前回の芸術祭期間も合わせると、「良い演奏ってなんだろう?」という問いに、約2年間取り組んだことになります。
昔から考えることが好きな子どもでした。好きというより、他の人は気にもとめていないような、そもそもの前提になっているようなことがわからず(例えば、人はなんで生きるのだろう?とか)、表面上は普通の人と同じような生活を送りながらも、表面下では常に問い(疑問?)と生きているような人生でした。あまり聞いたことがないので他の人のことはわかりませんが、ちゃんと朝起きて、ご飯を食べて夜寝る生活を送っている人達がクリアしている何かしらが自分には欠けていて、考えることによってそのマイナスが埋まり、やっと普通の人と同じラインに立てる(疑問に思わず生活できるようになる)ということを昔から繰り返してきたように思います。
「生きること」に対する疑問は大体クリアし、仕事をしだしてからは音楽について考えることが多くなりました。「音楽とは何か?」から始まり、第一回芸術祭の「ピアノを弾くってどういうこと?」、それから今回の「良い演奏ってなんだろう?」に至ります。こういう答えの出ないようなそもそも論を大真面目に考えたり、それを話したり出来るこの芸術祭は、私にとってなかなか有難い場所でした。この2年間、考えながら舞台を踏みつつ思ったことは、良い演奏かどうかを決めるのは結局聞き手だなぁということ、また良いとか悪いとか言うためには、その前に作品自体の形がちゃんと伝わらなければ話ができない、ということです。なので演奏者である私がまずすべきことは、作品を理解してできる限り忠実に伝えること、あと少しプラスで、その作品の魅力を語ることかなぁと思っています。今までレクチャーコンサートなどでやってきたことと内容は全く変わらないのですが、なんでそうするのかの土台の部分が埋まったような、一周回ってちょっとしっかりした気分です。
そんなことで、出展内容は毎度お馴染みの作品の演奏と解説です。今回はシューマンの「子供の情景」を演奏したいと思います。新くん(4歳)や葉ちゃん(5ヶ月)のいるまるネコ堂で、何を弾こうと思った時に出てきたのが子供の情景でした。私にとっても、昔から好きで、とても思い入れのある作品になります。13曲からなる組曲で、一番有名なのは第7曲にあたる「トロイメライ(夢)」です。
シューマンが、当時恋人だったクララを見て、子供のような仕草をする(恋人とは得てしてそういうものだと思いますが)ことから着想をえて、13の場面を音に乗せています。子供のいる13の情景を、楽しく、または懐かしく、聴いていただけたら幸いです。
【日時】2023年4月23日(日)13:30〜 45分程度
2023年4月30日(日)11:00〜 45分程度
【場所】まるネコ堂別館 1F
【曲目】子供の情景(シューマン)他
※両日とも同じプログラムになります。
【参加費】投げ銭
※申込は不要です。お気軽にお立ち寄りください。
記録動画のご視聴を希望する方はyamamotoasuka38@gmail.comまでご連絡ください。
A型。魚座。SAKURAGAWA PIANO ROOM 主宰。約三十年、習う立場、教える立場、演奏する立場と、色々な角度からピアノに関わってきて思うことをコラムに掲載しています。