1~10 安倍総理 11~23 福田総理 24~ 麻生総理
①質問主意書 【第一回質問】
経済モデルによるシミュレーションに関する質問主意書
平成19年2月13日
提出者 滝 実
平成一九年度予算で新規国債発行額は約二五兆円とされている。これは歳出をできる限り抑えるとの方針のもとに予算編成された結果の数字に過ぎず、内閣総理大臣が施政方針に関する演説において「今こそ、日本経済を中長期的に新たな成長の舞台に引き上げていくことが重要」であると示された方向との関連が明確ではない。そこで以下の点について質問する。
一 経済財政諮問会議は一月一八日、新中期方針「日本経済の進路と戦略」を決定しているが、それを裏付ける経済モデルがあるはずだ。このような経済モデルを使ってシミュレーションを行って、新規国債発行額が予算に計上されている二五兆円の場合と五兆円増やして三〇兆円とした場合を比較してどちらが内閣総理大臣の施政方針演説に沿うのかを示すべきではないか。
二 今回の新中期方針の前身である「構造改革と経済財政の中期展望―二〇〇五年度改定」
(以下「改革と展望」という。)は経済モデルによるシミュレーションを公表している。それによると新規国債発行額を五兆円増やし、それを所得税減税または公共投資を増額するような景気刺激策をとれば、成長は加速され、デフレ脱却を助け、少なくとも最初の一~二年度には債務のGDP比を減らして財政再建に寄与させることができると結論付けている。問題は三年目以降で債務のGDP比が増える可能性があるということか。
三 このモデルで景気刺激策をとると三年目以降で債務のGDP比が増えて問題だというのは景気回復期に短期金利が上昇すると仮定しているからであり、もしも短期金利の上昇を抑える政策をとれば三年目以降も債務のGDP比は減ると考えられるので、こういった試算を行って公表すべきではないか。
四 このモデルでは、債務のGDP比を計算するときに短期国債や交付国債を除外している。このような国債まで含めれば、三年目以降も債務のGDP比は改善すると考えられるのではないか。少なくともOECDの年次報告で引用されている債務のGDP比と同じ定義にすべきではないか。
五 日銀が持っている国債に対する利払いは国庫納付金として国庫に還流する。これをこのモデルに入れてシミュレーションを行い、景気刺激策のマイナス評価を修正すべきではないか。
六 政府は、経済モデルに基づいたシミュレーションにより経済発展と財政再建の戦略を練るべきであり、かっての経済審議会計量委員会のような専門家による検討が必要ではないか。
七 日銀の政策に政府が干渉すべきではないという原則が尊重されなければならない。しかし、デフレ脱却には政府と日銀が協力することが不可欠である。昭和の大恐慌の際は高橋是清大蔵大臣と深井英五日銀総裁の協力により日本の立ち直りは世界で最も早かったと評価されているのに、今回のデフレからは今なお脱却しきれず、多くの国民が苦労している。このような事情をみれば、日本銀行法においても政府と日銀が協力するためのルールの明確化を急ぐべきではないか。
右質問する。
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②答弁書 【第一回答弁】
内閣衆質一六六第六二号
平成十九年二月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員滝実君提出
経済モデルによるシミュレーションに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出経済モデルによるシミュレーシヨンに関する質問に対する答弁書
一について
「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定) の参考試算(以下「今回参考試算」という。)は、具体的な政策の方針として示され、かつ試算に反映することが可能なものについて盛り込むという考えの下、作成されている。
具体的には、内閣府「経済財政モデル(第二次改定版)」を用い、新規国債発行額を前年度当初予算より四兆五千億円減額した平成十九年度政府予算案、「日本経済の進路と戦略」に沿った成長力強化のための政策及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)に沿った歳出改革を前提とした場合に期待される経済の姿を示しているところであり、これは安倍内閣の施政方針演説に沿うものであると考える。
二について
「構造改革と経済財政の中期展望十二〇〇五年度改定」(平成十八年一月二十日閣議決定) の参考試算の作成に当たって用いた「経済財政モデル(第二次版)」(平成十八年三月内閣府公表)においては、個人所得税につき国内総生産の一パーセント相当を継続的に増税する政策及び公共投資につき国内総生産の一パーセント相当を継続的に削減する政策についての乗数表を掲載している。
個人所得税を継続的に減税し、又は公共投資を継続的に増額するような景気刺激策を行った場合について、一定の仮定の下、これらの乗数表を用いて計算すると、御指摘のように、
公債等残高の国内総生産比率は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。
三について
「経済財政モデル(第二次版)」においては、公共投資や短期金利等の変動が経済財政に与える影響について、それぞれ個別に試算結果を公表しているところである。
四について
今回参考試算における公債等残高は普通国債残高、平成十九年二月六日に国会に提出された地方交付税法等の一部を改正する法律案において同年四月一日に一般会計に帰属させる旨が規定されている国負担分借入金を含む交付税及び譲与税配付金特別会計借入金残高及び地方債残高の合計であり、満期一年以下の短期国債は普通国債残高の内数として計上している。交付国債は公債等残高に含まれていないが、交付国債の平成十九年度末残高の見込みは七千億円程度であり、公債等残高の同年度末残高の見込みである七百三十六兆四千億円程度と比べれば、千分の一程度の金額であるため、交付国債を公債等残高に含めるか否かは試算結果に大きな影響を与えないものと考える。
また、経済協力開発機構の経済見通しにおいて用いられている債務残高は、一般政府を対象とするもので、社会保障基金も含む概念であり、平成二十三年度には確実に黒字化することを目標としている国・地方の基礎的財政収支と国・地方の債務残高との関係を示すという観点からは、経済協力開発機構の経済見通しで用いられている債務残高の採用は適当ではないと考える。
五について
今回参考試算においては、日本銀行納付金を含む国の一般会計のその他収入は、基本的に名目国内総生産成長率で変動するよう算出しており、日本銀行が保有する国債に係る利払費の増加が日本銀行納付金を通じて国庫に還流することも考慮された試算となっているため、御指摘の修正は必要ないものと考える。
六について
内閣府の経済財政モデル等の計量経済モデルの作成及び改定やこれを用いた試算に当たっては、随時、専門家の意見を聴取し、これを反映させているところである。
七について
御指摘のルールの意味が必ずしも明らかではないが、日本銀行が行う通貨及び金融の調節については、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第二条第一項において、自主性は尊重されなければならない旨が規定されているとともに、同法第四条において、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定されている。
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③質問主意書 【第二回質問】
経済モデルによるシミュレーションに関する再質問主意書
平成19年3月1日
提出者 滝 実
経済モデルによるシミュレーションに関する質問に対する平成十九年二月二十三日の答弁書によれば、「経済財政モデル(第二次版)」において短期金利の変動が経済財政に与える影響についての試算結果が公表されているとのことである。それによると、短期金利を引き上げることとした場合、実質GDP、潜在GDP、名目GDPの全てを押し下げて高成長を妨げ、デフレを悪化させる。さらに悪いことに、国・地方の債務のGDP比を増やす結果になる。そこで以下の点について再度質問をする。
一 今回の日本銀行による短期金利の引き上げは内閣の目指す財政再建と経済の高成長の妨げになるのであるから、日本銀行法第四条に抵触するのではないか。また、デフレ下の現状での金利引き上げは好ましくないという主張を内閣として行うべきではないか。
二 日本銀行は設備投資を抑える効果がある金利引き上げを主張するのに対し、政府は設備投資を加速させるために法人税減税を行う方針としているのであるから、政府と日本銀行が相反する政策を行うことになり、政策不一致ではないか。
三 答弁書の上記モデルにおいて、増減税、公共投資の増減、短期金利の変動が経済財政に与える影響について、個別に試算結果が公表されている。そこで、例えばGDPの〇.五%だけ所得減税を行い、同時に〇.五%短期金利を引き下げる場合、景気が拡大し、デフレ脱却を助け、しかも債務のGDP比は三年以降も下がり続ける。これは、積極財政等が景気回復、デフレ脱却、債務のGDP比の削減の全てを同時に達成できることを示しており、このような景気刺激のための長期にわたる継続的な財政出動、金融政策こそが、高成長を最優先させる安倍内閣の経済政策に合致すると考えられるのではないか。
四 日本銀行法第四条において、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定しているのであるから、このような政府と日本銀行の協力、言い換えれば金融と財政の協力は当然であるのに、現実にはできていないのではないか。
五 答弁書の「五について」で、参考試算においては、日本銀行保有の国債に対する国庫の利払費は日本銀行納付金として国庫に還流することを考慮していることを明らかにしている。これは、国債の民間保有を避けて日本銀行の保有を増やせば、それに対応して国債のGDP比を減らすことができることを示すものであろう。したがって、財政健全化のためには、日本銀行が行っている自主規制を緩和して日本銀行の国債保有残高を増やすことを考えるべきではないか。
右質問する。
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④答弁書 【第二回答弁】
内閣衆質一六六第九四号
平成十九年三月九日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
経済モデルによるシミュレーションに関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出経済モデルによるシミュレーションに関する再質問に対する答弁書
一、二及び四について
日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四条においては、日本銀行は「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と規定しているところ、日本銀行総裁が政府の経済財政諮問会議において意見を述べ、政府の代表者が日本銀行の金融政策決定会合において意見を述べるなど、政府と日本銀行の間では十分な意思疎通が行われているものと考えている。
本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引上げは、中長期的に、物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するとの考え方に基づいて行われており、また、平成十九年度税制改正における減価償却制度の抜本的な見直しは、我が国経済の成長基盤を整備する観点から行うこととされているものであることから、政府と日本銀行の政策は、我が国経済の成長という共通の考え方に基づいて行われていると考えている。
なお、御指摘の「経済財政モデル(第二次版)」(平成十八年二月内閣府公表) における乗数表は、あくまで計量経済モデルの特性を検討するために作成したものであり、また、
計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
三について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。また、日本銀行法第二条においては、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と規定されており、適時適切な金融政策が行われることを期待している。
なお、御指摘の「経済財政モデル(第二次版)」における乗数表等については、一、二及び四についてでお答えしたとおりである。
五について
日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。なお、日本銀行による長期国債の保有は、日本銀行の負債である日本銀行券の発行残高の範囲内で、安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。
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⑤質問主意書 【第三回質問】
平成19年3月23日提出
経済モデルによるシミュレーションに関する再再質問主意書
提出者 滝 実
平成19年2月13日提出の経済モデルによるシミュレーションに関する質問主意書に対する平成19年2月23日に答弁書(第1次答弁書と略称)をいただき、これに関して平成19年3月1日提出の再質問主意書(再質問主意書と略称)に対する平成19年3月9日の答弁書(第2次答弁書と略称)には、「経済財政モデル(第2次版)」における乗数表は、あくまで計量経済モデルの特性を検討するために作成したものであり、また、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである」と記されている。このことに関連して以下の点を再度質問する。
一 内閣府のモデルは誤差が大きくて信頼性を欠くという指摘はある。例えば、平成17
年4月に発表された「日本経済中長期展望モデル」では民間住宅資本形成の決定係数は
0.068、それ以外にも決定係数が0.1を下回るものがある。このような方程式を
使うと誤差が大きくなり、信頼性を欠くという指摘を受けるのは当然である。そのようなモデルを使用した結果を引用した経済財政白書や「日本21世紀ビジョン」「改革と展望」「進路と戦略」も政府の経済政策を行う上での参考として使われている。
それらと同程度の信頼性で「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」という計量経済モデルの結論は参考にされるべきではないのか。何となれば第1次答弁書には、「計量経済モデル(第2次版)においては、・・・継続的に・・・景気刺激策を行った場合について、・・・公債等残高の国内総生産比率は、当初の1年目及び2年目は低下するが、3年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」と記されており、ここでは、誤差を問題にしていないからだ。
二 内閣府の試算は、誤差があるにしても金利を低めに誘導しながらの財政出動は、経済成長を加速し、デフレ脱却を助け、財政を健全化する可能性が高いことを示している。仮に、政府日銀がそれと反対に金利を高めに誘導し歳出削減をする政策を選択するのであれば、国民経済と国の財政に重大な悪影響を与える可能性があるのであるから、その政策を敢えて選択する理由を国民に納得できるまで説明する必要があるのではないか。
三 第2次答弁書には「政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。」と記されている。ところで、第1次答弁書では、個人所得税減税又は公共投資増額は公債等残高の国内総生産比率を低下させ、少なくても当初の1~2年は財政再建に役立つことを認めている。そこで、再質問主意書で、3年目以降については短期金利引き下げをセットにして行えば、財政再建に役立つことが内閣府の計量モデルから結論されると指摘したところ、第2次答弁書ではモデルの誤差の問題に言及されている。しかし、モデルでは3年目には公債残高の増大で金利が上昇するため国内総生産に悪影響するとしている部分に関して何故誤差を持ち出すのか。それではモデル全体が誤差で囲まれていて、モデルを使って説明しようとすること自体を否定することになるのではないか。
3年目以降は誤差が大きくなって信頼性が落ちて、あまり参考にならないというのであれば、当初の1~2年だけのデータを信頼すればよく、「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」ということを、この経済モデルは100%支持することになるのではないか。
四 再質問主意書では、日本銀行による短期金利引き上げはGDP成長率を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものであると指摘した。これに関して第2次答弁書には誤差を考慮するようにと記している。これは、誤差のために符号が反対になる、すなわち短期金利引き上げは経済成長を押し上げ、デフレ脱却を助け、国・地方の債務残高のGDP比を下げる効果があるかもしれないという意味か。そうであれば、乗数の全てが、その符号さえ確かではないほどの深刻な問題を抱えており、シミュレーション全体が信頼に値しないということを意味するのではないか。
そうではなく、符号は正しいものの、その絶対値に誤差があるというだけなら、「日本銀行の短期金利引き上げは、経済成長を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものである」という結論にいささかの変更をもたらすものではなく、短期金利引き上げは、成長力底上げを目指す政府の方針に逆らうものと言わざるをえないのではないか。
五 日本銀行の長期国債保有に関して日本銀行券の発行残高を上限にしていると、深刻な問題に遭遇する。電子マネーの増加は、必然的に日本銀行券の発行残高を減少させることになるからである。また、インフレ率が上昇し始めると、タンス預金が市場に出てくると大幅に日本銀行券の発行残高を減少させる。そのとき日本銀行は大量の国債を売らざるを得なくなり、それが景気を冷やし、デフレに逆戻りさせる。したがって、日本銀行の長期国債保有に関する自主規制は、日本銀行の重大な金融政策の足かせとなり、日本のデフレからの脱却と財政健全化を極めて困難にするのではないか。
右質問する。
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⑥答弁書 【第三回答弁】
内閣衆質一六六第一四二号
平成十九年四月三日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
経済モデルによるシミュレーションに関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出経済モデルによるシミュレーシヨンに関する第三回質問に対する答弁書
一から四までについて
「経済財政モデル(第二次版)」(平成十八年二月内閣府公表)等(以下「経済財政モデル」という。)は、経済理論を踏まえ、過去における変数相互の関係を精査した上で作成されたものであるが、これらを含めた計量経済モデルによる計算結果は、御指摘の乗数表の一年目、二年目及び三年目以降の値を含め、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。さらに、経済財政モデルにおける乗数表は、ある変数が独立的に変化した場合に、その変化が他の変数に及ぼす影響を示したものであり、現実の経済においては、
様々な要因が複雑に影響し合うこともあり、ある政策が実施された場合に、必ずしも乗数表に示されたとおりの影響が生じるとは限らないことに留意する必要がある。
したがって、経済財政モデルにおける乗数表や「日本経済の進路と戦略参考試算」(平成十九年一月十八日経済財政諮問会議提出)等の計算結果は、いずれも経済政策を検討する際に参考となるものであるが、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
なお、政府としては、極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えており、また、本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引上げは、中長期的に、
物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するとの考え方に基づいて行われていると承知している。
五について
日本銀行の長期国債保有残高については、日本銀行の長期国債買入額が日本銀行保有の長期国債に係る償還額を下回っていること等から、過去最高であった平成十六年八月末の約六十七兆三千億円から、平成十九年二月末には約五十一兆九千億円に減少している。
一方、この間、日本銀行券発行残高は、約七十一兆六千億円から約七十五兆七千億円に増加しており、これに伴い、日本銀行券発行残高と長期国債保有残高の差額は、約四兆四千億円から約二十二兆七千億円に拡大している。
このような状況に照らせば、仮に日本銀行券発行残高が減少に転じたとしても、御指摘の「長期国債保有に関する自主規制」が制約となることにより、直ちに日本銀行が保有する長期国債を売却せざるを得ない事態にはならないものと理解している。
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⑦質問主意書 【第四回質問】
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問主意書
平成19年4月20日
提出者 滝 実
平成十八年度内にデフレから脱却するということは、政府・与党の公約であったが、三月十五日に政府が了承した三月の月例経済報告で、「消費者物価は横ばいとなっている」として、脱デフレの公約が果たせなかったことを認めた。このことに関して質問する。
一 政府はデフレ脱却に向けてどのような政策を行っているのか具体的に示して頂きたい。その政策のGDP押し上げ効果が何兆円程度か、インフレ率引き上げ効果が何%か、試算結果を国民に示す義務があるのではないか。
二 政府・日銀が歳出を抑制し、短期金利を引き上げていく政策は、デフレ脱却の公約を掲げながら、公約を守ろうとする努力を放棄していることを示しているのではないか。
三 日本の国民一人当たりの名目GDPの国際順位は、緊縮財政を行うにつれ下がり、平成十七年度には十四位まで落ちた。これは勤労者の給料が下がるのに、それを止めるための適切な経済対策を行わなかったからではないのか。参考のために図一、二を示すと、デフレ下では、積極財政なら国は豊かになり、緊縮財政なら国は貧しくなることを示している。経済が停滞を続ける日本から資金が逃げ出した結果、経済が好調なヨーロッパに資金が集まり、円安ユーロ高が進み、世界のGDPに占める日本の比率は平成十年の十七%から平成十七年の十.三%まで激減したのではないか。
四 OECDの Economic Outlook No.八〇 によれば、日本のGDPデフレーターは平成九年を除き、平成五年~平成十八年の間マイナスが続いている。 OECD三〇か国のGDPデフレーターを見ると、デフレになっている国はほとんどなく、デフレになっても直ぐに立ち直っている。結果的に日本では OECD諸国に比べGDPの伸びが年平均三%程度低かったからであり、GDPを引き上げるための政策努力が不足していたのではないか。
五 OECDの Economic Outlook No.八〇 によれば国・地方の債務残高が日本だけ急増している原因は、名目GDPの低迷にある。他の国も債務残高は増加しているが、GDPも増加しているため、GDP比で見るとあまり変動していない。長期にわたる経済の低迷と財政の悪化は、デフレ脱却のための経済政策を怠ったためであり、厳しい財政状況を踏まえれば経済成長と財政再建の両立に努めるべきであることは明らかである。それを実現するためには、政府の経済財政モデルによる試算にしたがって財政出動をして債務のGDP比を減らすべきではないのか。
六 経済の低迷は、国民生活に深刻な影響を与えている。経済生活問題が原因の平成十七年の自殺者数は、平成二年の六倍程度にまで増加している。平成七年には六〇万世帯であった生活保護世帯が今や一〇〇万世帯を超えている。財政が厳しいからこそ減税等を行ってGDPを増やして財政健全化の努力をすべきではないか。それにより多数の人命が救われ、膨大な数の生活苦の人たちを救うことができるのではないか。
右質問する。
図1
図2
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⑧答弁書 【第四回答弁】
内閣衆質一六六第一八七号
平成十九年四月二十七日
内閣総理大臣臨時代理
国 務 大 臣 塩 崎 恭 久
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問に対する答弁書
一及び二について
政府としては、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣議決定。以下「基本的態度」という)に沿って、「成長力強化に向けた改革を加速・深化させる」こととしており、また、政府及び旧本銀行は、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行うこととしている。これを前提とした経済の姿については、基本的態度において、GDPの実質成長率が二・○パーセント程度、消費者物価指数の変化率が○ ・五パーセント程度になると見通している。
なお、政府としては、極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えており、また、本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引上げは、中長期的に、
物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するとの考え方に基づいて行われていると承知している。
三及び四について
平成十年から平成十七年にかけて、世界の名目GDPに占める日本の比率が低下している主な要因としては、世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状況にあったため、名目成長率が相対的に低かつたことなどが挙げられる。政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきた。
五について
御指摘の「政府の経済財政モデル」等の計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。
六について
五についてで述べた経済財政運営の考え方に基づき、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼすことにより、国民が未来に夢や希望を持ち、より安心して生活できるような社会の実現を目指す必要があると考えている。
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⑨質問主意書 【第五回質問】
平成18年度内にデフレから脱却するという公約に関する再質問主意書
平成19年5月8日
提出者 滝 実
平成18年度内にデフレから脱却するという公約に関する質問に対する平成十九年四月二十七日の答弁書(以下「答弁書」という)によれば、「平成十年から平成十七年にかけて、世界の名目GDPに占める日本の比率が低下している主な要因としては、世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状況にあったため」とし、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「基本的態度」という)に沿ってデフレ脱却のための努力をしているとある。このことに関して再度質問する。
一、「基本的態度」には、デフレ脱却に有効と思われる政策は何一つ見あたらない。一体どの政策が、どれだけの物価上昇をもたらすと言うのか。
二、政府は過去十数年間、デフレ脱却のための様々な政策を行ってきており、そのことごとくが失敗に終わり、その結果デフレはまだ続いている。それが原因で、世界のGDPに占める日本の割合が激減しつつあるのが現状であることは、答弁書でお認めになった通りである(図1参照)。過去の政府の政策でデフレ脱却に失敗した理由は何か。
図1
三「基本的態度」に書かれてある政策は、過去の失敗に終わったものとどのように違うのか。過去の内閣における経済対策においては、その政策に対する景気浮揚効果が数字で示されていた。今回もそれを示すべきではないか。
四、「基本的態度」には「成長なくして日本の未来なし」と書いてある。しかし、ここに書いてある名目成長率は05年度1.0%、06年度1.5%、07年度2.2%で平均で僅か1.6%である。同じ期間に例えば米国は平均5.9%の成長(OECD Economic Outlook 80)となっており、日本の3.7倍である。日本が米国の3.7分の1しか成長できない理由は何なのか。
五、例えば、日本の名目成長率を5%に引き上げたとすれば、債務のGDP比は、分母に名目GDPがあるのだから、GDP比は約5%減少する。他方、800兆円の国の債務を5%減らそうとするなら、40兆円の歳出削減が必要となり、これは実現不可能である。一方、日本がデフレから脱却できれば、名目GDP成長率を米国並みの水準に引き上げることは十分実現可能であり、それにより財政健全化という目標に大きく前進することを意味するのではないか。
六、答弁書は、「平成十年から平成十七年にかけて、世界の名目GDPに占める日本の比率が低下している主な要因としては、世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状況にあったため」としているが、この間の政策を「適切な経済運営」と評価している。世界における日本経済のシェアを17%から10.3%にまで落としてしまったことは「適切」だと政府は考えているのか。今後もその「適切」な政策を続け、シェアをどんどん落とすつもりなのか。
右質問する。
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⑩答弁書 【第五回答弁】
内閣衆質一六六第二一〇号
平成十九年五月十五日
内閣総理大臣安倍晋三
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する再質問に対する答弁書
一及び三について
政府としては、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣議決定。以下「基本的態度」という。)に沿って、「成長力強化に向けた改革を加速・深化させる」こととしており、また、政府及び日本銀行は、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行うこととしている。「基本的態度」において、平成十九年度は、「改革の加速・深化と政府・日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での自律的・持続的な経済成長が実現する」と見込まれ、GDPの実質成長率が二・○パーセント程度、消費者物価指数の変化率が○・五パーセント程度になると見通している。
二について
政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきたところであり、日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。政府として、海外経済の動向などにみられるリスク要因を考慮しつつ、このデフレ状況に戻る可能性がないかどうか、注視していく必要があると認識している。
四及び六について
米国に比べて日本の名目成長率が低かつたこと及び世界における日本経済のシェアが低下したことの主な要因としては、世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状況にあつたことなどが挙げられると考えている。
一及び三についてで述べたように、
政府としては、「基本的態度」に沿って、「成長力強化に向けた改革を加速・深化させる」こととしており、また、政府及び日本銀行は、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行うこととしている。これを前提とした経済の姿については、「基本的態度」において、今年度のGDPの名目成長率が二・ニパーセント程度になると見通している。
五について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。
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⑪質問主意書 【第六回質問】
平成十九年五月二二日提出
提出者 滝 実
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する第三回質問主意書
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する再質問主意書に対する平成十九年五月十五日の答弁書(以下「答弁書」という)によれば、平成十九年度のGDPの実質成長率は二.〇%、名目成長率は二.二%程度になる見通しとある。このことに関して第三回目の質問をする。
一 「成長なくして財政再建なし」と言うことだが、平成十九年度のGDP名目成長率が二.二%という成長見通しは、十分な成長と言えるのか。OECD Economic Outlook No.八〇(以下Outlookという) によれば、二.二%というのはOECD 三〇カ国中、最下位であり、二九位であるスイスの三.二%からも大きく差をつけられている。二〇〇八年の見通しは二.七%となっているが、これも三〇カ国中最下位だ。日本経済はOECD三〇カ国の中で最も成長しない経済だというのが現内閣の認識なのか。政府は経済成長のための努力が足りず、そういった状況では財政再建などあり得ないのではないか。
二 Outlookによれば、国の債務のGDP比は平成十八年度が一七六.二%、平成十九年度が一七七.六%、平成二十年度が一七七.三%となっている。つまり、平成十九年度まで上昇し、二十年から下がり始める。債務は増え続けているし、基礎的財政収支は赤字であるのに、なぜ平成二十年から国の借金のGDP比が減少し始めるかと言えば、名目GDPの伸びが二.二%から二.七%に増加するからで、名目GDPのわずかの伸びでも財政健全化に貢献する。このことを認めるか。
三 過去の「改革と展望」や「進路と戦略」では、名目成長率はどんどん高まるように書いてあるが、実際はそうなっていない。例えば平成十七年発表の「改革と展望」では、平成十九年度の名目成長率は二.六%、消費者物価指数一.四%、平成十八年度発表の「改革と展望」では平成十九年度の名目成長率は二.五%、消費者物価指数一.一%、今年発表の「進路と戦略」では平成十九年度の名目成長率は二.〇%、消費者物価指数〇.五%にまで下がった。次々と目標の達成に失敗し、下方修正が続いている原因は、どのような経済対策でどれだけの景気浮揚効果があるかという分析を行ってから「骨太の方針」を決めていないのが原因である。他の先進国では、当然行われている経済分析が日本では行われていないのはなぜか。失敗の原因を調べ、軌道修正しようとしていない現状では今年発表の「進路と戦略」の予測である名目成長率(平成二十年度二.八%、平成二十一年度三.三%)や、消費者物価(平成二〇年度一.二%、平成二十一年度一.七%)は、実現しないのではないか。
四 「改革と展望」にも「進路と戦略」にも国・地方の債務残高は今後増え続けるとある。今後、債務残高そのものを減らすことを政府は考えていないと思ってよいか。
五 国・地方の債務残高は増えても、名目GDPが増加し、債務のGDP比が減ればよいというのが政府の見解と思ってよいか。
六 基礎的財政収支を黒字化しなければ、債務のGDP比は減らないと政府は誤解している。「進路と戦略」をみると二〇〇七年度以降は基礎的財政収支は赤字でありながら、債務のGDP比は減り続けている。債務のGDP比が減るなら基礎的財政収支は赤字でもよいのではないか。歳出削減や増税による基礎的財政収支の黒字化だけが、財政再建の手段ではないのではないか。
七 政府は二〇一一年度に基礎的財政収支を黒字化するための不足額が一六.五兆円(平成十八年十二月二十六日に九.五兆円に修正)であるとしていて、その不足額を増税または歳出削減で補うことにしている。しかし、そのような増税や歳出削減は、世界における日本経済のシェアをますます縮小させる恐れがある。一切の先入観を排し、本格的な経済モデルを使い基礎的財政収支は赤字のままでも債務のGDP比を減らす方法を検討したらどうか。
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⑫答弁書 【第六回答弁】
内閣衆質一六六第二二五号
平成十九年六月一日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する第三回質問に対し、
答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する第三回質問に対する答弁書
一、二及び四から七までについて
「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣議決定)において、平成十九年度は、「改革の加速・深化と政府。日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での自律的・持続的な経済成長が実現する」と見込まれ、GDPの実質成長率が2.0%程度、名目成長率が2.2%程度になると見通されるとしている。
また、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定。以下「進路と戦略」という。)において、進路と戦略に盛り込まれた政策が実行される場合には、今後五年間のうちにGDPの名目成長率が「3%台半ば程度あるいはそれ以上も視野に入ることが期待される」としている一方で、政策の効果が十分に発現されず、かつ世界経済の減速など外的な経済環境も厳しいものとなる場合、「中期的に2%台前半あるいはそれ以下にとどまると見込まれる」としている「なお、こうした経済の展望には種々の不確実性を伴うため、相当な幅を持って理解される必要がある。政府としては、「2010年代半ばに向け、債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指し、まずは「2011年度には、国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化」することとしている。
現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。
三について
政府としては、内外の経済動向等様々な要素を勘案し、適切な経済財政運営に努めているところであり、成長力の強化等に取り組むこととしている。進路と戦略の対象期間中のGDPの名目成長率については、一、二及び四から七までについてでお答えしたとおりである。また、消費者物価指数の上昇率については、進路と戦略において、進路と戦略で示された適切なマクロ経済運営の下で、今後五年間のうちに2%程度に近づいていくものと見込まれるとしている一方で、「リスクが顕在化するケースでは、これを若干下回ると見られる」としている。なお、こうした経済の展望には種々の不確実性を伴うため、相当な幅を持って理解される必要がある。
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⑬質問主意書 【第七回質問】
世界経済の中で没落を続ける日本経済と骨太方針二〇〇七素案に関する質問主意書
平成19年6月6日
提出者 滝 実
世界経済が順調に成長する中で、日本経済がデフレ状態にあったため、世界経済に占める日本のシェアが平成十年の十七%から平成十七年の十.三%にまで急降下し、日本経済の没落が続いていることは、政府も認めるところである。この状況で、参議院選に向けて、与党の事実上の政権公約となると言われている骨太方針二〇〇七素案が発表されたが、これに関連して質問する。
一 政府はデフレは良くないと考えているのか、それともデフレ脱却はしなくてもよいと考えているのか。
二 日本の名目成長率はOECD三〇か国の中で、群を抜いて最低である。今後も最低の水準でよいと考えているのか。
三 骨太方針素案では、二〇〇八年度予算では、歳出を最大限削減するとある。これは、当然のことながら、経済成長率を最大限下げ、デフレを最大限悪化させ、世界経済における日本のシェアを最大限減らすということを意味する。それとも、そうでないという具体的な試算があるのか。
四 政府は二〇〇六年度と二〇〇七年度に定率減税廃止という形で三.三兆円の増税を行った。内閣府の試算では、これが名目GDPを〇.八%押し下げ、債務のGDP比を上げると示されている。OECD三〇か国の中で、群を抜いて最低である日本の名目成長率を更に下げ、財政を悪化させる政策をなぜ行うのか。なお、所得税から住民税への三兆円の税源移譲により所得税は二〇〇六年に減税しているものの、住民税は二〇〇七年で増税になる。住民税の二〇〇七年の増税はGDPにどのように影響すると計算されているか。
五 「政府戦略大綱二〇〇七年度原案」の実現に向け、政府は成長施策に五〇〇〇億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入ったとの報道があった。GDPの僅か〇.一%の予算で、一体どの程度の成長率押し上げ効果を期待できるのかの試算はできているのか。この程度の予算では、増税、歳出削減、政策金利引き上げによるGDP押し下げのほうがはるかに大きいと思われる。歴代の政権では、経済対策に対しては、ことごとくそのGDP押し上げ効果が計算されて、国民に示されている。これは国民の税金を使う者が行われなければならない最低限の義務だと考えるがどうか。
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⑭答弁書 【第七回答弁】
内閣衆質一六六第三四三号
平成十九年六月十五日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員滝実君提出
世界経済の中で没落を続ける日本経済と骨太方針二〇〇七素案に関する質問に対し、
別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出世界経済の中で没落を続ける日本経済と骨太方針二○○七素案に関する質問に対する答弁書
一について
政府としては、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定。以下「進路と戦略」という。) において述べているとおり、「再びデフレに戻ることのないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させる必要がある」と考えている。
二について
政府としては、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十九年一月二十五日閣議決定)及び進路と戦略に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。
三について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。今後の経済財政運営の中期的な方針を示した進路と戦略の対象期間中の経済の展望については、衆議院議員滝実君提出平成十八年度内にデフレから脱却するという公約に関する第二回質問に対する答弁書(平成十九年六月一日内閣衆質一六六第二二五号)においてお答えしたとおりである。
四について
定率減税は、平成十一年に、名目成長率がマイナスとなるなど極めて厳しい経済情勢の中で、景気を下支えするために導入された暫定的な負担軽減措置であり、こうした導入の経緯や、その後の経済状況の改善を踏まえ、縮減・廃止したものである。今回の所得税から個人住民税への税源移譲は、地方分権の一層の推進を図るため、国・地方の三位一体改革の一環として行うものである。これにより、多くの納税義務者は、平成十九年一月から所得税の額が減少し、同年六月から個人住民税所得割の額が増加することとなるが、年間の所得等が一定であるとした場合、税源移譲の前後で所得税の額と個人住民税所得割の額との合計額が基本的に変わらないよう制度設計しているところであり、今回の税源移譲による影響は、家計を含む経済に対して中立であると考えている。
五について
指摘の「「政府戦略大綱二〇〇七年度原案」の実現に向け、政府は成長施策に五〇〇〇億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入ったとの報道」が何を指すのかは必ずしも明らかではないが、政府として、「経済成長戦略大綱」(平成十八年七月六日財政・経済一体改革会議決定) の改定に関して、御指摘のように「五〇〇〇億円規模の特別予算を設定する方向で調整に入った」という事実はない。
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⑮質問主意書 【第八回質問】
ITの本格的活用に関する政府の考えに対する質問主意書
平成19年6月19日
提出者 滝 実
六月十二日に発表された基本方針二〇〇七(原案)(以下「基本方針」という)には、政府はIT革新として「ITの本格的活用のため、社会横断的なIT基盤を整える」とある。日本が得意とするITを様々な分野で本格的に活用することにより、日本経済は大きく発展する可能性を秘めている。これに関連して質問する。
一 これまでITは、人間の生活を豊かにしてきたし、今後も更に豊かにしてくれるものと期待できる。したがって、国を豊かにし、国民を幸福にするためには、政府も民間もできるだけ多くの分野で積極的にITを活用していくべきだとの考えに政府は異存がないであろう。
