研究内容

in vitro 核モデルの構築

染色体は、長鎖DNAとヒストンタンパク質からなる、高次構造体であり、構造を介して転写量の制御や生存に必要な遺伝子を核内に収納する機能を持っています。染色体は巨大なひものような性質を持っており、細胞外に取り出すと、染色体同士が絡まりあい、せん断や凝集してしまいます。

我々は、リポソーム区画内に染色体を封入することで、細胞外環境で染色体を操作する技術の確立に取り組んでいます。その方法として、出芽酵母の細胞壁を取り除いた出芽酵母プロトプラストとリポソームを融合し、染色体をリポソーム内に封入したin vitro核モデルを確立しました。本手法は、出芽酵母だけでなく、マウスの微小核を用いても同様に、染色体をリポソーム内に封入することが可能です。

また、核膜のような区画がなく、リポソーム全体に染色体が偏在しているようなin vitro核モデルも見出しており、これらを用いて、染色体からの転写や染色体制御が可能かについて研究を進めています。

人工染色体とリポソーム内での染色体機能の再構成

準備中

リポソーム型転写検出系の開発

RNA 切断酵素 Cas13 を利用し、特定のRNA が転写されたときに、蛍光の検出が可能になるリポソーム型 RNA センサーを開発しています。リポソームのような微小区画は、生化学反応の効率化と細胞のように特定の蛍光を持つリポソームを分取して回収することが可能なため、非常に微量な RNA の有無の識別や、配列解析などの下流の分析を可能にすると考えています。この技術は、ウイルス感染の有無や、疾患のバイオマーカーを血液から非常に高精度に検出するなど様々な応用へと発展できます。

我々は、リポソーム内の人工染色体からの RNA 転写をゼロ-イチの精度で検出したいと考え技術開発に取り組んでいます。

凍結融解によるリポソーム型人工細胞の長期植え継ぎ

リポソーム同士を接着させ、凍結融解によって膜を破壊することで、内液の混合を伴うリポソーム融合を起こすことができます。しかし、同時に、リポソーム区画の半分が壊れたままになってしまい再構成されず、またリポソーム内に封入した内液も平均して50% 程度流出することが分かっています。また、リポソームを融合してもサイズの中央値が変わらないことを過去に見出しています。現在は、脂質膜やリポソームの内液・外液の組成を変えることで、融合時のリポソーム破裂や内液の流出を抑えることを目指して研究を進めています。これまでに、外液の糖を変えることで、融合後にリポソームのサイズが大きくなることや、POPG という負電荷脂質が、凍結融解時のリポソーム破裂や内液の流出を抑えるという結果を得ています。これらの成果をもとに、リポソーム間融合率を向上させ、栄養を繰り返し安定的に供給し、細胞のようにリポソームを「植え継ぐ」ことで、リポソーム型人工細胞は生物のように進化していくだろうか?を探っていきますこれまでの研究の解説はこちら

タンパク質の機能改変、進化工学

リポソーム内生化学反応を利用して、タンパク質の機能改変や機能の向上、それを利用した生命現象の解明を目指した研究を行っています。詳しい話は、直接聞いてください。