※ 近親相姦、グロテスク強め ※
愛都に異常な執着を見せる猟奇殺人鬼
錆かけたカッターをお気に入りだと言い、肌身離さず持っている
依存体質で、気に入ったものには異常なほどの執着を見せる。
大人しく冷静にも見えるが、決して大人びていることはなく、嫌なものは徹底的に潰し、好きなものはどんな手を使ってでも自分のものにする精神は、どこか幼い子供のようだ。
最初は、本当の最初は、普通の、どこにでもある一般家庭の一人息子だった。
特別仲良しでもないが、目には見えない、どこか家族の温もりはそこにあったはずだった。
___しかし、それはただの思い込みだったのか、母が不倫をしていることが発覚してしまう。
それからというもの、母も家に顔を出すことは減り、父も豹変してしまった。廻は、そんな両親に苦しめられ、精神的にも、物理的にも攻撃を受ける毎日を何年も過ごすことになる。
父は欲望を満たすことにより精神を保っており、廻はそれの犠牲になっていた。
美しく、女性的に、また、父の好みに身体を改造される。具体的には、コルセットを常につけられ、白い肌を保つために日を浴びることは許されず、他にも多くの傷を追わされ続けていた。現在身につけている首輪は、当時父からつけられたものだ。
毎日のように父に乱暴に抱かれ、道具のように扱われ、家族であることなど忘れるほどに恐怖感を煽る言葉を吐かれ、心身ともに疲弊し、同時に本来の彼は消え、異常で最悪な自分がそこに存在してしまっていた。
勿論学校には行けず、廻はいつものように部屋に閉じ込められていた。
……しかし、父が家にいないことに気づき、彼は咄嗟に部屋を出て、そのまま家の外へと飛び出した。目を見開いて、学校で配られたカッターを手に持ち、本能のまま玄関の外まで走った。
久しく外に出ていない身体は弱く、日光に目が眩み、息もすぐに切れた。だが、不思議と止まる選択肢は当時の彼の頭にはなかった。
途切れ途切れの息を整えながら、グッと弱った体でカッターを握りしめる。
……見覚えのある顔が近くにあった。その顔は、いつかのクラスメイトだ、小学生ぐらいの頃の、まだ家族が正常であったあの頃のクラスメイトだ。化粧をして、容姿もオシャレになっていたが、彼には分かった。
ゆらり……ゆらり……と彼女に歩み寄る。勢いよく彼女の手首を掴み、恐怖さえ覚える笑顔で彼は言葉を放った。
「綺麗な肌だね。もっとよく見せてよ」
怯える顔など、彼には見えていなかった。遠慮など、そんなもの持ち合わせていなかった。
「ほら、綺麗だ。刃がよく食い込むね」
彼女の手首を、カッターでスーッとなぞった。鮮やかな紅が流れ、廻もより笑顔になった。 それと同時に、彼女の顔は痛みで歪んでいた。
__何故、あの時父はいなかったのだろうか? そんな疑問の答えはすぐに見つかってしまう。
父は不倫をしたのだ。母も、父も不倫をし、荒れた家庭はもはや消滅するに等しい状態となっていた。廻は、すでに不要だった。父の欲求を満たすことでさえ用済みで、廻は見放されていた。
廻は、言語化できない何かが込み上げる。怒り? 悲しみ? 殺意? 何かは分からない、分かろうとすら思わない。どうでもよかった。
廻は、再びカッターを握りしめた。自暴自棄のような、諦めというより、希望を抱いた状態で、父に凶器を振り翳した。
父だけでなく、不倫相手にも、等しく無惨に斬りつけ、原形を留めないほどにグチャグチャに切り裂いた。
「…………お腹、減ったな」
仕方なく、特に他の食べ物を探すこともなく、目の前にあった肉塊に手を伸ばし、その青年は腹を満たした。
「俺は一途だよ。愛都のために生きて、愛都のために殺す。邪魔で下衆で醜い、そんな奴は徹底的に排除しなきゃ。俺と愛都は幸せになるべきなんだよ」
「あはは!はは、ふふ……かわいいねぇ……嬉しいな、ずっとずっと待ってた。愛都を理解し切ってるのはやっぱり俺だけなんだ。そんな顔しないでよ、でもかわいいね」
「血って綺麗だよね。特に、ナイフで肌をなぞってできる赤い線が好き」
「俺はさ、殺したいってより、幸せになりたいんだ。なるべきでしょ?」
「愛都もピアス開ける?ちょっと刺すだけだよ。ふふ、かわいいね」