そこで、建築業におけるITの利用を例として問題提起してみよう。耐震構造をシミュレーションによって分析できるようになったからこそ、高層ビルの建設が可能になったのである。確かに耐震構造モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。このため、現実のビルの建設を行うにあたっては、計算結果を参考としつつも、その時々の状況を十分に踏まえて総合的に判断する、つまり状況によっては耐震基準に違反するようなビルの建設も許されると考えているのか。
二 耐震構造のシミュレーションも、経済財政のシミュレーションも、事情は全く同じである。経済財政シミュレーションの結果、「経済成長を阻害し、デフレを悪化させ、財政を悪化させる」という結論が出たような政策は、採用するべきではないが、どう考えるか。
三 耐震構造のシミュレーションもそうであるように、経済財政のシミュレーションも、多くの専門家の間で、見解の相違が生じる場合もある。そういった場合は、あらゆる専門家に十分な発言の場を与え、感情論を排し、専門家同士でシミュレーションの詳細を公開し、徹底的に議論し、現在の日本において採用すべき最良の財政金融政策は何かについて、コンセンサスに到達するための努力をすべきであり、そういった場を提供するのが政府の役割だと考えるがどうか。
四 科学のあらゆる分野でも同様であるが、経済学における結論は誤差を伴っている。しかし、IT活用で、その誤差の幅も計算可能である。「試算には誤差を伴うため、状況によっては政府はその結論を無視できる」という考えは経済学もIT活用も全面的に否定する極めて危険な考えであり国の経済を衰退に導く恐れがあるが、どう考えるか。
五 例えば「基本方針」の二六頁においては、二〇一一年度における基礎的財政収支の黒字化や、二〇一〇年代半ばにかけての債務残高GDP比の安定的な引き下げについて言及している。これは内閣府の経済モデルの試算結果であるから、結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものであるという注釈を出さねばならないのに、それを意図的に行っていない。年金の将来見通しに関するシミュレーションでも同様である。国民は誤差については聞かされていない。政府自身の発表するモデル計算の結果の誤差は隠し続け、自らのモデル計算や、その解釈の問題点に関して追求を受けると誤差を持ち出して逃げる。こういった態度をとる限り、経済学とITを最大限活用して国の経済を発展させることはできないと考えるがどうか。
六 内閣府の試算「進路と戦略」で使われているモデルは長期の数値計算モデルと結合させた時系列モデルであり、特定の人たちが独自に定めた長期ビジョンに収束するようにしたものであるから、そのビジョンそのものが妥当なものであるかを議論する必要があるが、どう考えるか。
七 内閣府は平成十八年十二月二〇日の経済財政諮問会議の配付資料として「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「基本的態度」という)を発表している。この結果と「進路と戦略」とは整合性がとれるようにしてあるのか。「進路と戦略」の方程式や乗数等は公開されているのだから、「基本的態度」の方程式や乗数も公開すべきではないか。
八 日本で、最もITの活用が遅れている分野は、政府の経済財政運営である。ITを活用し、国を最大限発展させ、国の借金を返す方法を本格的に経済モデルで分析し、それに従って経済財政運営が行われれば、数兆円あるいはそれ以上の膨大な利益を国にもたらすことができる。他のどの個別の分野でも、ITの活用で、そのように大きな経済効果が見込めることはあり得ない。経済財政諮問会議は、多くは経済分析理論の専門的知識を持たない非専属の人たちの集まりで、経済モデルに本格的に取り組むには全く不十分と言わざるを得ないし、諸外国に比べてもあまりにも貧弱である。政府は、内閣府の経済モデルの詳細な内容を公開し、それに対する外部の経済分析専門家の批判を真摯に受け止め、より信頼性の高い、誤差の少ないモデルにしていくための努力をすべきであって、密室のシミュレーションは国の経済を疲弊させてしまう恐れがあるが、どう考えるか。
右質問する。
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⑯答弁書 【第八回答弁】
内閣衆質一六六第四〇二号
平成十九年六月二十九日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
I T の本格的活用に対する政府の考えに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出ITの本格的活用に対する政府の考えに関する質問に対する答弁書
一について
建築物は、地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)等の規定を遵守して建築されなければならないと考えている。
二、四及び五について
御指摘の「経済財政のシミュレーシヨン」等の計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
三及び八について
内閣府の経済財政モデル等の概要、方程式等については公開しているところであり、計量経済モデルの作成及び改定やこれを用いた試算に当たっては、随時、専門家の意見を聴取し、これを反映させているところである。現実の経済政策を行うに当たっては、二、四及び五についてで述べたように、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
六について
御指摘の「特定の人たちが独自に定めた長期ビジョン」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定)の参考試算(以下「参考試算」という。)は、経済理論を踏まえ過去における変数相互の関係を精査した上で作成された「経済財政モデル(第二次改定版)」(平成十九年三月内閣府公表)を用いて、具体的な政策の方針として示され、かつ試算に反映することが可能なものについて盛り込むという考えの下、作成されたものである。
七について
参考試算は、「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成十八年十二月十九日閣議了解。以下「基本的態度」という。)と整合的に作成されている。
なお、基本的態度は、参考試算とは異なり、計量経済モデルの計算結果を示したものではない。
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⑰質問主意書 【第九回質問】
平成19年7月3日提出
経済財政基本方針2007における名目GDPの伸びに関する質問主意書
提出者 滝 実
経済財政基本方針2007(以下「基本方針2007」という。)における名目GDPの伸びに関して質問する。
一 財務省が6月25日発表した3月末時点の国の債務残高は前年比0.8%増で、この間の名目GDPの伸びは1.4%増だから国の債務のGDP比は0.6%減少、つまり債務のGDP比はすでに減少が始まっている。これは、内閣府の「進路と戦略」の試算結果(計数表)において債務のGDP比は2007年度から減少を始めて、計算結果の出されている2011年度まで安定的に減少が続くとなっていることと符合するのであるが、プライマリーバランスを回復する2011年度までにおける国の債務のGDP比の減少は結果的に減少するということなのか、国の債務のGDP比の減少を政策の目標に掲げているということなのか。
二 「基本方針2007」は、「進路と戦略」を引用して、2010年代半ばにかけては債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを目指すことを目標にしている。これは、2011年度までは債務残高GDP比の安定的な引き下げに真正面から取り組めないということを示すものではないのか。
三 政府に対する質問主意書で内閣府のシミュレーションの結果について引用すると、政府の答弁書には必ず「それは誤差が大きいのだから状況によっては(実は「どんな状況でも」)無視してよいのだ」と答えが返ってくる。このことについて分析すると、内閣府のシミュレーションが「積極財政で財政が健全化する」ということで行われたとき、このことと誤差に関して結論されることは次の2つのうちのどちらかしかあり得ない。
① このシミュレーションは誤差の範囲内で正しい。
② このシミュレーションは誤差が大きくて意味がない。
政府は国の税金を使って内閣府計量分析室で行ったシミュレーションが無意味だと主張するのか。
四 政府の平成十九年六月二十九日の答弁書によれば、耐震構造のシミュレーションに対しては、シミュレーションには誤差を伴うが、それでもどんな状況でもそのシミュレーションに従わなければならない。一方では、経済モデルによるシミュレーションは、状況によっては無視して良いと述べておられる。政府が、都合次第で勝手に原則を変えるのは許されないのではないか。
五 「基本方針2007」で2011年度における基礎的財政収支の黒字化や、2010年代半ばにかけての債務残高のGDP比の安定的な引き下げに対する平成十九年六月二十九日の政府の答弁書(二、四及び五について)は、「経済財政シミュレーション等の計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである」ということであった。つまり、2011年度における基礎的財政収支の黒字化という目標も誤差が大きいのだということをお認めになったわけで、それではプラスマイナス何年の誤差があるというのか。
六 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」では、翌年度からの5年間の歳出削減は、総額11.4兆円~14.3兆円となっていた。この方針は今でも変わらないのか。
七 11.4兆円~14.3兆円という額ももちろん、シミュレーションで求めたものであろう。驚くべきことは、11兆円~14兆円ではなく、11.4や14.3というように、有効数字が3桁になっていることである。これは有効数字が3桁もある、極めて誤差の少ない結果が得られたと、このシミュレーションは示している。「積極財政で財政が健全化する」ということが正しいかどうかを確認するには、有効数字が1桁で十分であり、3桁もの有効数字がある内閣府のシミュレーションならもちろん確認が可能である。政府の答弁書にある「試算には相当の誤差を伴う」の中の「相当の誤差」がそのように小さい誤差を意味するのなら、「積極財政で財政が健全化する」ということを政府で確認するのはもちろん可能であるはずであるが、このことに同意するか。
八 2004年に政府は100年安心できる年金を約束して年金改革を行ったが、100年安心できる年金を維持するためには毎年一定のGDPや賃金の上昇がなければならないはずである。政府はどの程度の上昇率を見込んでいるのか。
九 八の上昇率は2004年から2006年まで達成されているのか。また、その上昇率を基本方針2007では、どのように配慮されているのか。
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⑱答弁書 【第九回答弁】
内閣衆質一六六第四四三号
平成十九年七月十日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
経済財政の基本方針二〇〇七における名目G D P の伸びに関する質問に対し、別紙
答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出経済財政の基本方針二〇〇七における名目GDPの伸びに関する質問に対する答弁書
一、二及び五について
政府としては、二〇一〇年代半ばに向け、国と地方を合わせた債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指し、まずは二〇一一年度には、国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することとしている。国についても、二〇一〇年代半ばに向け、債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指すこととしており、二〇一一年度に向け、基礎的財政収支についてできる限り均衡を回復させることを目指すこととしている。
なお、御指摘の「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定) の参考試算における公債等残高の国内総生産比率の計数は、「経済財政モデル(第二次改定版)」(平成十九年三月内閣府公表。以下「経済財政モデル(第二次改定版)」という。)による計算結果である。
三、四及び七について
御指摘の「積極財政で財政が健全化する」との趣旨が必ずしも明らかではないが、例えば公共投資につき国内総生産の一パーセント相当を継続的に増額するような政策について、一定の仮定の下、経済財政モデル(第二次改定版)における乗数表を用いて計算すると、公債等残高の国内総生産比率は、三年目以降上昇する結果となっている。いずれにせよ、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
六について
政府としては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)で示された歳出・歳入一体改革を確実に実現することとしている。
八及び九について
平成十六年年金制度改正においては、財政均衡期間(年金財政において収支を均衡させる期間をいう。)に関して従来の方式を改め、おおむね百年間の年金財政の均衡を図ることとしている。
年金財政において、保険料収入及び給付費は長期的には賃金の上昇に応じて増加するものであることから、実質的な運用利回り(運用利回りから賃金上昇率を控除したものをいう。以下同じ。)が重要な要素である。平成十六年財政再計算においては、実質的な運用利回りは平成二十年度までは「構造改革と経済財政の中期展望 - 二〇〇三年度改定参考資料」(平成十六年一月十六日経済財政諮問会議提出)を基に算出し、平成二十一年度以降は、長期の運用利回り三・ニパーセントから賃金上昇率二・一パーセントを控除した一・一パーセントと設定している。なお、GDPの上昇率は平成十六年財政再計算の前提として直
接用いていない。
実質的な運用利回りの実績は、平成十六年財政再計算の推計初年度である平成十五年度から実績の判明している平成十七年度までの三年度の平均で五・〇パーセントであり、平成十六年財政再計算における同期間中の実質的な運用利回りの見込みの平均である一・ニパーセントを四ポイント程度上回っている。
また、御指摘の「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定)は、経済情勢等を踏まえつつ、経済財政改革の基本方針について定めたものである。
第10回質問主意書
平成19年9月12日提出
平成20年度予算の47兆3000億円という上限目標に関する質問主意書
提出者 滝 実
財務省は8月31日に2008年度の概算要求を締め切った。各省庁の要求を合算すると総額は50兆円強に上る見込みで、財務省は47兆3000億円という上限内に収めようとしていると報じられている。このことに関して質問する。
一 47兆3000億円という上限目標はどのようにして決められたのか。この数字の根拠を明らかにしていただきたい。
二 内閣府の発表によれば、日本の一人当たりの名目GDPは、1993年度、1994年度には世界一であったが、2006年度には世界18位まで下落したとのこと。このことを図1(図47)に示した。世界18位と言えば実に1971年度の水準である。1971年度から22年もかけて世界一豊かな国になった日本を、このように一気に貧乏にさせてもよいと政府はお考えか。今回の参議院選の与党大敗も、国を貧しくし、生活を苦しくした政府の政策への反発が一因であると考えるが、政府はこのような考えにどう対処しようとするのか。
三 図2(図48)は名目成長率の国際比較である。この図より日本が極端に低い成長率であることが分かる。フランスは日本の2倍以上も経済成長をしているのに、まだ低すぎるとして、積極財政で成長率を高めようとしているし、世界各国、経済成長率を高め、国を繁栄させようと努力している中、日本はこれだけ低い成長率であるにも拘わらず、最大限財政を削減して成長を低めようとしている。日本のこれだけ低い成長率をさらに低めてよいとお考えか。
四 デフレ下の日本では、予算を増やせばGDPが増大し豊かになるし、逆に予算を減らせばGDPは減り貧しくなるのは自明の理である。47兆3000億円という額が今の日本にとって最良の額なのか、予算額を増やしたり減らしたりして、どのくらい日本が豊かになるか、あるいは貧しくなるかを示して頂きたい。
五 政府は、国の債務のGDP比が多いから、歳出を抑えなければならないという。しかし、無理な歳出削減に対しては、与党内からも従来の「歳出削減一本やり」では参議院選の惨敗から立ち直れないという危機感を背景に反発の声が上がっていると報じられている。例えば、公共投資を減らした場合、内閣府の試算によれば、少なくとも最初の1,2年は債務のGDP比は増加し財政悪化を招くとのことだが、誤差が大きくて試算自身が信頼できないというのが政府の見解だと理解している。そうであれば、現在の日本において、歳出削減は国を貧しく、デフレ脱却を遅らせるのは間違いないが、財政悪化を招くか、財政健全化に貢献するかマクロモデルによる試算では結論がでないというのが政府の見解だと思って良いか。
六 政府は歳出削減がGDPを減らし、デフレ脱却を遅らせることは熟知しているであろうが、その一方で歳出削減が財政健全化を導くかどうかは信頼できるマクロモデルによる試算で確固たる結論を得ていないようで、強引に歳出削減を続けており、それが国を貧しくし、国民を苦しめている。現在の日本において、歳出削減は本当にメリットがあるのか。その理論的根拠は何なのか。その理論に対する責任者は誰なのか。
七 8月1日、内閣府は2007年度の名目経済成長率の見通しを実質と同じ2.1%に下げると発表した。もともと2006年度にデフレ脱却をするというのは内閣の公約であり、今回の発表は2007年度もデフレ脱却ができないということであり、このように次々と経済見通しの下方修正を続けることに何の反省もないのか。
八 国民を苦しめている一つが社会保険料の値上げであり、これは増税と同様な意味を持っている。国の試算によれば、厚生年金積立金は2015年頃まで減少を続けるとなっていて保険料の値上げをしなければ年金財政が危なくなるとしている。しかし、実際は平成14年が141兆円、15年が145兆円、16年が147兆円、17年が150兆円というように、厚生年金積立金は増え続けている。ということは試算に誤りがあったということであり、適正な試算をしていたら、このように保険料の値上げは必要がないとの結論が出たところだ。つまり保険料の取りすぎということである。
マクロ経済スライドなどと称し、100年安心できる年金財政などと言っている。しかし、定率減税廃止で3.3兆円もの増税をしたのに加え、計算ミスが原因で不必要に高い保険料を取り、国民を苦しめ、経済を停滞させ、日本を貧乏にしてしまったら、100年後を目指して巨額の年金積立金をため込むことにどのような意味があるのか。
図1(図47)
図2(図48)
第十回答弁書
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内閣衆質一六八第一〇号 平成十九年九月二十五日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三
衆議院議員滝実君提出平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する質問に対する答弁書
一について
平成二十年度予算については、「平成二十年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」(平成十九年八月十日閣議了解) において、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定。以下「基本方針二〇〇六」という。) で示された歳出改革を軌道に乗せる上で極めて重要な予算であり、引き続き歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、歳出の抑制と所管を越えた予算配分の重点化・効率化を実施するとの基本的考え方を踏まえ、一般歳出の概算要求について、各経費につき平成十九年度当初予算額をもとに具体的な基準となる額が定められ、それらの総額が約四十七兆三千億円となった。
二及び三について
政府としては、「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。)等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。こうした取組を通じて、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼすことにより、国民が未来に夢や希望を持ち、より安心して生活できるような社会の実現を目指す必要があると考えている。また、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。
四について
政府としては、基本方針二〇〇七において、予算編成の原則として、民間需要主導の経済成長を目指し、景気を支えるために政府が需要を積み増す政策はとらないこととしている。現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。
五について
計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。このため、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
なお、政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えている。
六について
政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、基本方針二〇〇六及び基本方針二〇〇七において、歳出・歳入一体改革を実行するとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むことが必要であると考えている。
七について
政府としては、経済見通しの策定に当たって、従来より、その策定の時点で入手可能な情報を基に、慎重に分析、検討を行い、的確な見通しを行うよう努めているところである。我が国の経済は民間活動がその主体をなすものであること、国際環境の変化には予見し難い要素が多いこと等にかんがみ、経済見通しの諸計数は、ある程度幅を持って考えられるべきものである。
八について
平成十六年年金制度改正においては、長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするため、上限を固定しつつ保険料の引上げを行うとともに、積立金については、少子高齢化のピークを迎える平成六十二年頃から取り崩して給付に充て、おおむね百年後の積立金の水準を、給付に支障が生じない水準として給付費の一年分程度に抑制する等の措置を講じたところである。
平成十六年財政再計算においては、保険料引上げの途上にあること等により、平成二十一年度までは積立金を取り崩すと見通していたが、御指摘の平成十五年度から平成十七年度までの間における運用利回りの実績が見込みを上回ったこと等により、厚生年金保険及び国民年金の積立金が増加し、平成十七年度末で約百五十兆円となったところである。
しかしながら、年金財政においては人口や経済の長期のすう勢がどのようになるかが重要であるため、少なくとも五年に一度、新たな実績を踏まえ長期的な財政収支の見通しを見直すこととしており、御指摘の三年間の積立金の運用利回りの実績が見込みを上回ったことにより、直ちに法律で定められた将来の保険料を引き下げることは適当ではないと考えている。
第11回質問主意書
平成19年10月3日提出
平成20年度予算の47兆3000億円という上限目標についての再質問主意書
提出者 滝 実
平成20年度予算の47兆3000億円という上限目標についての質問に対する平成19年9月25日の答弁書(以下「答弁書」という)には、極めて深刻な論理矛盾がある。そこで、以下の点について再度質問する。
一 答弁書の「五について」においては、経済予測のシミュレーションは参考にはするが、誤差が大きいので、場合によってはシミュレーションが「経済を停滞させ、国民生活を圧迫し、しかも財政を悪化させる」と予測しているような経済政策を行ってもよいと述べている。一方「八について」では、年金シミュレーションは100年先までの予測が正確にでき、予測は正確だから、その予測に従って社会保険料は値上げしなければならないと主張している。ところが驚いたことに年金シミュレーションは経済予測シミュレーションの結果を使っている。政府自身が誤差が大きいと認めている経済予測のシミュレーションの結果を使って得られた結果は、当然誤差が一層大きく不正確なはずである。そのような信頼に値しない年金シミュレーションの結果を使って社会保険料の値上げをすべきではないのではないか。
二 もしも年金シミュレーションが信頼に値するのであれば、その基礎となっている経済予測シミュレーションも誤差は小さく信頼に値するに違いない。そうすると答弁書の「五について」に書いてあることが正しくないということになるのではないか。
三 答弁書の「四について」で「景気を支えるために政府が需要を積み増す政策はとらないこととしている」。つまり景気対策のための財政出動は行わないことを政府の方針として示したものである。この方針が日本政府の一貫した方針ではないことは明らかである。添付資料の図1(図47)を見ていただきたい。橋本内閣の前期、森内閣、小泉内閣、安倍内閣において財政出動を行わない政策を行ったために、一人当たりの名目GDPの順位が急速に落ちて、日本が著しく貧乏になってしまったが、橋本内閣の後期、小渕内閣のように景気対策のための財政出動を行ったときは、その順位は大きく挽回して日本は豊かになっている。政府はなぜ、日本を豊かにするこのような政策を否定するのか。
四 最近の自由民主党都道府県連に対する日刊紙の調査によれば、財政出動を求める意見は32団体,財政出動を否定する意見は僅か8団体であり、自由民主党都道府県連は圧倒的に財政出動を求めている。このことからも、国民の意見を無視した国の政策が支持されず、前回の参議院選挙で与党が大敗したことが理解できる。政府は今後も国民の声を無視し続けるつもりか。
五 国の借金が増えたのは、デフレからのすみやかな脱却を可能とする十分な経済対策を行わなかったためである。デフレが続く限り、税収も伸びないし、そうかと言って赤字を抑えようとしても歳出の大幅な削減はできず、結局財政赤字が続き、国の借金が増え続ける。しかも名目GDPが増えないために債務のGDP比は増え続ける。プライマリーバランスを黒字にしただけでは、国の債務のGDP比は減らないというノルウェーの例を、添付資料の図2,3(図49,50)に示す。この図より明らかなことは、単にプライマリーバランスを黒字化すれば債務のGDP比が下がるわけではないということについてどう考えるか。
六 添付資料の図4,5(図51,52)にはチェコの例、添付資料の図6,7(図53,54)にはスロバキア共和国の例を示した。大幅なプライマリーバランスの赤字にも拘わらず、債務のGDP比は一本調子に上昇しているというわけではない。チェコの場合、債務のGDP比は30%~40%に留まっており、日本より遙かに低い。スロバキア共和国の場合も同様で2001年に58.9%にまで上昇した後はプライマリーバランスが赤字であるにもかかわらず、債務のGDP比は減少を続けている。これらを見れば日本政府の借金が増え続ける原因は、プライマリーバランスの赤字だけであり得ないことであり、デフレだから増えているのだという結論が正しいことが証明されるのであるが、このことについてどう考えるか。
七 昭和恐慌の際、財政出動により世界で最も早く日本がデフレから脱却に成功し、経済再建をしたことは、世界的にも高い評価を受けている。このときの経済データを添付資料の表1で示した。1931年にはGNPデフレーターは-14.4%のデフレであったが、財政出動の結果景気は回復し1933年には実質GNP成長率は10.1%に達した。債務のGNP比はゆるやかにしか変化をしていないし、1933年にやっと72%になったにすぎず、現在の日本より遙かに低いレベルに留まっている。この頃の財政出動の規模はGNPの10%近くになり、現在で言えば数十兆円レベルの財政出動であるが、それでも債務のGDP比は現在の半分程度に抑えられているわけで、このことからも、現在の国の借金が増えた原因は景気対策を行ったからではなく、デフレの状態が長期に放置したのが原因であることが、確認できるが、このことについてどう考えるか。
八 このように、プライマリーバランスの黒字化が日本の国の借金も問題の解決策になるという考えは、理論的にも経験的にも全く根拠の無い、いわば甘い幻想にすぎないことが結論される。このような甘い幻想にとらわれて、誤った経済政策を行い、その結果、国を貧乏にし、国民を不安に陥れている。このような指摘について、どう考えるか。
提出者 滝 実
添付資料
図1(図47参照) 日本の国民一人当たり名目GDPの国際順位
図2(図49) ノルウェーにおける推移
図3(図50) ノルウェーにおける推移
図4(図51) チェコにおける推移
図5(図52) チェコにおける推移
図6(図53) スロバキア共和国における推移
図7(図54) スロバキア共和国における推移
表1 昭和恐慌からの脱却の経済データ
実質GNP成長率
債務のGNP比
GNPデフレーター
1931年
0.4%
67%
―14.4%
1932年
4.4%
70%
3.2%
1933年
10.1%
72%
5.1%
1934年
8.7%
75%
―1.0%
第11回答弁書
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内閣衆質一六八第七四号 平成十九年十月十六日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問に対する答弁書
一について
年金財政においては、人口や経済の長期のすう勢がどのようになるかが重要であり、少なくとも五年ごとに、法律で定められている保険料率を前提に、社会経済情勢の変化に伴う様々な要素を踏まえて、長期的な給付と負担の均衡を図ることができる給付水準の見通しを示す「財政の現況及び見通し」を作成する旨が法律で規定されている。現在、平成二十一年までに行う「財政の現況及び見通し」の作成に向けて、賃金上昇率等の前提(以下「経済前提」という。) について金融や経済の専門家により検討を行っているところである。
平成十六年財政再計算においては、平成二十年度までの経済前提については、「構造改革と経済財政の中期展望十二〇〇三年度改定参考資料」(平成十六年一月十六日経済財政諮問会議提出)を基に算出している一方、平成二十一年度以降の長期の経済前提については、御指摘の「経済予測シミュレーシヨン」によらず、過去の実績を基礎としつつ、長期間における平均的な経済成長の見込み等を推計する際に一般的に用いられる手法を用いて算出している。
二について
一についてで述べたように、
平成十六年財政再計算における平成二十一年度以降の長期の経済前提は、御指摘の「経済予測シミュレーシヨン」によるものではない。いずれにせよ、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。
三から五まで及び八について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出。歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えており、二〇一〇年代半ばに向け、国と地方を合わせた債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指し、まずは二〇一一年度には、国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することとしている。
また、「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定)等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしており、こうした取組を通じて、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼしていくことが必要であると考えている。
六について
プライマリーバランスが一定であるとした場合、 一般に、物価の下落は、名目GDP成長率を低下させる一方、長期金利の低下を通じて債務の利払い費を減少させる可能性があることから、日本経済がデフレ状況にあつたことが債務残高の名目GDP比の上昇に対してどのような影響を及ぼしたかについては、断定的なことは申し上げられない。
七について
財政支出の増加や減税等を含む累次の経済対策については、日本経済が極めて厳しい状況にあつた中で景気の下支えに一定の効果があったが、財政赤字が拡大した結果として債務残高を増加させたものと考えている。政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきたところである。
第12回質問主意書
平成19年10月19日提出
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標についての第三回質問主意書
提出者 滝 実
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標についての質問に対する平成十九年十月十六日の答弁書(以下「答弁書」という)に関して、再び質問する。
一 答弁書には年金の『平成十六年財政再計算においては、平成二十年度までの経済前提については、「構造改革と経済財政の中期展望――二〇〇三年度改定参考資料」(平成十六年一月十六日経済財政諮問会議提出)を基に算出している一方、平成二十一年度以降の長期の経済前提については、御指摘の「経済予測シミュレーション」によらず、過去の実績を基礎としつつ、長期間における平均的な経済成長の見込み等を推計する際に一般的に用いられる手法を用いて算出している。』とある。平成二十一年までに行う「財政の現況及び見通し」の作成では、内閣府が公表した『日本二十一世紀ビジョン』で使われたモデル、あるいはその改良版が使われると理解していいのか。
二 年金財政においては、人口や経済の長期のすう勢がどのようになるかが重要であるということには同意するが、一〇〇年先まで考慮して現在の年金制度を決めるというやり方には賛成できない。例えば100年前にこのような制度があって、資金を積み立ててくれていたら、一〇〇年前に積み立てた資金が、果たして現在役に立つのだろうか。もちろん、役に立たない。資金を積み立てるより、経済発展に努力したほうが、一〇〇年先の日本を考えるなら余程ましだ。これまでの一〇〇年間には戦争があったから事情は違うとの主張があるかもしれないが、これからの一〇〇年間にはもっと大きな変化が予想される。コンピュータとロボットなど科学技術の発展、食料や資源の枯渇、世界の人口増大、環境破壊など、激変は目に見えており、一〇〇年後の日本の経済状態が予測できるわけが無く、今、積み立てた資金が一〇〇年後に役立つとはとても思えないが、一〇〇年間の計算にどのような意義があるのか。
三 年金財政のみならず、財政全般で「黒字化」が異常に重視され、デフレ脱却や成長加速が忘れられている。例えば『日本二十一世紀ビジョン』の二六五頁には、二〇〇五~二〇三〇年の平均実質成長率がアメリカは三%なのに日本は一.五%程度となっている。もしこの成長率が二十五年続いたら、アメリカ経済は二.一倍になるが、日本経済は一.四五倍にしかならない。一〇〇年続いたらアメリカ十九.二倍、日本四.四倍だから実に四.三倍の差が出てしまう。国が豊かになれば、多く年金が払えるし、貧乏なら年金も少なくなる。経済成長があれば、それだけ政府の負担も国民の負担も軽くなる。答弁書で引用された「構造改革と経済財政の中期展望――二〇〇三年度改定参考資料」を是非読んでいただきたい。二〇〇六年度にはデフレ脱却となっていたし、その一年前の改革と展望には二〇〇五年度にはデフレ脱却するとあった。しかし、経済政策の失敗により、デフレ脱却ができず、今年になって二〇〇七年度もデフレ脱却はできないということになり成長加速も、財政健全化はまたもや先送りとなった。
平成十九年四月二十七日の答弁書でお認めになったように、日本経済の停滞の原因はデフレである。思い切った経済刺激策でデフレを脱却し、日本も諸外国並の経済成長ができるようにし、経済成長による財政再建を目指したらどうか。
四 「六について」で、デフレが債務のGDP比を増やしたかどうか、断定できないとある。しかし、「断定できない」との表現は答弁に窮したためと受け取らざるを得ない。
デフレ下における日本経済において名目GDPの伸びは、ほぼゼロだった。しかし、国債費だけで二十兆円、その約半分は利払いだったわけで金利は下がっても利払いはゼロにはならないから、それだけですでに債務のGDP比は増える。更に資産デフレにより固定資産税の減少等も財政を悪化させる。プライマリーバランスを二十兆円の黒字にすることなど出来るわけが無く、デフレで名目GDPの伸びがゼロなら、債務のGDP比は増えざるを得ない。逆に、財政出動をしても、名目GDPの伸びが拡大すれば債務のGDP比は減少する可能性が出てくる。実際、名目GDPの成長率がゼロでない国は、日本のように債務のGDP比が百数十パーセントにまで増えていない。このことは認めるか。
五 内閣府の堀雅博・青木大樹(二〇〇三)(ESRI Discussion Paper Series No.七十五)という論文には短期金利を固定したまま公共投資をGDPの一%相当額だけ継続的に増やした場合の試算が示されている。これによると、債務のGDP比は初年度は五.五六%減少、二年目は六.三九%減少、三年目は七.五五%減少となっている。日本経済研究センターによる同様な試算でも公共投資の増大により、債務のGDP比は減少するとなっている。政府も同様な試算を行ってみるべきではないか。
六 前回の質問主意書の四では、自民党県連の圧倒的多数が財政出動を求めていることを指摘した。その後、朝日新聞社と東大の合同調査の結果が論座の十一月号(五十五頁参照)に発表され、多くの国民や国会議員が財政出動、公共事業による雇用創出を求めておいることが明らかになった。驚いたことに、答弁書の「三から五まで及び八について」では、プライマリーバランスを黒字化するという方針を述べているだけである。質問主意書では、プライマリーバランスの黒字化が債務のGDP比を下げることに繋がらないと主張しているわけで、このような見当違いの答弁では、質問に対して全く不誠実と言わざるを得ない。これは質問を愚弄するものではないか。
七 「七について」の答弁であるが、昭和恐慌の際の高橋是清蔵相による財政出動が景気の下支えには一定の効果があったとお認めになった。一方では、債務残高増大を指摘しておられる。しかし、債務残高は増大したものの、少なくとも高橋財政政策においては、債務のGNP比は七十%台に留まり、現在の百数十パーセントよりはるかに低い。つまり思い切った財政出動であれば、債務のGDP比はそれほど増やさず景気を回復させることが可能で、その後好景気が持続し、徐々に債務のGDP比は減少していくものと思われる。このことに同意するか。
八 十月十七日の経済財政諮問会議で名目成長率を三.〇%から二.二%に下方修正した場合、二〇一一年度にプライマリーバランス黒字化するには、最大で六.六兆円の増税が必要になるという試算が示されたことがマスコミで大々的に報じられている。成長率が下がり景気が悪くなったら政府は景気を下支えすべきなのに、追い打ちをかけるように増税をして、更に景気を悪くしようとするのは問題ではないか。あの試算は、そのようなことを意図したものなのか。もしそうでないのなら、マスコミがもっと正しく試算の意味を国民に伝えるように、政府もこのような試算の発表の際にはもっと注意を払うべきではないか。
九 十月十七日の経済財政諮問会議で提出された「有識者議員提出資料(給付と負担の選択肢について)」の中の試算Ⅱ(二〇〇七年度~二〇二五年度)で四頁に主要変数の動向が示されている。これを見ると、経済成長をしたほうが、そうでないほうに比べ、GDP比でみた医療・介護公費支出も、社会保障負担も、医療介護保険料もすべて低くなっている。つまり、経済成長が医療・福祉の負担を軽くするのである。だからこそ、政府が現在すべきことは、財政出動を行い、成長率を高めることである。財政出動は間違いなく名目成長率を高める。短期間の財政出動は国の債務を何十パーセントも増やすわけではないが、長期的に見れば、経済成長は、医療・福祉の負担を軽くし、財政健全化に大きな役割を果たすのではないか。
右質問する。
第12回答弁書
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内閣衆質一六八第一三三号 平成十九年十月二十六日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出平成二十年度予算の四十七兆三OOO億円という上限目標に関する第三回質問に対する答弁書
一について
平成二十一年までに行う「財政の現況及び見通し」の作成に用いる賃金上昇率等の経済前提をどのように設定するかについては、現在、社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会において、金融や経済の専門家により検討を行っているところである。
二について
年金制度は、人の一生にわたる非常に長期の制度であることから、少なくとも五年ごとに行う「財政の現況及び見通し」の作成における財政均衡期間(年金財政において収支を均衡させる期間をいう。)をおおむね百年間とすることが法律で定められている。
三及び七について
御指摘の「思い切った経済刺激策」及び「思い切った財政出動」の趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。)等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。また、政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定) 及び基本方針二〇〇七において、歳出・歳入一体改革を実行することとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むことが必要であると考えている。
四について
経済協力開発機構が本年六月に公表した「エコノミック・アウトルック八十一」によれば、イタリア共和国は、 一九九二年以降、名目成長率は二・五パーセントから八パーセント程度で、 一般政府部門の債務残高のGDP比は百十五パーセントから百三十パーセント程度で推移していると承知している。
五について
御指摘の論文において用いられている「短期日本経済マクロ計量モデル(二〇〇三年版)」(以下「短期日本経済マクロ計量モデル」という。) は、経済理論を踏まえ、過去における変数相互の関係を精査した上で作成されたものであるが、これを含めた計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもつて解釈すべきものである。さらに、短期日本経済マクロ計量モデルの主たる目的は、短期の経済変動の分析にあることに留意する必要がある。
「日本経済研究センターによる同様の試算」については、詳細を承知しておらず、評価は差し控えたい。
六について
債務残高の対GDP比率は、国・地方の基礎的財政収支が黒字化する場合においても、名目成長率と名目金利の推移によって増加する場合もあれば、減少する場合もあり、政府としては、「財政健全化はまだ道半ば」であるとの認識に基づき、先の答弁書(平成十九年十月十六日内閣衆質一六八第七四号。以下前回答弁書」という。) 三から五まで及び八についてにおいて「二〇一〇年代半ばに向け、国と地方を合わせた債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指し、まずは二〇一一年度には、国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することとしている」と答弁したものである。
なお、政府としては、基本方針二〇〇七において、予算編成の原則として、景気を支えるために政府が需要を積み増す政策をとらないこととしており、前回答弁書三から五まで及び八についてで述べたとおり、基本方針二〇〇七等に沿って、成長力の強化等に取り組むことを通じて、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼしていくことが必要であると考えている。
八について
御指摘の資料は、給付と負担の選択肢についての議論に資するために、経済財政諮問会議の有識者議員が同会議に提出したものである。
九について
政府としては、少子高齢化が進展する中で、将来にわたり持続可能な社会保障制度を構築するためには、給付と負担の両面から見直しを図るとともに、経済・財政とバランスのとれたものとすることが必要であると考えている。社会保障制度を維持していくためにも、経済成長は不可欠であり、基本方針二OO七等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしているが、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に取り組むことが必要であると考えている。
第13回質問主意書
平成19年10月30日提出
経済成長を加速する具体的な方法に関する質問主意書
提出者 滝 実
平成18年度中にデフレを脱却するということは政府の公約であった。しかし、現実は平成18年度どころか、平成19年度中のデフレ脱却も難しくなったと言われている。一方で平成十九年十月二十六日の答弁書(内閣衆質一六八第一二三号)にて、政府は経済成長の重要性を述べておられた。このことに関連して質問する。
