考え事はいつもしていて、僕のあらゆることのベースになっている感じがします。しかし、作品制作となると、この「ベース」が「ツール」や「手段」になぜか変化してしまいます。それに対して、ずっとなにかもっと、違うやり方というか、そもそもの、そうではない捉え方があるのではないかと思います。
そこで、今回は、この「考え事」を手段やツールとするのではなくて、「ベース」として、あるいはもう少し違うやり方で「考え事そのもの」として作品展開できたらいいなと思っています。どうすればいいのかは2022年11月7日現在、全くつかまえられていません。
「考え事に道具はいらない」と思っていました。だけど別に道具があってもいいのかもしれない。そう思ってノートを使い始めました。子供の頃からノートをうまくとれなくて劣等感がありました。今もうまく使えていませんが、それでもやってみると発見があります。ノートは、記録しておくものというだけではなく、この上で考え事を展開する「工作台」のように思えてきました。
もう少し発展させればノートを考え事の「作業場」ぐらいにまでアップグレードできるかもしれません。そう思うと、また、考え事が面白くなってきました。ノートというベースで考え事を展開していくうちに、何かの作品が生まれればいいなと思っています。【2022年11月7日】
考えているだけでは何もできない、のか。作れさえすれば考えはいらない、のか。「考えること」と「つくること」は僕の中で長い間、鋭く対立しています。同時に、お互いを補完する仲の良さも在ります。
制作を企図した当初、「考え事」という、どうしても実作業に対して劣位に起きがちだったものを持ち上げることを目的にしていました。ノートの上で考え事をしてみるという試みを進めていくうちに、「考えること」と「つくること」のそれぞれに対して少しずつ違った感触を得ていきました。ノートを開いて考えながら何かを書くという行為は、「つくること」そのものの領域にも必然的に重なっています。
そうして「考える」と「つくる」、この両者を改めて捉え直してみたいと思うようになりました。作ることも考えることも好きだから、優劣や先後としてではない、共存的で同時的な営みになりえないだろうか。
具体的な制作内容は、ノートに何かを書きながら考えていく様子を、写真におさめていき、そのデジタル写真群を作品とし、液晶モニター上でスライドショー展示します。【2023年2月27日】
USBメモリ内の写真データを液晶モニターの内蔵機能を使ってスライドショー表示。
全日程滞在します。作品に関係すること、関係しないことなど、気にかかったことがあれば気軽に話しかけてください。
言葉の場所「まるネコ堂」代表。宇治市出身。企画編集会社、NPO出版部門で勤務ののち独立。生きている時間の大半を考え事に費やしつつ、自分の文章を書きたい人のための編集面談、寄ってたかって本を読む「まるネコ堂ゼミ」など、読む書くことにまつわる仕事をしています。まるネコ堂芸術祭実行委員。