● 国家戦略
「生物多様性国家戦略2023~2030」は、生物多様性分野において新たに目指すべき目標として、生物多様性の損失を止め、反転させる「2030 年ネイチャーポジティブ」を掲げ、2030 年までに陸と海の 30%以上を健全な生態系として効果的に保全する「30by30 目標」を含め、自然資本を守り活用するための行動を全ての国民と実行していくための戦略と行動計 画を具体的に示した、として、2023年3月に閣議決定されました。この国家戦略の改訂にともない、各基礎自治体も政府と足並みをそろえ、地域戦略の改訂に取り組んでいます。
国家戦略の策定は、国連「生物多様性条約CBD」で義務付けられており、加盟する政府間で構成される非国連機関イプベス=IPBES ( Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services=生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム ) からの科学的根拠や評価の提供による各国共通の国家戦略の策定や改訂への提案により行われています。
明石市における地域戦略もこういった流れに沿って、現在改訂が進んでいます。また、2026年1月18日には、市として「ネイチャーポジティブ宣言」を発出しています。
3つの多様性
自然と人と社会を持続可能にする3つの多様性
● 生態系の多様性・・・・・様々な生態系から提供される生態系サービス ( 水・空気・食べ物 ) の持続性
● 種の多様性・・・・・・・様々な種 ( 植物・昆虫・魚・鳥など ) によって形成される生態系の持続性
● 遺伝子の多様性・・・・・様々な遺伝的特性を持つ種の持続性
松陰新田地域の多様性と重要種
松陰新田地域では、様々な環境タイプを内包する良好な生態系が形成されており、絶滅危惧Aランク5種や絶滅危惧Bランク6種、さらに要注意種のツミ、オオコノハズク、サンコウチョウ、オオルリを加えると15種類の希少・重要鳥類が生息しています。
松陰新田地域は、アカマツ二次林を主体に落葉樹や常緑樹が混在する樹林帯や耕作地、湧水地やため池、耕作地やため池に接続する草地など複雑で多様な環境が存在し、それぞれの環境に適応した植物が生育しており、絶滅危惧Aランクと絶滅危惧Bランクの種類はあわせて41種類になります。
松陰新田地域では、2種類の哺乳類が確認されています。近年、イノシシの生息の痕跡も確認されていて、タヌキやイタチ、ネズミ類やモグラなども、今後、確認される可能性があります。
松陰新田地域で確認された菌類
菌類は、樹林を形成するもっとも基本的な役割を担っています。落ち葉や枯れ木などの分解や菌根による樹木との共生、保水性を持つ土壌の形成や生態系の遷移促進など森林や樹林帯のインフラ整備のような機能により、樹林帯の健全性を確保しています。
アカヤマドリタケ
アワタケヤドリ
オニイグチ
カワラタケ
コウタケ
ザラエノハラタケ
スジオチバタケ
セイタカイグチ
センボンイチメガサ
ドクツルタケ
ドクベニタケ
ドクヤマドリ
トゲホコリタケ
ノウタケ
ハナガサイグチ
ヒメカバイロタケ
ヒメシロカイメンタケ
ヒラタケ
ペニイグチ
ホコリタケ
ボタンイボタケ
ムラサキシメジ
ムラサキフウセンタケ
ムレイチョウタケ
外 来 種
外来種の爆発的な拡散は、1800年代の産業革命からはじまりました。人々の移動手段と移動時間の短縮は、外来種の移動・拡散も加速させ、この200年の間に多くの国で生態系や生態系サービス ( 水・空気・食べ物 ) の危機を招いています。
明石市でも近年確認された「クビアカツヤカミキリ」は、果樹へ甚大な被害を与え、「ナガエツルノゲイトウ」は水田や水路を塞いでしまいます。
IPBESは、外来種について、外来種(alien species)、定着外来種(established alien species)、侵略的外来種(invasive alien species)の3カテゴリーにまとめており、「早期発見、根絶、封じ込めや防除が有効である。関係者や地域コ ミュニティの参加は生物学的侵入の管理に 役立つ」とし、「侵略的外来種とその悪影響は、 効果的な管理によって予防・軽減 できる 」としています。
このIPBESの外来種に関する概念を受けて、日本では、「生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与させる」ため、外来種の内、特定外来生物を指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。
明石の外来種
明石市内では以下の外来種が確認されています。(赤字=特定外来種)
<植 物>
アメリカネナシカズラ アメリカセンダイグサ アレチウリ エゾノギシギシ オオアレチノギク オオオナモミ オオカナダモ オオカナダモ オオサンショウモ オニウシノケグサ オランダガラシ オオキンケイギク カモガヤ キクイモ キシュウスズメノヒエ キショウブ コセンダイグサ コマツヨイグサ シナダレスズメガヤ スイレン セイタカアワダチソウ セイヨウタンポポ タテバチドメ トウネズミモチ ナガエツルノゲイトウ ハリエンジュ ヒメムカシヨモギ ヒメジョン ブタナ フサジュンサイ ヘラオオバコ ホテイアオイ ムラサキカタガミ メマツヨイグサ メリケンカルカヤ ムラサキカタガミ ヤナギバルイラソウ ワルナスビ