一 現在の日本の名目経済成長率は、OECD30か国の中で群を抜いて最低である。日本の経済成長をこのように低いものとしているのは、平成十九年四月二十七日の答弁書(内閣衆質一六六第一八七号)で政府がお認めになったように、デフレが続いているからである。成長を加速する方法を検討するには、過去の様々な内閣のどの政策が成功したのか、どの政策が失敗したのかを、冷静に分析することから始めるべきであると考える。図1(図55)は、日経平均株価を示している。現在は16000円程度であるが、1989年の最高値38915円と比べれば40%程度までに下がっている。アメリカ等諸外国では、1989年に比べれば株価は数倍に上昇していて、史上最高値を次々と更新しているのに日本経済の低迷のお陰で株価も低迷しているのは明らかである。
歴代内閣別の株価上昇率を年率に直して図2(図21)に示した。この図より、株価に関して言えば、小渕内閣の積極財政が最も優れていたということを示している。一人当たりの名目GDPの国際順位を図3(図49)で示したが、やはりここでも小渕内閣の積極財政が日本を豊かにしたことが分かる。
小渕内閣は1998年7月から2000年4月までであったが、発足時の1998年度の実質GDP成長率は-1%というひどい状態であったものの積極財政が功を奏し1999年度には0.9%、2000年度には3.0%にまで、経済は急回復した。―1%から+3%まで押し上げたという、これだけの経済の大躍進は、最近の内閣では見られなかったものである。内閣府の『日本21世紀ビジョン』では、2005年~2040年の日本の平均実質GDP成長率が1%半ばとしている。これは緊縮財政が前提であり、積極財政に転換すれば、日本でも3%成長という高成長が実現するということである。
このような過去の実績によれば、デフレ下における積極財政は、国を豊かにすることを示していると思うが、同意するか。
過去の実績にもかかわらず内閣府の経済財政モデルのシュミレーションンは積極財政が寄与するはずの経済成長効果について低い評価しか示さないのは、そのような数値を示すような経済財政モデルに作り上げているとしか考えられない。そこでモデルの見直しをすべきではないか。
二 多くの人の懸念は、積極財政によって借金が増えるのではないかということである。小渕内閣の1999年度は新規国債発行額は37.5兆円、2000年度は34.6兆円だから、小泉内閣の時代と大差はない。実質3.0%まで伸ばせたのだから、あの積極財政を続けていたら、やがてデフレ脱却が可能となりデフレーターがプラス2%程度に、つまり名目5%成長が可能となったであろう。そうすれば国の債務のGDP比は減ってくる。GDPが5%増大すれば、それは債務のGDP比の分母が5%増大するから比自身は4.77%減るわけである。もし債務のGDP比を分子である債務を4.77%減少させようと思えば債務を4.77%減らさなければならない。800兆円の債務の4.77%は38兆円であり、1年間で38兆円の債務を減らすことはできない。つまり、積極財政で成長を加速すれば簡単に債務のGDP比を継続的に減らすことができるのに、緊縮財政では債務でGDP比をこのように継続的に減らすことは不可能である。このことに同意するか。
三 資産デフレにより失われた資産は千数百兆円だと言われている。阪神淡路大震災の被害は10兆円程度と言われており、その百倍以上の損害である。あの規模の大震災に100回以上も日本列島が襲われたほどの損失が出たのに、民間の力だけで立ち直れと言うのは無責任ではないか。図4(図6)では、銀行貸し出し残高の推移である。資産デフレで不動産価格が下落し担保価値が下がり、貸し出しが減った。これだけで、百数十兆円ものお金が市中から消えた。まるでブラックホールに吸い込まれるがごとく、お金が消えたわけだ。お金が消えれば、国民は物を買えなくなる。だから、物が売れなくなり、投げ売りが始まりデフレとなっている。このようなときに、消えたお金の穴埋めのため、お金を増やしてやれるのは国だけである。つまり、デフレ時には国には、消えたお金の穴埋めをする義務がある。それをしないから、いつまでたってもデフレ脱却ができず、お金がなければ設備投資もできず、旧式の機械をいつまでも使わざるを得なくなり、生産性が上がらないから、日本はどんどん貧乏になる。我々の次の世代に惨めな思いをさせたくなければ、一刻も早くデフレを脱却しなければならないと思うが、このことに同意するか。
四 2001年にノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツが2002年に来日し、財務省でも講演をした。彼の提言は政府貨幣を発行し、それを財源に減税等に使うということであった。デフレで消えたお金の穴埋めをするという意味では最も分かりやすい提案であり、これは政府の借金を増やさないし、むしろ減らすことができる。しかし、現実には、政府貨幣発行で国の歳入になるのは、貨幣流通残高の95%相当額のみと法律で決められており、これを変えないと効果が薄いということと、政府貨幣発行を一旦許すと歯止めがきかなくなるかもしれないという不安が残るということで、実現までのハードルは高い。一方、実現が容易で、これと同様な効果があるのが、日銀が長期国債を市場から買い入れ、それと同額の国債を発行し、それを財源として減税なり、財政拡大なりを行い、「消えたお金の穴埋め」をするということである。この提案はバーナンキFRB議長や、ノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソン、クラインなど多数の経済学者等が提案している。日銀は、「保有する長期国債の残高の上限を日銀券発行残高とする」という自主規制を保持しているが、バーナンキ氏はこの自主規制を止めるよう勧めている。これらの提案をどのように考えるか。
五 このような消えたお金の穴埋め策は、小渕内閣や高橋是清蔵相等が成功裏に成し遂げた景気刺激策の再現であり、計量経済学に基づいた周到な準備を行っていれば決して過度のインフレに陥ることのないようにできるし、消えたお金の穴埋めという意味で、決して財政規律の崩壊などにあたらない。これにより日本経済が発展すれば円の価値も、日本国債の格付けも上がるのは間違いないところであり日本経済の没落を止める特効薬になると思うが、このことに同意するか。
右質問する。
図1(図55)
図2(図21参照) 内閣別株式の年率の増加率
図3(図47参照) 一人当たりの名目GDPの国際順位
図4(図6参照)
第13回答弁書
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内閣衆質一六八第一七七号 平成十九年十一月九日
内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議員滝実君提出経済成長を加速する具体的な方法に関する質問に対する答弁書
一について
衆議院議員滝実君提出平成二十年度予算の四十七兆三OOO億円という上限目標に関する再質問に対する答弁書(平成十九年十月十六日内閣衆質一六八第七四号)においてお答えしたとおり、御指摘の財政支出の増加や減税等を含む累次の経済対策については、日本経済が極めて厳しい状況にあった中で景気の下支えに一定の効果があったが、財政赤字が拡大した結果として債務残高を増加させたものと考えている。
二について
政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)及び「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二OO七」という。)において、歳出・歳入一体改革を実行することとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むことが必要であると考えている。
三について
政府としては、基本方針二〇〇七において述べているとおり、「再びデフレに戻ることのないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させる必要がある」と考えている。
四及び五について
日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。なお、日本銀行による長期国債の保有は、日本銀行の負債である日本銀行券の発行残高の範囲内で、安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。
第14回質問主意書
平成19年11月30日提出
経済成長を加速する具体的な方法に関する再質問主意書
提出者 滝 実
前回の質問主意書に対する、答弁書(内閣衆質一六八第一七七号、以下「答弁書」という)は、質問に対する答えになっていない。前回の質問主意書は、我が国の極めて厳しい財政状態を改善するための具体的な方法を示したのであり、その方法に対する政府の見解を求めているのに答弁書にはそれが書かれていない。したがって再度質問する。
一 答弁書の「一について」で述べられたことは、過去の景気対策は、効果はあったことは認めるが、債務残高を増加させたという欠点があったということである。債務残高は、GDPの拡大に伴い増加するのは当然のことである。企業であっても、規模が拡大すれば、債務残高も増大するが、債務残高の増大が必ずしも悪いわけではない。これは国家でも同様である。橋本内閣、森内閣、小泉内閣、安倍内閣など、どの内閣でも債務残高を増大させた。債務残高を増やす経済政策が悪いとするなら、橋本、森、小泉、安倍の四内閣の経済政策も同様に悪かったということになる。福田内閣でも債務残高そのものを減少させるという公約をしていない。平成十九年一月十八日経済財政諮問会議発表の『進路と戦略』を見ても、債務残高は常に増大し続けるとなっており、基礎的財政収支の黒字化は目標としていても、債務残高そのものを減らすという目標は聞いたことがない。したがって答弁書の「一について」で、小渕内閣の積極財政は債務残高を増やしたから良くなかったという主張は間違いではないか。
二 前回の質問を、もう一度読んでいただければ、お分かりになることだが、債務残高の増減について問題にしているわけでない。問題にしているのは、債務残高のGDP比であり、それは積極財政により減らすことができると主張しているのである。債務残高のGDP比ではなく、債務残高を減らすのが政府の目的であれば、単にデノミをやればよいだけである。一〇〇円を一円とすれば八〇〇兆円は八兆円に減る。それではGDPも減ってしまうので何の意味もないと誰もが知っている。
この例から分かるように、債務残高そのものを減らすということには何の意味もない。実際に政府が減らしたいと思っているのは、債務残高そのものではなく、債務残高のGDP比ではないのか。
なお、参考までに書いておくと、平成十八年三月八日の参議院予算委員会で秋元司議員の質問に答えて谷垣財務大臣が債務そのものでなく、債務のGDP比を圧縮していくという意味の発言をされている。
三 答弁書の「二について」では「我が国の極めて厳しい財政状態」「財政の持続可能性に対する疑念」と指摘されている。これは何を意味するのか。新規国債の発行はもう限界に近く、財政は持続可能ではないということか。そうであれば、あと何兆円か発行すると、それ以上国債は発行できなくなり、国自体が「財政再建団体」になるという意味か。具体的にあと何兆円かを示していただきたい。
あるいは、将来既発国債の償還に応じられなくなる可能性があるというのか。そうであれば、国債を売るときに、「この金融商品の元本は保証できません」と国民に納得してもらってから売らなければならないのではないか。
そうではなく、国債発行は際限なくでき、国債は一〇〇%安全というのであれば、我が国の財政状態が厳しいことを強調せず、財政は持続可能であると宣言すべきではないか。
四 財務省のホームページによれば、現在の財政状態を一ヶ月分の家計に例えば場合、収入が四〇万円、ローン利払い十五万円、家計費三十三万円、田舎への仕送り十万円、不足分(借金)十八万円、ローン残高四六〇〇万円とある。
そのような例示をするならば、この家庭は、あとどれだけ借金ができるというのか。あるいは、あと何年でこの家庭は自己破産に追い込まれる見込みであるというのか。近く破産する見込みであれば、借金の返済が危ないということを表示すべきである。
全く危なくないというのであれば、『この家庭は金持ちのスポンサーがいて際限なくローンができる家庭です』という注釈をこのホームページに書いておかないと、国の財政を家計に例えることはできず、国民を騙すことになる。
この家庭に金持ちのスポンサーはいない一般の家庭なのであれば、自己破産寸前であり、債権が危なくなっていますよ(国債は危ないですよ)と国の内外にアピールしなければならないはずだ。
要するに、国債を国民に売りつけるときは、この国債は絶対安全ですと言い、一方、増税・歳出削減を国民に押しつけようとするときは、財政が危ないから国債が危ないと言う。これを二枚舌というのではないか。「我が国の極めて厳しい財政事情」という意味を、国民誰もが分かるように説明していただきたい。
五 答弁書の「二について」では、質問した事に関する答弁を全く行っていない。引用された基本方針二〇〇七においては、歳出削減と増税のことが書かれているだけで、そのようなデフレ下での緊縮財政では債務のGDP比は増加せざるを得ないから、決して財政健全化はできない。しかし、もし積極財政に転じれば、GDPが増加し債務のGDP比が減少し、財政が改善するのではないかということを前回の質問主意書でお訊ねした。この質問に対する明確な答弁を頂きたい。
六 答弁書の「四及び五について」で、日本銀行の長期国債保有のあり方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄であるとあるが、平成十九年二月二十三日の答弁書(内閣衆質一六六第六二号)で述べられたように、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第二条第一項において、自主性は尊重されなければならない旨が規定されているとともに、同法第四条において、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定されている。したがって、政府と日銀が一体となって、デフレを克服のために協力するのは当然である。
日銀が長期国債保有を増やすべきだというのは、バーナンキ氏、サミュエルソン氏、クライン氏等の世界を代表する経済学者の意見であり、そうすることなしに財政健全化はあり得ない。
景気がよくなれば、長期金利は五%程度まで上昇するし、その程度上昇しないと本格的な景気回復とは言えない。単純計算では八〇〇兆円の国の債務に対する五%の利払いは四〇兆円になり国税の大半は利払いで消えることになる。そういう事態を避けるという目的で、長期金利を上げないようにするため景気を悪くしたままにしておくのであれば、それは本末転倒である。そういう事態を避けるためには、上記海外の識者のアドバイスに従って、日銀の国債保有を増やすしかない。昭和恐慌の際には、それで成功したように、政府は日銀の国債保有の方向を取るべきではないのか。
七 十一月三日に額賀財務大臣が早大で消費税増税を訴えたとのことである。質疑応答では、社会保障水準を維持するには消費税換算で最大十七%へ引き上げる必要があると述べたように報道されている。額賀大臣の発言が事実としたら、大臣は内閣府の試算を誤解しておられるのではないか。
平成十九年十月十七日に経済財政諮問会議に提出された「有識者議員提出資料」には、試算Ⅱの十一.四兆円削減、給付維持・負担上昇、制約ケースの場合の増税必要額三十一.〇兆円を示しているので、消費税一%を二.五兆円と仮定し単純計算して十七%の消費税だとしたものと推測される。しかし、二〇二五年度には、名目GDPは二〇〇六年度の一.五倍近くになっており、消費税一%は三.七兆円程度になっているはずであり、この値を使って計算すると十三%となり、財務大臣の発言した数字は間違いではないのか。
また「有識者議員提出資料」には。増税必要額は最大で三十一.〇兆円、最小で八.二兆円となっているが、この増税必要額の算出には到底受け入れ難い仮定がなされている。例えば、下記①②③で述べるような仮定のもとに計算するのが自然であるが、これによれば増税必要額の符合がマイナスとなり、逆に減税が可能となるのではないか。
① 短期金利を若干低めに誘導する
② 不自然に低い乗数を、過去のデータが再現できるようなものに置き換える(内閣府の現在のモデルで使われるような乗数では小渕内閣の積極財政による結果が説明できない)
③ 日銀の国債保有残高を増やし、利払いを国庫に環流させる。
さらに、三十一兆円もの大増税をすれば、日本経済は致命的な大打撃を受け、企業倒産が相次ぎ、国は貧乏になってしまうのは明らかであり、敢えてこのような数字を示すことは政府の統治能力が失われていることを宣言するに等しく適切ではないのではないか。
右質問する。
第14回答弁書
内閣衆質一六八第二五九号 平成十九年十一月三十日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出経済成長を加速する具体的な方法に関する再質問に対する答弁書
一について
衆議院議員滝実君提出経済成長を加速する具体的な方法に関する質問に対する答弁書(平成十九年十一月九日内閣衆質一六八第一七七号。以下「前回答弁書」という。) 一についてにおいては、財政赤字が拡大した結果として国と地方を合わせた債務残高が増加した旨を答弁したところである。なお、その間、国と地方の債務残高の増加率が名目GDP成長率を上回ったことから、債務残高のGDP比は上昇した。
二について
政府としては、衆議院議員滝実君提出平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問に対する答弁書(平成十九年十月十六日内閣衆質一六八第七四号) 三から五まで及び八についてでお答えしたように、二〇一〇年代半ばに向け、国と地方を合わせた債務残高のGDP比を安定的に引き下げることを目指すこととしている。
三及び四について
我が国の財政については、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定) において、「政府債務残高GDP比は二〇〇七年度(平成十九年度)百四十一.一パーセント程度と見込まれ、主要先進国の中でひときわ厳しい状況となっている」とされており、また、金利は経済情勢や市場における期待にも大きく左右され、正確にその動向を見通すことは困難ではあるものの、金利上昇により国債費が増加するなど財政負担が拡大するおそれがあることから、金利変動に対し脆弱な状況にある。
政府としては、我が国の国債について、市場からの信認を維持し、将来の発行に支障を来すことのないよう、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二OO六」(平成十八年七月七日閣議決定)及び「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。)で示された歳出・歳入一体改革の実現に向け、正面から取り組むことが必要であると考えている。
五について
御指摘の基本方針二〇〇七においては、「経済成長を維持しつつ、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出改革に取り組む。(中略) こうした取組を進め、二〇一一年度における基礎的財政収支の黒字化や、二〇一〇年代半ばに向けての債務残高GDP比の安定的な引下げなど、「進路と戦略」に定められた中期的な財政健全化の目標を確実に達成する」こととしている。政府としては、このような方針の趣旨について、前回答弁書二についてにおいて「我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)及び「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。) において、歳出・歳入一体改革を実行することとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組む必要があると考えている」と答弁したところである。
六について
日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。
なお、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四条においては、日本銀行は「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定しているところ、日本銀行総裁が政府の経済財政諮問会議において意見を述べ、政府の代表者が日本銀行の金融政策決定会合において意見を述べるなど、政府と日本銀行との間では十分な意思疎通が行われているものと考えている。政府としては、基本方針二○〇七に沿って「再びデフレに戻ることのないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させる必要がある。」こととしており、また、政府及び日本銀行は、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、 一体となった取組を行うこととしている。
七について
平成十九年十一月三日の早稲田大学における額賀財務大臣の講演の際には、聴衆から消費税率を十七パーセントに引き上げることについての意見が表明され、その旨が報道されたと承知しているが、財務大臣が消費税率の十七パーセントヘの引上げの必要性を述べたとの事実はない。
御指摘の資料は、給付と負担の選択肢についての議論に資するために、経済財政諮問会議の有識者議員が同会議に提出したものであり、御指摘の資料における増税必要額は、二〇二五年度における増税必要額を、名目GDPの伸びを用いて、二〇〇七年度の水準で評価したものである。試算に当たっては、経済理論を踏まえ、過去における変数相互の関係を精査して作成された「経済財政モデル(第二次改定版)」(平成十九年二月内閣府公表。以下「経済財政モデル」という。)が用いられている。
御指摘の短期金利の「誘導」及び日本銀行の国債保有残高については、日本銀行が決定すべき事項であるが、経済財政モデルにおいては、金融政策に関しては、過去の統計的な関係に基づき、一定の機械的な想定の下で内生的に決定される関係を設定している。 また、経済財政モデルにおける乗数表は、試算の前提として設定されたものではなく、このようにして作成された計量経済モデルによる計算結果を示すものである。
第15回質問
平成19年12月4日提出
日本の景気悪化と増税に関する質問主意書
提出者 滝 実
原油価格の高騰、食料品の値上げ、住宅着工の大幅減、アメリカ経済の調整懸念、平均給与の9年連続の下落、デフレの継続、有効求人倍率の低下、世界で群を抜いて低い経済成長率など、引き続く不況の中でインフレが進行するという国民にとっては忍耐できない経済状態にも拘わらず、額賀財務大臣は増税の必要性について発言しておられる。このことに関し質問する。
一 財務大臣が増税を語るときのアナウンス効果は絶大である。それを聞いた国民は将来の増税に備えて、消費を控え、それが景気を冷やすのは間違いない。消費は日本のGDPの55%を占めているのであるから、消費減退はGDPを下げ、デフレを悪化させ、税収も減らし、財政も悪化させてしまうのではないか。ねじれ国会では、増税法案は成立しない可能性がある反面、アナウンス効果だけは確実にあり、不必要に景気を後退させる危険があるのではないか。
二 現在の日本において、GDPを下げることはよいことなのだろうか。図1(図56)を見て頂きたい。OECD加盟30カ国の中で、日本は著しく成長率が低い。日本を除くと、最低がドイツだが、それでも3.2%であり、それに対して日本は1.3%にすぎない。10月30日に内閣府が発表した確報値は、0.3ポイント上方修正され1.6%となったが、それでもまだ低すぎる。今は国を挙げて成長率を高めなければならぬ時であり、景気を冷やすような発言は財政健全化という意味まで含めて有害無益ではないか。
三 世界各国は自国の経済成長を高め、国を豊かにする努力を行っている。例えばアメリカにおいては、2003年5月28日に、今後10年間で3500億ドル(およそ41兆3000億円)の減税をするという法案が成立している。フランスでは2007年7月16日、2兆円近い減税法案が成立した。図2(図57)で示したように、アメリカやフランスは、日本よりはるかに高い経済成長率であるのにも拘わらず、更に高い経済成長を目指して需要喚起のための財政出動をしているのである。ブッシュ大統領や、サルコジ大統領が日本のリーダーであったら、間違いなく増税でなく、減税を行って、経済成長率を高めると思うがどうお考えか。また、我々の次の世代のことを考えても高成長で国を豊かにする必要があるのは疑う余地もないが、このことを考えないのか。
四 平成十九年四月二十七日の答弁書(内閣衆質一六六第一八七号)でお認めになったように、日本の経済停滞の原因はデフレである。図3(図23)にデフレによる資産価値の下落を示した。ここに示したのは失われた資産の一部(土地)であるが、1990年度には2456兆円であったものが2005年度には半分以下の1214兆円にまで下落し、これだけで実に1232兆円もの資産が失われている。これだけで阪神淡路大震災の損害額の100倍以上であるから固定資産税など税収も減り財政が悪化するのは当然である。国の経済政策の失敗で、このような大損害を国民に与えた後で、更に増税という形でデフレを加速させ、被害を増やすことは、我々の次の世代に大きな負荷になるに違いない。デフレ脱却を政府の最優先課題にすべきだと考えるが、デフレ脱却の公約が達成できない政府の責任をどう考えるのか。
五 デフレが解消され一旦、普通の国のようにディマンドプルの微弱で緩慢な物価上昇が達成できれば、税収が増え、必ず財政も改善してくる。デフレ解消のためには財政出動が不可欠である。森内閣までは財政出動を行っていた。しかし図3(図23)で示したような、大規模な資産デフレを止めるには不十分な規模であった。それでもそれなりの確かな効果はあった。このことは、すでに平成19年10月30日提出の質問主意書にて説明した。小泉元首相は財政出動に反対したが、小泉内閣が行ったデフレ下での緊縮財政という誤った政策のお陰で、デフレ脱却に失敗しただけでなく、日本における一人当たりの名目GDPの国際順位は大きく下がってしまった。それでも、それ以後の内閣は何故に小泉内閣に盲従して緊縮財政を続けなければならないのか。
六 日本がデフレ脱却に失敗し、低金利が続いているために、円キャリー・トレードが発生し、それがサブプライムローン問題を引き起こし、世界経済を混乱させているとの指摘がある。日本は自国の事のみ考えるのでなく、世界経済の健全なる発展に貢献するためには、一刻も早くデフレ脱却をしなければならないと考えるが政府がそのような経済政策を展開できないのは米国政府からの要請に基づくのか。
七 小泉内閣の経済政策の妥当性を検証するために、日経新聞社と共同で行われた試算を紹介する。使われたのは日経の日本経済モデルであり、その結果を図4~図6(図9,図12,図13)で示す。結論は、もしも財政出動が行われていたら、GDPは大きく伸び、デフレは解消され、国の債務のGDP比は下がり財政は健全化するという結論に達している。ただし、財政出動の規模が小さければ、それなりの改善はあるものの、デフレ脱却も財政健全化も完全にはできないということになる。これは小渕内閣の経済政策で起こったことを見事に説明している。このことをどう考えるか。
なお内閣府のシミュレーションは、決定係数が小さすぎるために「大きな誤差を伴い、相当の幅をもって解釈をしなければならない」し、専門家の評価も極めて低く参考にはならないが、日経新聞社のモデルは、内閣府のものより決定係数も高く、誤差もずっと小さいから、内閣府のものよりはるかに信頼ができることを強調しておきたい。
八 小泉内閣の経済政策について、海外の識者は、日銀は国の借金を買い取るべきだと主張している。
例えば、バーナンキFRB議長は、「日銀は国債の買い取りを増やして、減税あるいはその他の財政政策を行うべきだ。日銀の長期国債の保有額は発行済みの日銀券残高を限度とするという日銀の自主規制は撤廃するべきだ。」とし、
ローレンス・R・クライン (ノーベル賞を受賞した経済学者)は、「私の提案は、通貨の膨張です。日銀は政府の借金(国債)を買い取るべきです。減税をやるとよい。しかし、このような財政政策と共に教育への投資も増やすべきだ。」とし、
ポール・サミュエルソン (ノーベル賞を受賞した経済学者)は、「3年間の新たな全面的な減税政策を実施するように提案する。今後も継続して行われる公共投資は、日銀が新たに増刷する円によって行われるべきだ。」としていた。
最近も12月1日の静岡新聞に「消費税引き上げに反対」というタイトルでサミュエルソン氏が提案を寄せている。提案の前半は日本のデフレが危険なキャリー・トレードを出現させていると指摘し、後半は「日本の与野党、政府機関、そして有権者は、1990年以降の長い眠りから覚める必要がある。もし日本の企業と家庭がカネを使わなければ、景気を刺激し、同時に日本の美しい国土の生態環境を改善し、優秀な大学をさらに充実させる雇用創設の方法を他に求めなければならない。
これは単なる経済学の理論ではない。1930年代、不況に陥っていた米国とドイツの人々に最終的に繁栄をもたらしたのは、意図的な赤字財政支出であった。
1933-1939年、米国労働者の二人に一人が失業していたが、1940年には文字通り完全雇用を達成した。この失業率を下げたのは、ルーズベルト大統領の計画的な赤字支出であった。確かに日本の公的債務はすでに巨額である。だが、その債務に対する利子支払いの費用がゼロ金利でいかに低く抑えられてきたか、このことも忘れてはならない。
現代においては、過度の正当派的財政は悪しき財政政策と言わざるを得ない。フランスはそれを八十年前に学んでいる。」としている。
このような識者の提案に、日本政府も真摯に耳を傾ける時期に来ているのではないか。
右質問する。
図1(図56) 出所 OECD Economic Outlook No.81
図2(図57) 出所 OECD Economic Outlook No.81
ただし、2007年の日本の名目成長率は民間15機関の予測の平均値
図3(図24参照) 出所:国民経済計算 有形非生産資産
図4(図9参照) 日経新聞社の経済モデルによる実質GDP
図5(図12参照)日経新聞社の経済モデルによる消費者物価指数
図6(図13参照)日経新聞社の経済モデルによる国・地方の債務残高のGDP比
第15回答弁書
内閣衆質一六八第二九四号 平成十九年十二月十四日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出日本の景気悪化と増税に関する質問に対する答弁書
一、二及び五について
政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定)及び「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。)において、歳出・歳入一体改革を実行することとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むこととしている。
その際には、歳出改革・行政改革を実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにするため、国民的な合意を旧指して、本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組むこととしている。
また、政府としては、基本方針二〇〇七において述べたとおり、「再びデフレに戻ることのないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させる必要がある」と考えており、基本方針二〇〇七等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。
三について
ブツシュ大統領やサルコジ大統領が我が国の経済財政運営を行うという仮定を置いてのお尋ねについては、お答えすることは困難である。また、政府としては、 一、二及び五についてで述べたとおり、基本方針二OO七等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしている。
四について
政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきたところであり、日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。政府として、海外経済の動向などにみられるリスク要因を考慮しつつ、このデフレ状況に戻る可能性がないかどうか、注視していく必要があると認識している。
六について
我が国の経済政策の運営については、内外の経済情勢に対し、我が国が主体的に判断し、適切に実施しているところである。
七について
御指摘の試算については、詳細を承知しておらず、評価は差し控えたい。
八について
日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。なお、日本銀行による長期国債の保有は、日本銀行の負債である日本銀行券の発行残高の範囲内で、安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。
また、財政運営に対する政府の考え方については、一、二及び五についてで述べたとおりである。
第16回質問
平成十九年十二月四日提出
我が国の財政の持続可能性に関する質問主意書
提出者 滝 実
平成十九年十一月三十日の答弁書、内閣衆質一六八第二五九号の中の「五について」で、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念が高まるとの記述があった。このことについて質問する。
一、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば財政は破綻すると、政府は考えているのか。
右質問する。
第16回答弁書
内閣衆質 168第293号 平成十九年十二月十四日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出我が国の財政の持続可能性に関する質問に対する答弁書
一について
我が国の財政については、「日本経済の進路と戦略」(平成十九年一月二十五日閣議決定)において、「政府債務残高GDP比は2007年度(平成十九年度)百四十一・一パーセント程度と見込まれ、主要先進国の中でひときわ厳しい状況となっている」とされており、また、金利は経済情勢や市場における期待にも大きく左右され、正確にその動向を見通すことは困難であるものの、金利上昇により国債費が増加するなど財政負担拡大するおそれがあることから、金利変動に対し脆(ぜい)弱な状況にあると考える。
政府としては、我が国の国債について、市場からの信認を維持し、将来の発行に支障を来すことのないよう、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成十八年七月七日閣議決定)及び「経済財政改革の基本方針2007」(平成十九年六月十九日閣議決定)で示された歳出・歳入一体改革の実現に向け、正面から取り組むことが必要であると考えている。
第17回質問
平成19年12月10日提出
教育予算削減と学力低下の関係に関する質問主意書
提出者 滝 実
十二月四日にOECDは、学習到達度調査の結果を発表し、日本の学力が大きく低下したことが分かった。二〇〇四年の日本の教育予算はGDP比で加盟三十か国中ギリシャに次いで下から二番目であることも発表されている。このことについて質問する。
一 日本の学力低下の原因の一つが、教育予算削減にあるのではないのか。
二 上位にランクするフィンランド、カナダ、韓国、香港等はコンピュータを使った学習が盛んであるが、それが学力向上に成果を上げているのではないか。
右質問する。
第17回答弁書
内閣衆質一六八第三一〇号 平成十九年十二月十八日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出教育予算削減と学力低下の関係に関する質問に対する答弁書
一について
文部科学省としては、経済協力開発機構が二千六年に実施した「生徒の学習到達度調査」(以下「PISA二千六」という。) の結果から、我が国の生徒については、科学への興味及び関心、読解力、数学に関する知識及び技能を実際の場面で活用する能力等に課題があると考えているが、PISA二千六及び経済協力開発機構が二千七年に公表した「図表で見る教育(二千七年版)」においては、教育予算と生徒の学力との関係に関する調査は行われておらず、教育予算と生徒の学力との関係について一概にお答えすることは困難である。
二について
児童及び生徒の学力の向上については様々な要因が考えられ、コンピユータを使った学習と児童及び生徒の学力との関係について一概にお答えすることは困難であるが、文部科学省としては、コンピユータ、インターネット等の情報通信技術を学校教育に効果的に活用することは、基礎的・基本的な知識及び技能の習得、思考力、判断力及び表現力の育成等につながるものと考えている。
第18回質問
平成19年12月15日提出
内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性について
提出者 滝 実
政府は、内閣府の計量経済モデルについて、誤差が大きくて政策決定には使えないといった意味の発言を繰り返して行っている。しかし、詳細に調べてみると、単に誤差が大きいだけではなく、政治的に大きく歪められているという実態が浮かんでくる。このことについて質問する。
一、例えば、毎年1月に発表される『改革と展望』や『進路と戦略』では、景気は回復に向かっていると言い、デフレ脱却は近いと書いてある。GDPデフレーターについてまとめてグラフにしたのが、図1(図58)である。各グラフの近くに書かれた数字は発表年である。2002年から2007年まで6年分のデータをここに示した。どのグラフも急激なGDPデフレーターの改善を予測し、景気の回復を印象づけたものと思われる。しかし、実際のデフレーターは2001年度が-1.2%で2006年度が-0.7%だから5年間で0.5%しか改善していない。平均を取れば年率の改善率は僅か0.1%である。もしも内閣府の発表が、政治的に一切歪められていなければ、年率の改善率は実際の値である0.1%の前後でばらつくはずである。実際に発表された、年率の改善率(3年間に限る、例えば2002年に発表されたものだと、2004年の予測値から2001年の値を引き3で割っている。)は、2002年のものが0.77%、2003年が0.57%、2004年が0.67%、2005年が0.80%、2006年が0.73%、2007年が0.5%となっている。つまり実際の改善率の、実に5~8倍もの速度でデフレ脱却が進んでいると、現実とは遠くかけはなれた発表をしている。これではまるで「計量経済モデル予測に偽装が行われている、大本営発表だ。」と言われてもおかしくないのではないか。「予測しがたい要素が多いから」と言いたいのだろうが、しかしそのような要素はプラスにもマイナスにもはたらくわけで、6年連続で5~8倍にもなるということはあり得ないことではないか。
右質問する。
図1(図58)
第18回答弁書
内閣衆質一六八第三三二号 平成十九年十二月二十五日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性に関する質問に対する答弁書
一について
各年度の構造改革と経済財政の中期展望や日本経済の進路と戦略(以下「中期方針」という。) の参考試算の作成に当たっては、従来より、中期方針における政策運営等の考え方を前提に、それぞれの時点で入手可能な情報を基に、慎重に分析、検討を行い、的確な経済の展望を示すよう努めているところである。我が国の経済は民間活動がその主体をなすものであること、国際環境の変化には予見し難い要素が多いこと等にかんがみ、こうした展望は、相当の幅を持って解釈すべきものである。
第19回質問主意書
平成20年2月7日提出
道路投資の経済効果に関する質問主意書
提出者 滝 実
平成十九年十一月十九日に発表された道路の中期計画(素案)によると道路投資一兆円の経済効果として十年間でフロー効果約一.〇兆円、ストック効果約一.六兆円の計約二.六兆円とあり、また税収の増加が約〇.四五兆円となっている。これに関連して質問する。
一 この経済効果は、どのような経済モデルによって試算したものか。
二 この試算によると道路投資は、投資額以上にGDPを増加させることになるが、内閣府の経済モデルと整合性があるのか。
三 道路投資のうち用地買収に充てる二二〇〇億円を経済効果の計算から除外している。この資金が民間に回ればGDPを押し上げると思われるが、それに関する試算を行っているか。
右質問する。
第19回答弁書
内閣衆質一六九第六二号 平成二十年二月十九日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出道路投資の経済効果に関する質問に対する答弁書
一について
平成十九年十一月十二日に国土交通省が発表した「道路の中期計画(素案)」(以下「素案」という。)で示した経済効果は、道路投資そのものがもたらす需要創出効果であるフロー効果と、整備された道路の供用がもたらす生産力拡大効果であるストック効果の両方を推計できるように開発されたマクロ計量経済モデルによって推計したものである。
二について
一についてで述べたマクロ計量経済モデルは、道路投資の経済効果の推計を目的としたものであり、道路整備のフロー効果だけでなく、ストツク効果も併せて推計できるように開発されているが、例えば、内閣府のマクロ計量経済モデルにおいて内生的に決定される金利等については、省略又は外生変数としている。一方、内閣府のマクロ計量経済モデルは、短期の経済変動の分析又はマクロ経済及び財政の展望等を試算することを主な目的としており、道路投資のみの経済効果を抽出し試算することは行っていない。このような違いがあることから、単純に双方のマクロ計量経済モデルの試算結果を比較することは困難である。
三について
素案で示した経済効果の推計に当たっては、用地補償費によるGDPの増加額の推計はしていない。
第20回質問主意書
平成20年2月14日提出
内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性に関する再質問主意書
提出者 滝 実
平成19年12月17日に提出の内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性に関する質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一六八第三三二号。以下「答弁書」という。)は、全く納得できない。
質問は、政府の計量経済モデルが意図的に実際の5~8倍もの速さでデフレ脱却が進むように偽装されていると言われても仕方ないものではないかというものであり、それを明確に証明するグラフを示した。しかもその「偽装」が6年も連続して繰り返されているのではないかという驚くべき事実を示した。
それに対する答弁書には、デフレ脱却が達成できなかった理由として、「国際環境の変化には予見しがたい要素が多い」ことが挙げられている。つまり世界の経済状態が予想以上に悪かったとの弁解だ。世界はこの30年間で最もよい経済環境にあると言われていたのを知らないとでも言うのだろうか。図1(図23)を見て頂きたい。外需が急拡大しているのがよく分かる。この事実がありながら世界の経済状態が悪すぎたため予測が大きく外れたと言えば世界の笑いものになるだけだ。そこで質問する。
一 世界の経済状態が予想より悪すぎたために下方修正を6年も連続して繰り返したという弁解をするのであれば、政府は事前にどのような外需拡大を予想していて、その予想が外れたことが、何%デフレーターの下方修正につながったのかを6年間それぞれの場合に対し別々に説明していただきたい。
右質問する。
図1(図23参照)
第20回答弁書
内閣衆質一六九第九一号 平成二十年二月二十二日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性に関する質問に対する答弁書
一について
衆議院議員滝実君提出内閣府の計量経済モデルが政治的に歪められている可能性に関する質問に対する答弁書(平成十九年十二月二十五日内閣衆質一六八第三三二号)においては、我が国の経済は民間活動がその主体をなすものであること、国際環境の変化には予見し難い要素が多いこと等にかんがみ、各年度の構造改革と経済財政の中期展望や日本経済の進路と戦略(以下「中期方針」という。) の参考試算において示される経済の展望は、相当の幅を持って解釈すべきものである旨を答弁したところであり、御指摘のように「世界の経済状態が予想より悪すぎたために下方修正を六年も連続して繰り返した」との旨を答弁したものではない。なお、各年度の参考試算の作成に当たっては、従来より、中期方針における政策運営等の考え方を前提に、それぞれの時点で入手可能な情報を基に、慎重に分析、検討を行い、的確な経済の展望を示すよう努めているところである。
第21回質問主意書
平成20年2月14日提出
日本経済はデフレ状況にはないとの政府見解に関する質問主意書
提出者 滝 実
平成19年12月4日の「日本の景気悪化と増税に関する質問主意書」に対する平成十九年十二月十四日付けの答弁書(内閣衆質一六八第二九四号)において、政府は「日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。」と述べている。GDPデフレーターは1998年度から2007年現在までずっとマイナスである。GDPデフレーターは総合的な物価指数を示しており、デフレかどうかを知るには最適な指数であることを考えると、「物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。」という表現は理解できない。そこで質問する。
一 「日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。」というのはどういう意味なのか。
右質問する。
第21回答弁書
内閣衆質一六九第九二号 平成二十年二月二十二日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議員滝実君提出日本経済はデフレ状況にはないとの政府見解に関する質問に対する答弁書
一について
