私は某都内の職場で、週5で働く派遣社員。
社員さんのつくった書類の日本語チェックをしたり、書類を印刷したり、事務仕事だ。
この職場に勤めて、2年半とちょっと。
私はいつからか、毎朝、出勤場所に声をかけるようになった。
空、街路樹、ごみ袋たちに「おはようございまーす!」と、心の中で言う。
いつの間にか、毎朝の習慣になってしまった場所への声かけには、下心もある。
私の仕事をフォローしてもらいたい。間がよく人にものを頼めるとか、エレベーターがすぐ来るとか、パソコンの調子がいいとか、そんなことを。
声かけの他には、落ちてるごみを拾ったり、コピー機の体を拭かせてもらったり、
トイレマークが欠けてたら接着剤で補修したり・・・
お世話になってる場所だからってのもあるが、これは、私なりの味方を増やす作戦なのだ。
さて、地道にそういうことをしている甲斐があって(?)、何かが起きている。
不思議と呼ぶには物足らない、別に人に言うほどのことでもない、ほんの何か。
私何やってるんだろう、何が起きてるんだろう。
芸術祭に出るのを機に、この記録をつけてみようと思った。
毎朝、どこになんて声かけしたかとか、声かけした結果何が起きたと思うかとか、
そういうことをExcelで記録した。
芸術祭が始まった去年の秋ころは
声かけしたからには、どんな不思議なことが起こるんだろとか、
不思議な能力を強化して、人の役に立てないかとか・・・
そういうことを考えて「不思議記録ノート」をつけていたが、
今年に入り、不思議への期待や探求熱は少し落ちつき、声かけの記録に特化するようになった。
空や木、ごみ袋たちに声をかけて、何か不思議なことが起きたらおもしろいけど、
起きなくてもきっと、私はそこに淡々と声をかける。
だから不思議のことより、声かけ記録を中心とした作品にしたいと思った。
声かけの記録と、不思議記録ノート、声かけしてきたものたちの紹介。
それら3点を作品とする。
佐川友美。1989年福島県生まれ。現在、東京に暮らす。
何でもない毎日の中で、小さな実験を繰り返すのが喜びのひとつ。
ときどき大きな冒険もいい。