主人公:宮舞モカ
その他のメイン登場キャラクター:フリモメン、マキ、りりせ、少しだけしゅおちゃん
読み方の補足:|羅針盤《これ》→「羅針盤」のルビ(読み仮名)が「これ」 ※小説本文では読み仮名表記になっています
軽めのニルギリにスコーン。
今日もティータイム。
この店、スコーンがあるから好き。
あと、マキさんが出してくれるティーカップが毎回違うのも地味に嬉しい。今日は青い小花柄。なんか落ち着く。
「みゃーまいちゃん、来週の木曜日って来れる?」
紅茶出すついでにマキさんが聞いてきた。
え、なんの話?
「部活終わりの時間だけど……来れますよ!」
「最近、ティーインストラクターの人が来てくれることになってさ。うち、紅茶専門店だけど正直そんなにガチガチじゃないから……ちゃんとした人来てくれるのありがたくて。みゃーまいちゃん紅茶好きだよね? 興味あるかなって」
「えっ、行きます! 来週だよね? オッケーです!」
二つ返事したらマキさん、にこにこ笑ってた。
「え〜嬉しい〜。大々的にイベントってのも違うかなって思ってたけど、誰も来ないのも寂しいし……いつも来てくれる時間くらいに始まるように、講師の人にも言っとくね!」
「ぜひ! お願いしますっ」
楽しみ増えた……!
翌週の木曜日。
ちょっとドキドキしながら扉を開けたら、マキさんと……ティーカップ棚の前で背の高いおじさんが立ってた。
振り向いた瞬間、燕尾服の裾がふわっと翻って。
「みゃーまいちゃん! 待ってた〜! フリモさん、この子がみゃーまいちゃんだよ! 紅茶めっちゃ好きなのっ」とマキさん。
おじさんが近づいてくる。
……え、燕尾服でうろうろできる人って相当な人なんじゃ……?
「やあ。フリモメンだよ。マキさんからみゃーまいちゃんの話、いっぱい聞いちゃった。まあ、教わるとかじゃなくて、美味しい紅茶一緒に飲もうって感じでいいからね」
「今日は気合い入れてケーキも焼いたよ〜」マキさん、張り切ってる。
……どこまで期待していいんだろ。
でもなんか、楽しみかも。
私からはヘッドホンのコードが伸びているはず。
ノートパソコン。デッキ1にはラップ用トラックをロード完了。デッキ2にはスクラッチ用トラックをロード完了。コントローラー。クロスフェーダーは中央。縦フェーダー最大、フィルター12時。マスターボリューム12時。音出しの時から固定。
りりせちゃんの周りが明るく、ちょっと熱くなると、
「次は、地元の高校生有志グループの、歌と音楽です!それではどうぞ!」
勝手に始めていいってことかな。
左側がデッキ1であることを確認すると、コントローラーのチカチカしてるボタンを押す。もっとも、仕事はこれくらいなのだが。
ゆっくりしてるのにけだるいビート。明るくはない。
|羅針盤《これ》なんぞ磁石に媚を売るだけの針
こいつ自体狂ってたらなんも意味ねぇぜ
星読めるならこんなガイド海沈める
決められた航路なんざあってねぇような退路
右肩を突き出し、右袖を指差し、りりせちゃんが見せて回ってる。羅針盤の刺繍があそこにある。
その度にデッキ2のジョグを擦ってみる。ズグズグすると喧嘩売っててかっこいいから。
海に捨てたまま船出す 周りは焦ってる
俺自身がただ微塵も信じてない
予定調和の拍手は不要 方位磁針狂わす|ライカ《Like a》ネオジムの磁石
最後まで残ってた手拍子が消えちゃった。
強力な磁力になりたい。フィルターを振り切ってからいやらしく戻してみる。惹かれるべき。
私は、りりせちゃんが喧嘩を売るたびジョグで煽って、りりせちゃんが喧嘩を買うたびフィルターで野次馬を呼び続けた。
ラジオをつけりゃ妨害電波 嵐の中のレーダーは大概全破
電子機器は全部お荷物のゴミかい 頼り切ったプレーヤーはみんな沈み溺れ水死体
六分儀しか信じねぇが 星すら出ない夜間
最後に俺を導くのは 磨き上げたカン
音源はおしまい。マイクを下げて立ってるりりせちゃん。
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おまけのおまけ:おじさんのキラーチューン