物価動向については、国内企業物価指数の対前年変化率は、平成十八年につき二・ニパーセント増、平成十九年につき一.八パーセント増であり、また、消費者物価指数の対前年変化率は、平成十八年につき○ ・三パーセント増、平成十九年につき前年と同水準の○ ・○パーセントであるため、日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレ状況にはない。なお、輸入物価上昇による物価の変動を控除したGDPデフレーターが低下傾向で推移しているなど、再びデフレ状況に戻る可能性を排除できないことから、デフレから脱却したとまでは判断していない。政府として、海外経済の動向などにみられるリスク要因を考慮しつつ、このデフレ状況に戻る可能性がないかどうか、注視していく必要があると認識している。
第22回質問主意書
積極財政に関する質問主意書
一月十七日に経済財政諮問会議へ提出された「日本経済の進路と戦略」(以下「進路と戦略」という)が内閣府の名で発表されている。ここで成長シナリオケースAと成長シナリオケースBの比較が示されている。歳出削減幅がケースAでは十四.三兆円、ケースBでは十一.四兆円ということであるから、相対的に言えば、ケースAが緊縮財政、ケースBが積極財政と見なすことができる。両者を比べると、別表のようになり、この三年間では積極財政の方が、緊縮財政よりも、成長率が高まり、デフレ脱却へ大きく前進し、失業率も減り、しかも国の債務のGDP比は減少し、財政は健全化し持続可能となっている。つまり、積極財政の方が、緊縮財政よりもあらゆる面で良い結果を導くということは、明らかであり、政府の行っている緊縮財政は全く正当化されない。
二〇一二年度以降、このモデルでは債務のGDP比が逆転する可能性があったとしても、それが積極財政を否定する理由にはなり得ない。なぜなら二〇一二年以降となるとモデルの精度が著しく悪くなるからである。例えば、二〇〇七年一月に発表された「短期日本経済マクロ計量モデル(二〇〇六年度版)の構造と乗数分析(ESRI Discussion Paper Series No.一七三)」と同年三月に内閣府計量分析室で出された経済財政モデル(第二次改訂版)で乗数を比べてみる。公共投資をGDPの一%相当継続的に拡大したとき、名目GDPの増加は一年目は両モデルの差は二.五%だが、三年目となると三十八.五と飛躍的に拡大するのであり、二〇一二年度の精度は極めて悪いと考えるべきである。つまり積極財政を否定することは無理だと言うべきである。そこで質問する。
一 積極財政を否定するのは「進路と戦略」はすべてが誤差が大きすぎて使い物にならないという理由からか。そのような信頼性を欠くモデルで歳出削減や増税を国民に強要すべきではないのではないか。
右質問する。
二〇〇九年度 二〇一〇年度 二〇一一年度
名目GDP 緊縮財政 五三九.八兆円 五五五.五兆円 五七四.〇兆円
名目GDP 積極財政 五四一.〇兆円 五五七.八兆円 五七七.二兆円
GDPデフレーター緊縮財政 〇.二% 〇.四% 〇.七%
GDPデフレーター積極財政 〇.二% 〇.六% 〇.九%
失業率 緊縮財政 三.六% 三.五% 三.四%
失業率 積極財政 三.六% 三.五% 三.三%
国の債務 緊縮財政 七五五.一兆円 七七一.一兆円 七八七.一兆円
国の債務 積極財政 七五五.七兆円 七七二.八兆円 七九〇.六兆円
債務のGDP比 緊縮財政 一三九.九% 一三八.八% 一三七.一%
債務のGDP比 積極財政 一三九.七% 一三八.六% 一三七.〇%
第22回答弁書
内閣衆質一六九第一九八号
平成二十年三月二十八日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
積極財政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出積極財政に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「積極財政を否定する」との趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定。以下「基本方針二OO六」という。)及び「経済財政改革の基本方針二OO七」(平成十九年六月十九日閣議決定)において、歳出・歳入一体改革を実行するとしたところであり、その実現に向け、正面から取り組むこととしている。
なお、御指摘の「日本経済の進路と戦略―開かれた国、全員参加の成長、環境との共生―」(平成二十年一月十八日閣議決定)の参考試算においては、基本方針二〇〇六の別表に示された十四・三兆円の歳出削減の考え方に対応するケースと、十一・四兆円の歳出削減の考え方に対応するケースを想定しているところである。
第23回質問主意書
平成20年5月14日提出
積極財政に関する再質問主意書
提出者 滝 実
平成20年3月19日提出の積極財政に関する質問主意書に対して平成20年3月28日付けの答弁書をいただいた。その中で「ご指摘の『積極財政を否定する』との趣旨が明らかでない」とあるが、平成十九年十月二十六日付けの答弁書(内閣衆質一六八第一三三号)で「政府としては、基本方針二〇〇七において、予算編成の原則として、景気を支えるために政府が需要を積み増す政策をとらない」と述べており、これが『積極財政を否定する』の意味である。
平成20年3月19日提出の質問主意書で指摘したように、平成20年1月17日に内閣府が公表した「日本経済の進路と戦略」で、14.3兆円の歳出削減の考え方に対応するケース(緊縮財政という)に対して、2.9兆円の財政出動をするのが11.4兆円の歳出削減の考え方に対応するケース(積極財政という)であり、積極財政のほうが、あらゆる面で緊縮財政よりも優れているというのが、「日本経済の進路と戦略」の結論である。
この結論に関する質問主意書に対しての答弁書には質問事項に直接答えていないので、質問に即してご説明をいただきたく再度質問する。
一 「日本経済の進路と戦略」では、2.9兆円の財政出動をした場合としない場合の比較をして、あらゆる意味で財政出動をした場合のほうが優れているとの結論を出している。それなのに、政府は積極財政を否定しているのは納得できない。その趣旨を明らかにしていただきたい。
二 積極財政を否定するのは、「日本経済の進路と戦略」における推計モデルでは誤差が大きすぎて使い物にならないという理由からなのか。そうだとすれば、そのような信頼性を欠くモデルを根拠に歳出削減や増税を国民に強要すべきではないのではないか。
右質問する。
第23回答弁書
内閣衆質一六九第三七九号
平成二十年五月二十三日
内閣総理大臣 福 田 康 夫
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
積極財政に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出積極財政に関する再質問に対する答弁書
一及び二について
「日本経済の進路と戦略― 開かれた国、全員参加の成長、環境との共生― 」(平成二十年一月十八日閣議決定)の参考試算等の計算結果は、経済政策を検討する際に参考となるものであるが、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。政府としては、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあり、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとの考え方に基づき、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(平成十八年七月七日閣議決定) 及び「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定。以下「基本方針二〇〇七」という。)において、歳出・歳入一体改革を実行することとし、その実現に向け正面から取り組むこととしており、また、基本方針二〇O七において、予算編成の原則として、景気を支えるために政府が需要を積み増す政策をとらないこととしているところである。
第24回質問
赤字国債発行に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二十年九月二十五日
提出者 滝 実
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
赤字国債発行に関する質問主意書
政府は八月二十九日物価高や原料高への対応を柱として総合経済対策を決定した。しかし、赤字国債を発行しない方針だと報じられている。このことに関し質問する。
一 赤字国債を発行しない理由は何か。将来へのツケを残したくないということか。
二 平成二十年一月十八日に発表された内閣府の経済モデル「日本経済の進路と戦略」による試算では緊縮財政(ケースA)よりも積極財政(ケースB)の方が国の債務のGDP比は下がると結論づけられている。つまり赤字国債を発行しても将来へのツケは減らすことができるということではないか。
三 赤字国債を増発し続けると国の債務のGDP比は増え続け、1,000%とか、10,000%になると政府は考えているのではないであろうか。図1において、二〇〇七年の国の財政赤字のGDP比を示す。これを見れば、日本より財政赤字が大きい国はいくらでもあるのに、図2で明らかなように、諸外国の債務のGDP比は日本よりずっと小さく、180%以上に達した国はどこにもない。
歴史的に見ても、国の債務のGDP比が際限無く増え続けた例はない。このことからも、債務のGDP比は赤字国債を出せば増大するというものではなく、赤字国債によって経済が拡大できれば債務のGDP比は縮小するということではないのか。
四 日本の債務のGDP比がこのように異常に大きくなった理由は、財政赤字というよりも、異常に低い名目成長率が原因していると考えるがどうか。
五 今回の総合経済対策では赤字国債を発行しない方針とされているが、今年度の国税収入は予算を大幅に下回る虞があり、この結果本年十二月には多額の赤字国債を発行せざるを得ない事態が懸念される。このような税収不足の穴埋めとして発行せざるを得ない赤字国債は債務のGDP比率を引き上げるだけであるが、このような事態を少しでも避けることを目指す経済拡大のための赤字国債であれば、債務のGDP比率を下げる方向に寄与することが期待できるのではないか。
右質問する。
図1
図2
第24回答弁
内閣衆質170第12号
内閣総理大臣 麻生太郎
赤字国債発行に関する質問に対する答弁書
一について
先般、政府・与党会議で決定した「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月29日「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定。以下「総合対策」という。)においては、財政健全化路線の下、真に必要な対策に財源を集中するなど旧来型の経済対策とは一線を画することとし、できる限り新規国債発行額を抑制し、財政規律を堅持するとの基本的な考え方が示されている。
平成20年度補正予算については、こうしたこと等も踏まえ、既存の歳出を見直す中で最大限の財源捻出の努力を行うことなどにより、赤字国債を発行しないとしたところであり、財政規律を維持したものとなっている。
二について
ご指摘の「日本経済の進路と戦略―開かれた国、全員参加の成長、環境との共生―」(平成20年1月18日閣議決定)の参考試算の作成に当たって用いた「経済財政モデル(第二次再改訂版)」(平成20年3月内閣府公表)における乗数票を用いて、一定の仮定の下で計算すると、公共投資につき国内総生産の1%相当を継続的に増額するような政策について、公債残高の対国内総生産比率(以下、「比率」という。)は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇する結果となっている。三年目以降上昇するのは、公共投資の継続的な増額により、比率の分子である公債残高は拡大し続ける一方、分母である国内総生産の拡大は一定程度に抑えられるためであると考えられる。
これを踏まえると、当該参考試算において、試算期間中、歳出削減ケースBの比率が歳出削減幅により大きい歳出削減ケースAの比率を下回るのは、右で述べた性質が現れるほど試算期間が十分に長くないためであると考えられる。
なお、歳出削減ケースBでは、歳出削減ケースAに比べ、国・地方の基礎的財政収支の対国内総生産比率の赤字については大きくなっている。
三から五までについて
我が国の財政状況は、これまでの赤字国債の発行等によって、国・地方を合わせた長期債務残高が先進国中最悪の水準にあるなど極めて厳しい状況にある。「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)に示されているとおり、これを放置すれば、将来世代への負担の先送りという世代間格差の問題を深刻化させ、また、財政の持続可能性に対する懸念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれもある。
政府としては、財政再建は当然の課題ではるが、経済成長なくして財政再建はないと考えている。我が国経済の持続的で安定した繁栄を目的とし、財政再建に取り組んでまいりたい。
今回の総合対策を実施するに当たっては、こうしたこと等も踏まえ、その財源については、平成20年度補正予算では赤字国債を発行しないことを前提に、既定経費の削減等により確保することとしている。
第25回質問
平成20年10月8日提出
赤字国債発行に関する再質問主意書
提出者 滝 実 (無所属 比例近畿)
今回の政府の緊急経済対策は予算規模が1.8兆円で、これでは小さすぎるというのが多くの人の意見である。実効ある景気対策の実現のためには、財源問題は避けて通れないのであり、赤字国債を発行するのが本当に将来にツケを回すことになるのかということに関して、国民的な議論が必要な時であると考える。九月十二日に掲載された朝日新聞の調査だと73%の国民が財政よりも景気対策を優先して欲しいと言っているそうだし、政府もこの問題に対し恐れず議論をすべきである。
赤字国債発行に関する質問主意書に対する平成二十年十月三日の答弁書(内閣衆質一七○第一二号)には、公共投資を増額する政策について、国の債務のGDP比は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇するという内閣府の試算に言及してある。これが、「赤字国債を発行すれば、将来世代にツケを残す」という唯一の理論的な根拠とされている。しかしながら、この試算における三年目以降の試算結果を導いた経済モデルには、極めて深刻な欠陥が内在しており、これを政府が鵜呑みにするのは余りにも危険であるから、再度質問する。
一 例えば、平成十八年一月十八日に経済財政諮問会議により提出された「構造改革と経済財政の中期展望」には、「試算は誤差を伴っており、相当の幅をもってみるべきである。また、先の期間になるほど、不確実な要素が多くなることに留意が必要である。」と書いてある。このことは、今年の政府試算(進路と戦略)でも同様だと考えられる。当然のことではあるが、一年目や二年目の試算結果より三年目以降の試算結果は信頼性を欠くと考えるがどうか。
二 図は宍戸駿太郞氏が集めた各シンクタンクの乗数の比較である。これを見ると内閣府のモデルは、極めて特殊と言わざるをえない。つまり、景気対策を行っても、長期的には景気浮揚効果は他のシンクタンク(参議院も含む)の予測する効果の数分の一の効果しかないとみなしている。これでは、いくら景気対策をしてもほとんど長期的な効果はなく、国の借金が増えるだけということになる。景気悪化に対応するために、政府が景気対策を急いでいるのに、景気対策は効果がないとする内閣府の不自然な試算結果を政府はどのように考えるか。
三 内閣府のモデルでは景気対策は効かないという不自然な前提から、GDPが増えないから、政府債務の蓄積により、3年以降は債務のGDP比が増えるという結果になる。しかしながら、実際は他のシンクタンクの結果で示されているように、景気対策は有効で、GDPは上昇し、その結果3年目以降も債務のGDP比は下落するという内閣府以外の試算結果のほうが、現実をより正しく記述していると考えるがどうか。
四 過去の内閣における十数回の景気対策においては、必ずそれによってどの程度の景気浮揚効果があるかが示されていた。もちろん、他の予算を削って景気対策をするのであれば、削った分はマイナスの効果だから、それを差し引きしてトータルの効果を示さねば意味がない。トータルでマイナスになる可能性もある。これから打ち出す景気対策のすべてに対して、トータルのGDP押し上げ効果を国民に示すべきだと考えるがどうか。
五 内閣府の試算(予測)は、はずれてばかりだと言われている。例えば2008年度の名目成長率はどうかと言えば、2007年度1月の予想では2.8%であったが、2008年1月には2.1%に、2008年の7月には0.3%に下方修正された。僅か1年半の間になんと十分の一近くにまで下がったわけで最終的には更に下がるのではないか。そのような下方修正は今年だけでなく、毎年年中行事のように行なわれている。そのように大きくはずれるようでは、3年後の債務の名目GDPに対する比など、全く信用できないというのが現実であり、内閣府の試算結果を基に、「赤字国債発行により将来にツケを回すことになる」という結論を出すことなど論外と言わざるを得ないと思うがどうか。
右質問する。
図
第25回答弁
第25回答弁書
内閣衆質170第87号
平成20年10月17日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員滝実君提出
赤字国債発行に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出赤字国債発行に関する再質問に対する答弁書
一から三まで及び五について
公共投資につき実質国内総生産の1%相当を継続的に増額するような政策について、一定の仮定の下、経済財政モデル(第二次再改訂版)(平成20年3月内閣府公表)における乗数表を用いて計算すると、当該政策を行わない場合に比べて、実質国内総生産は、1年目に1.12%程度、2年目に0.78%程度、3年目に0.39%程度増加する結果になっている。
計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。また、様々な計量経済モデルによる計算結果を比較する際には、前提等が異なる場合があることから、単純な比較は困難な点に留意が必要である。現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考にしつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
我が国の財政状況は、極めて厳しい状況にあり、経済や社会保障に悪い影響を与えないため、財政再建は当然の課題である。政府としては、我が国経済の持続的で安定した繁栄を目的とし、財政再建に取り組んでまいりたい。
四について
過去の景気対策においては、予算等の内容を踏まえ、試算可能な範囲において、公共投資や減税等について、国内総生産の押し上げ効果を示してきているところであり、今後も同様に行っていっていく考えである。
第26回質問
平成20年10月24日提出
赤字国債発行に関する再々質問主意書
提出者 滝 実(無所属 比例近畿)
アメリカの経済危機対策は最大265兆円、欧州は総額212兆円だと言われている。一方、わが国では、1.8兆円の総合経済対策を盛り込んだ補正予算が10月16日に成立した。この対策をつくった8月末と、それ以降の状況は大きく変わっているとして、政府は追加的な経済対策を検討していると報道されている。しかしながら、財源が明確でない。景気後退で今年度は予算に対して数兆円の税収減が見通されるのであるから、追加的経済対策には赤字国債の増発が不可避であるのは明らかである。追加的な経済対策において、赤字国債の発行を躊躇しているのは、それが将来世代へのツケになるのではないかという配慮からだと認識している。しかし計量経済モデルによる試算結果を見れば、実は赤字国債を発行して経済対策を行えば、逆に将来世代へのツケを減らすことができるのだと前回と前々回の質問主意書で指摘した。それに対し、平成二十年十月三日と十七日の答弁書(内閣衆質百七○第十二号と八七号)においてコメントをいただいた。これらの答弁書に関し確認したいことがあるので、質問する。
一 内閣府の試算(平成20年1月17日発表)によれば、赤字国債を発行して経済対策を行った場合、当初の3年間は、債務のGDP比は減るという意味で将来世代へのツケは減ると結論してよいか。
二 4年目以降は、債務のGDP比は増える可能性があるが、しかし、この原因が内閣府のモデルによれば景気対策によるGDPの押し上げ効果が、他のシンクタンクのモデルよりはるかに小さくなっていることに関係していると思われる。モデルによる違いは、前提条件等の違いからくる場合もあると答弁書でご指摘いただいた。つまり、4年目以降は、債務のGDP比は増えるか減るか分からないという意味で、将来世代へのツケは増えるか減るかは経済モデルでは結論できないということか。
三 以上の議論から計量経済モデルからは、「赤字国債を財源として景気対策を行ったとしても、単純にそれが将来世代へのツケを増やすことになると言うのは間違い」と結論すべきだと思うがどうか。
四 最近の急激な景気悪化で、国民は効果のある景気対策を求めている。どうやれば、景気対策が大きな効果をもたらし、債務のGDP比を減らすことができるのかを、内閣府で計量モデルを作り直して、真剣に検討すべき時に来ているのではないか。
五 十月二十一日の朝日新聞の記事には、内閣府の試算によれば、二兆円の定率減税(所得税減税)で実質GDPを押し上げる効果は年0.10%にすぎず、経済効果は望み薄で、同じ2兆円を公共投資に使う場合の0.41%増、法人税減税の0.27%増という引き上げ効果を下回るとある。これは内閣府の短期モデルの乗数表から求めた数字と思われるが、政府は景気対策でどれだけのGDP押し上げが必要と考えているか。
六 今年ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンは、『グローバル経済を動かす愚かな人々』の中で日本経済に関して「まずは需要を増やすことである。そのためには信用拡大のための通貨供給の大幅増大だけでなく、公共事業の拡大、減税の実施などが肝要である。」と述べている。これについてどのように考えるか。
右質問する。
第26回答弁
内閣衆質170第159号
平成20年11月4日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
赤字国債発行に関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出赤字国債発行に関する第三回質問に対する答弁書
一から五までについて
財政の持続可能性等を評価する観点からは、公債等残高の対国内総生産比率(以下「比率」という。)については、中長期的な動向をみる必要があると考えられる。
ご指摘の「日本経済の進路と戦略-開かれた国、全員参加の成長、環境との共生-」(平成20年1月18日閣議決定)の参考試算の作成に当たって用いた「経済財政モデル(第二次再改訂版)」(平成20年3月内閣府公表)における乗数表を用いて、一定の仮定の下で計算すると、公共投資につき国債総生産の1%相当を継続的に増額するような政策について、比率は、当該政策を行わなかった場合に比べて、当初の1年目及び2年目は低下するが、3年目以降上昇し続ける結果となっている。3年目以降上昇するのは、公共投資の継続的な増額により、比率の分子である公債残高は拡大し続ける一方、分母である国内総生産の拡大は一定程度に抑えられるためであると考えられる。
現実の経済政策を行うにあっ立っては、計量経済モデルによる計算結果を参考にとしつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
なお、内閣府の計量モデルについては、それぞれの時点で入手可能な情報等を元に、随時必要な改訂を行っていること炉である。
政府としては、「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月29日「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)決定後の内外の金融・経済情勢の変化に対応するため、先般・政府・与党会議において「生活対策」(平成20年10圧30日新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)を決定したところであり、「生活者の暮らしの安心」。「金融・経済の安定強化」、「地方の底力の発揮」を重点分野とし、我が国経済の立て直しに取り組んでまいりたい。
六について
ご指摘の見解は、我が国経済が、バブル経済の崩壊により、極めて厳しい不況を経験し、ある時期には危機的な様相さえ呈していた平成10年当時において、極度の消費や投資の手控えから需要不足に陥っているという認識の下、通貨供給量の増加等の対応策について述べられたものと認識している。
第27回質問
平成20年11月7日提出
三年後の景気回復の可能性に関する質問主意書
提出者 滝 実 (無所属 比例近畿)
麻生首相は十月三十日の記者会見で、事業規模二十七兆円の新総合経済対策を発表し、同時に行政改革や景気回復を前提に、三年後に消費税率を引き上げる考えを明言された。麻生首相は「日本経済は全治三年」と言っておられる。このことに関して質問する。
一 首相の言う「景気回復」とは、どういう状態なのか、どういう経済指標になればそう言えるのかを数字で定義していただきたい。
二 今回の新総合経済対策に関して、十月三十一日の朝日新聞に野村證券金融経済研究所による試算が載っている。それによると、5兆円の財政支出によるGDP押し上げ効果は計0.5%程度。一方金融危機が深刻化した9月以降の円高と株安、世界経済の悪化は計1.4%もの押し下げ要因になる。ということは、この経済対策では景気を良くするどころか、景気悪化さえも抑えられないということではないか。もし、野村證券金融経済研究所の試算が政府の試算とは異なるのであれば、政府の試算を示していただきたい。
三 平成二十年八月内閣府発表の資料(第三十五回ESRI経済フォーラム「経済対策とマクロ計量モデルの活用」)によれば二○○八年度のGDPデフレーターはマイナス1.0%となっており、デフレは脱却できていない。民間シンクタンクがまとめた7~9月期のGDPは年率換算で実質がマイナス3.0%、名目がマイナス3.3%となっている。円高・株安・海外の景気後退など、日本の景気にとってマイナスの要因は多い。これから景気は更に悪化するのを政府が放置するのであれば、三年後の景気回復は望めないのではないか。
四 政府は、赤字国債を使って景気対策を行わないと言っているが、それであれば、今年で埋蔵金は使い果たし、今後は景気対策をできない、つまり景気が悪化しデフレスパイラルに陥っても放置するということか。また、今年度の国税収入は予算計上額を5兆円も下回るのではないかと言われるほど憂慮すべき状況にあり、金額はともかくとして、そのような事態が確実視される今回の景気対策は、実質的に赤字国債を財源としていることになるのではないか。
五 内閣府(新たな経済対策に関する政府・与党会議・経済対策閣僚会議合同会議)が平成二十年十月三十日に発表した「生活対策」の三頁~四頁には「安易に将来世代に負担をつけまわすことは行わない」とある。将来世代への負担とは、国の債務そのもののことか、それとも債務のGDP比のことか。
六 もし、将来世代への負担の意味が債務そのものであるなら、百分の一のデノミを行えば簡単に負担は百分の一に減らせるが、それで十分なのか。
七 もし、将来世代への負担の意味が債務のGDP比という意味なら、内閣府の短期モデルの乗数表が参考になる。下の表は短期金利を固定したまま、公共投資を毎年GDPの1%(5.2兆円程度か?)増やし続けたらどうなるかのシミュレーションを示したものである。これによれば、全ての経済指標は大きく改善されている。それだけでなく、国の債務のGDP比は初年度マイナス1.53%、2年後マイナス1.99%、3年目マイナス2.35%と減り続けている。3年目から増加ということはない。つまり赤字国債を発行して景気対策をすれば、将来世代への負担を減らすことが出来るということではないか。
八 平成二十年十一月四日の答弁書(内閣衆質一七○第一五九号)の六についてで、「ご指摘の見解は、我が国経済が、バブル経済の崩壊により、極めて厳しい不況を経験し、ある時期には危機的な様相さえ呈していた平成十年当時において」とある。その一方で麻生首相は十月三十日の記者会見で百年に一度の暴風雨が吹き荒れていると述べられた。平成十年当時と今とでどちらの経済情勢が厳しいと考えているのか。
右質問する。
表
名目GDP
実質GDP
民間消費
可処分所得
税収
失業率
1年目
+1.27%
+1.09%
+0.27
+0.55
+1.89
-0.10
2年目
+1.89%
+1.21%
+0.94
+1.07
+3.44
-0.10
3年目
+2.42%
+1.14%
+1.43
+1.56
+4.29
-0.02
第27回答弁
内閣衆質一七○ 第二一三号
平成二十年十一月十八日
内閣総理大臣 麻 生 太 郎
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
三年後の景気回復の可能性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出三年後の景気回復の可能性に関する質問に対する答弁書
一から三までについて
今回の「生活対策」(平成二十年十月三十日新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定。以下「本対策」という。) においては、「生活者の暮らしの安心」、「金融・経済の安定強化」、「地方の底力の発揮」を重点分野とし、我が国経済の立て直しに取り組んでいくこととしている。
お尋ねの「景気回復」については、経済社会の動向等を総合的にみて判断する必要があり、個々の経済指標で一概に定義することは困難である。いずれにせよ、政府としては、現在の金融経済情勢を踏まえ、「日本経済は全治三年」という基本認識の下、当面は本対策等に基づき、景気回復を最優先で図っていくこととしている。
なお、本対策の効果等の試算については、本対策には様々な施策が盛り込まれていること、それらについての予算や税制等の具体的内容が決定されていないこと等から、御指摘の野村讃券金融経済研究所による試算と同様の試算を行うことは困難である。
四について
経済財政運営に当たっては、経済成長と財政健全化の両立を図つていくとの考え方を基本とし、時々の経済状況に応じて、適切な対応に努めてまいりたい。
本対策の財源については、税収減を補うための財源とは別のものとして、赤字国債に依存しないこととしている。
五及び六について
「日本経済の進路と戦略―開かれた国、全員参加の成長、環境との共生―」(平成二十年一月十八日閣議決定) においては、我が国の財政について、「政府債務残高GDP比は二OO八年度(平成二十年度)百四十・ニパーセント程度と引き続き極めて高い水準にあると見込まれる。このように、我が国財政は主要先進国の中でひときわ厳しい状況にあり、将来世代へ負担を先送りする構造となっている。(中略)人口減少や少子高齢化が進めば、将来の世代に一層重い負担がかかることから、財政健全化は喫緊の課題である」としており、政府としては、将来世代に責任をもった財政運営を行い、持続可能な財政構造を構築する観点から、債務残高GDP比を安定的に引き下げること等を目指しているところである。
七について
「短期日本経済マクロ計量モデル(二〇〇六年版) の構造と乗数分析」(内閣府経済社会総合研究所ディスカツション・ベーパー一七三号)付属資料におけるシミュレーションは、モデルの構造について理解を助けるため、短期金利を機械的に固定するなど一定の前提を置いて推計した結果であるが、一般に、計量モデルによる計算結果は、相当の幅をもって解釈すべきものであることから、この結果をもって、赤字国債を発行して景気対策をすれば、将来世代への負担を減らすことが出来るか否かは一概には言えない。
八について
平成十年当時と現在の経済情勢のどちらが厳しいかについては、内外の経済社会状況等の違いもあり、一概にお答えすることは困難であるが、現在の我が国経済については、世界経済の減速に伴い既に景気後退局面に入ったとみられ、当面、厳しい状況が続いていくものと認識している。
第28回質問
平成20年11月20日提出
自然エネルギーの利用に関する質問主意書
提出者 滝 実 (無所属 比例近畿)
環境省が11月12日に発表した平成19年度の国内の温暖化ガス排出量(速報値)は二酸化炭素換算で前年比2.3%増と過去最高を記録した。京都議定書で日本は平成20年~22年度平均の温暖化ガス排出量を平成2年度比で6%減らす目標を課されており、平成19年度比では13.5%の削減が必要となる。これを産業界が負担して削減を行おうとすると莫大なコスト負担が必要となり非現実的である。今年の6月28日の日経新聞によれば、1バレル140ドルで1ドル=106円の為替相場が続けば、日本からの産油国への所得流出は24兆円だそうである。いつまた原油価格の高騰があるか分からないのであるから、エネルギー自給率4%という現実に国民は不安に思っている。これに関して質問する。
一 風力・太陽光・地熱などの自然エネルギーは、資源としては国内に豊富にあるのにも拘わらず、政府がこれを利用しようとする取組は遅れており、世界の中でのシェアをどんどん落としているのが現状である。一例として風力発電の国別の設備容量を下図で示した。平成16年末には日本は世界8位であったが、平成19年末には13位にまで下がっている。政府は自然エネルギーの利用をもっと積極的に推進すべきだと考えるがどうか。
二 自然エネルギーの利用促進という面で大きな障害になっているのが、電力の買い取り価格である。自然エネルギーの利用が進んでいるドイツなどと比べて買い取り価格が低いために、自然エネルギー発電は採算に合わず、いつまでも開発は進まない。しかし、買い取り価格を上げると、電力会社の負担が大きくなる。そうであれば、負担は政府が助成金として電力会社に支給するという可能性は考えられないか。
三 買い取り価格を上げただけでは開発が進まない分野がある。例えば洋上風力発電である。日本は国土の約12倍もの面積の排他的経済水域を保有しており、この水域の一部を利用して風力発電を行えば、日本の全エネルギー需要が満たされるという試算がある(注)。洋上風力発電では、ある程度の事業規模が確保され炭素繊維を使って製造した場合、耐用年数は80年以上で発電コストが原子力による発電コストを下回るという試算がある。もしそうであれば、これは日本国民に大変大きな希望を与えるものとなる。しかしながら、これをすべて民間の企業に行わせるには、規模が大きすぎ、また経費を回収する期間が長すぎるということになる。政府は、このような自然エネルギー開発にもっと積極的に財政支援をすべきではないか。
四 平成二十年十一月十八日の答弁書(内閣衆質170第213号)では、将来への負担を増やさないという意味は債務残高そのものではなく、債務のGDP比を増やさないという意味であることを認めていただいた。また、赤字国債を発行して景気対策を行った場合債務のGDP比が減少するという可能性も否定しなかった。政府は赤字国債発行を必要以上に恐れる必要はない。11月17日の朝日新聞でもクルーグマンが「大不況克服へ巨額財政出動をせよ。債務増を心配するときでない」と述べている。
今我々は真剣に日本の未来を考えなければならない時に来ている。マスコミの論調も、2兆円の定額給付金よりも自然エネルギー開発にお金を使うべきだということになっているようであり、定額給付金以上に国民の理解を得やすいと思われる。自然エネルギー開発を積極的に政府が乗り出すと次のようなメリットが考えられる。
① エネルギー自給率の向上。
② 温暖化ガス排出量削減。
③ 排出権取引で日本は有利な立場に立てる。
④ 開発された技術は輸出できるので、日本経済を活性化させることができる。
⑤ 将来のエネルギー価格の高騰を恐れる必要が無くなる。
⑥ 定額給付金よりGDP押し上げ効果が大きい。
⑦ 赤字国債でなく建設国債を使える。
⑧ 自然エネルギー開発への投資は国の借金を増大させるが、同時に名目GDPも増大させる。借金の増加率よりも、名目GDPの増加率のほうが大きく、結果として国の借金のGDP比を減らし、将来世代へのつけを減らすことができる可能性がある。
このようなメリットについてどのように思うか。
右質問する。
(注) 瀬谷道夫、山口光弘、多田国之 文部科学省科学技術政策研究所・科学技術動向研究センター 平成14年3月
図
出所 世界風力エネルギー協会(WWEA)
第28回答弁
内閣衆質一七○ 第二五九号
平成二十年十二月二日
内閣総理大臣 麻 生 太 郎
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
自然エネルギーの利用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出自然エネルギーの利用に関する質問に対する答弁書
一について
政府としては、「低炭素社会づくり行動計画」(平成二十年七月二十九日閣議決定。以下「行動計画」という。)などに基づき、低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や風力発電などの新エネルギー技術の抜本的な普及の促進及び開発の加速を図ることとしている。なお、御指摘の風力発電については、行動計画において、「陸上風力の導入支援、洋上風力などの新技術の検討を進める」こととしている。
二について
政府としては、新エネルギー技術の普及の促進に向けて、新エネルギー技術を導入する者に対する補助事業等を既に実施しているところである。なお、御指摘の、新エネルギー技術により発電された電力を買い取る電力会社に助成金を支給する可能性については、施策の有効性や効率性についての現行の導入補助事業等との比較を含め、十分な検討が必要であると考えている。
三について
御指摘の洋上風力発電については、行動計画において、「新技術の検討を進める」こととしており、経済産業省においては、平成二十年度から、我が国特有の気象・海象条件を把握し、これらに適合した洋上風力発電に関する技術開発や環境影響評価手法を確立するための事業を実施している。また、環境省においては、平成二十年度に、浮体型の洋上風力発電について、実証試験の実施に向けた課題の抽出や候補海域の選定などを行う調査研究を実施している。
四について
太陽光や風力などの新エネルギーは、輸入に依存しないエネルギー源であることから、我が国におけるエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保に資するものであるとともに、温室効果ガスの排出量の削減により、低炭素社会の実現にも資するものである。また、我が国が強みとする新エネルギー技術の開発の推進は、我が国経済の活性化に資するものである。これらの観点を踏まえ、政府としては、新エネルギー技術の抜本的な普及の促進及び開発の加速を図ることとしている。
第29回質問
三年後に名目成長率を二~三%にするための財政出動に関する質問主意書
麻生首相は三年後に景気回復を前提として消費税増税をお願いすると発言され、前提とする景気回復とは、名目成長率が二~三%であると報道されている。このことに関して質問する。
一 「一〇〇年もつ年金改革」で前提とされた名目成長率は三%であるが、これまでこの成長率が達成されたことはない。しかし、景気の落ち込みにより今後一~二年間、名目成長率がマイナスになれば、三年後の名目成長率二~三%の数値を容易に達成することができる。したがって、名目成長率の数値は消費税増税に踏み切る前提条件を示す数値としては意味のないものであり、意味のない数値を消費税増税判断の厳格な基準のように受け取れる発言は不適当ではないのか。
二 仮に、今後三年間連続して名目成長率が二~三%であること、または消費税増税の前提として平成十九年のGDPを基準に名目成長率を二~三%まで引き上げることなどの基準を設定するのであれば、そのための経済対策として今後三年間の財政出動はどの程度の規模なのか、そのための財源としての国債はどの程度の規模なのかを政府は国民に示すべきではないか。
また、そのためには計量経済モデルを使って試算した結果を明らかにすべきではないか。
三 最近の内閣府発表の名目成長率の予測を見ると、実際より大幅に高い成長を予測し、後で下方修正を繰り返している。二〇一一年度の基礎的財政収支の予測も何回も悪化の方向に修正されてきたのは、内閣府の計量経済モデルに大きな欠陥があり経済の予測能力に問題があることを示しているのではないか。
したがって、二で明らかにするよう求めている試算は、内閣府の計量経済モデルの欠陥を早急に修正して信頼できるモデルにした上で行うか、民間で使用されている多くの計量経済モデルにより行う必要があるのではないか。
四 第二次補正予算の財政支出五兆円のGDP押し上げ効果は〇・五%と言われている。三%の押し上げ効果を期待するには、単純比例計算で、五兆円の六倍の三十兆円の財政支出で達成できることになる。しかし、未曽有の経済危機に陥っている日本経済がこの程度の財政出動で回復できるかどうか疑問であろう。政府は、このような疑問に応えるためにも計量経済モデルを使った試算を行うべきだと思うがどうか。
五 十二月三日に麻生首相は「景気対策と財政再建は両立しないわけではない」と発言された。このことは、多くの計量経済モデルによる試算で正しいことが示されている。景気対策により、GDPが増加すれば国の債務のGDP比が減少し、税収が増えれば基礎的財政収支も黒字化することが示されている。このことを政府は数値で示し国民に正確に伝えるべきではないか。
右質問する。
第29回答弁
内閣衆質一七〇第二三二号
平成二十年十二月十九日
内閣総理大臣 麻 生 太 郎
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員滝実君提出
三年後に名目成長率を二~三% にするための財政出動に関する質問に対し、別紙答弁
書を送付する。
衆議院議員滝実君提出三年後に名目成長率を二~三%にするための財政出動に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「意味のない数値を消費税増税判断の厳格な基準のように受け取れる発言」については、具体的にどの発言を指すのか明らかでないことから、お答えすることは困難である。
二及び三について
お尋ねの「今後三年間連続して名目成長率が二~三%であること、または消費税増税の前提として平成十九年のGDPを基準に名目成長率を二~三%まで引き上げることなどの基準を設定」した場合の財政出動の規模等については、政府としては、そうした基準を設定しているわけではないことから、お答えすることは困難である。
政府としては、計量経済モデル等を用いて経済及び財政の展望を示すに当たっては、それぞれの時点で入手可能な情報を基に、世界経済等について一定の前提を置いて、慎重に分析、検討を行い、的確な展望を示すよう努めているところであるが、我が国の経済は民間活動がその主体をなすものであること、国際環境の変化には予見し難い要素が多いこと等にかんがみ、こうした展望は、相当の幅を持って解釈すべきものである。
四について
御指摘の「第二次補正予算の財政支出五兆円のGDP押し上げ効果は○ ・五%と言われている」という試算については承知しておらず、お答えすることは困難である。
五について
衆議院議員滝実君提出赤字国債発行に関する第二回質問に対する答弁書(平成二十年十一月四国内閣衆質一七〇第一五九号)で述べたとおり、「経済財政モデル(第二次再改定版)」(平成二十年二月内閣府公表) における乗数表を用いて、一定の仮定の下で計算すると、公共投資につき国内総生産の一パトセント相当を継続的に増額するような政策を行った場合、国・地方の基礎的財政収支は悪化し、公債等残高の対国内総生産比率は三年目以降上昇し続ける結果となっている。
現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考としつつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であり、経済成長と財政健全化の両立を図っていくとの考え方を基本とし、適切な対応に努めてまいりたい。
第30回質問
急激に悪化する景気を改善するための景気対策の規模に関する質問主意書
内閣府が二月十六日に発表した二○○八年十~十二月期のGDP速報値は実質で前期比三・三%減、年率換算で十二・六%減となった。もしも二○○九年一~三月期も前期比で三・三%の減少が続けば二○○八年度の実質経済成長率はマイナス三%となる。二○○九年度も同様、もしくはそれより更に低い経済成長率になるのではないかと、民間のシンクタンクは予想している。この急激な景気悪化を食い止めるための景気対策について質問する。
一 内閣府は第二次補正予算全体のGDP押し上げ効果は一%、そのうち定額給付金の押し上げ効果は〇・一五%と発表しているが、これだけでは現在の急激な景気悪化を防ぐには不十分であるが、どう考えているのか。
二 今年一月十六日に内閣府で発表された「経済財政の中長期方針と一〇年展望」では二○○九年度の実質成長率は〇%であるとしている。しかし、民間機関が発表している経済予測には、二○○九年度の実質成長率は三~六%台のマイナスとの見方が多い。なかでも2月24日に日本経済新聞に発表された日本経済研究センターの予測はマイナス三・七%である。政府の〇%成長予測は楽観的すぎるのではないか。
三 もしも、二○○九年度の実質成長率は三~六%台のマイナスという予測が正しく、しかも第二次補正予算全体のGDP押し上げ効果は一%であるならば、二○○九年度の実質成長率を〇%にまでに引き上げるための追加の補正予算の規模は第二次補正予算の三~六倍にしなければならないが、どう考えているのか。
四 しかしながら、政府としてはゼロ成長を目指すのではなく、最低でもプラス二%程度の成長を目指すべきであり、その場合は第二次補正予算の五~八倍の規模が必要であるが、どう考えているのか。
五 その追加の補正予算の財源は赤字国債によらざるを得ないが、どう考えているのか。それとも政府紙幣発行の可能性も考えられるのか。
六 大規模な財政出動の財源を赤字国債によらざるを得ない場合には、政府は日銀に対して国債買い入れの増額を求める必要があるとの意見がある。そのような意見をどう考えるか。
七 中央銀行が大規模に国債を買い入れることに抵抗を感じるのであれば、アメリカやEUなどと話し合い、例えば各国GDPの一〇%の国債を中央銀行に買わせ、それに相当する規模の財政出動を行って内需拡大策を協調して行うことにしてはどうか。
右質問する。
第30回答弁書
??
