歪んだ生命体とその感染者を殺傷し続けたが故に、死刑囚となった男
異能力はないが、並外れた身体能力を持ち合わせている
横暴で口も悪く、命の重さを全く理解しようともしない。
しかし彼なりの筋も通しており、相手にとって最善の行動を取っているそうだ。
最低最悪とも言える彼の第一印象も、最善の選択肢を選んだ結果なのかもしれない。
ぼんやりと記憶にあるのは、荒廃した世界———島国だったか———に、母と2人で定期的に教会へ訪れていたこと。そこには、生き残っている国民と、神秘的な雰囲気を纏う1人の少女がいた。
闇をも感じさせる深い黒色の服、白肌に青い眼が印象的であったのは今現在も覚えている。
その少女は、ノイアによく似ていて———否、本人であるらしい。
「久しぶり」と、全く変わらない容姿と声色から発せられて、咲牙は驚きを隠せずにいた。
しかし、ここで矛盾が発生する。なんせ、咲牙はその島国から遠く離れた今の大陸へと避難したのだから。同じ教会、同じ人物がいるなど到底考えられない。更に、最長でも15年間で移動、資材を無事に収集し建造、全く同じ景色を再現しなければならない。世界単位で生き残りが僅かとなっている状態で、ここまでの建築士を雇うことなど可能なのだろうか———?
咲牙は後に、彼女が人間ではないことを知る。
その後も、生き残りの戦士リウザとの出会い。咲牙が選ばれし者だと、絶望を消し去るために協力をしてほしいと、手を差し伸べたノイアの兄、フェルボスとの出会い。数々の出来事や衝撃的事実が目紛しく進行し、少しの時間を要したものの、咲牙は現在の異常事態を受け入れ、終わらせる事を決意した。
「ハハハッ!! 待たせたな〜! 覚悟ある奴から死にに来いよ!」
「んな頭回すことじゃねぇだろうよ。なに? 感染が怖いんだって? だったらお前をこの世から退場させりゃいい話だ」
「……は? つまりお前は神の子? え?? いやまぁ……こんなゾンビが溢れかえってんだし今更だけどさ……ええ…………」
「俺は神に狙われてると。兵器に仕立て上げられると。ま〜、死刑も逃れられるしこの地獄からも脱出できるし、悪かねぇけど……で、その神どこ」
「好きなこと……あー、なんかあった気がするけど思い出せねぇな……。でも綺麗なものは多分好き。ほらあれ、ステンドグラスとか」
「この中に着てんのは囚人服。で、この格好で出歩くわけにゃいかねぇから、上にジャケットとか羽織ってるってわけ。ちなみにゾンビが着てたやつw 感染したらよろしくな、一発で仕留めろよ?」
はからんさん宅、彼岸さん
彼岸さんに気に入られてしまい、咲牙はまたもや人外に振り回されている。
特に敵対感情は抱いていないが、少し不審がっている。誰だよお前…!と言う感じ。