせプレス「サイナビ!」にて「心理学研究は信頼できるか?―再現可能性をめぐって」と題する連載記事が4回にわたって掲載されました.

  • 第1回 何が問題となっているのか、またそれに対してどのような対応が進められているのか
  • 第2回 「未来予知」に関するBem論文について
  • 第3回 心理学の研究方法に関する問題点や「問題のある研究実践」(QRPs)の詳細、それに対する対応や検討
  • 第4回 メディア等でも話題となったScience誌に掲載された再現性に関する論文、さらに科研費プロジェクトの詳細

同社サイトにてPDF版ブックレットをご購入いただくこともできます.

以下は,科研費受給以前に三浦が関わった,本テーマに関連する仕事の一覧です.特に2013年の読書会が,科研費研究プロジェクトのメンバーが集うことになる重要なきっかけとなりました.

再現可能性検証実験

2014年10月~12月に,関西学院大学文学部社会心理学研究室の学部3年生による「研究実習」科目の一環として,村山綾さん(日本学術振興会特別研究員RPD・関西学院大学)の主導により次の再現可能性検証実験を行い,PsychFileDrawerでその成果を公開しました.対象とした論文はMcCabe, & Castel(2008)の実験1~実験3です.今回は,すべてについて結果を再現することができませんでした.

  1. Murayama, A., & Miura, A. (2015). Failure to replicate McCabe & Castel (2008), Exp1. (2015, January 04).
  2. Murayama, A., & Miura, A. (2015). Failure to replicate McCabe & Castel (2008), Exp2. (2015, January 04).
  3. Murayama, A., & Miura, A. (2015). Failure to replicate McCabe & Castel (2008), Exp3. (2015, January 04).

「心理学ワールド」寄稿

日本心理学会の機関誌「心理学ワールド」第68号の特集「その心理学信じていいですか?」(担当編集委員・樋口さん)に,「心理学研究の「常識」が変わる?-心理学界における再現可能性問題への取り組み」を寄稿しました.また平石さんも「心理学な心理学研究――Questionable Research Practice」を寄稿しています.日本心理学会の会員には2015年1月に無料で送付され,また2015年4月以降はどなたでもリンク先でPDFをご覧いただけます.

自主企画シンポジウム開催

日本心理学会第78回大会で下記の自主企画シンポジウムを開催しました.

社会心理学における実験結果の再現可能性(Replicability in social psychology research)

SS-043

2014年9月11日(木)(大会2日目) 09:20 - 11:20 RY303

企画者:三浦麻子(代表者;関西学院大学),樋口匡貴(上智大学),藤島喜嗣(昭和女子大学)

指定討論者:結城雅樹(北海道大学)・平石界(安田女子大学)

司会者:平井啓(大阪大学)

●企画趣旨

本シンポジウムの目的は,心理学の科学性を保証する試みの1つとしての実験結果の再現可能性検証について,その意義と問題点について議論することである.欧米においては,データ捏造問題に端を発した再現可能性を検証するための追試の試みが盛んで,情報共有も進みつつある.日本でも同様の試みが求められることは言うまでもないが,国内研究の追試はともかく,海外研究の直接的追試は厳密には不可能であり,また概念的追試であったとしても.異なる文化圏で行われた追試の結果をどう解釈すべきか,という比較文化的問題もあるため,やや問題は複雑になる.こうした状況をふまえ,企画者たちが現在着手している,社会心理学の過去の重要な研究知見に関する実験結果の再現可能性を検証する試みと,それを共有・蓄積するために構築したオンラインプラットフォームの構想を紹介し,今後あるべき方向を模索する.

●話題提供(1) 三浦麻子

社会心理学における実験結果の再現可能性について,何が議論の中心的テーマとなっているのか,世界的にはどのような試みが行われているのか,われわれに何が求められているのかなど,問題の概略を紹介する.

●話題提供(2) 樋口匡貴

現在実施している追試プロジェクトについて紹介する.将来的にはこうしたプロジェクトを集約するプラットフォームを作り,(1)追試研究を実施する研究者ネットワークの形成,(2)標準化された刺激,手続き,データセット,および分析手順の供給,(3)メタ分析も視野に入れた研究結果データベースの運用,をオンライン上で実現することを目指すものである.

●話題提供(3) 藤島喜嗣

現在実施している再現可能性検証のための追試について具体的内容を紹介する.実施準備のための材料収集や実施の場としての実験実習・卒業研究の活用など,信頼性・妥当性の高いデータを効率よく収集する工夫についても紹介する.

読書会開催

2013年2月23日に,関西学院大学大阪梅田キャンパスでPerspectives on Psychological Science誌の再現可能性特集号の読書会を開催しました.当日の8時間にわたる報告のサマリとレジュメについて,どなたでもご覧いただけるようにしてあります.ご参加くださった研究者の皆様には,充実した一日を共にしてくださったことに心より御礼申し上げます.どうもありがとうございました!!