第31回質問主意書(これが30回だったかも?)
内閣衆質171第213号
平成21年3月24日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員滝実君提出
急激に悪化する日本経済に対応する経済対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出急激に悪化する日本経済に対応する経済対策に関する質問に対する答弁書
一及び二について
お尋ねの「経済の成長という点において、日本だけが世界から取り残されてきたと思うがどうか」という点については、物価動向を考慮した実質GDP成長率も含めて判断する必要があり、ご指摘の名目GDP成長率のグラフのみでは、一階に判断することはできないものと考えている。
三及び四について
政府は、国民生活と日本経済を守る観点から、当面は「景気対策」、中期的には「財政再建」、中長期的には「改革による経済斉唱」という三段階で、経済財政政策を進めることとしている。現下の厳しい経済金融情勢に対しては、平成20年8月以降、総額約75兆円の3次にわたる経済政策をとりまとめ、「景気の底割れ」を防ぐことを最重要課題として、これらの経済対策の速やかな実施に全力を挙げているところである。
内閣府の計量経済モデルについては、それぞれの時点で、入手可能な情報等を基に、随時必要な改訂を行っているところである。
五について
世界経済の状況が深刻さを増しているという共通認識の下、世界経済や国際金融システムの安定性に対する信認を回復すべく、各国が、金融・世界経済に関する首脳会合の場等を通じて連携し、その置かれた経済・財政状況等を踏まえつつ、この難局に立ち向かう必要があると考えている。
我が国においても、三及び四についてで述べたとおり、総額約75兆円の経済対策の速やかな実施に全力を挙げているところである。
第32回質問
急激に悪化する日本経済に対応する経済政策に関する再質問主意書
前回の質問主意書に対する、答弁書(内閣衆質一七一第二一三号、以下「答弁書」という)において、日本経済の現状に関して政府の考え方が示された。特に「一及び二について」で、「経済の成長という点において、日本だけが世界から取り残されてきたのではないか」という質問に対し、実質GDPも含めて判断する必要があり、名目GDP成長率のグラフのみでは、一概に判断することはできないとの答弁であった。これに関して再度質問する。
一、確かに物価上昇が激しい国であれば、名目GDP成長率が、そのまま経済の規模の拡大を表すのではなく、物価上昇分を引いた実質GDP成長率で考えねばならぬことは明らかである。しかし、我が国のようにデフレが続く経済では状況は異なるのではないか。デフレーターをマイナスにすればするほど実質GDPはかさ上げされる。例えば、デフレーターをマイナスにした要因の一つはパソコンの性能の向上だと言われる。パソコンの値段は変わらないがパワーがアップしたから、実質値下がりしたのだという。しかし、これによって果たして景気がよくなったという実感がわいてくるだろうか。多くの国民にとって、パソコンのパワーはすでに十分であり、パワーアップしても実質的に価値は変わっていない。実質GDPの数値だけはかさ上げされたものの、給料が上がるわけではなく、景気回復の実感がなかったのは当然ではないかと思うがどうか。
二、図1ではドル換算した各国のGDP比較を示した。これも名目GDPではあるものの、ドル換算をすれば為替調整を考慮すれば、実質的なGDPの比較と言っても良い。これでみても日本経済は1995年ごろから停滞が始まっていて、世界の中で経済成長という点において、取り残されたことは明らかである。図2では、日本のGDPが米国のGDPの何%であるかを示した。1995年には71%あったものが、2007年には31.7%にまで下がっている。やはり日本経済は停滞しているのは間違いないと思うがどうか。
三、図3では、世界のGDPに占める日本の割合を示した。これ以外にも「経済の成長という点において、日本だけが世界から取り残されてきた」証拠を示す客観的な経済データは多数存在する。これは、政府が十分な経済対策を行って来なかったことが原因していると思うがどうか。
四、過去において、成長率をもっと高める方法が無かったのかと言えばそうではない。例えば今回の12兆円の財政支出を伴う景気対策であれば、1%の成長率を引き上げるとのことであり、名目成長率も実質成長率も同時に引き上げる。過去において景気対策をもっと強力に行っていたら、更に大きな成長率の増加が見込まれたし『失われた10年』を防ぐことができたのは間違いないと思うがどうか。
五、名目成長率の上昇は、日本経済へ様々な好影響を及ぼす。
①デフレ時での景気対策は、名目成長率だけでなく実質成長率も引き上げるから、実質的な
経済規模の拡大が見込まれる。
②名目GDPの拡大は可処分所得の増加をもたらし、景気回復の実感がわいてきて、日本国民に将来への希望をもたらす。
③経済の拡大が、年金への不安を解消する。
④一時的に国の債務のGDP比が増加したとしても、一定の成長軌道に入れば、新たな景気
対策無しにGDPが増え続け、GDPの増加は債務のGDP比を下げ続ける。
⑤税収が増加するから、長期的には財政は健全化する。
このような経済への好影響を考えるなら、今後の景気対策は、名目成長率が少なくとも4%を超えるまでは続けるべきだと考えるがどうか。
六、3月27日の記者会見で与謝野大臣は11年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標(以下旧目標という)に代わる新目標『骨太の方針09』(以下新目標という)を、今夏ごろに策定する考えを示した。しかし、旧目標により歳出削減を行ったために、結果として日本経済は縮小し、国民を苦しめ、しかも財政健全化という意味では全く逆効果しかなかったのだから、旧目標を掲げたことは間違いだったのではないか。新目標を掲げることは、失敗を繰り返すことになるだけだと思うがどうか。
七、オバマ米国大統領は2月9日夜、就任後初めてとなる公式記者会見で1990年代の日本の長期停滞にも触れ「迅速に行動しなかったために『失われた10年』と呼ばれる不況を経験した」と指摘。日本の教訓に学ぶ必要性を訴えた。
またフレドリック・ミシュキン元FRB理事が3月27日、ニューヨーク市内で講演し、日本はゴッド・ダム・ストゥーピッド(大バカ野郎)だと発言し、1990年代の不況を長期化させた元凶として日本の財政・金融政策を厳しく批判した。
このような指摘に対し政府は過去の経済政策で反省すべきものはなかったのか真剣に検討すべきだと考えるがどうか。
八、政府は十五兆円の規模で補正予算を編成すると伝えられている。しかし、G20で決まったのはGDP2%以上というのでなく、総額500兆円ということであり、日本が世界のGDPの8%であることを考えれば、40兆円規模を考えるべきではないか。それに日本は世界の中でも際だって経済が悪化していることを考えれば、40兆円よりも更に規模を大きくしなければならないのではないか。
図1 出所 IMF World Economic Outlook 2008
図2 出所 IMF World Economic Outlook 2008
図3 出所 国民経済計算
第32回答弁
内閣衆質171第292号
平成21年4月17日
内閣総理大臣麻生太郎
衆議院議長河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
急激に悪化する日本経済に対応する経済政策に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出急激に悪化する日本経済に対応する経済政策に関する再質問に対する答弁書
一について'
経済の成長については、前回答弁書.(平成二十一年三月二十四日内閣衆質一七一第二一三号)でお答えしたとおり、物価動向を考慮した実質GDP成長率等も含めて判断する必要があると考えている。なお、2002年初め以降の景気回復局面においては、名目賃金の伸びが低かったことが景気回復を実感しにくくする一つの要因となった可能性があるものと認識している。
二から四までについて
1995年から2007年までの期間を比較した場合、ブラジル、中国、インド、ロシアなどの新興国経済等のGDP成長率が高かったことや、 先進国においては米国のGDP成長率が相対的に高かったことなどが、世界のGDPに占める日本の割合及び米国のGDPに対する日本のGDPの比率が低下した主な要因と考えている。なお、過去の累次の経済対策については、日本経済が極めて厳しい状況にあった中で景気の下支えに一定の効果があったものと考えている。
五及び八について
経済政策を行うに当たっては、 様々な経済指標を参考にしつつ、 その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。政府としては、現下の厳しい経済金融情勢に対しては、「景気の底割れ」を防ぐことを最重要課題として、平成二十年八月以降、総額約七十五兆円の三次にわたる経済対策を取りまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきた。さらに、平成二十一年四月十日には、総額約五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」(平成二十一年四月十日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)を取りまとめたところである。'
六について
世界的な金融危機と経済悪化を受けて、基礎的財政収支を黒字化させるとの目標の達成は困難になりつつあるが、当面は、財政規律の観点から、現行の努力目標の下で、景気回復を最優先としつつ、財政健全化に取り組んでまいりたい。
七について
政府は、1990年代の深刻な景気後退に対しては、累次の経済対策を含む大胆な政策運営を行うとともに、金融機関の不良債権処理、企業の過剰債務解消に向け、抜本的な対策を講じ、こうした政策努力の成果もあり、我が国経済は、「債務、雇用、設備の3つの過剰」を克服し、その後の景気回復が実現したと認識している。
第33回質問
内閣衆質171第327号
平成二十一年四月二十八日
内閣総理大臣麻生太郎
衆議院議長河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する質問に対し別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する質問に対する答弁書
一について
「経済危機対策」(平成二十一年四月十日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)の実施に伴う税収への影響については、様々な経済活動の状況等に左右されるため、具体的にお示しすることは困難である。
二及び三について
国債を財源とする財政出動を行った場合いの国債残高の対G D P 比への影響については、内外経済状況や経済対策の効果の発現の態様等に左右されるため、「国債を財源とする財政出動によって 将来世代の国債の負担が重くなることはないと一概にはいえない。
我が国の債務残高対G D P 比の発散を止め、安定的に引き下げていくことは、財政の持続可能性を確保する上で極めて重要である。政府としては、当面、過去に前例のない不透明な内外経済状況に弾力的に対応しつつも、財政規律の維持の観点から、将来世代への安易な負担の付け回しをしないことが重要であると考えており、中期的には、財政健全化に向けた取組を進めてまいりたい。
なお、経済対策や中長期的な財政健全化に向けた考え方を検討するに当たっては経済諮問会議において、各界の有識者から意見を伺っているところである。
四から六までについて,
政府は、これまでの三次にわたる総額約七十五兆円の経済対策に加えて、先般、多年度による対応も視野に入れた総額約五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」を取りまとめたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげることとしている。なお、需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせると等から、これらの対策においてはそのような考えはとっていない。
第33回答弁
内閣衆質171第327号
平成二十一年四月二十八日
内閣総理大臣麻生太郎
衆議院議長河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する質問に対し別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する質問に対する答弁書
一について
「経済危機対策」(平成二十一年四月十日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)の実施に伴う税収への影響については、様々な経済活動の状況等に左右されるため、具体的にお示しすることは困難である。
二及び三について
国債を財源とする財政出動を行った場合いの国債残高の対G D P 比への影響については、内外経済状況や経済対策の効果の発現の態様等に左右されるため、「国債を財源とする財政出動によって 将来世代の国債の負担が重くなることはないと一概にはいえない。
我が国の債務残高対G D P 比の発散を止め、安定的に引き下げていくことは、財政の持続可能性を確保する上で極めて重要である。政府としては、当面、過去に前例のない不透明な内外経済状況に弾力的に対応しつつも、財政規律の維持の観点から、将来世代への安易な負担の付け回しをしないことが重要であると考えており、中期的には、財政健全化に向けた取組を進めてまいりたい。
なお、経済対策や中長期的な財政健全化に向けた考え方を検討するに当たっては経済諮問会議において、各界の有識者から意見を伺っているところである。
四から六までについて,
政府は、これまでの三次にわたる総額約七十五兆円の経済対策に加えて、先般、多年度による対応も視野に入れた総額約五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」を取りまとめたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげることとしている。なお、需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせると等から、これらの対策においてはそのような考えはとっていない。
第34回質問
十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する再質問主意書
前回の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七一第三二号、以下「答弁書」という)に対して再度質問する。
一 答弁書の二及び三についてで、「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはないとは一概にいえない」ということであった。この議論に反対するつもりはないが、反対に「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなるとは一概にいえない」ということも事実である。国は単純に「国債発行が将来世代への負担になる」と決めつけるのを止めるべきであり、財務省のホームページにあるそのような表現を削除すべきなのではないか。
答弁書では「我が国の債務残高対GDP比の発散をとめることが極めて重要である」とある。それは大規模景気対策によって間違いなく止められることは、次のようにして示すことができる。GDPをY、債務残高対GDP比をr、景気対策の規模をK、それによってGDPはmKだけ押し上げられるとすると、税収の増加分を無視しても、その景気対策後の債務残高対GDP比は
(rY+K)\(Y+mK)=r+K(1─rm)\(Y+mK)
となるから、m > 1\rであるような景気対策をすれば、債務残高対GDP比は減っていくことになる。現状ではr=一・七四一(OECD Economic Outlook 八十四より)であるから、m > 〇・五七であればよい。つまり一兆円の景気対策で〇・五七兆円以上のGDP押し上げ効果がある景気対策であれば、債務残高対GDP比は減る。景気対策の規模が大きければ大きいほど、減少幅も大きくなる。実際は景気対策による税収の増加もあるので、押し下げ効果はさらに拡大する。
債務残高対GDP比のrが限りなく大きくなると、ほぼどんな景気対策を行っても債務残高対GDP比は下がるということになる。日本はすでにそれに近い領域にあり、余程効果の少ない景気対策で無い限り、景気対策を行えば行うほど債務残高対GDP比は下がる。rが大きくなればなるほど、景気対策によってrは大きく下がるが、逆に十分な景気対策を怠ってGDPを下げてしまうとrを大きく上昇させてしまう。実際、このままでは今年度債務残高対GDP比は大きく上昇してしまうが、この現実をどう考えるか。
二 今回の景気対策は、環境への配慮も見られる点や、消費を促す形での減税等、評価できるところも多いが、問題はこの規模で一〇〇年に一度の経済危機から脱することができるのかという点にある。
中国は昨秋、総額四兆元(約五十六兆円、GDP比十五%)の景気対策を始め、その結果景況感指数は四か月連続で上昇し、銀行融資も増加しているすでにその効果がはっきりと現れている。一方で、景気対策をためらう欧州では景気回復の兆候は見られない。世界大恐慌の際も、金本位制から離脱し大規模な景気対策を行った国ほど、景気が早く回復した。
今回政府が提出した財政規模十五・四兆円の景気対策であるが、最終的な政府支出が本当に十五・四兆円に達するのかという点にも疑問がある。例えば、助成金・補助金を出したとき、果たしてどれだけの人がこの不況の中で、住宅・車・家電を買ったりするだろうか。二〇一一年から増税が始まるとなれば、不況の深刻化を予測し、当然消費行動にもブレーキは掛かる。国民が買わなければ助成金・補助金も使われない。
日本経済研究センターは、今回の景気対策の真の‘真水’は総額五・六兆円、GDP押し上げ効果は一%にすぎないとの試算を四月二十七日に発表している。また、モルガン・スタンレーでも真の‘真水’は七・三兆円と見積もり、GDP押し上げ効果は一%程度としている。
政府が試算したGDP押し上げ効果は一・九%であり、これは十五・四兆円がすべて使われたときの数字であり、見通しが甘すぎるのではないか。
三 答弁書によると「需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自立的回復をむしろ遅らせる」とある。状況によって、あるいは景気対策のやりかたによってはそのようなこともあると思われる。しかし、国の経済がデフレスパイラルに陥ったとき、需要不足を財政支出で補わなかったら、経済は果てしなく縮小し、国が貧乏になり、民間経済の自律的回復どころではなくなる。国民の可処分所得が減り続けたら、民間の力では反転は無理で国が強力な経済対策を断行する以外に経済の発展は望めないのである。そのような現在の日本経済がどのような状況にあるのかを十分理解すべきである。
一九九七年に日本のGDPは五百十三兆円、二〇〇七年には五百十五兆円であった。名目成長率の政府目標は二〇〇八年度が△三・二%、二〇〇九年度が△三・〇%だということは二〇〇九年度のGDPは四百八十四兆円で、十二年前より約六%縮小させることが現在の国家目標となっている。十二年間かけて国を六%も貧乏にすることを国家目標にするような政府は日本以外どこにも見あたらない。
IMF発表のデータによれば、十二年前に比べ名目GDPはイギリスで七十一%、米国で六十九%の増加となっている。民間経済の発展とは、売上が伸び賃金が上がるという状態であり、国が思い切った経済対策を断行しない限り、経済の停滞が続くのではないか。
実質成長率はそれほど悪くないと言われているが、実質GDPは、パソコンの改良によってかさ上げされている。例えば、二年半前に発売になったWindows Vistaの普及率はまだ二割程度と言われている。パソコンの新機能は使われていないように、パソコンの進歩が国の発展を示すとは言えず、国の実質経済成長率をかさ上げすべきではない。今、日本経済に求められているのは大規模経済対策で名目成長率を上げることにより経済を活性化させ、民間経済が自立的に回復できる環境を国が整えることではないか。
四 名目GDPの予測を図で示した。二〇一〇年度と二〇一一年度の名目成長率が一%と三%の二種類のグラフを示してある。三%成長は余程の大規模景気対策を行わなければ無理だが、それでも二〇一一年度のGDPは二〇〇七年度の五百十五兆円に達しない、つまり経済が成長軌道に乗ったとはとうてい言えない状況である。つまり二〇一〇年度も二〇一一年度も、景気対策を打ち切る状況には無く、消費税増税など論外だと思うが、政府はこのことをどう考えているのか。
右質問する。
第34回答弁
内閣衆質一七一第三六五号
平成二十一年五月十五日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する再質問に対し
別紙答弁;書を送付する。
衆議院議員滝実君提出十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する再質問に対する答弁書
一について
前回答弁書(平成二十一年四月十八日内閣衆質一七一第三二七号)二及び三についてでお答えしたように、国債を財源とする財政出動を行った場合の国債残高の対G D P 比への影響については、内外経済状況や経済対策の効果の発現の態様等に左右されるため、「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなること はない」とは一概にはいえない。
我が国の債務残高対G D P 比の発散を止め、安定的に引き下げていくことは、財政の持続可能性を確保する上で極めて重要である。政府としては、当面、過去に前例のない不透明な内外経済状況に弾力的に対応しつつも、財政規律の維持の観点から、将来世代への安易な負担の付け回しをしないことが重要であると考えており、中期的には、財政健全化に向けた取組を進めてまいりたい。
二について
総額約五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」(平成二十一年四月十日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)の効果については、 「平成二十一年度経済見通し暫定試算(内閣府試算)」(平成二十一年四月二十七日内閣府公表)において、同対策に盛り込まれた施策の裏付けとなる平成二十一年度第一次補正予算を着実に実施していくことにより、民間最終消費支出や公的固定資本形成等が増加し、平成二十一年度の実質GDPを十兆円程度、実質GDP成長率を一・ 九パーセント程度押し上げる効果があると見込んでいるところである。
三及び四について
経済政策を行うに当たっては、様々な経済指標を参考にしつつ、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。
政府としては、現下の厳しい経済金融情勢に対しては、平成二十年八月以降、総額約七十五兆円の三次にわたる経済対策を取りまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきた。さらに、先般、多年度による対応も視野に入れた総額約五十七兆円の「経済危機対策」をとりまとめたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげることとしている。
第35回質問
2009年5月22日
補正予算に関する政府の説明責任に関する質問主意書
平成二十一年度の補正予算は財政支出が十五・四兆円であり、国民一人当たりに直すと約十二万円にもなる巨額なものであるから、この補正予算に関して政府は国民の疑問に対して納得いくまで説明する義務があるのは当然である。しかし、「十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する質問主意書」(以下「第一回質問」という)では、その質問主意書に対する答弁書内閣衆質一七一第三二七号(以下「第一回答弁」という)と、それに対する再質問主意書(以下「第二回質問」という)に対する答弁書内閣衆質一七一第三六五号(以下「第二回答弁」という)に書かれた説明は驚くほど不誠実で無責任なものであった。政府は補正予算に関して国民に説明責任を十分果たしていないのではないかという疑問が生じたのでこれに関して質問する。
一 第一回質問では、今回の国債を財源とする財政出動により将来世代への国債負担がむしろ軽くなることを具体的に数値を示して政府の見解を聞いた。それに対して第一回答弁では「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはないとは一概にいえない」ということだった。そうであるならば、「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなるとは一概にいえない」ということを暗に認めているのだから、これまでのように「国債発行が将来世代への負担になる」と決めつけるのを止めるべきではないかというのが第二回質問であった。驚いたことに、これに対する第二回答弁は「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはないとは一概にいえない」と第一回答弁と全く同じ答弁を繰り返した。これは今回の財政出動が国民総生産を引き上げられない虞が強いことを政府自らが繰り返して認めるものであり、そのような財政出動をすることは、国民及び国権の最高機関である国会を愚弄することになるのではないか。
二 政府は従来から掲げてきた二〇一一年度の基礎的財政収支黒字化が絶望的になったことを踏まえて、新たにGDPに対する債務残高比率の引き下げを新たな目標として検討していると報道されている。そうであれば、総額五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」の効果に関する内閣府試算が発表されているのだから、それに基づいて債務のGDP比が計算できるはずであり、それを公表すべきである。この景気対策により債務のGDP比は増えるのか、減るのか、それともどちらとも言えないのか。その計算結果を明らかにされたい。
三 第一回及び第二回答弁において、この度の補正予算において「景気の底割れ」を防ぐという政府の最重要課題を示しているが、この「景気の底割れ」を防ぐという定義は、具体的な定量的目標があるはずであり、それを明らかにされたい。
四 第一回答弁によると、「需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせる」とある。その根拠は何か。
また、自由経済体制下の先進主義諸国がいずれも政府部門(公需)、民間部門(民需)の混合経済で成り立っているなかで、政府が示す「民間経済の自律的回復」の定義とは何かを明らかにされたい。
第二回質問においては、上記の当該第一回答弁内容が必ずしも当らないことについて、データや例示を挙げて説明を試みたにも拘らず、第二回答弁ではそれに対する回答が無かったため、上記「質問一」と同様な観点から十分な説明責任を果たすことを要求する。
さらに、上記の当該第一回答弁内容は、受取り方によっては、いわゆる「クラウディングアウト効果(政府による国債の大量発行が民間の資金調達と競合を起こし、金融市場が逼迫して金利を上昇させ、民間の資金調達が阻害される現象)」のことを指しているとも考えられるが、その通りと理解していいのか。
五 内閣府が五月二十日に発表した一―三月期の実質GDPは、年率換算でマイナス十五・二%、二〇〇八年度の実質成長率はマイナス三・五%といずれも戦後最悪であり、米国(年率マイナス六・一%)やドイツ(同マイナス十四・四%)などと比べても先進国中最悪であった。対前期比マイナス四・〇%のうち、外需寄与度がマイナス一・四%、内需寄与度が二・六%と、外需寄与度に比べて内需寄与度が約倍の大幅なマイナスになっている点を踏まえると、これは政府による景気下支え策が十分ではなかったことを意味する。
したがって、昨年十月末の緊急経済政策を始め、もっと効果的に景気下支えを行っていれば、このようなことにはならず、「需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせる」ということにもならなかったのではないか。
右質問する。
第35回答弁
内閣衆質一七一第四三七号
平成二十一年六月二日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
補正予算に関する政府の説明責任に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出補正予算に関する政府の説明責任に関する質問に対する答弁書
一について
総額約五十七兆円(うち国費約十五兆円)の「経済危機対策」(平成二十一年四月十日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)の効果については、「平成二十一年度経済見通し暫定試算(内閣府試算)」(平成二十一年四月二十七日内閣府公表)において、同対策に盛り込まれた施策の裏付けとなる平成二十一年度第一次補正予算の着実な実施により、平成二十一年度の実質GDP 成長率を一・九パーセント程度押し上げる効果があると見込んでいるところである。
二について
公債等残高対G D P 比も含め、「経済危機対策」等を踏まえた中長期の経済財政の姿の試算については、現在作業を進めているところである。
三について
政府としては「実体経済の悪化が金融の一層の不安定化を招き、それが、さらなる実体経済の悪化を招くといった事態」を「景気の底割れ」と考えており、そうした事態を防ぐため、平成二十年八月以降、三次にわたる経済対策を取りまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきた。さら に、先般、「経済危機対策」を取りまとめたところであり、これにより、景気の底割れを防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげることとしている。
なお、経済政策を行うに当たっては、様々な経済指標を参考にしつつ、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。
四について
「民間経済の自律的回復」とは、企業や家計といった民間部門が、財政支出に頼らず、生産・所得・支出の好循環によって成長する状態であり、民間活動がその主体をなす我が国経済の持続的成長には不可欠の条件であると考えている。
なお、経済政策を行う に当たっては、クラウディングアウト効果についても考慮する必要があると考えている。
五について
政府としては、現下の厳しい経済金融情勢に対しては、平成二十年八月以降、三次にわたる経済対策を取りまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきたところであり、これらの対策は一定の景気下支え効果があったと考えている。さら に、昨年末以降、世界金融危機と世界同時不況が深刻度を増し、景気が急速に悪化したことから、こうした状況に対応して、先般、「経済危機対策」を取りまとめたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげることとしている。
第36回質問
補正予算に関する政府の説明責任に関する再質問主意書
前回の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七一第四三七号、以下「答弁書」という)に対して再度質問する。
一、答弁書の四についてで、「経済政策を行う に当たっては、クラウディングアウト効果についても考慮する必要があると考えている。」との説明があった。クラウディングアウトとは、国債を多く発行すると金利が上がるというものである。図1は国債発行残高、図2は金利のグラフである。この2つのグラブを比べれば、日本ではクラウディングアウトは全く起きていないということが明らかだと思うが同意するか。
二、これまで、政府はクラウディングアウトを恐れて大規模な財政出動を避けてきたがこれは間違いであったことを認めるか。
三、1997年度の名目GDPは513兆円であったが、2008年度は496兆円まで下がっている。このように10年以上も前のGDPよりも減ってしまった国は日本以外にはどこにもない。これは経済政策の失敗が原因なのではないだろうか。政治家が経済政策を間違えた理由は経済モデルが正しくなかったことが原因ではないかと危惧するのである。例えば今年1月16日に内閣府で発表された「経済財政の中長期方針と10年展望」では、公共投資を実質GDPの1%相当継続的に増やすと長期金利は初年度で0.27%、2年目で0.41%上昇するようになっている。つまりクラウディングアウトが起きることになっているが、図1、図2で示したように、これは現実とは完全に矛盾している。つまりこのモデルで日本経済を記述することは全く不可能であると考えるが同意するか。
四、答弁書の二についてで、「公債等残高対G D P 比も含め、「経済危機対策」等を踏まえた中長期の経済財政の姿の試算については、現在作業を進めているところである。」とあった。現在作業を進めている試算の発表は、いつどのような形で行われ、発表される結果には、前回質問主意書で要求した「09年度補正により公債等残高GDP比が増えるのか、減るのか」という質問に答えるものになっているのか。
五、以下は「財政赤字等のマクロ的な比較評価」について6月2日の朝日新聞等に書いた記事の一部である。
国民が知りたい情報の1つは、各党のマニフェストに盛り込まれた政策を実施した結果、財政収支がどうなるのか、税負担がどうなるのか、経済成長率や失業率がどうなるか、といったマクロ的な分析である。こうした評価を行っているのがオランダである。オランダでは、政府機関として、経済政策分析局(CPB)という機関があり、政府の経済財政見通し等の分析を行っている。CPBは、政府機関であるものの、政治的に強い独立性が与えられている。CPBは選挙前に経済財政見通しを発表するが、全ての政党は、この見通しを政策提案の前提として使うことになっている。各政党は、選挙前に、CPBに対して、彼らの政策提言を提出する。これを受けて、CPBは、そのコストや経済に与えるインパクトを分析するとともに、しばしば、政党の政策提言の矛盾点を指摘する。その比較分析は、歳出・歳入・財政収支、税・社会保険料の負担、消費者物価上昇率、失業率、GDP成長率等、マクロ経済指標を広範にカバーするものであり、各党の政策のインパクトは一目瞭然である。
これは素晴らしい制度であり、同様な制度を日本でも導入してはどうか。特に公債等残高対G D P 比の値がどうなるのかを、各政党のマニュフェストに基づいて計算し、どの政党が国の財政危機に対して最も真剣に取り組んでいるかを国民に示していただきたい。
六、政府はこれまでクラウディングアウトを恐れ、大規模な財政出動を避けてきた。しかし、本当に金利が上がりそうになれば、日銀が大量に国債を買うことにより金利上昇を抑えることもできたはずである。それに対して諸外国は国債買い入れ等を大規模に行ったために主要中央銀行の資産は前年比で約1.5倍になっている。具体的にはFRBは2.3倍、ユーロ圏は26%増、イギリス中央銀行は2.2倍、カナダ中央銀行は32%増であるが日銀は僅か8%増えたにすぎない。その結果日本円は独歩高となり、輸出が激減し、日本経済は世界で最も悪い状態に陥っている。このように日本経済が苦境に追い込まれたのは、日本の景気対策が小規模すぎたためだと思うがどうか。
七、政府はクラウディングアウトを恐れているが、確かにこれだけの大不況で金利が上がると、経済は壊滅的な打撃を被る。一刻も早く大規模な財政出動を行い、金利上昇にも耐えうる経済に戻していく努力をしなければならない。世界の中で日本だけが極端に低い金利(特に長期金利)を続けていると次のような害がある。
①貯金に利子がほとんどつかないから、本来得られるべき利子収入が無く、消費の増大に繋がらないし、タンス預金も増え、お金が流れず経済は停滞した。
②危険な円キャリートレードにより巨額の資金が流れ出て、世界経済にバブルを発生させ、その崩壊によって世界経済に深刻な打撃を与えた。それを証明するかのように、今回の世界経済危機発生と同時に資金が逆流し、一気に円高が進み輸出企業に深刻な打撃を与えた。
③本来景気刺激は財政出動でなく、政策金利の引き下げによって行われるべきであるが、事実上のゼロ金利が続いているために、金利の上げ下げによる機能が失われていて、財政出動をせざるを得なくなっている。そのために国の借金が増える一方である。
このような弊害を考えると、大規模な景気対策で一気に経済を良くして、日本経済を金利上昇でも耐えうる健全な状態に一刻も早く戻すべきである。そうしないと、いつまで経っても、企業や家計といった民間部門が、財政支出に頼らず、生産・所得・支出の好循環によって成長する状態にはならないと思うが同意するか。
図1
出所 財務省
図2
出所 日銀
第36回答弁
第36回答弁書
内閣衆質171第515号
平成21年6月19日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
補正予算に関する政府の説明責任に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出補正予算に関する政府の説明責任に関する再質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「日本ではクラウディングあるとは全く起きていないということが明らかではないか」という点については、ご指摘の国債発行残高と長期金利のグラフのみでは、一概に判断することはできないものと考えている。
二、三、六及び七について
経済政策を行うに当たっては、様々な経済指標を参考にしつつ、お尋ねのクラウディングアウトの観点も含めて、その時々の経済状況を十分踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。
政府は、1990年代の深刻な景気後退に対しては、累次の経済対策を含む大胆な政策運営を行うとともに、金融機関の不良債権処理、企業の過剰債務解消に向け、抜本的な対策を講じ、こうした政策努力の成果もあり、我が国経済は「債務、雇用、設備の三つの過剰」を克服し、その後の景気回復が実現したと認識している。
また、現下の厳しい経済金融情勢に対しては、平成20年8月以降、三次にわたる経済政策をとりまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきたところであり、これらの対策は一定の景気下支え効果があったと考えている。さらに、昨年末以降、世界金融危機と世界同時不況が深刻度を増し、景気が急速に悪化したことから、こうした状況に対応して、先般、「経済危機対策」(平成21年4月10日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)を取りまとめたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、本来の成長率強化につなげ、民間経済の自律的回復を促すこととしている。
四について
「経済危機対策」等を踏まえた中長期の経済財政の姿の試算については、平成21年6月9日、経済財政諮問会議の有識者議員が同会議に参考資料として提出しており、同資料においては、公債等残高対GDP比の数値も示されているところである。
五について
政府としては、経済財政運営の方針等を踏まえた様々な前提に基づき、公債等残高対GDP比も含め、中長期の経済財政の姿の試算を行っているところであるが、ご指摘の「各党マニュフェストに盛り込まれた政策」を踏まえた前提に基づく試算については、各党各会派において御議論いたたくべき問題であると考えている。
第37回質問
平成21年6月18日提出
極めて危険な消費税12%への引き上げと、不可解な試算に関する質問主意書
滝 実 (無所属 比例近畿)
6月9日に有識者議員から財政諮問会議に提出された『経済財政の中長期試算』(以下「試算」という)は、消費税を12%に引き上げ2020年に基礎的財政収支を黒字化するというシナリオの試算であり、マスコミに大きく取り上げられ、それが骨太方針2009に盛り込まれようとしている。しかし、その内容は重要な部分が隠されており、重大な問題があると思われるので質問する。
一 試算では、11年から段階的に1%ずつ消費税率を引き上げ、現在5%の消費税を最終的に12%にするという内容である。このことに対して、クルーグマンは週刊現代(6月27日付)でのインタビューで次のように発言している。
『実に危険な考えですね。消費税アップは、効果としては金融引き締めそのものです。これほど景気が悪い状況で実施するのは、バカげている。日本は‘97年にも同じことをして手痛い目に遭ったのに、まったく教訓を得ていないようですね。いまは断じて消費税を引き上げるべき時ではありません。』
クルーグマンのこの忠告をどのように考えるか。
二 1997年に消費税率が2%だけ引き上げられた後には消費が減り景気が悪化した。当時の首相であった橋本龍太郎氏は2001年の自民党総裁選において、消費税率引き上げは失敗であったとコメントしている。この元総理のコメントをどのように考えるか。
