松蔭新田
ため池
重要種オオヨシキリ
重要種サギソウ
松蔭新田地域の鳥類
松陰新田地域は、六甲・丹生山地の西から南へ細長くつづく樹林帯が明石市北部の平野部へ半島状に終わる場所に位置し、鳥類の移動や生息にとって特別な構造を成している事が容易に推測できる場所にあります。この地域は兵庫県の2020年レッドリストにおいて、湿地植物群落のCランクに位置づけられた「上池」を含み、周辺の里山環境でもあるアカマツ二次林や、神戸市のレッドリストで鳥類サンクチュアリエリアに指定される「大池」に隣接するなど、わずか0.28㎢と明石公園の半分程度の小規模なエリアであるにもかかわらず、明石市内全域で確認された258種類(外来4種含む)の鳥類の約40%にあたる103種類が生息しています。さらに明石レッドリストに掲載された48種類の重要鳥類種のうち、実に13種類が松陰新田地域で確認されています。
松陰新田地域では年間を通して42種類の鳥類が確認されています。その多くは森林性の鳥類です。松陰新田地域には、様々なタイプの樹林や耕作地、湧水湿地やため池や水路など多様な環境が点在しており、森林性鳥類は、二次林を含むこれらの多様な里山環境を利用しています。松蔭新田地域は、平野部の水田や耕作地、市街地や都市公園等と比較すると鳥類相に大きなちがいが認められます。
松陰新田地域に生息する鳥類には、繁殖や越冬、採餌、中継地利用等、さまざまな利用形態がありますが、これまでの調査から、夏期に松陰新田を利用する鳥類は、80%以上が通年観察される種類で、20%程度を繁殖のため夏期に飛来する夏鳥群が占めています。
これらの夏鳥は、キビタキやヤブサメ、サンコウチョウなどの樹林を利用する種類だけではなく、人工構造物を繁殖場所として利用するツバメや耕作地や河川を利用するヒクイナ、ため池の草地等を利用するオオヨシキリも含まれます。また、近隣のコロニーで繁殖するゴイサギやコサギ、チュウサギやチュウダイサギ等のサギ類も松陰新田地域のため池や樹林帯へ接続する耕作地で確認されています。
松陰新田地域を利用する鳥類については、季節別の利用種構成から、冬鳥が多い傾向が示されていますが、冬期の利用については、通年確認される種と越冬冬鳥群がほぼ同程度の割合をしめています。アオジやシロハラ、ルリビタキやジョウビタキなど冬鳥の幼鳥の移動通過も含まれます。これらの冬鳥は群れを形成する種類が多いため、夏期と比較して、より多くの個体が松陰新田地域で越冬しています。また、これらの小鳥類や小型哺乳類を捕食するノスリやハヤブサなどの猛禽類も冬鳥として、松陰新田地域を利用しています。
これまで松陰新田地域でも冬鳥として観察されることが多かったチョウゲンボウは、通年観察されるようになり、近年、市内で繁殖していることが確認されています。
松陰新田地域で確認される猛禽類
食物連鎖の高位に位置する猛禽類が松陰新田地域には多く生息しています。これら猛禽類の生息は、様々な環境が存在し、様々な生物が生息・生育する生態系の健全性を理解する指標ともなります。
ツミ
オオタカ(明石レッドA)
ノスリ
サシバ(明石レッドB)
ハヤブサ(明石レッドB)
チョウゲンボウ
ミサゴ(明石レッドA)
トビ
松陰新田地域で確認されるレッドリスト掲載種
松陰新田地域では、これまでに多くの重要種が確認されていますが、明石市の定めた重要種以外で、環境省や兵庫県が重要種に定めた鳥種も多く確認されています。
松陰新田地域では、重要な哺乳類2種、植物10種、鳥類12種が確認されています。
松陰新田地域で確認された鳥類
ダイサギ
チュウサギ(明石レッドB)
コサギ
ゴイサギ
カンムリカイツブリ
カイツブリ
カワウ
カワセミ(明石レッドA)
マガモ
コガモ
ヨシガモ
ハシビロガモ
オカヨシガモ
ミコアイサ
キンクロハジロ
ホシハジロ
バン
オオバン
ヒクイナ(明石レッドA)
イソシギ
アオアシシギ
タシギ
ヤマシギ
タマシギ(明石レッドA)
ケリ
タゲリ
コチドリ
キジバト
キジ
コジュケイ(外来種)
ホトトギス
スズメ
セグロセキレイ
ハクセキレイ
キセキレイ
サンショウクイ
ノビタキ