<哺乳類>
アライグマ ヌートリア
<爬虫類>
アカミミガメ
<鳥 類>
カワラバト コジュケイ ソウシチョウ ハッカチョウ
< 両生類>
ウシガエル
<魚 類>
オオクチバス カムルチー タイリクバラタナゴ タイワンドジョウ ブルーーギル
<昆 虫>
アオマツムシ アカカミアリ(ヒアリ) アメリカジガバチ アルファルファタコゾウムシ カンタン クビアカツヤカミキリ シバオサゾウムシ シロテンハナムグリ セイヨウミツバチ ヒロヘリアオイラガ ブタクサハムシ ミスジキイロテントウモンシロチョウ ヨコヅナサシガメ ラミーカミキリ
<甲殻類>
アメリカザリガニ サカマキガイ
特 定 外 来 種
特定外来種とは、海外由来の生物種で、日本の在来種や生態系、人の生命身体や農水産物へ被害をおよぼすもの、またはおよぼす恐れのある生物種を指定。その指定種の個体だけではなく、卵や種子、器官なども含まれます。
哺乳類 アライグマ ヌートリア
植 物 オオキンケイギク ナガエツルノゲイトウ
爬虫類 アカミミガメ
鳥 類 ソウシチョウ
両生類 ウシガエル
魚 類 オオクチバス ブルーギル
昆 虫 アカカミアリ(ヒアリ) クビアカツヤカミキリ
甲殻類 アメリカザリガニ
特定外来種指定 アカミミガメ
アカミミガメは、ニホンイシガメなど在来種の生息環境の攪乱やハス田への食害など、生態系や経済活動に大きな影響を与えています。アカミミガメは、ミドリガメという名前でペットとして輸入、販売、飼育されてきましたが、多くが野外へ放たれて放置されてきました。他市とくらべてため池が非常に多い明石市では、ほぼすべてのため池でアカミミガメの生息が確認されていて、特定外来種に指定される以前から防除対策が行われてきました。現在は輸入や販売は禁止されています。
【アカミミガメ防除対策】
明石市では、2014年から神戸市とともに「明石・神戸アカミミガメ対策協議会」を設立し、環境省の協力を得て、アカミミガメ対策を実施しています。
2024年度の捕獲実績は、1,057個体でしたが、その内、手捕りによる捕獲割合が全体の46%となっており、人的な努力による効果が高い事が伺われますが、罠による捕獲効率の向上への努力も続けられています。
【モニタリングの継続】
明石市では、捕獲方法や手順などを見直しながら、継続的にアカミミガメ防除を実施し、アカミミガメ防除がもたらす生態系の改善状況を評価するためのモニタリングによる検証を継続し、同時に継続防除の重要性や有効性について検証する、としています。
明石レッドリスト
明石市内では、これまでに2464種の生物種が確認されています。 これらの内、277種が明石レッドリストに選定されています。
( A・Bランクの色文字は特に松陰新田地域で確認された種類 )
海のレッドリスト
2017年に環境省と水産庁は海洋生物レッドリストを公表しています。これまで陸域のレッドリストは1991年の公表から継続して更新・改訂されてきましたが、30年近く経ってようやく海洋生物の評価を行い、レツドリストとして公表しています。近年、海洋生物への関心が高まっていて、海洋生物の評価が望まれていましたので大切な第一歩になったと考えられます。
しかし、この海洋生物レッドリストには問題もあります。2つの大きな問題が有り、ひとつは海洋生物のデータが不足している点、もうひとつは環境視点と経済視点の違いです。例えば、激減している明石沖のイカナゴについて、水産資源としてみる視点と海洋生物および生息環境保全としてみる視点とでは、その対応は大きく異なります。
海洋生物レッドリストの問題点
● 社会的関心が低い
里海の生物や環境は、私たちの理解が進んできた面はありますが、海洋という範囲になると、私たちの生活感からは距離があり、実感を得られにくい面があります。
● 指定が56種に留まっている
現在、陸上の3,634種の動植物がレッドリストへ選定されています。海洋生物の絶滅危惧対象種が56種というのは少なすぎますが、これは調査やデータ不足により、実態把握ができていないためです。
● 海棲哺乳類は評価の対象外
瀬戸内海や大阪湾でもスナメリなどの食物連鎖高位種である海棲哺乳類が評価の対象となっていません。
特に捕鯨に関する水産庁の認識は「鯨類を含め、持続的に利用可能な水産資源があり、その資源の 利用について一定の需要があり、それを対象として漁業を営む者がいる限 り、その資源の適切な管理とそれに関連する産業の健全な発展を図ってい く」としていて、経済的な視点が強くなっています。
● 縦割りレッドリスト
環境省と水産庁は、それぞれの海洋レッドリストを作成しています。生物多様性等の視点からの環境省リストと水産資源としての視点からまとめられた水産庁リストの2つのレッドリストがそれぞれに評価を行っています。特に水産庁は、これまでの水産資源管理のためのデータをもとに94種を評価対象としましたが、94種すべてが絶滅危惧等のカテゴリー外としています。
環境省海洋生物レッドリスト
水産庁海洋生物レッドリスト
昆虫リスト
明石市内で確認されている昆虫は、2019年の時点で928種類が確認されています。確認リストは2007年のリストをもとに2019年のレッドリスト選定時の追加を含め、458種類をリストアップしています。