三 消費税を引き上げれば、当然のことながら、実質的に可処分所得が減り、消費が減り、実質GDPが減る。驚くべきことに試算では、その逆だ。消費税引き上げが無い場合に加え、3%、5%、7%の3種類の引き上げ幅のシナリオの試算が示されている。例えば、試算の9頁に示されているように2020年度の実質GDPは3%の場合が1.0%、5%が1.1%、7%が1.3%というように、増税の幅を大きくすればするほど、実質成長率は高くなるとなっている。そのような試算が正しいと信じる経済学者は一人もいないのではないかと考えられ、これは意図的に国民を騙して、消費税増税を強行しようという政府の意図の現れではないかと疑っている。そのような信じ難い試算の根拠を示されたい。
四 この試算には、国民の前に明らかにしない裏がある。消費税を増税する分、社会保障関係費を増やしているから、逆に経済は成長するという論理のように思われる。しかし、実際に何をどれだけ増やしたのかを明らかにしていない。消費税率だけを明示し、社会保障関係費の額を隠したのは、国民を騙すのが目的というしかない。この試算で消費税増税と社会保障関係費の増額が同程度に重要だからである。9頁に書いてある以下のコメントを読むといい。この試算の最も重要な部分を隠している。
【コメントの内容】
社会保障の機能強化を『中期プログラム』の工程表を踏まえ一定の仮定に基づき実 施(ただし、消費税率を据え置くケースでは、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引き上げ、高齢化の進展に伴い自然に増加する公費負担のみ対応。)
試算においては社会保障関係費の増額分が示されていない以上、このコメントを読んで試算内容が分かる人などいないから、実はネット(正味)での歳出増により経済成長率が増加するという試算の最も重要で絶対に知られたくない部分を隠すことができ、完璧に国民を騙すことができるという結果になる。さらに驚くべきことは、消費税増税で公債残高がどんどん減っている。このような手品のようなことができるなら、1997年の消費税増税の際にもそうなっていたに違いないがそれは無かった。
これが本当に実現するなら、どのようにして実現するのか、その内容を詳しく国民に明らかにすべきではないのか。明らかにできないのであれば、4月10日に「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議が発表した「経済危機対策」の2頁及び3頁に示されている「基本方針1:国民と一体となった対応」のⅰ及びⅱに反するものではないか。
五 試算ではいくつかの場合が示されているが、その中で標準と思われるものとして8頁の「世界経済順調回復シナリオ、14.3兆円歳出削減」のデータによって問題点をとりあげる。
名目成長率は2008年度―3.7%、2009年度-3.0%、2010年度-0.4%であり、これをもとに名目GDPのグラフを図1に示した。
2007年度に515兆円あったGDPだが、2008年度に496兆円、2009年度に481兆円、2010年度に479兆円と、断崖を滑り落ちるかごとく日本経済は縮小していくとの予測である。2011年度から消費税を増税ということは、2010年度には決断をしていなければならず、2010年度には経済状態はどん底というべきであり、とても消費税増税どころではないのではないか。
六 10年以上も前の1997年には日本のGDPは513兆円に達していた。2010年には479兆円にまで縮小するとの内閣府の予測である。政府の行うべきことは縮小した経済を元に戻す努力をすることであり、消費税増税で景気回復を妨げるべきではないと考えるがどうか。
七 庶民の暮らしという観点から考えても、図2で示したとおり、賃金は随分下がっている。消費税増税であれば、それだけ物を買えなくなるのは明らかである。さらに悪いことに、2009年度の補正による政府の景気対策は、家電・車・家などを買えば国が補助金を出すというもので、その景気対策が打ち切られ、そのうえ消費税増税となれば、ダブルパンチで家計を直撃し消費を減らすのは間違いない。また、雇用調整助成金が打ち切られれば首切りが激増、失業者が激増し、社会不安が起きる。名目GDPが下がるということは、賃金も同様に下がっていることを示し、そこで消費税増税で物価が上がれば、消費は減り消費減はGDP減に繋がるのではないか。
八 消費税増税による実質GDP押し下げ効果を、社会保障関係費を増やして補おうとするのであれば、結局、消費税増税による負のアナウンス効果だけが残るから何もやらないほうがましではないか。
九 「衆議院議員滝実君提出補正予算に関する政府の説明責任に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質171第437号)等において、「「民間経済の自律的回復」とは、企業や家計といった民間部門が、財政支出に頼らず、生産・所得・支出の好循環によって成長する状態であり、民間活動がその主体をなす我が国経済の持続的成長には不可欠の条件であると考えている。」との答弁をいただいた。当該答弁を前提にすると、試算に示されている消費税の増税は、「民間活動がその主体をなす我が国経済」に対して政府の関与をより大きくするものであるが、それがどうして「民間経済の自律的回復」に繋がるのか。
また、消費税増税分と社会保障関係費増額分を勘案した正味での歳出増が経済成長に繋がるのであれば、これは、「需要不足を財政支出で埋め合せることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせる」との答弁に反しているのではないか。
十 与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は4月11日、BS11デジタルの報道番組収録で、基礎的財政収支について「少しいいかげんな概念」との見解を示したうえで、「基礎的財政収支ではない、きちんとした目標を立てて、GDP比で国債残高が増え続けるのを抑制しなければいけない」と語った。与謝野大臣が「いいかげんな概念」であるとした基礎的財政収支をなぜ再び骨太方針2009で使うのか。
十一 骨太方針2006では内閣府の試算に基づき、2011年度基礎的財政収支黒字化を国家目標として、2011年度の基礎的財政収支はどうなるのかについての予想が毎年下方修正が繰り返されてきた経緯を掲げる。
①2006年1月 黒字化可能と発表。
②2007年1月 黒字化は不可能、しかし14.3兆円の歳出削減を行えば0.2%の黒字にできる。
③2008年1月 14.3兆円の歳出削減を行っても、0.1%の赤字になる。
④2009年1月 2011年度の基礎的財政収支は2.9%の赤字。
消費税を12%にすれば、2020年度に黒字になる。
このように、3年連続で予測がはずれ大幅下方修正となった。要するに試算は全く正しく予測できなかったということだ。それだけでなく、例えば名目成長率やGDPデフレーターは、2002年度の発表以来、毎年大幅な下方修正を続けており、内閣府の試算は全く予測能力を持たないことが完璧に証明されている。同じ経済モデルを使った今回の『試算』も予測は正しくなく、今後2020年まで毎年下方修正が続くと思われる。政府はこのような劣悪な試算を基に国家目標を立てても良いのか。
十二 日本の超低金利政策は、昨年表面化した米国の住宅バブルの崩壊の背景になったことが指摘されているし、超金利政策によって個人所得が伸びず、消費も制約されているのであるから、政府の経済財政基本方針に超低金利政策をどうするかについて示すべきではないのか。
右質問する。
図1 出所:内閣府
図2
第37回答弁
内閣衆質一七一第五五二号
平成二十一年六月二十六日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員滝実君提出
極めて危険な消費税十二%への引き上げと、不可解な試算に関する質問に対し、別紙
答弁書送付する。
衆議院議員滝実君提出極めて危険な消費税十二%への引き上げと、不可解な試算に関する質問に対する答弁書
一及び二について
御指摘の「クルーグマン氏のこの忠告」及び「元総理のコメント」についてはその真意等が必ずしも明らかでないこと等から、お答えすることは差し控えたい。
なお、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。消費税を含む税制の抜本的な改革の具体的な実施の在り方については、所得税法等の部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条の規定に定められた方針等に沿って、今後検討を進めることとしている。
三から九までについて
御指摘の「経済財政の中長期試算」(平成二十一年六月九日経済財政諮問会議有識者議員提出資料参考_)(以下_ 中長期試算という。)は、「経済財政の中長期方針と十年展望比較試算」(平成二十一年一月十六日内閣府公表)に示された考え方に基づいており、消費税率引上げを行うケースにおいては、「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」(平成二十年十二月二十四日閣議決定)における「社会保障の機能強化の工程表」を踏まえ一定の仮定に基づき、消費税増収額の範囲内であることを基本として、社会保障の機能強化を行うことを想定し、機械的に試算しているところである。
中長期試算における消費税率引上げ幅の違いによる実質GDP成長率の違いについては、
想定している引上げが多年度にわたることから、単年度のみの影響をみることは必ずしも適当ではないと考えており、また、中長期試算のような計量経済モデルによる計算結果は、
相当の幅を持って解釈すべきものと考えている。
政府としては、現下の厳しい経済金融情勢に対しては、平成二十年八月以降、四次にわたる経済対策を取りまとめ、その速やかな実施に全力を挙げてきたところであり、これにより、「景気の底割れ」を防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげ、民間経済の白律的回復を促すこととしている。
また、現実の経済政策を行うに当たっては、計量経済モデルによる計算結果を参考とし
つつも、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。消費税を含む税制の抜本的な改革の具体的な実施の在り方については、所得税法等の一部を改正する法律附則第百四条の規定に定められた方針等に沿って、今後検討を進めることとしている。
十について
「経済財政改革の基本方針二○○九~安心・活力・責任~」(平成二十一年六月二十三日閣議決定)においては、「財政の持続可能性を確保するため、財政健全化目標の基本として国・地方の債務残高対GDP比を位置付け、これを二千十年代半ばにかけて少なくとも安定化させ、二千二十年代初めには安定的に引き下げることとするとともに、プライマリーバランス(基礎的財政収支)については、債務残高対GDP比の安定化及び引下げに至る道筋を示すための収支の目標と位置付けることとしたところである。
十一について
計量経済モデルによる試算は、 様々な想定を置いて機械的に行っているものであり、財政健全化の目標を検討するに当たっての一つの参考材料と考えている。なお、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要であると考えている。
十について
金融政策の具体的な運営については、日本銀行において、その時々の経済物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切に行われるものと考えている。
第38回質問 平成21年6月30日
日本のロボット技術を世界標準にするための政府の支援に関する質問主意書
日本のロボット技術は世界の最先端を行くものであり、日本の経済発展に今後も大きく貢献していくことが期待されている。その点、政府が「未来開拓戦略(平成二十一年四月十七日 内閣府・経済産業省)」(以下、「未来開拓戦略」という。)等において、生活支援ロボット等の実用化について策定していることは評価したい。それをより確実なものにしていくには、日本のロボット技術を世界標準(デファクト・スタンダード)にしていく努力が不可欠である。
過去において、TRONを日本の学校教育用のパソコンに採用しようとしていたことがあった。日米経済摩擦の時期と重なって、TRONはどの会社に対してもオープンソースで無料公開されていたものであったにもかかわらず、米国政府は米国企業に対してTRONは不平等な扱いをしたという不当な主張をし、スーパー三〇一条を悪用しTRONの採用を阻止した。これが結果的にマイクロソフト社のMS―DOSやWindowsの独占を支援することとなり、米国は莫大な利益を得た。現在ロボット技術において微妙な段階にあり、放置すればTRONの失敗を繰り返すことになりかねないので質問する。
一 現在、日本のロボット技術はハード・ソフトともに世界を大きくリードしており、政府が適切な支援をすれば、日本のロボット技術が世界標準になり、日本経済の発展に計り知れないほどの寄与をするとの見解についてどう考えるか。
二 日本は、急速に少子高齢化が進んでいる。今後、生産年齢人口が減少していき、労働者不足が懸念されている。しかし、次世代ロボットが人間の行う作業を代行するようになれば、労働力不足を緩和又は解消できるとの見解についてどう考えるか。
三 例えば、人間型二足歩行ロボットは、人間との共存環境下で共同・協業作業が可能であり、医療・福祉・介護・サービス等、多岐の分野にわたって活躍することが期待される。売り切りの商品でなく、そのソフトウエアの販売会社、ハードウエアを修理する企業、利用法をコンサルティングする会社、ロボット関係保険等が必要となり、自動車産業と同様に、部品産業を含め関連産業の裾野の広がりが大きい基幹産業になる可能性を秘めているとの見解についてどう考えるか。
四 現状では人間型二足歩行ロボットは商品として売り出すには値段が高すぎるために市場規模が限られていて、民間企業が本格的な開発を始めるには負担が大きすぎる。しかしながら、国がある段階まで支援し開発を進めれば、爆発的な市場拡大が期待される。少子高齢化で将来への不安を抱く国民に大きな夢と希望を与えるものであることを考慮すれば、人間型二足歩行ロボットは国の最良の投資先ではないかとの見解についてどう考えるか。
五 本格的なロボット研究開発を進めるには、人間協調・自律技術開発のための次のような施設が必要であるといわれている。
(一) 人間ロボットが現在可能な軽作業を人間と行うための模擬的な施設
(二) 人間ロボットが重作業(例えばクレーンの代わりのように使える)を行える模擬的な施設
(三) 家庭内で人間と協調するロボットを進化させるための模擬的な施設
(四) 人型ロボットの具体的な応用を産学官共同で研究開発するための施設
(五) 研究用のロボットプラットホームの保守施設
(六) ロボット保守のシステム開発を行えるような施設
(七) 将来的な実用化、輸出産業化を含め、市場に出すためのアフターケアの実験場
このような施設の設立を国が検討してはどうか。
六 ロボットは人間と関わる機械としての安全技術が確立していないことに加え、安全性の評価ができる公的機関が存在しない。さらに評価する工業規格が存在していない。これらの事情がロボット開発を妨げている。「未来開拓戦略」においては、実用化に必要な対人安全技術の開発、及び五年以内に安全基準・評価手法の策定を行うこととしているが、その詳細及び実現の可能性を明らかにされたい。
また、ロボット開発を促進する関連法の整備や、このような問題の解決方法を検討してはどうか。
七 例えば、介護の現場を考えてみよう。少子高齢化は、単に生産労働人口が減るだけでなく、貴重な労働人口の多くの介護の現場に向かわせてしまい、労働力不足にさらに拍車をかける。介護ロボットにより、要介護の高齢者は自力で生活ができることで、生活の質(QOL)が大きく向上するだけでなく、介護に拘束されていた人を別な職場に回し、労働力不足解消に貢献できるのであり、日本にとって大きな利益をもたらすとの見解についてどう考えるか。
八 大量に外国者を入れると、安い労働力が原因となって、すでに下がり続けている平均賃金がさらに下がり、国民の生活を圧迫する。大量のロボットの導入であればそのような恐れはない。しかもロボット産業は有力な輸出産業に成長する事が期待され、国を豊かにするとの見解についてどう考えるか。
九 政府は、「未来開拓戦略」において、二〇一一年までに生活支援ロボット等の国際標準化提案をすることとしているが、その詳細及び実現の可能性を明らかにされたい。
十 政府は、未来開拓戦略において、ロボット市場予測が二〇二五年に六・二兆円に達するとしているが、そのとおりであれば、大変な有望市場の形成がなされることになる。この予測の根拠、詳細及び出典を明らかにされたい。
右質問する。
第38回答弁
内閣衆質一七一第六二○号
平成二十一年七月十日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 河村建夫
衆議院議長 河野 洋平殿
衆議院議員滝実君提出
日本のロボット技術を世界標準にするための政府の支援に関する質問に対し、別紙答
弁書を送付する。
衆議院議員滝実君提出日本のロボツト技術を世界標準にするための政府の支援に関する質問に対する答弁書
一、三、六、八及び九について
我が国のロボット技術は、世界最高水準にあるものと承知している。
平成二十一年度から五年間実施予定の「生活支援ロボット実用化プロジエクト」においては、我が国の産学官が協力して生活支援ロボットを製作・開発し、対人安全技術の確立を目指すとともに、適切な安全基準と安全検証手法を開発するために必要となるデータを収集分析し、これらを通じて制度の在り方を検討していくこととしている。
また、国際標準化機構においては、二千十一年までに生活支援ロボット等の安全性に関する国際規格を発行することを目指して、現在、日本、英国、スウェーデン、韓国、ドイツ及びフランスを中心に作業が進められていると承知している。今後とも、これらの取組を進め、また、国内外の市場が開拓されること により、次世代ロボット産業が、部品産業などの関連産業と共に、我が国経済の発展に寄与すること になると考えている。
二及び七について
次世代産業用ロボットや生 活支援ロボット等の次世代ロボットは、我が国における将来的な労働力の不足を補う一助となると考えている。
御指摘の介護福祉分野においては、介護を要する者、介護する者双方の事情や意思を尊重することが必要ではあるが、介護に伴う様々な負担の一部が生活支援ロボットによって代替されることになれば、介護を要する者の自立促進や介護する者の負担軽減が図られ、 もって我が国の人的資源の有効な活用に資すると考えている。
四について
人間型足歩行ロボットは、足歩行時の転倒制御に必要となる膨大な量の計算を処理するため附属機器が大型化するなど、実用面での課題が少なくないと承知している。むしろ、実用化が目前である移動作業型ロボットや人間装着型ロボットの開発への支援が必要であると考えている。
五について
独立行政法人産業技術総合研究所においては、生活支援ロボットの実用化に向けて、当該ロボットが人間との協調作業を行うための模擬的な施設等が整備されることとなっている。
十について
御指摘の市場予測は、平成十三年五月に社団法人日本ロボット工業会が取りまとめた「二十一世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書」において算出された、二千二十五年時点での製造業分野におけるロボットの市場規模約一・四兆円と、平成十六年四月に経済産業省が取りまとめた「「次世代ロボットビジョン懇談会」 報告書」において算出した、二千二十五年時点での生活分野、医療・福祉分野及び公供分野におけるロボットの市場規模約四・八兆円を、合計して算出したものである。
第39回 質問主意書
我が国経済の今後の趨勢に対する鳩山由紀夫内閣の見解に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成21年9月16日
提出者 鈴木宗男
衆議院議長 横路孝弘殿
本年8月30日に投開票が行われた第45回衆議院議員総選挙において、民主党が308議席を獲得する勝利を収め、政権交代が実現し、鳩山由紀夫内閣が発足することが確実となった。新政権に対する国民の期待は大きいと思科するが、一方で、我が国経済は、7月の完全失業率が5.7%と、史上最悪の水準に達し、消費者物価指数も低下する等、厳しい局面が続いている。右を踏まえ、質問する。
一、鳩山内閣総理大臣として、現下の我が国経済はデフレ状態にあると認識しているか。
二、一、でデフレ状態にあると認識しているのなら、鳩山総理として、何時までにデフレから脱却すべきであると考えているのか説明されたい。
三、本年7月1日の経済財政諮問会議において配布された資料によると、麻生内閣下で行われた第2次補正予算による追加的景気対策を行わなかった場合、平成22年度の実質成長率は0.6%程度、名目成長率はマイナス0.3%と見込んでいるとのことである。右は、経済財政諮問会議として、デフレが来年度も続くとの認識を有していることの証左であると考えるが、鳩山内閣における新経済対策により、右の数字はどの様に変わるのか説明されたい。
四、野村證券金融経済研究所が本年8月31日に発表した試算(マクロ経済レポートNo09-183)によると、民主党が公約していた様々経済政策による実質経済成長率の押し上げ効果は、平成22年度で0.1%、23年度で0.4%となっている。昨年度、本年度合わせて6から7%のGDP下落が見込まれている現在の状況において、鳩山内閣として、右の押し上げ効果をどの様に認識しているか説明されたい。
五、本年9月5日に採択されたG20財務相会議による共同声明には、「われわれは、景気回復が確実になるまで、物価の安定と長期的な財政の持続可能性と整合的に、必要な金融支援措置及び拡張的金融・財政政策の断固たる実施を継続する」とある。我が国としても、継続的な拡張的金融財政政策を断固として実施すべきであると考えるが、鳩山内閣の見解如何。
右質問する。
内閣衆質172第22号
平成21年10月1日
内閣総理大臣 鳩山由紀夫
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員鈴木宗男君提出我が国経済の今後の趨勢に対する鳩山由紀夫内閣の見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員鈴木宗男君提出我が国経済の今後の趨勢に対する鳩山由紀夫内閣の見解に関する質問に対する答弁書
一及び二について
足下の物価の動向を前月比でみると、国内企業物価は横ばいとなる一方、消費者物価は緩やかに下落しているが、その持続性については、なお見極めが必要な状況にある。こうしたことなどを踏まえると、政府としては、現時点において、我が国経済は、物価は持続的に下落するという意味でのデフレ状況にあるとは認識していない。
三及び四について
鳩山内閣の経済政策の効果について、民間機関において様々な試算が行われていることは承知しているが、政府としては、鳩山内閣の経済政策を前提として平成22年度の経済の見通しについては、平成22年度の予算編成過程に合わせてお示めししたいと考えている。
五について
政府としては、家計の実質的な可処分所得を増やすことで、個人消費を拡大するとともに、新たな分野で産業と雇用を生み出し、内需主導型の経済成長を実現するよう、政策運営を行ってまいりたい。日本銀行においても、政府の経済政策の基本方針との整合性を確保しつつ、適時適切な金融政策が行われることを期待している。
第40回質問
予算規模と国債発行額に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二十一年十二月二日
提出者 城 内 実
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
予算規模と国債発行額に関するに関する質問主意書
平成21年度第2次補正予算と平成22年度予算の予算規模や国債発行額に関する様々な発言が与党内で飛び交っている。菅直人副総理は十一月三十日、二次補正は二兆七千億円を上回る可能性に言及した。一方亀井大臣が代表を務める国民新党は十一月二十日に十一兆円という独自案を発表し、「積み上げたらそのぐらいになったが、規模にはこだわらない」と十一月二十八日に発言している。このように予算規模という国の経済にとって極めて重大な事柄が、経済モデルの分析なしで出てくることに疑問を感じるので質問する。
一 経済モデルを使った新規国債発行額の規模の試算について
1 新規国債発行額の規模によって日本が経済危機を克服できるかどうかが決まるのだから、その規模は大臣が出まかせで発言すべきものではない。例えば二次補正の額が二・七兆円の場合と十一兆円の場合で、様々な経済指標(失業率、経済成長率、消費者物価指数、国の債務のGDP比、雇用者報酬)においてどのような違いが出るかに関する、マクロ計量経済モデルを使った試算結果を政府は国民に示す義務があると考えるが同意するか。
2 経済モデルを使った試算は新規国債発行の規模を決める段階で使われていたら、このような経済政策の大失敗は起こりえなかった。新政権は、旧政権の悪しき習慣を踏襲するのでなく、しっかり経済モデルで分析した後、予算執行後の経済がどのようなものかを国民に示せば、新規国債発行額に関して国民の合意が得られると考えるが同意するか。
二 国債残高と日本国債の信認について
1 平成13と14年に格付け会社による日本国債の格付けが大きく引き下げられたが、平成19年に再び引き上げられた。この間国債発行残高は増え続けている。このことが意味することは、国債発行残高が増えれば国債の信認が落ちるという単純な関係ではなく、むしろ国の経済状態が良くなれば国債の信認が高まると考えるのが自然である。そうであれば、現状では、国債残高の増減よりむしろ経済立て直しを第一に考えるべきであると考えるが同意するか。
三 財政危機の認識について
1 政府は不況であるのにも拘わらず財政が厳しいとの理由で赤字国債の発行を抑えようとしているが、果たして本当にそれが正しいと言えるのか。例えば1982年9月16日に鈴木善幸首相は「財政非常事態宣言」を出し、不況であるのにも拘わらず歳出削減を行おうとしていた。9月2日の朝日新聞には「財政 “サラ金地獄に”」とある。鈴木首相は10月12日に財政悪化の責任を取って退陣している。しかし、その当時国の借金は僅か96・5兆円であった。長期金利は約8%であったが、これ以上国債を発行すれば金利が上がると言われていた。しかし国の借金は現在10倍近くになったが、長期金利は逆に1.2%程度まで下がっている。その後、現在まで27年間政府は財政危機を訴えるが、実際金利が暴騰したことは一度もなかった。27年間財政危機を言い続けたのは間違いであったと考えるが同意するか。
2 「財政非常事態」「財政危機」など、明確な根拠も示さず、むやみに国民の恐怖を煽る発言を行うことは政府としては避けるべきだと考えるが、同意するか。
右質問する。
第40回答弁
内閣衆質一七三第一五二号
平成二十一年十二月十一日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
衆議院議員城内実君提出予算規模と国債発行額に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員城内実君提出予算規模と国債発行額に関する質問に対する答弁書
一について
政府としては、経済財政運営に当たっては、計量経済モデルによる分析も活用しながら、予算の総額のみならずその内容を精査した上で、政府経済見通し等において、経済の姿をお示ししてきているところである。
二について
政府としては、国債に対する信認を確保していくことは重要であると認識しており、今後の経済財政運営に当たっては、持続的な経済成長を実現しつつ、将来世代に負担を残さないために、成長力強化と財政規律の両立を図る必要があると考えている。
三の1について
長期金利の水準は、経済状況等の様々な要素に影響を受けることから、財政状況と長期金利との関係について、一概に過去と比較して論ずることはできないと考えている。しかしながら、一たび財政の持続可能性に対する懸念が高まれば、長期金利が急激に上昇するおそれがあり、ひいては、経済や財政に悪影響を及ぼすことになる。政府としては、持続的な経済成長を実現しつつ、将来世代に負担を残さないために、成長力強化と財政規律の両立を図り、国債の発行を極力抑制する必要があると考えている。
三の2について
政府としては、三の1についてで述べた考え方等に基づき、債務残高の対国内総生産比が主要先進国中最悪の水準にあるなど、極めて厳しい我が国の財政の状況について、国民に対し適切にお伝えしてきたところである。
財政破綻リスクに関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二十三年二月二日
提出者 城 内 実
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
財政破綻リスクに関する質問主意書
平成二十二年六月二十二日に、平成二十三〜二十五年度の歳入・歳出の骨格を示す「中期財政フレーム」を含む中長期的な財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」が閣議決定され、『財政運営戦略概要』(以下概要という)の中に、以下のように述べられている。
2.財政破綻リスクへの断固たる対応
現状を放置して、ギリシャ等のように財政破綻に陥るようなことがないようにしなければならない。仮に、そのような状態になれば、財政自主権が失われ、社会保障サービス等の水準が大きく低下し、経済や国民生活に多大な悪影響。
また、菅直人総理大臣も平成二十三年一月八日に「このまま赤字国債を発行するような状態は、二年先は無理だ」と発言(以下総理の発言という)している。これらのことに関して、以下質問する。
一 概要の中に財政破綻とある。これは国の借金が返済不能になるということを意味していると考えるが見解如何。
二 企業の破綻と言えば、債権の放棄が発生する。国の財政が破綻すると、国債は紙くずになると考えるが見解如何。
三 国債が財政破綻により将来紙くずになる可能性があるのであれば、国債を売る際に購入者にその危険性を理解してもらう必要があると考えるが見解如何。
四 国が元本保証するから支払いは問題無いとの見解かもしれないが、財政破綻の可能性があるならその保証は信じられない。過去においても、事実上国債が紙くずになった例があると考えるが見解如何。
五 日銀が市場から国債を買うことにより、事実上政府の財政赤字を日銀が引き受けるのと同等の効果を生じさせることができる。実際、アメリカ連邦準備銀行(FRB)は約一.三兆ドルの米国債を購入し、米国政府の財政赤字を事実上引き受けた。日本政府がこのような方法を許すのであれば、日本の財政破綻は起こりえないと考えるが見解如何。
六 日銀が国債を購入すると、過度のインフレになるという説もあるが、アメリカでは過度のインフレの恐れよりも、むしろデフレの恐れがあり、日本のようにならないようにと神経を使っていると言われている。この例を見ても、日銀が国債を購入するだけで、すぐに過度なインフレになるとは言えず、むしろデフレ脱却の期待が膨らむのではないかと考えるが見解如何。
七 前述の概要の中に、「財政自主権が失われ」とある。これは日本がIMFの支配下に入るという意味と考えるが見解如何。
八 IMFは、外国から借金をしている国において借金の返済が不能になっている場合に、自国通貨を発行させ、それをドルや円などの国際通貨と交換することにより返済を助けている。日本は外貨を十分持っており、IMFへの出資金も世界第二位である。しかも円が国際通貨であるために、IMFの行う交換は全く意味をなさない。つまり現在の国の借金を放置すれば、財政自主権が失われるという表現は正しくないと考えるが見解如何。
九 前掲の総理の発言であるが、赤字国債発行が二年先は無理というのであれば、赤字国債に替わる案があるということだと考えるが見解如何。
十 一月二十一日に内閣府から、経済財政の中長期試算が発表されている。そこに示されているのは、二年先には赤字国債の発行を止めるというのでなく、赤字国債は少なくとも平成三十五年度まで出し続けるというシナリオである。このシナリオは総理の発言と矛盾すると考えるが見解如何。
十一 経済財政の中長期試算で例えば成長戦略シナリオによれば、平成三十五年度には国債費が税収を上回る。国民が納める税収のすべてを使っても国債費を払うことができなくなるという経済は、正常ではないと考えるが見解如何。
右質問する。
内閣衆質一七七第四〇号
平成二十三年二月十日
内閣総理大臣 菅 直人
衆議院議長 横路 孝弘 殿
衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の『財政破綻』は、財政状況が著しく悪化し、財政運営が極めて困難となる状況について記述したものである。
二から四までについて
国債の元金償還及び利子支払については、政府が責任を持って行うこととしている。
五及び六について
日本銀行は、市場への安定的な資金供給のため長期国債の買入れを行っているが、これは、国債価格の買支えや財政赤字のファイナンスを目的としたものではないと承知している。なお、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第五条は、公債の日本銀行による引受けを原則として禁止している。これは、戦前・戦中に財政需要を満たすために多額の公債を日本銀行による引受けにより発行した結果、急激なインフレが生じたことへの反省に基づき規定されたものである。
また、政府としては、日本銀行において、我が国経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済成長経路へ復帰することが重要な課題であると認識し、金融緩和措置を講じているものと承知しており、「包括的な金融緩和政策」(平成二十二年十月五日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)の一環として資産買入れ等の基金による長期国債の買入れ等を行っていると承知している。
七及び八について
御指摘の「財政自主権が失われ」とは、必ずしも御指摘のような意味ではなく、財政運営が極めて困難となり、財政運営の自由度が失われる状況について記述したものである。
九について
御指摘の発言は、国債発行に過度に依存した財政運営はもはや困難との認識を示したものである。
十について
御指摘の「経済財政の中長期試算」(平成二十三年一月二十一日内閣府公表。以下「中長期試算」という。)計量経済モデルを用いて、一定の前提に基づき行っているものであり、中長期試算における各年度の歳出と税収等との差額が、そのまま当該年度における新規国債発行額になることを示しているものではないが、政府としては、「財政運営戦略」(平成二十二年六月二十二日閣議決定)に沿って、平成二十四年度以降の新規国債発行額について、財政健全化目標の達成へ向けて着実に縮減させることを目指し、抑制に全力を挙げることとしている。
なお、御指摘の総理の発言については、九についてで述べたとおりである。
十一について
中長期試算の成長戦略シナリオにおいては、名目長期金利の上昇等を反映して、平成三十五年度の国債費は大幅に増加することとなっており、結果として税収を上回る形となっている。このことは、成長率が高い成長戦略シナリオにおいても、平成三十五年度の財政状況は深刻であることを示している。
42回
質問第234号
消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられて以来、国民は節約に走り、消費は落ち込み、実質GDP成長率は2013年度の2.1%から2014年度には一気にマイナス1.0%程度に落ち込んだものと思われる。民間シンクタンクによる今後の実質GDP成長率の予測は5社平均で2014年度はマイナス1.0%、2015年度1.8%、2016年度1.7%となっている。
ところで、政府は消費税増税による経済への影響は軽微だと国民に説明してきた。
1 平成24年1月24日に内閣府より発表された「経済財政の中長期試算」の12頁において、消費増税を行った場合(一体改革あり)と行わなかった場合(一体改革なし)の比較がグラフで示されており、両方の場合消費増税は実質GDP成長率にほとんど影響しない、4年間の成長率の合計でも差は僅か0.1%とされているがこれは現実と大きく異なる。
2 平成25年10月1日閣議決定で消費増税に対して経済対策が示されている。その規模について「来年度4~6月期に見込まれる反動減を大きく上回る5兆円規模とし、3%の消費税率引上げによる影響を大幅に緩和する」としている。これは例えば財務省のホームページの「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」の6頁にある。甘利大臣も同日の記者会見で補正予算の規模について「来年度4~6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模といたします。」と述べている。
これに関連して質問する。
1 消費増税の前には消費増税の影響は少ないと政府は説明していた。この説明は間違いであったことを認めるか。
2 消費増税の影響を過小評価した原因を徹底的に調べ、二度と間違いを繰り返さないよう努力すべきではないか。
3 消費増税を行わず税率が5%のままであれば、2014年度の成長率は高いレベルであったと考えられる。好景気は財政健全化に資するのではないか。
4 消費増税の影響は深刻だから消費増税は行うべきで無いと主張していた識者はいた。今後過ちを繰り返さないためにも、そういった識者の意見を優先して取り入れるべきではないか。
5 2017年度に消費税を10%に引上げれば、再びマイナス成長に陥るのでないか。
右質問する。
答弁書第234号
内閣衆質189第234号
平成27年5月29日 内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出消費税増税による景気の急激な悪化に関する質問に対する答弁書
1及び2について
消費税率(国・地方)については、経済状況等を総合的に勘案した検討を行った結果、平成26年4月1日に5パーセントから8パーセントへ引き上げることとしたところである。これに合わせて、消費税率の引き上げによる駆け込み需要の反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り持続的な経済成長につなげるため、5兆円規模の「好循環実現のための経済対策」(平成25年12月5日閣議決定)等の経済政策パッケージを講じたものである。
政府としては、今後とも、ご指摘の「消費増税の影響」など過去の経済財政政策の影響も含め経済動向を総合的に検証・分析しつつ、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
3について
仮定を前提とした過去の経済状況についてお答えすることは差し控えるが、一般論としては、持続的な経済成長は、税収の増加を通じて財政健全化に資することとなる。なお、安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しており、消費税率の8パーセントへの引き上げに当たっては、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案した上で、平成26年4月に予定通りこれを行ったものである。
4について
お尋ねの「識者の意見を優先して取り入れるべき」の意味することが必ずしも明かでないが、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、平成29年4月の消費税率の10パーセントへの引き上げは、確実に実施することとしている。同時に、今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」からなる経済政策を一体的に推進することにより、経済の好循環を確かなものとし、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいりたい。
5について
4についてで述べたとおり、平成29年4月の消費税率10パーセントへの引き上げは、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済動向を引き続き注視し、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
43回
質問第264号
基礎的財政収支に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
政府が月内に取りまとめる2015年度の経済財政運営の基本指針「骨太の方針」において基礎的財政収支の赤字を2018年度に対国内総生産(GDP)比で1%程度に縮小することを盛り込むとの報道がある。この方針は、内閣府の試算(予測)をベースに考えられているようであるが、この予測はあまりにも現実とかけ離れている。名目GDPと基礎的財政収支の甘すぎる予測と実績は、各年度の「経済財政の中長期試算」をつぶさに検証すれば、現実離れしている事は明かである。
これに関連して質問する。
1.日本経済はデフレから完全に脱却したのか。
2.基礎的財政収支はその対GDP比を見ればあきらかなように、景気がよくなれば改善し、景気が悪くなれば悪化する。つまり基礎的財政収支を改善したいなら、思い切った景気対策を行いデフレ脱却し景気回復をさせるしかない。これにより一時的に基礎的財政収支は悪化するものの、経済が拡大軌道に乗れば、税収も増え基礎的財政収支は改善すると考えるが、同意するか。