ヒバリ
イカル
シメ
ムクドリ
ハッカチョウ(外来種)
アトリ
ハシボソガラス
ハシブトガラス
アオジ
ウグイス
ソウシチョウ(外来種)
キビタキ
メジロ
メボソムシクイ
ヤマガラ
保全上の課題
松陰新田地域は、樹林帯を含め明石の里山の原風景を残しています。明石の自然にとって大切な場所ですが、開発の危機に晒されています。現在では明石市のなかで貴重な存在となっている松陰新田地域は、私たちだけのものではなく、将来の明石の人たちのものでもあります。開発が「悪」で、保全が「善」というものではなく、どちらにも同等にメリットとデメリットとがあります。どちらを選択するのかは、今、現在を生きている私たちの問題なのですが、判断するための情報が無いのが現状です。
ため池の鳥類
明石市には多くのため池があります。谷を堰き止めた谷池タイプや平地を掘った皿池タイプなど大小あわせて約100面のため池が点在しています。もともと人が造ったため池ですが、長い年月を経て、独特な生態系が形成されてきました。ため池とその周辺の草地では、水辺や草地を好む鳥類が繁殖しています。また、コウノトリが飛来するようになり、繁殖を期待して巣塔も設置されています。
ため池には、様々なタイプの環境があります。特にヨシ群落の生育する水辺環境は、多くの鳥類が採餌や休息、繁殖に利用しますが、冬季には安全な塒(ねぐら)としても利用されています。
ため池のカモ類
明石のため池には多くのカモ類が生息しています。特に冬季には、カモ類以外の水辺鳥類も含めると、2,000羽以上の水辺鳥類が越冬または生息しており、ほとんどのため池でカモ類を見ることができます。
毎年、10月下旬にカモ類の飛来がはじまり、11月の中下旬までに600%程度の急激な増加を示します。これらのカモ類は翌年の3月頃まで、ため池に留まりますが、個体数の多いカモは、ヒドリガモ、ホシハジロ、コガモの3種です。
ため池とその周辺で繁殖する鳥類 (2008年~2009年100池調査)
●カイツブリ
水面に造られた巣
巣立ち直後のヒナと成鳥
やや成長したヒナ
背中にヒナを乗せる
●バン
バン成鳥
地上でも採餌
成鳥と巣立ちビナ
生長したヒナ
●オオヨリキリ(明石レッドB)
ヨシ群落内で繁殖
オオヨシキリの巣
巣内の卵
●セッカ
ため池周辺の草地で繁殖
繁殖中の個体
セッカの巣
ため池で確認された鳥類
クサシギ
セイタカシギ
オオハシシギ
タシギ
アカガシラサギ
チュウダイサギ
アオサギ
オシドリ
コガモ
ホシハジロ
ヒドリガモ
オナガガモ
カルガモ
ミコアイサ
マガモ
ヨシガモ
ため池や湿地で確認された植物と昆虫
ため池では希少な水生植物が確認されています。また、ため池の中でも、谷池タイプには湿地性植物が生育する池があり、明石レッドに記載される希少な種類も確認されています。また、いくつかのため池では明石レッドAランクのハッチョウトンボやヒメタイコウチの生息が確認されています。
イシモチソウ(明石レッドB)
モウセンゴケ(明石レッドB)
トキソウ(明石レッドA)
ハッチョウトンボ(明石レッドA)
ネビキグサ(明石レッドA)
3種類のタヌキモ
オニバス(明石レッドA)
保全上の課題
ため池は主に農業用に掘割や水路とともに整備されてきました。しかし、近年、農業者や農地の減少により、ため池の利活用や埋め立ての議論が多くなっています。オープン空間としての利用価値や防災機能も持っていますが、今後、農地や農業者の減少とともに埋め立ての傾向は続くと考えられます。
ため池には、長い年月をかけて独特な生態系が形成されており、現在では希少な水生植物や昆虫が生育・生息しています。埋め立てによるこれら希少種への影響が懸念されますが、例えば、一時避難、或いは避難移植等ができる場所が必要ではないかと考えられます。
耕作地の鳥類
明石市の魚住から西島にかけては、豊かな農地が広がっています。水路や畔が縦横につながり、ため池や草地も点在しています。丈の高い草地や低い草地、裸地や農作物等、多様な環境が存在し、良好な生態系を形成しています。鳥類にとっても採餌や休息の場所として利用されており、特に猛禽類はこういった環境でハンティングを行っています。
