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研究紹介

関心領域は「感情」

「細長くて,とぐろを巻いてて,シャーと鳴く。これは私の知識に照らして考えるとどうやらヘビだ。ということは毒を持っているのではないだろうか。ということは噛みつかれたら危険だ。噛みつかれるほど近い距離にいるだろうか。いるな。よし,距離を取ろう」

なんて考えるよりも,

「ヘビだ!怖い!逃げろ!」

と考えた人の方が早く逃げられます。

このように,熟慮とは別の形で人の行動を導いてくれるシステムが感情です。
感情の中でも助け合いを支える感情の一つである,感謝をテーマとした研究にこれまで取り組んできました。

これまでの研究

感謝も感情ならば,「今,感謝を感じるべきだろうか」だなんて深く考えずに生じているのかもしれません。
もしそうならば,本質とは無関係な些細な原因で感謝の気持ちが揺らいでしまうこともあるかもしれません。
たとえば誕生日プレゼントを貰った時に,

あの人はもっと良いプレゼントを貰ってるのになぁ (比較対象)」
もっと良いプレゼントを貰えると思っていたんだけどなぁ (事前予測)」

と,つい考えてしまうことにより,感謝が生じにくくなってしまうこともあるかもしれません。素朴にはありそうな気がします。
人類にとって大切な,助け合いを支える感情であるはずの感謝が,このような揺らぎ方をしてしまっても良いのでしょうか。

こういった感謝の揺らぎが生じるのかを,厳密な方法で検討してきました。

具体的には,
・比較対象の有無以外は全く同じという実験条件同士で感謝の強さを比較したり
・実験条件をランダムにすることで厳密な因果関係を調べたり (無作為割り付け)
・実験参加者一人ひとりがどの実験条件に割り当てられているのかを実験者にも分からない状態で実験を行ったり (盲検)
・後から都合の良い分析や報告ができないように予め手法を公開登録したり (事前登録) 

といった方法を実践してきました。

その結果,比較対象があったり,事前予測が違っているだけでは,感謝の強さはさほど揺るがないという実験結果が集まってきました。感謝という感情は,些細な文脈情報に左右されずに人と人の助け合いを支えるのかもしれません。

関連する研究

感謝研究についての取材記事(2023年11月)

JPR誌掲載の筆頭論文や感謝の研究について,メディアエンジンさんから取材を受け,記事「Wellulu」にて紹介していただきました。当該の筆頭論文の内容紹介に加え,感謝を研究することの意味,感謝の定義や機能,現在の研究関心である感謝の“副作用”の話も紹介してくださいました。図解付き,先行研究の言及箇所では原典doiのリンク付きです。

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