3.骨太方針2006では、2011年度に基礎的財政収支を黒字化することを目標に掲げた。現実には基礎的財政収支は対GDP比でマイナス6.9%にまで大幅に悪化したから、この試みは完璧に失敗した。想定外のリーマンショックが原因で失敗したとの見解かもしれないが、世界経済はいつ不況に襲われるか誰にも分からない。デフレが続いていた当時、歳出削減で景気にブレーキをかけていたためにリーマンショックに耐えられず大きく傷口を広げてしまった。結果としてその後大規模な景気対策を強いられ基礎的財政収支を大幅に悪化させる結果となった。この大規模な景気対策を2006年に行っていたら、デフレ脱却が確実になり、リーマンショックでも景気減速幅は限定的で、基礎的財政収支もそれほど悪化しなかったのではないかと考える。今年の骨太方針も骨太方針2006と同じ失敗を繰り返すことにはならないか。病気は悪化させる前に完治させるべきではないのか。
4.基礎的財政収支の改善はどのようなメリットがあるのか。財政破綻の危機にあるギリシャの基礎的財政収支は黒字である。2014年に基礎的財政収支が黒字の国は182ヶ国中53カ国にすぎず、景気が良い米国も大幅赤字である。基礎的財政収支が黒字化しても、国債費で国の借金は増え続けるし、名目GDPが減少すれば、国の借金の対GDP比は増加し、将来世代へのツケは増える。将来世代へのツケを減らしたいのであれば、国の借金の対GDPを減らすことを目標にすべきではないか。
5.アベノミクスの3本の矢のうちの第2の矢である「機動的な財政運営」について検討するには、経済財政運営モデルの乗数の計算が不可欠である。内閣府は2010年度を最後に乗数の値の発表を行っていない。国の借金も大幅に増え、異次元の金融緩和も行われ、為替相場も変化し、経済状況が大きく変化しているわけであるから、一刻も早く最新の乗数の値を発表すべきではないか。ちなみに2010年版では、5兆円公共投資を増やせば、公債等残高の対GDP比は1.65%PT減少し、将来世代へのツケは減るとなっている。国の借金が当時より大幅に増加した現在では、この減少幅は更に拡大したはずである。
右質問する。
内閣衆質189第264号
平成27年6月19日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出基礎的財政収支に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出基礎的財政収支に関する質問に対する答弁書
1について
安倍内閣においては、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」からなる経済政策である「アベノミクス」を一体的に進めてきた。その効果もあり、景気の緩やかな回復基調が続く中で、これまでのところ、デフレ脱却に向けて前進しているが、デフレ脱却にまでは至っていない。
2について
一般論としては、持続的な経済成長は、税収の増加を通じて財政健全化に資することとなる。安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しており、成長戦略の実行等を通じて、民需主導の持続的な経済成長を実現していくとともに、財政健全化の取り組みを進めることとしている。
3について
仮定を前提として過去の経済財政状態についてお答えすることは差し控えたい。また、お尋ねの「今年の骨太方針」が策定されていない現時点において、「今年の骨太方針も骨太方針2006と同じ失敗を繰り返す事にならないか」というお尋ねについてお答えすることは困難である。さらに、お尋ねの「病気は悪化させる前に完治させるべきではないのか」の意味するところが必ずしも明かでないが、安倍内閣としては経済再生と財政健全化の両立に向けて、引き続き取り組んでまいりたい。
4について
基礎的財政収支の改善は債務残高の縮小に資すると考えている。政府としては、財政健全化目標として、国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減させ、2020年度までに黒字化し、その後、債務残高対GDP比を安定的に引き下げることを目指すこととしている。一般論としては、経済再生を実現しGDPを拡大することと債務残高を抑制することが債務残高対GDP比の安定的な引き下げにつながることになる。したがって、経済再生と財政健全化の両立に向けて、引き続き、基礎的財政収支の黒字化を目指し、その改善に取り組んでまいりたい。
5について
お尋ねの乗数については、「経済財政モデル(2010年度版)」(平成22年8月内閣府公表)において公表したものであるが、リーマンショック、東日本大震災等の影響を受けていない期間のデータが不足していることから、現時点では乗数を算出する基となる方程式の係数の見直しが困難であり、大きな変更は行っていない。
今後、十分なデータの確保が可能となった際には、新たな乗数等の公表を検討してまいりたい。
44回
平成27年7月17日提出
質問第332号
日本の財政は本当に厳しいのかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
政府は我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDP(以下債務のGDP比という)の2倍程度に膨らんでいるから極めて厳しいと考えているようである。このことに関して質問する。
1 アメリカS&PキャピタルIQが世界70の国・地域の財政の「破綻確率」とそれに関連したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を発表している。国債のデフォルトリスクを意識する投資家が増えるほどCDSは増加する。発表されたデータによれば、CDSと債務のGDP比には相関は見られない。日本のCDSは43で債務のGDP比は246%だが、債務のGDP比が僅か35%の韓国のCDSは日本より高い53である。同様に債務のGDP比が90%のエジプトもCDSは330である。一方、債務のGDP比が104%と比較的大きい米国でも、CDSは16.5にすぎない。このように債務のGDP比が小さいからと言って、財政破綻の確率が低いとは言えないし、債務のGDP比が大きいからと言って、財政破綻の確率が高いとも言えないと思うか同意するか。
2 「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と財務省のホームページに書いてあるがこれは政府の見解か。
3 もし国債のデフォルトが考えられないのであれば、国債を増発し減税とか財政支出の拡大が可能なのではないか。
4 財政が厳しいという意味は、国がこれ以上借金をするのが難しいという意味であり、それなら貸し手は高い金利を要求するはずである。しかし、現在10年物の国債は0.4%台と異常なほどの低金利であり、短期金利はマイナスになることさえある。マイナス金利ということは金利を払ってでも貸したい貸し手がいるということである。むしろ市場では国債の品不足が深刻化している。金融取引を正常化・円滑化するには、国は国債の品不足を解消する義務があり、政府はもっと多く国債を発行すべきではないか。こういう状況を考えると財政は厳しいどころか、たっぷり余裕があるのではないか。
5 ブルームバーグの7月7日の記事によると「国際通貨基金への債務返済が6月末に滞り事実上のデフォルトに陥ったギリシャについて甘利明経済再生相は、増税と歳出減では財政再建ができない証しだとして経済成長による税収増の重要性を示した。」とのことである。これは政府見解か。
6 政府は基礎的財政収支の黒字化を達成することを目標としている。例えばギリシャは緊縮財政を続け、経済を縮小させ基礎的財政収支を黒字化した。政府は日本をギリシャのようにしたいのか。
7 「プライマリーバランス目標は債務のGDP比を悪化させている」という自民党総務会長二階敏博氏の論文(二階ペーパー)の主張に同意するか。
8 政府は財政赤字が大きければ国の債務の対GDP比も大きいと誤解しているのではないか。例えば、財政赤字のGDP比が188カ国で最悪はリビアの-43.55%で、債務のGDP比は39.30%、次はベネズエラで財政赤字のGDP比は-14.77%、債務のGDP比は45.62%、その次はエジプトで財政赤字のGDP比は-13.40%、債務のGDP比は90.47%にすぎない。
このことから、財政赤字が大きければ、国の債務の対GDP比は大きくなるというのは間違いだと認めるか。
9 政府は財政赤字が大きい限り、国の債務の対GDP比は増え続けると誤解しているのではないか。
例えばベネゼエラは大きな財政赤字が続いているのに債務のGDP比は大きな増加はない。財政赤字のGDP比の2010年から2015年までの値(%)は-10.36,-11.59,-16.48、-14.58,-14.77,-19.92であり、それに対する債務のGDP比(%)はそれぞれ36.30,43.31,45.97,55.38,45.62,39.64である。つまり、財政赤字のGDP比は-10%~-20%という大幅であるにもかかわらず、債務のGDP比は36%~55%の間に留まっている。
エジプトも2002年~2015年の14年間、財政赤字のGDP比は平均で約-10%という大幅な赤字が続いたにもかかわらず、債務のGDP比は70%~103%の範囲に留まっている。
ただし、2015年はIMFの予測を使った。
このことから、大きな財政赤字が続いても、通常は国の債務の対GDP比は増大し続けるということではないことを認めるか。
平成27年7月28日受領
答弁第332号
内閣衆質189第332号
平成27年7月28日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出日本の財政は本当に厳しいのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出日本の財政は本当に厳しいのかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
ご指摘のスタンダード・アンド・プアーズが発表している「クレジット・デフォルト・スワップ」については、民間企業が公表しているものであり、需給等、様々な要因によりその水準が決まるものであることから、お尋ねの「クレジット・デフォルト・スワップ」と債務残高対GDP比との関係については、政府として見解を述べる事は差し控えたい。
2について
ご指摘の外国格付会社宛ての財務省の意見書については、平成14年に日本国債の格下げが行われたことに対して、より客観的な説明を求めるため、同省より外国格付会社に送付されたものである。
3及び4について
国債の新規発行額は、政府の財政需要や税収等を考慮し決定されるものであり、国債金利を含めた市場の動向によって決定されるものではない。
政府としては、国債に対する信認を確保し、国債の安定的な消化を図るため、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に沿って引き続き財政健全化の取組を着実に進めてまいりたい。
5及び6について
お尋ねの記事については、甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)は、経済と財政双方の一体的な再生が重要である旨の発言をしたものであり、政府としても、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、経済・財政再生計画に沿って「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進することとしている。
7について
お尋ねの論文が具体的に何を指すのか必ずしも明かでないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、政府としては、国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指し、その改善に取り組んでいるところであり、当該改善は、債務残高の増加幅の縮小に資すると考えている。
8及び9について
お尋ねの財政赤字対GDP比と債務残高対GDP比との関係については、GDPの動きなどに左右されるため、一概には言えないが、一般論としては、財政赤字の拡大は債務残高の増加につながることとなる。
政府としては、経済・財政再生計画に沿って、引き続き、経済と財政双方の一体的な再生を目指してまいりたい。
45回
平成27年8月6日提出
質問第369号
増税と歳出減では財政再建ができないのではないかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
2012年12月に第二次安倍内閣が発足して以来、日本経済はあまり成長していない。実質成長率は2013年度2.1%、2014年度はマイナス0.9%だから平均すると年率0.6%の成長にすぎない。特に2014年度の消費増税の後、消費者心理は冷え込み景気回復の足取りが重くなった。デフレ脱却にも財政再建にも失敗している。国民は将来の生活への不安が増し内閣支持率も急落している。
これに関連して質問する。
1.7月22日に内閣府より「中長期の経済財政に関する試算」が出された。これによると2020年度の名目長期金利は3.9%である。一方量的・質的金融緩和により8月3日現在、マネタリ-ベースは322兆円、日銀当座預金残高は226兆円までに増加しており、さらに今後マネタリーベースは毎年80兆円増やすとのことである。つまり、2020年度には数百兆円あるいはそれ以上もの資金がほぼゼロ金利で眠っていることになり、そのようなときに、3.9%もの高金利の金融商品が出てくると、眠っている資金は一気に高金利の商品に大移動してしまう。その大移動により長期金利は下がってしまうのではないかと思われるので3.9%の長期金利はあり得ないと考えるが同意するか。
2.内閣府の発表する中長期の経済財政に関する試算は、毎回余りにも楽観的すぎて、現実離れしている。例えば2005年に7年後の2012年度にはGDPは645.2兆円に達すると予測し、約140兆円の増加を予測した。しかし、実際の2012年度のGDPは472.6兆円であったので約33兆円減少であった。驚いたことに内閣府は毎年このように現実とは大きくかけ離れた楽観的すぎる予測をしている。このことについて試算を行っている担当者に聞くと「3%成長を目標としている政府の下で試算を出している限りこれと異なる試算は出せない」と答えている。つまり政治的に歪められた試算であることを暴露したわけである。そういった事情を考慮すれば、この試算は単に「現実を無視したはかない政府の夢」にすぎないと言える。もっと現実の経済を正確に予測する試算を内閣府は国民に示すべきでは無いか。
3.内閣府発表の試算がことごとく外れたことに対して「リーマンショックは予測できなかった」ということが逃げ口上として使われることがある。しかし、世界経済は常に好況と不況を繰り返す。例えば現在失速しつつある中国経済により日本経済は深刻な影響が出る可能性があるのではないか。消費増税で失速し回復の遅れている日本経済はそのようなショックに耐えられるのか、このような状況で2017年度の消費税再引き上げは無謀だと思わないか。
4.「輪転機をぐるぐる回してお金を刷ればよい。1万円札を刷るのに20円しか掛からない。9980円は国の収入になる。」と安倍首相はよく言っておられた。「お金を刷る」というのは比喩的な表現ではあり、実際は政府が国債を増発し、日銀が国債を買うことを意味する政策であると考えられる。この政策は実行されないのか。
5.デフレ経済が続く現在の日本のGDPは1997年度のGDPよりも少ない。経済を成長させ、国の債務の対GDP比を下げることを、政府の目標にすべきではないか。
平成27年8月14日受領
答弁第369号
内閣衆質189第369号
平成27年8月14日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出増税と歳出減では財政再建が出来ないのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出増税と歳出減では財政再建が出来ないのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
ご指摘の仮定を前提としたお尋ねにお答えすることは困難であるが、「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)においては、名目長期金利は、均衡実質金利及び期待インフレ率並びにGDPギャップなどに基づいて試算された短期金利に一定のリスクプレミアムを加えることで試算した結果、2020年度までに経済成長等に伴って3.9%程度まで上昇する結果となっている。
2について
「中長期の経済財政に関する試算」は、政府のマクロ経済目標及び国・地方の財政健全化目標の進捗状況等を点検し、中長期的な経済と財政の姿を展望するため、経済・財政・社会保障を一体的にモデル化した内閣府の計量モデルに基づき試算している。試算においては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」の効果が着実に発言する「経済再生ケース」をお示めしする一方で、経済が足下の潜在成長率並みで将来にわたって推移する「ベースラインケース」についてもお示ししているところである。
政府としては、中長期的に、実質GDP成長率2%程度、名目GDP成長率3%程度を上回る経済成長の実現を目指し、デフレ脱却と経済再生に取り組んでまいりたい。
3について
今後の日本経済については、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」(平成26年12月27日閣議決定)を具体化する平成26年度補正予算及び平成27年度予算の着実な実行や賃金上昇を定着させ投資を促進させるための環境整備の取り組み等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、好循環が更に進展するとともに、交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。先行きのリスクとしては、中国経済を始めとした海外景気の下振れや金融資本・商品市場の動向等に留意する必要がある。
その上で、平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施することとしている。
4について
財政法(昭和22年法律第34号)第5条本文においては、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされており、これに抵触する日本銀行による公債の引受等については禁じられている。ただし、日本銀行が自らの判断により、金融政策の目的で、市場で流通している国債を買い入れることは、同条に抵触するものではなく、日本銀行において、その時々の経済・物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切におこなわれるものと考えている。
5について
「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に、債務残高の対GDP比を中長期的に着実に引き下げていくことを定めている。
引き続き、政府としては、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、「デフレ脱却・経済再生」。「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進し、経済と財政双方の一体的な再生を目指してまいりたい。
平成27年8月26日提出
質問第393号
実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
8月17日、4~6月期の実質GDP速報値は、前期比0.4%減、年率換算で1.6%減と発表された。一方では「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」と題した平成27年度年次経済財政報告(以下経済財政報告という)が内閣府より発表された。これらについて質問する。
1.実質GDPでマイナス成長になり、株価も下落し、実質賃金も下がり、その結果節約傾向が強まり消費も落ち込んでいる。また中国経済の減速の影響で輸出も減少傾向にある。このような状況下では、緊急に補正予算を組んで景気対策をすべきではないのか。
2.安倍内閣の目標は2年で2%のインフレ目標を達成すること、実質成長率2%、名目成長率3%を達成することであったが、いずれも達成できていない。原油が下がったからインフレ率が落ちたという主張はおかしい。原油価格の下落はGDPを押し上げるのだから、成長率は予想以上に高くなければならないはずだがそうなっていない。これらのことを考えると、経済財政白書の「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」という主張は不適当なのではないか。
3.経済財政報告によれば、2014年度の消費増税はGDP全体を1.2%ポイント程度下げたとしている。実質GDP成長率は2013年度2.1%、2014年度はマイナス0.9%であり、その差は3%であるのだから、1.2%ポイントという数字はまだ小さすぎるのではないか。平成24年1月24日に内閣府で発表された「経済財政の中長期試算」の12頁では、影響はさらに小さいとされていて、成長率の4年間の合計で比べたとき、消費増税を行ったときと行わなかったときで僅か0.1%の違いしかないとしている。経済財政報告は、この予測が間違いであったことを認めたということか。平成24年の予測が大きく外れたわけだが、その理由は何か。
4.政府は「平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施すること」としている。しかしながら、失われた20年といわれるほどの世界でも例を見ない大不況の中で、消費税率を更に上げて実質所得を更に下げ、その結果国民が倹約志向を強めれば、消費は減退し、経済は縮小する。2012年10月から2014年12月の期間の年金積立金の運用益は35兆円もある。現在積立金は145兆円にまで膨れあがっていて、社会保障制度は破綻寸前という状態ではないし社会保障制度を守るために緊急に大増税をする必要はない。一方でデフレ脱却は緊急を要する。そう考えれば、平成29年4月の消費税率の10%への引き上げは中止すべきではないか。そうでないと、衰退を続ける日本経済を次世代に引き継がせることになってしまうのではないか。
5 政府は「「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)においては、名目長期金利は、均衡実質金利及び期待インフレ率並びにGDPギャップなどに基づいて試算された短期金利に一定のリスクプレミアムを加えることで試算した結果、2020年度までに経済成長等に伴って3.9%程度まで上昇する結果となっている。」としている。つまり、異次元の量的緩和によって日銀から出て行った大量の資金の動きを完全に無視するということである。こんなずさんな計算でよいのなら出口戦略など全く心配しなくてよくなるのではないか。政府は危機対応に対する備えを怠っているのではないか。
6 日銀の営業旬報(2015/8/20時点)の資産側を見ると、
(以下、単位:千円)
金銭の信託(信託財産株式) 1,351,077,924,000円
金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託) 5,882,038,708,000円
金銭の信託(信託財産不動産投資信託) 244,831,155,000円
以上、個別株、株式指数ETF、REIT計7.5兆円
となっているが、それに対して純資産(自己資本)が、2015/3/31時点の財務諸表の貸借対照表を見ると3.9兆円しかない。また、貸借対照表を見ると、個別株、株式指数ETF、REITについては、債券や外国為替のように損失引当金を積んでいない。
日銀がこのような財政状態であるときに、仮に世界的な株式市場大暴落が起き、それにつれて日本市場でも大暴落がおきれば、個別株、株式指数 ETF、REIT計7.5兆円(簿価)が半分以下になれば財務諸表の「重要な会計方針」に従って減損処理を行う必要も出て来る可能性があると思われる。
そうすると、損失額が純資産(=自己資本)を上回り、日銀が債務超過に陥る可能性があるように思われるが、そのようなリスクについて内閣は認識しているか。また、もしそのようになった場合はどのような対策をするつもりか。なお、この問いに関しては仮の話だから答えられないという回答は避けて頂きたい。仮の話だから答えられないという回答であれば、内閣は万が一の場合において無策であると認識するがそれでよいか。
またそもそも、一般の市中銀行は「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」
第3条1項によって、自己資本に相当する金額を超える金額の株式等を保有できないことになっている。これは銀行が債務超過に陥ることを防ぐための法規であると考えられるが、この法律は日本銀行には適用されないと理解してよいか。
あるいは、同条2項において「銀行等及びその子会社等は、合併その他の政令で定めるやむを得ない理由がある場合には、前項の規定にかかわらず、あらかじめ主務大臣の承認を得て、株式等保有限度額を超える額の株式等を保有することができる」とあるが、この規定を適用して日銀が自己 資本を超えて株式等を保有することが認められているという認識でよいか。
右質問する。
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平成27年9月4日受領
答弁第393号
内閣衆質189第393号
平成27年9月4日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、穏やかな回復基調が続いているものと認識している。
現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。政府としては、平成26年度補正予算や平成27年度予算に基づく施策を着実に実行するとともに、より力強い賃金上昇を促し、過去最高水準の企業収益からの投資を喚起することにより、経済の好循環を更に拡大・深化させていく。いずれにせよ、経済動向を引き続き注視し、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
2について
内閣府が平成27年8月14日の閣議に配布した「平成27年度年次経済財政報告」では、デフレからの脱却と経済生成に向けた取組が進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述しているところであり、「不適当」とのご指摘は当たらないものと考えている。
3について
「平成27年度年次経済財政報告」では、平成26年4月の消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が、平成26年度のGDP全体を前年度比1.2%PT程度押し下げたとの試算をお示ししている。
他方、「経済財政の中長期試算」(平成24年1月24日内閣府公表)では、社会保障・税一体改革を考慮した場合としない場合の平成25年度から平成28年度の実質GDP成長率について、年平均で0.1%PT程度の差が出るとの試算をお示ししている。
それぞれの試算においては、試算の考え方や、前提となる経済状況等が異なることから、ご指摘の計数をもって単純に比較することは困難である。
4について
我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にある。安倍内閣としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」、の3本柱の改革を1体として推進することとしている。平成29年4月の消費税率の10%への引き上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施することとしている。引き続き、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」からなる経済政策を一体的に推進することにより、経済の好循環を確かなものとしてまいりたい。
5について
「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)は、経済・財政・社会保障を一体的にモデル化した内閣府の計量モデルに基づき試算を行ったものであることから、金利の上昇が経済に与える影響等も織り込まれており、「ずさんな計算」とのご指摘は当たらないものと考えている。
なお、お尋ねの金融緩和の「出口戦略」について、日本銀行総裁は、平成27年7月15日の記者会見において、「出口について具体的に議論するのはやはり時期尚早であると思っています」と発言したと承知している。政府としては、日本銀行が、その時々の経済・物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切な対応を行うものと考えている。
6について
お尋ねについては、仮定のご質問であること、また日本銀行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性は尊重されなければならないことから、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、同行の財務の健全性については、まずは同行において関係法令の規定に則して適切な運営が図られるべきであるものであると考えている。
また、同行は、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13年法律第131号)第3条第1項に規定する「銀行等及びその子会社等」に該当しないため、同項及び同条第2項の規定は適用されない。
平成27年9月10日提出
質問第420号
政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書に対する答弁書(答弁書第393号、以下答弁書という)や首相官邸のホームページに書かれている内容を読むと、内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認が含まれているのではないかという疑問がある。
これに関して質問する。
1.答弁書の「2について」であるが、「デフレからの脱却と経済生成に向けた取組が進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述しているところであり」という記述がどこにあるか分からない。「平成27年度年次経済財政報告」の6頁には「およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況の出現」というタイトルで説明がある。この根拠として2015年1-3月期の名目GDP成長率が前年同期比年率9.4%となったことで、1994年以降最大の伸びとなったというのがタイトルの根拠になっている。しかし、これは速報値であり、確報値では9.0%と修正され2011年7-9月期の9.2%を下回るのでタイトルの記述は間違いではないか。しかもこれは原油価格の下落によってもたらされた数字であり、アベノミクスの成果ではない。アベノミクスの成果と言うなら4-6月期の実質成長率年率マイナス1.2%を引用すべきではないか。
2.答弁書の「3について」であるが、「年平均」で0.1パーセントポイント程度の差が出るとあるが、これは「4年間の合計」での間違いである。成長戦略シナリオにおいて4年間の合計は一体改革ありでは7.6%、一体改革なしでは7.7%である。差は合計で0.1%である。四捨五入した誤差を考えても差は0.2%を上回ることはないから、平均で0.1%という主張は間違いではないか。実際どうなのかは、もう一桁数字を出せば明らかになる。
3.答弁書の「3について」であるが、2つの試算で「駆け込み需要とその反動減」や「社会保障・税の一体改革の考慮」は両方共同じように考慮されているのではないか。試算の考え方や、前提となる経済状況等が異なるとは具体的に何を意味するか。
4.答弁書の「4について」であるが、「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にある」となっている。しかしながら、平成27年7月22日に内閣府から発表された「中長期の経済財政に関する試算」の経済再生ケースでは債務残高の対GDP比は今後減り続けるとある。答弁書はこの試算が間違いだと主張するのか。
5.先日トルコのアンカラで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で9月5日に発表されたコミュニケでは「われわれは、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、経済成長と雇用創出を支えるため、短期的な経済状況を勘案して機動的に財政政策を実施する。」とあり、われわれとは日本も含まれている。内閣府の発表した乗数でも、財政出動によって債務残高の対GDP比は下がることが示されているのだから、当然政府は財政出動によって経済成長と雇用創出を支えることを国際公約したことになるのではないか。
6.現在のように世界的な不況の局面においては、経常黒字で対外純資産が多い国は積極財政で世界の景気の牽引役になるべきではないか。その意味でも日本は補正予算を組んで景気対策をすべきなのではないか。
7.首相官邸のホームページに「アベノミクス「三本の矢」」というタイトルで国民向けに現在の経済状況を示したページ(以下官邸ホームページという)がある。それによると実質GDPは年率+2.4%成長(2015年1-3月期)とある。しかし、最新のデータマイナス1.2%成長(2015年4-6月期)をここは書くべきである。わざわざ古いデータを載せるということは、国民を騙そうとしている意図ではないか。
8.官邸ホームページには実質GDP累計+2.0%成長(2015年1-3月期/2012年10-12月期)とある。その前のデータ2.4%は年率であるが、ここは2年3か月の累計である。国民に誤解を与える表現をわざわざ行っているように見える。ここは前の表記に倣って2.0を2.25で割って年率を計算して表示すべきなのではないか。
9.官邸ホームページで夏季賞与:過去23年で最高水準とある。この数字の意味を内閣府に質問したら、厚生労働省に聞くように言われた。厚生労働省に質問すると、これは厚生労働省の数字ではないとの返事であった。しかし、これを裏付ける数字をどこか出されていないかを調べてくれた。そこで経団連の発表があると教えてくれた。しかし、経団連の数字は僅か140社のみの集計であり、しかも名目値である。厚生労働省は33000社を調べており、しかも実質値を計算してある。平成22年の平均を100とした場合
平成25年6月 137.7
平成26年6月 132.0
平成27年6月 128.1
となっており、下がり続けているわけで、過去23年で最高という表現は不適切ではないか。政府は厚生労働省のデータを信頼しないということか。
平成27年9月18日受領
答弁第420号
内閣衆質189第420号
平成27年9月18日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
議院議員福田昭夫君提出政府は内閣府試算や日本の経済の現状に関して重大な誤認があるのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
内閣府が平成27年8月14日の閣議に配布した「平成27年度年次経済財政報告」では、デフレからの脱却と経済再生に向けた取り組みが進み、デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が着実に回り始めた結果、2014年度の企業収益が過去最高水準になり、また、有効求人倍率が2015年4月には23年ぶりの高水準となるなど、企業活動や雇用を含む幅広い分野で、およそ四半世紀ぶりとなる良好な経済状況がみられるようになった旨を記述している。(注1)
2について
「経済財政の中長期試算」(平成24年1月24日内閣府公表)では、社会保障・税一体改革を考慮した場合としない場合の平成25年度から平成28年度の実質GDP成長率について、「慎重シナリオ」においては、「一体改革あり」の場合は年平均で1.1%程度、「一体改革なし」の場合は年平均で1.2%程度との試算を、「成長戦略シナリオ」においては、「一体改革あり」の場合は年平均で1.8%程度、「一体改革なし」の場合は年平均で1.9%程度との試算をお示ししており、お尋ねの「年平均で0.1%PT程度の差」については、これらの差をお答えしたものである。(注2)
3について
先の答弁書(平成27年9月4日内閣衆質189第393号)3についてで、「それぞれの試算においては、試算の考え方や、前提となる経済状況等が事案瑠ことから、ご指摘の計数をもって単純に比較することは困難である」とお答えしたのは、試算の対象とする期間が異なることや、試算時点の違いにより前提となる個人消費を取り巻く経済状況が異なる等によるものである。
4について
お尋ねの「なおも更なる累増が見込まれる」に関しては、国・地方の債務残高の累増が見込まれる旨を述べたものであり、「中長期の経済財政に関する試算」(平成27年7月22日経済財政諮問会議提出)の「経済再生ケース」において国・地方の公債等残高が増加する試算結果となっていることと整合的なものとなっている。
5について
一般論としては、国際会議におけるコミュニケは、法的拘束力がなく、記載された事項は、国際公約ではない。政府としては、ご指摘のコミュニケを踏まえつつ、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に沿って、引き続き、経済と財政双方の一体的な再生を目指してまいりたい。
6について
政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下に、それぞれの国が置かれた状況を踏まえながら、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えており、積極財政を行うべきか否かについては、「経常黒字で対外純資産が多い」という理由で判断されるべきではないと考えている。なお、現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。
7について
ご指摘の「首相官邸ホームページ」は首相官邸ホームページに掲載されている広報ページ「アベノミクス「三本の矢」」を指していると考えられる。当該ホームページについては、本年5月に改訂したものであるが、本年6月30日に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2015」の内容を踏まえて現在改訂作業を行っているところである。なお、どのような指標を活用することが適切かについては広報の観点から検討を行うこととしている。
8について
ご指摘の表記については、第2次安倍内閣発足以降の経済成長について分かりやすく示したものであり、国民に誤解を与える表記ではないと考えている。
9について
ご指摘の「夏季賞与:過去23年間で最高水準」という記載は、厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」を根拠としている。同調査では、事業所規模5人以上の事業所における夏季賞与の前年比について、平成26年は2.7%増と、平成3年の6.3%増以来の数値となっており、「過去23年間で最高水準」という表現は不適切ではないと認識している。
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コメント
注1 間違っています。報告書に書いてあるのは、6頁でGDPを根拠としています。
注2 どこまで嘘を言い続けるのでしょう。中長期試算には2種類の数字が書いてある。4年間の累積と平均です。増税をした場合としない場合とで差を求めるとき、誤差が少ないのは累積での差を求めるときであることくらいは誰でも分かります。わざわざ、自分の都合の悪い数字には言及せず、都合のよい数字だけを言及したということ自体、国民を騙そうとする意図が表れています。
注3 個人消費を取り巻く経済状況が変わってきたのだから両試算を比較すべきではないとの答弁。でも、消費増税前の試算でも、消費増税をすれば消費落ちる(つまり消費環境が悪化する)ことは考慮しなければなりません。つまり個人消費を取り巻く経済状況が変わることを考慮して計算しなければならなかったのに、それをしなかったということは致命的な内閣府の試算の欠陥と言えるでしょう。というより、始めから国民を騙すための試算だったというべきでしょう。
注4 議論のすり替えがある。前回の答弁書には債務のGDP比について書いている。しかし、今回は債務の絶対値なんだという。自分が言っていることが支離滅裂であることを承知で答弁書を書いている。
注5 国際会議のコミュニケは国際公約ではないが、国際会議での発言はすべて国際公約になるという論理は理解できない。消費増税を国際会議で話したら法的拘束力が生じるのだろうか。
