現在,軌道間の大規模輸送のために大電力電気推進機の研究が進められています.アークジェット推進機は,プラズマのもつ電気抵抗による発熱(ジュール熱)を用いて推進剤を加速し推力を得る方式で,比推力が化学推進機より高く,電気推進の中では大推力が得られるという長所を有していることから,次世代の大規模輸送用の電気推進機としてのポテンシャルを有していると言えます.
従来はヒドラジンの分解ガスが推進剤として利用されていますがヒドラジンは有毒です.また,近年,有人宇宙開発が計画され,多くの天体で水が発見されています.そこで,水を推進剤とするアークジェットの研究を行っています.
水冷式のアークジェット推進機を製作し,その性能を評価しています.
設計推力:200 mN
推進剤:窒素など
ノズルの膨張比:50
アノード:銅.カソード:タングステン,絶縁体:セラミック
図のような直径1 m,長さ1.5 mの真空チャンバの中に振り子型の推力測定装置を設置して,性能評価を行っています.推力測定装置は,ソレノイドアクチュエータを搭載した垂直振り子型であり,レーザ変位計を用いて振り子の変位を測定しています.この振り子型では,角度変位θが小さい間は,外力(推力)とθが比例することを利用しています.
宇宙環境を模擬するためには,真空チャンバを 減圧する必要があります.そこで,ドライポンプ(メカニカルブースターポンプ,排気速度:10000 L/min)を用いて,真空容器を10 Pa程度(1万分の1気圧)まで減圧し,実験を行っています.
推進剤が窒素で約1 kWで作動しているときのアークジェットの様子です.