耕作地で繁殖する鳥類
●ケリ
成鳥
耕作地内の巣
抱卵中の成鳥
巣立ちビナ
●コチドリ
成鳥
巣と卵
●ホオジロ
成鳥
巣内のヒナ
●ヒバリ
成鳥
巣内ヒナ
耕作地で確認された鳥類
キジ
アマサギ
キジバト
スズメ
ノビタキ
イカルチドリ
モズ
カワラヒワ
ツグミ
ビンズイ
タヒバリ
ジョウビタキ
保全上の課題
農地の確保や整備は、食料自給率にも直結する重要なものですが、農業者や農地は今後、減少する事が想定されています。耕作地や農地の生態系を持続可能なものとするには、農地のゾーニングや農地における機能性指標種の設定およびネイチャーポジティブ認証等による助成制度なども必要と考えられます。
海岸・河口の鳥類
明石海岸は、東西に約16km続き、内陸から6つの二級河川が流れ込んでいます。明石海岸は、1982年に始まった養浜事業から44年を経て、これまで見られなくなっていた希少な海浜植物が確認されるなど、海浜生態系が回復しつつあります。また、望海浜 (明石のたいせつにしたい場所akashi hot points地図を確認) は漂着物や廃棄物が散乱していましたが、清掃活動によって、現在では自然な砂浜へ戻り、重要な植物も確認されています。
明石海岸は養浜事業を経て、重要種が確認されるようになっています、また、海藻のアマモが生育する場所の創出も続いており、今後は砂浜や海域の生物のモニタリングも必要になっています。
明石海岸はアカウミガメの上陸や産卵が確認されています。
● 明石海岸のアカウミガメ産卵状況
海岸で繁殖する鳥類
● シロチドリ
成鳥
巣と卵
海岸・河口で確認された鳥類
ウミネコ
ウミアイサ
ミヤコドリ
セグロカモメ
チュウシャクシギ
クロサギ
ハマシギ
シロチドリ
クロツラヘラサギ(左)
イソヒヨドリ
キアシシギ
ユリカモメ
海岸で確認された植物
ハマユウ
ハマビシ(明石レッドA一時絶滅)
ハマボウフウ(明石レッドB)
ハマゴウ(明石レッドB)
ハマビシ生育地
小学生たちの手作り看板
保全上の課題
必要なモニタリング・・・明石市の海域に生息する鳥類については、十分な知見が得られていません。陸での調査や確認とは異なり、海域での調査が難しい事が大きな要因です。
明石では、海域の生物を水産資源として長年にわたり利用してきましたが、近年、これらの水産資源が減少しています。タコやタイ、イカナゴといった明石の海と市場を代表して来た生物の漁獲量が激減しており、対策として稚魚の放流や海底を耕したり、栄養塩を投下したり、「かいぼり」を実施したりしています。たとえば、「イカナゴのくぎ煮」として明石の名物でもあるイカナゴは、1970年代に4万トンの漁獲量のあったものが、現在は2千トン程度と95%も減少しています。
水産資源の減少に、鳥類が直接大きな影響を与えているとは考えられませんが、カワウは1日に500g程度の魚を捕食するとされていて、時に数百羽の群れが海域で餌を採っている光景を見かけます。また、ノリ養殖へのカモ類による食害も実態把握が出来ていません。
明石の海の生態系が劣化しているのは明らかですが、近海の生態系の全体像が把握されていないなか、持続可能な漁業の実現へ向けても、海洋生態系の把握のためのモニタリングが必要となっています。
明石のたいせつにしたい場所
明 石 産 鳥 類 目 録
明石市内では、2025年12月の時点で261種の鳥類が確認されています。目録内の赤字で示された種類は、外来種と国内移入種です。明石市には長い海岸線や多くのため池が点在しており、こういった環境を好むカモ類やサギ類、シギやチドリ、カモメのなかまなど水辺鳥類の多いのが特徴となっています。しかしながら、近年、ため池が埋め立てられるケースガ増えていて、ため池とその周辺環境への選好性の強いカイツブリやバン、オオヨシキリやセッカといった普通に確認される種類の減少が心配されています。また、明石駅前や市街地で多く見られたツバメは、特に駅前周辺での減少が激しく、アーケードの撤去以降は数ペアが本町商店街の南部アーケードで繁殖するのみとなっています。