ステートメント
私の写真のテーマは、気配と不在です。
眼には見えない気配、それは窓やカーテン、古い壁やドアノブ、ベット及びシーツの皺、
夕刻の街やその刻限に見る彼や彼女の横顔、佇まい、
それらの表層を覆う或る膜のようなものが「気配」なのだと思います。
しかし、気配は見えてしまうとすでに「気配」ではないので、私はおそらくそれらから喚起させられる或る記憶、
既視感を伴って「在った」という存在学的な証明をしたいのだと思います。
そこにはひかりがとても重要です。
ひかりには眼には見えない誰かの記憶や感情、歴史の集積のようなくすみと濁りが
皮膜のように世界を包み込んでるようにも見えます。
そして、それらはここに「在る」、しかしすでにここに「無い」というひかりの一瞬にこそ、存在の確かさを感じます。
写真を撮る、ということはその一瞬に触れることです。
私は「気配」というとても曖昧で不確かなことにとても惹かれます。
そして、その不確かさのなかに美のはかなさがあるのだと確信しています。
2011.02.19 AKIRA ENDO