注6 どういう国が積極財政が可能なのか。「経常黒字で対外純資産が多い」国は積極財政はすべきでなく「経常赤字が続き対外純債務が膨大」な国が積極財政をせよというのか。それこそ財政破綻を気にするなということではないか。それとも世界中の国は緊縮財政をせよというのか。それは世界大恐慌への道だろ。
注7 首相官邸のホームページを作り直すと言った点は評価できる。二度とこのような欺瞞的なホームページを作らないよう期待する。ふざけたホームページをつくったら、また追求しますから。
注8 これこそ欺瞞的な表現である。まあ、作り直すと言ったのだから、どのようになるのか見ましょう。
注9 平成26年は夏季賞与が前年比で2.7%増えたと言っても、すべての商品には3%分が上乗せされた時であり、しかも輸入物価の値上がりもあった。そんなときに賞与が2.7%上がったと言われても、誰が喜びますか。平成26年度は実質では下がっていることも厚生労働省は発表している。なぜ消費増税でゲタをはかされた名目値を自慢して、マイナスとなった実質の値を隠すのか。
48回
なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
内閣府は12月25日、2014年の国民一人当たりの名目GDPが3万6200ドルで、これはOECDに加盟する34か国のうち上から20番目で、統計が確認できる1970年以降、最も低い順位になったと発表した。なんとイスラエルにまで抜かれてしまった。失われた20年と言われている期間に、日本はここまで貧乏になってしまったのである。この期間において、財政規律を重んじすぎ緊縮財政でデフレを続けてしまったのが原因だと考える。円安・株高・原油安という日本経済にとって追い風を受けながら、デフレ脱却さえできていない。2年で2%のインフレ目標も、実質2%、名目3%のGDP成長率の達成にも失敗した。日本の経済成長率の低さは現在世界の中で際立っている。1月3日のTBSの時事放談にて石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言し、アベノミクス三本の矢のうちの第二の矢を否定した。これに関して質問する。
1.内閣府経済社会総合研究所編の「国民経済計算報告-平成2年基準-(昭和30年~平成10年)によれば、1993年と1994年、日本の一人当たりの名目GDPは世界一であると書いてある。これらのデータは今でも変更はないか。
2.一人当たりの名目GDPは、その国の豊かさを表す経済指標である。その意味で日本は1993年、1994年、世界で最も豊かな(あるいはそれに準ずる)国であった。しかし、その後財政規律を重んじすぎて緊縮財政を続けデフレが続くことになり、20年以上の間、実質賃金が下がり、結果として貧乏な国になってしまったと考える。つまり経済政策の失敗が日本を貧乏にしたと考えるが同意するか。
3.もしも日本が貧乏になってしまったのが、上記の理由ではないと主張するのであれば、何が原因であると主張するのか。また、どのようにしてその流れを止めることができると考えるのか。
4.日本がここまで貧乏になった理由を円安では説明することはできない。1993年、1994年頃、1ドルは100円~110円程度であった。この頃、一人当たりのGDPを見ると、ルクセンブルグやスイスなどは日本と大差なかったが、現在ルクセンブルグは日本の3倍以上、スイスは日本の2.4倍になっており、とても円安では説明できないのは明かではないか。
5.増税は国民からお金を取り上げ、貧乏になった国民を更に貧乏にする。2017年4月からの消費税再増税は、国民の実質所得を下げ、国民に節約を強要し、消費を縮小させるから、世界の中で相対的に日本国民を更に貧乏にしてしまうと考えるが同意するか。
6.日本を貧乏にしてしまったら、国の借金の1000兆円は返せなくなるし、社会保障も貧弱なものになると考えるが同意するか。
7.財政規律をごく僅かでも緩めると、とたんにハーパーインフレになると考えているのか。財政赤字が何兆円を超えるとハイパーインフレになると考えているのか。
8.例えば財政規律を5兆円だけ緩めるとしよう。平成22年8月に内閣府計量分析室から発表された乗数によると、5兆円公共投資を増やした場合、1年目に実質GDPは1.06%増加、名目GDPは1.15%増加、消費者物価は0.07%上昇ということで、ハイパーインフレにはならず、可処分所得は0.94%増加、また公債残高のGDP比は1.65%PT減少するとなっており財政も健全化するわけで、日本経済にとってよい材料ばかりである。このような経済の好循環を引き起こすのは公共投資だけに限らない。日本が急速に貧乏になっていくのを防ぐためには、緊急に財政支出を拡大すべきだと考えるが同意するか。
9.公共投資の増額を2年後以降も同様に続けた場合を考えると、債務が蓄積されるかのような錯覚を受けるかもしれない。しかし、毎年乗数は変わるのであり、2年後以降はその年に計算された新しい乗数で何が最良な財政政策であるかを検討すべきだと考えるが同意するか。
10.昨年の12月22日に甘利大臣は2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ実施は「増税でデフレに戻ることがないのが条件」と述べた。もし、大部分のエコノミストが増税でデフレに戻ることを予想したら増税は延期されると考えて良いか。
右質問する。
内閣衆質190第39号
平成28年1月22日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出なぜ日本がここまで貧乏になってしまったのかという疑問に関する質問に対する答弁書
1について
お尋ねの日本の一人当たり名目GDPについて、平成6年につき「平成26年度国民経済計算確報(フロー編)」(平成27年12月25日内閣府公表)等、平成5年につき「支出系列簡易遡及平成17年基準」(平成26年1月20日内閣府公表)等を用いて計算すれば、米ドル換算で、それぞれ3万8844米ドル及び3万5504米ドルとなり、いずれも経済協力開発機構(以下「OECD」という。)加盟国中第3位となっている。
2から4までについて
ご指摘の「貧乏」の定義が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、我が国の一人当たり名目GDPのOECD加盟国内の順位が低下した要因としては、世界経済が成長する中で、我が国経済はデフレ状態にあって、名目GDP成長率が相対的に低かったこと等があると考えている。
政府としては、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢からなる経済政策を一体的に推進してきた。今後の経済財政運営に当たっては、アベノミクス第二ステージにおいて、名目GDP600兆円を平成32年頃に達成することを目標とし、これまでの三本の矢を束ねて一層強化した新たな第一の矢である希望を生み出す強い経済の推進に取り組むとともに、その果実を第二、第三の矢である夢をつむぐ子育て支援、安心につながる社会保障にもつなげることで、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。
5及び10について
社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、平成29年4月の消費税率の10%への引き揚げは、リーマンショックや大地震のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
6について
ご指摘の「貧乏」の定義が必ずしも明かではないため、お答えすることは困難ではあるが、平成29年4月の消費税率の10%への引上げは、市場や国際社会における我が国の信頼を確保するとともに、社会保障制度を次世代に引き渡していくためのものである。その増収分は全額、社会保障の充実・安定化に充てることとしている。
7について
ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。
8及び9について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に基づき、平成32年度の経済健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り込むこととしている。
平成28年2月10日提出
質問第123号
マイナス金利政策が成功する条件に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
アベノミクスが目標としている2年で2%のインフレ目標、デフレ脱却、実質2%、名目3%の成長目標のいずれも達成に失敗している。金融緩和の限界が見えてきた結果苦し紛れにマイナス金利が導入されたが、その効果も限定的だと言われている。デフレ脱却の失敗のお陰で、かつて世界トップレベルにあった一人当たりの名目GDPも今や20位にまで落ちてしまったことは答弁書「内閣衆質190第39号」で政府も認めるところである。
これに関連して質問する。
1.アベノミクスの3本の矢は①金融政策②財政政策③成長戦略である。実質成長率は2013年度が2.0%、2014年度がマイナス1.0%であった。この2年間で①金融政策も③成長戦略もほとんど変化ないのに、②財政政策だけは2014年度には大きく後退している。このことを見れば、実質成長率はほとんど財政政策で決まっていると考えられるが同意するか。
2.平成22年8月に内閣府計量分析室が発表した乗数からも明らかなように、財政支出を拡大すれば、実質GDP成長率が上昇し、インフレ率も高まると考えるが同意するか。
3.内閣衆質190第39号において「平成29年4月の消費税率の10%への引き上げは国際社会における我が国の信認を確保」するためだと述べている。一方で内閣衆質第420号において日本も参加したG20で発表されたコミュニケは法的拘束力はなく、国際公約ではないので無視してよいと述べており、国際社会における我が国の信認を確保する努力を全く行っていない。この2つの発言は矛盾するのではないか。
4.1月29日に日銀はマイナス金利を導入した。これは銀行の収益を悪化させ、貸出を停滞させる可能性がある。現在の日本は鉱工業生産指数も低下、実質消費支出も4か月連続のマイナスであり、2015年10~12月期はマイナス成長になるという見方が強まっている。このように国内の景気が悪化していて、しかも来年は消費増税で更に景気が悪化しそうな状況では、銀行による貸し出しの増加は期待できず、資金は海外に流出してしまう可能性が高い。そうであれば、まず財政支出を拡大し、景気を回復することにより、国内の資金需要拡大をすることにより日銀の政策を助けるべきではないか。
5.マイナス金利により、日銀による国債購入が困難になるのではないか。マイナス金利で日銀当座預金に資金を預けるより国債を手放さないほうが有利だからである。市場における国債の品不足を解消するには政府が国債を増発すべきであり、それが日銀の金融政策を助けるのではないか。
6.国債の発行残高が増えると金利負担が増えると錯覚するかもしれないが、今後は国債の金利もマイナスになり、国債の発行残高が増えれば金利負担が減るということも考えられるのではないか。
7.国債の増発で財政赤字が増えれば国の債務のGDP比が増えると錯覚している人がいる。しかし、そうではないということは、今年1月21日に内閣府で発表された「中長期の経済財政に関する試算」により明確に示された。それによると今後巨額の財政赤字が続くのにも拘わらず、債務のGDP比は減っていく。具体的には2015年度には197.5%であったものが、毎年減り続け2024年度には176.7%にまでに減少するということである。このことを踏まえると、政府は財政赤字を気にする事でなく、むしろ経済の再生のためにどれだけ財政を拡大すべきかを考えるべきではないか。
8.1月3日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言された。しかし内閣衆質190第39号ではハイパーインフレは現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていないと述べている。このことは石破大臣がTBSの発言を撤回したと考えてよいか。
9.国債増発による財政拡大でハイパーインフレは発生しないのであれば、2~3%のインフレ率の達成は可能なのではないか。適切な規模の財政拡大によりインフレ目標達成、デフレ脱却、3%の名目成長率の達成のすべてが可能になると考えるか同意するか。
10.ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンが2014年11月16日付けのNYタイムズのコラムで次のように書いている。
「増税を遅らせた場合、投資家が心配するのは何か?デフォルトではない。日本は自国通貨建てで借金しているのでデフォルトする必要がない。投資家が心配するのはマネタイゼーションだ。これは日本をインフレに導く。安倍総理は、人々にデフレよりもインフレへの期待を与えようと努力しているが、政府財政に対する信頼の喪失は将来のインフレに対する期待をもたらす。日本に必要なのは、無責任になることを約束することだ。流動性の罠は、あなたを鏡の反対側に据える。鏡の反対側においては、美徳は悪徳であり、慎重さは愚かさであり、中央銀行の独立性は悪いことであり、財政赤字の中央銀行直接引き受けの脅威は歓迎されるべきものであって恐れるべきものではない。」
このようにクルーグマンは来年の消費増税はすべきでない、政府財政に対する信頼の喪失がむしろデフレ脱却を可能にするとしているが、これをどのように考えるか。
11.現在求められているのは内需拡大であり、政府が財政政策による内需拡大の努力をせずに企業の投資拡大を強要すれば、企業は過剰設備を抱えることとなり、将来に禍根を残すことになるのではないか。
12 政府は自らの借金をできるだけ増やしたくないと言い、一方では企業に借金を増やして投資をせよと言う。リスクは自分でなく企業に押しつけようというもので、あまりに身勝手過ぎないか。
平成28年2月19日受領
答弁第123号
内閣衆質190号第123号
平成28年2月19日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出マイナス金利政策が成功する条件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出マイナス金利政策が成功する条件に関する質問に対する答弁書
一及び二について
安倍内閣の経済政策の効果が発現し、我が国経済はデフレ脱却・経済再生に向けて着実に前進してきているところであるが、各年度の実質GDP成長率については、平成26年4月の消費税引き上げに伴う影響を含め、様々な要因が反映されたものと考えられる。
財政支出が実質GDP成長率やインフレ率に与える影響については、内外経済状況など様々な要因に左右されるため、一概にお答えすることは困難である。
三について
ご指摘の答弁書(平成二十七年九月十八日内閣衆質189第420号)五についてでは、「一般論としては、国際会議におけるコミュニケは、法的拘束力がなく、記載された事項は、国際公約ではない。政府としては、ご指摘のコミュニケを踏まえつつ、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に沿って、引き続き、経済と財政双方の一体的な再生をめざしてまいりたい」とお答えしているところであり、「国際公約でないので無視してよいとのべており、国際社会における我が国の信認を確保する努力を全く行っていない。この二つの発言は矛盾するのではないか」とのご指摘は当たらないものと考えている。
四 について
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いているものと認識している。
また、平成二十八年一月二十九日の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合において、日本銀行が決定したマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入や、それを受けた金利の動向等が金融機関に与える影響は様々であり、一概にお答えすることは困難であるが、政府としては、平成二十五年一月二十日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現の為の政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。
五について
日本銀行による国債購入等の金融政策の具体的な手法については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたいが、お尋ねの「マイナス金利により、日銀による国債購入が困難になるのではないか」については、平成二十八年二月四日の衆議院予算委員会において、黒田東彦日本銀行総裁が「0.1%の限定的なマイナス金利のもとで、国債の買い入れがスムーズに進まなくなるというリスクは非常に小さいのではないかというふうに現在考えております」と答弁しているものと承知している。
また、国債の新規発行額は、政府の財政需要や税収を考慮され決定されるものであり、同行の金融政策によって決定されるものではない。
政府としては、国債に対する信認を確保し、国債の安定的な消化を図るため、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一五」(平成二七年六月三十日閣議決定)第三章に定めた[経済・財政再生計画」(以下[経済・財政再生計画」という。)に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進めてまいりたい。
六について
国債金利は、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、ご指摘の金利水準の動向を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
七及び九について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、経済・財政再生計画に基づき、平成三十二年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むこととしている。
八について
ご指摘の石破地方創生担当大臣の発言は、財政規律が緩み財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況かにおいて、ハイパーインフレーションが起こることに言及したものである。
十について
平成二十九年四月の消費税率十パーセントへの引上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともの、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大災害のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
なお、万が一、ご指摘の「政府財政に対する信認の喪失」が生じた場合には、金利が急激に上昇することなどにより、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。政府としては、引き続き、財政に対する市場の信認を確保できるよう、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいりたい。
十一及び十二について
政府としては、「未来投資に向けた官民対話」において政府として取り組むべき環境整備の在り方と民間投資の目指すべき方向性を共有する中で、生産性向上に向けた設備、人材、技術開発等への企業の投資拡大を産業界に養成しているところであり、[企業の投資拡大を強要」しているものではなく、「リスクを自分でなく企業に押し付けつけようとしているもの」とのご指摘も当たらないと考えている。
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以下、私のコメントです。
一及び二について
政府は、消費増税で実質成長率は落ちたが、名目成長率は落ちてないと言いたいようです。しかし、名目が上がったのは消費税率が上がり、物価がかさ上げされただけであり、これは経済成長とは無縁であることを隠しているわけです。次回ではこれを追求します。
三について
国際会議でのコミュニケは法定拘束力が無い。しかし、「消費税率の引き上げ」は国際公約だと主張する。こちらは法的拘束力があるのか次回質問します。
七及び九について
我が国の財政は極めて厳しいとあるが、それならどうして円が安全な資産をして買われるのか聞きたいですね。財務省も日本ではデフォルトはあり得ないと言いながらなぜ財政が厳しいのか。政府が国債を発行しても買い手がいなくなると言うのか。政府から国債を買っても、すぐにそれ以上の値段で日銀が買ってくれるのを知っているのに金融機関は買わなくなるとでも言うのか。
八について
石破大臣の発言は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」であった。これと答弁書の内容はまるで違う。これは事実上の撤回でしょう。
十について
カネに色はついておらず、消費税を社会保障の財源にすること自体意味が無い。消費増税により経済が停滞し、税収が落ち込んだら社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を放棄することになる。
日本経済と世界経済は悪い状況にあり、もし更に消費税増税があればリーマンショック並の重大な事態に陥りかねない。
政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急激に上昇(国債価格が下落)するのだそうだが、国債価格は需要と供給のバランスにより決まる。日銀がどんなに買っても国債は下落するというのか。つまり誰が日銀の買いを大幅に上回るほどの売りを出せるというのか。
平成28年3月8日提出
質問第174号
経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっていることに対する質問主意書
提出者 福田昭夫
昨年後半から続く世界的な株安や、新興国からの資本流出など、金融市場の混乱で、世界経済の先行き不安が高まっている。中国・上海で開かれていたG20では二月二十七日に機動的な財政政策を実施するべきだとする共同声明が出された。これに関連して質問する。
一、 G20の共同声明では、「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない。機動的に財政政策を実施する。」と明記された。経常黒字国であり、しかも巨額の対外純資産を持つ日本は、世界経済発展に貢献するためにも、2016年度補正予算を組んで景気対策をすべきではないか。
二、内閣衆質一九〇第一二三号(以下「答弁書」とよぶ)の一及び二についてで、政府は平成二十六年四月の消費増税により、日本経済は深刻な悪影響を受けたことを認めた。G20の共同声明でもあるように、経済成長率を確実に上げる方法は財政を拡大することである。例えば平成27年度補正予算(3.3兆円)の経済効果は実質GDPの押し上げ効果が0.6%であると内閣府により平成27年12月18日に発表された。名目GDPも同様に押し上げられるとして、この押し上げ効果は国の債務のGDP比を約0.6%押し下げる。これは1000兆円の国の借金の0.6%、つまり約6兆円に相当する借金を減らしたことに相当する。驚いたことに答弁書内の一及び二についてでは、財政支出が実質GDP成長率やインフレ率に与える影響については、内外経済状況など様々な要因に左右されるため、一概にお答えすることは困難であるなどと述べている。ということは、平成27年12月18日に内閣府が発表した0.6%の押し上げ効果は信頼できないと主張するのか。
三、日本には1000兆円を超える国の借金があるからこれ以上は財政出動は無理と政府は主張するのだろうか。しかし僅か3.3兆円の財政支出でGDPが増加し実質6兆円もの借金削減効果があることが示されている。計量モデルを使って求めた乗数は平成二十二年八月に内閣府計量分析室で発表されており、財政支出を拡大すれば、GDP成長率が上昇し、国の債務のGDP比は減少し国の借金は事実上軽くなることが示された。「全国民が一生の間、懸命に働き続けても返済は不可能なほどの巨額の借金がある」と誰もが錯覚し、絶望の果て、倹約に走るしかないと国民が思っている限り、消費の拡大もなければ、景気回復もない。しかし、財政を拡大すれば国の借金は実質的に減っていくことを国民が知れば、国民は自信を取り戻し、経済復活のきっかけになると考えるが、同意するか。
四、答弁書七及び九についてで、「我が国の財政については、極めて厳しい状況になる」とある。そのような状況なら、日本円が国際的に安全資産を見なされることはありえないはずであり、この矛盾をどのように説明するのか。また財政が厳しければ金利は高騰しなければならないのではないか。財政が厳しければ、政府が国債を売りに出しても誰も買わないはずだが、実際はその逆で、国債が売り出されば買いが殺到する。これも財政が厳しくない証拠ではないか。
五、G20では、不安定化した世界経済を正常化するために協力して「機動的に財政政策を実施する」ということ一致している。このような時に、その流れに真っ向から逆らう形で消費増税を強行して、もしリーマンショック並の不況を招いてしまったら国の内外から厳しい批判を浴びるのではないか。
六、消費税収は社会保障の財源に充てるとされている。しかしカネに色はついておらず、消費増税により経済が停滞し、税収が落ち込んだら社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を放棄することになるのではないか。
七、消費増税は国際公約なのか。もしそうなら、どのような法的拘束力があると主張するのか。もし、公約違反の際には、どのような制裁を受けるというのか。リーマンショック並の不況となって、消費増税延期、又は中止となった場合も国際的な制裁を受けるのか。
八、答弁書八について、では「財政規律が緩み財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況かにおいて、ハイパーインフレーションが起こる」とある。一方、内閣衆質百九十第三十九号の七について、では「戦争等を背景とした極端な物不足」の際にハイパーインフー-ションが起きるとある。両答弁書の内容は明らかに異なっている。現在のような物余りの時代にハーパーインフレーションが起きるのかどうか政府の見解を示して頂きたい。
九、答弁書の十についてで、「万が一、ご指摘の「政府財政に対する信認の喪失」が生じた場合には、金利が急激に上昇することなどにより、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。」とある。
政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急激に上昇(国債価格が下落)するのだそうだが、国債価格は需要と供給のバランスにより決まる。日銀がどんなに買っても国債は下落するというのか。それでは一体誰が日銀の買いを大幅に上回るほどの売りを出せるというのか。
現実には日銀はマイナス金利を導入した。日銀は国債を大量に購入しており、市場では国債は品薄状態になっており、これ以上、国債購入のペースを上げても間もなく限界に達する。つまり国債を買い尽くす勢いなのである。もし日銀が国債を買えなくなったら、インフレ目標を達成する前に、金融政策が限界に達したと市場が判断し、市場に不安心理が台頭してくる。マイナス金利は、金融緩和には限界はないことを示したかったと思われる。国債購入には限界があり、遠くない将来限界に達する。つまり現状では国債の売り手よりも国債の買い手(日銀)のほうが、圧倒しているのであり、近い将来金利が急上昇するなどということはあり得ないと考えるが同意するか。
十、政府は金利上昇は、経済・財政・国民生活に重大な悪影響を与えると考えているのか。例えば、1960年代から1980年代の日本では、金利は高かったが、日本は奇跡の経済成長を成し遂げたのであり、「高金利=悪」というわけではない。最近の「失われた20年」では低金利だが、経済は停滞した。問題なのは、次のようにして政府が消費や投資を冷え込ませる原因を作り出したことにある。
①国の借金が1000兆円を超えたという、特別問題にするべきでないことを、あたかも恐ろしいことであるかのごとくを宣伝した。
②我が国の財政は極めて厳しいという事実に反する主張をした。
③2014年の消費増税
④2017年予定の消費増税
クルーグマンの言うように、来年の消費増税を中止し、大胆に財政支出を拡大するなら、人はインフレを予想するようになり、現金の目減りを恐れ、個人も企業も投資を始める。インフレの際には、タンス預金で目減りさせるより、少々高い金利でも借りて投資したほうが、利益になるわけで、まさにそのような経済状態になれば日本経済は復活すると考えるが同意するか。
平成28年3月18日受領
答弁書第174号
内閣衆質190第174号
平成28年3月18日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっている事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっている事に関する質問に対する答弁書
1について
平成28年2月27日の20カ国財務大臣・中央銀行総裁声明では、金融、財政及び構造政策の全ての政策手段を、個別にまた総合的に用いることに合意したところである。
政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の時速可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下にそれぞれの国が置かれた状況を踏まえながら、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えており、一般論としては、財政支出の拡大を行うべきか否かについては、ご指摘の「経常黒字国であり、しかも巨額の対外純資産を持つ」という理由で判断されるべきではないと考えている。
日本経済のファンダメンタルズは確かなものと認識しており、現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。政府としては、平成27年度補正予算を迅速かつ着実に執行するとともに、現在審議中の平成28年度予算の早期成立に努めてまいりたい。
2について
内閣府においては、平成27年度補正予算について、一定の前提の下で予算額に基づいて試算した結果、実質おおむね0.6%程度押し上げる経済効果があると見込んでいる。ただし、一般論として、財政支出が実質GDP成長率に与える影響については、支出の内容や内外経済状況など様々な要因に左右されることに留意する必要がある。
3について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に基づき、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むこととしている。
4について
為替レート及び国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであり、それらの動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、ご指摘の為替レート及び金利水準の動向を前提としてお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
また、我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、国債の安定的な消化を図るため、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信頼を確保してまいりたい。
5について
平成29年4月の消費税率の10%への引上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
6について
消費税率の5%から10%への引上げによる増収分は全額、社会保障の充実・安定化に充てることとしている。その上で、消費税率10%への引き上げに当たって、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりつぃ。
7について
平成29年4月1日の消費税率10%への引き上げは、その実施が国際的に法的拘束を受けるといったものではなく、所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)第18条の規定により改正された社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正刷る党の法律(平成24年法律第68号)に基づくものであり、リーマンショックや大地震のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
8について
ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政に状況において発生するとは考えていない。
9について
国債金利は、需要と供給のバランスのみによって決まるものではなく、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債金利の動向に関するお尋ねにお片江することは差し控えたい。
10について
政府としては、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢からなる経済政策を一体的に推進してきたところであるが、同時に、財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなことがあれば、経済・財政及び国民生活に大きな影響が及ぶと考えている。
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、引き続き、財政に対する市場の信認を確保できるよう、経済再生と財政健全化の両立を目指すことが重要である。
このため、平成29年4月の消費税率の10%への引き上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすと供に、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
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コメント
〇財政政策に関する表現が変わってきた。今までは財政が厳しいという理由で否定的だったが、例えば「1について」で、「適切な財政運営をしていくことが重要」と書いている。
〇再生拡大によるGDP押し上げ効果について前回の答弁書では「一概には言えない」などと言っていた。今回は「2について」で補正の実質GDP押し上げ効果は0.6%だという内閣府の試算の存在を認め、前回の答弁書の内容を撤回している。しかし、GDPが押し上げられることにより国の債務のGDPが減るという内閣府の試算に関しては、「3について」で無関係な答弁をして逃げた。
〇「4について」で財政が厳しいなら、日本国債が安全資産とみなされるはずがないとの指摘には、「市場に無用の混乱を生じさせかなない」との理由で逃げた。自己矛盾しているのは明かで、答弁は無理と判断したのだろう。
〇「5について」「6について」消費増税に関しては、答えにならないが定型の文章があるようで、それをコピーしている。
〇「7について」消費増税は国際公約なのかとの質問で「その実施が国際的に法的拘束力を受けるといったものではない」と断言しており、事実上国際公約ではないと言っている。
〇「8について」先日の石破大臣のTBSでの発言「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかない」という発言に関して否定的な答弁書となった。つまり「戦争等を背景とした極端な物不足」の際でないとハイパーインフレは起きないと断言。つまり現在の日本ではハイパーインフレは起きないと断言した。
〇「9について」政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急上昇するという政府の説はおかしいという追求に対し「市場の混乱をさけるためコメントしない」という苦し紛れの答弁となった。
〇「10について」「金利が高くなれば生活が破壊されるという政府の考えはおかしい。かつて景気がよかったときは、金利は高かった。」という質問に対して、無関係な答弁書の文章が並んでいる。
平成28年4月22日提出
質問第255号
消費増税が日本経済に与える悪影響に関しての質問主意書
提出者 福田昭夫
10%への消費税再増税が再延期されることが決定したかのような報道がなされ、首相はそれを否定している。軽減税率が来年4月から実施されるのであれば、事業者はシステム改修などの準備を急がなければならないが、増税延期観測が浮上している現在、現場は困惑している。このことに関連して質問する。
一、10%への消費増税は延期されるだろうという予測は各種報道機関により出されており、株式市場にもすでに相当程度織り込まれていて、例えば小売り株は消費の逆風が弱まるとの見方から値持ちがよい。消費増税が延期されなければ株は暴落すると言われている。日本経済新聞とテレビ東京が2月26~28日に行った世論調査でも、来年の消費増税に対し「反対」は58%で「賛成」の33%を大きく上回った。このような予測や国民の声があるということをどのように考えるか。
二、3月18日の予算委員会で安倍総理は来年の消費増税に関し「経済が失速しては元も子もない」と発言している。これは消費増税で経済が失速した場合、社会保障制度にも悪影響を及ぼすという意味か。
三、「経済が失速しては元も子もない」のだから、これからしっかり経済対策を行って増税が可能な経済状況にしていくべきだという意見もある。しかし一時的な消費刺激策は消費の先食いになることもあり、かけこみ需要に拍車を掛け、逆に反動減を増幅する結果となり長い目で見れば経済に害になることも考えられる。つまり一時的な消費刺激策では消費増税による経済の失速を防ぐことはできないと考えるが同意するか。
四、多くの国民は将来の生活に不安を持っている。将来増税が控えており、社会保障制度も崩壊の危機にあるのではないか。国の借金は1000兆円を超え、どんなに消費増税を行っても社会保障制度はいずれ崩壊するから、節約してお金を貯めておかねばならないのではないかと感じている。そこに日銀がマイナス金利を始めた。もともと金利はほぼゼロだったので、更に下げても影響は少ない。しかしマイナス金利導入しなければならないほど、日本経済は悪いのかという印象を与え、ますます節約志向が高まっておりそれが景気の足を引っ張っている。金庫の売上げが伸びているということも、国民の不安を示している。一部では預金封鎖もあるのではないかと思っている人もいるようである。不安を除くために今政府がやるべきことは、消費増税を中止、もしくは消費減税を行い強力な財政政策を行うことだ。更に消費増税なくても大規模な景気対策を行えば国の借金のGDPは減っていき将来へのツケを減らすことが出来ることをマクロモデルを使った試算で国民に示すことだと考えるが同意するか。
五、このように国も国民もマスコミも来年の消費増税に関して強い関心が集まっている時なのだから、消費増税を行った場合と行わなかった場合の比較を、経済モデルを使って行い国民に示す必要がある。2014年度の消費増税の前、2012年1月24日に内閣府から発表された「経済財政の中長期試算」)においては消費増税を行った場合(一体改革あり)とそうでない場合の比較が行われ、実質GDPの4年間の合計で両者の差は僅か0.1%となっていたが現実では増税の悪影響はそれより遥かに大きかった。
また、2013年10月1日の甘利大臣は「来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模(景気対策の規模)とする」と発言した。
これらより、政府は消費増税の影響を軽視していたのは明かである。見通しが甘すぎたために、「経済が失速しては元も子もない」状態を自ら招いてしまったわけである。2014年の消費増税による経済の落ち込みからパラメーターを定めれば、来年の消費増税による更なる深刻な経済失速が予測できるのではないかと考える。実際は、政府はその事を理解しているが、その事実を発表していないだけだという推測があるが、この事に関しどのように考えるか。
六、政府は訪日客を2020年に4000万人に増やす目標を掲げている。外国人を歓迎し、大いに消費してもらう政策を進めているのだが、一方では、消費増税によって、可処分所得を減少させ日本人の消費を事実上減らす政策を行っている。なぜ、外国人を優遇し日本人を冷遇するのか。
七、景気対策としてのマイナス金利政策と量的緩和は相性が悪いのではないか。日銀は3月28日、金融緩和の為に実施した短期社債(CP)買い入れで当初予定していた6000億円分を買えず「札割れ」となった。これは債券購入で金利にマイナス0.647%という下限を設けたためである。マイナス金利ということは金利を受け取るのでなく支払うわけで、損失が生じる。逆にカネを借りる側では利益を得るという不健全な取引となる。このような「札割れ」は国債でも起きてもおかしくない。これは金融緩和の限界を意味しており、今後は財政政策に重点を移すべきではないか。
八.答弁書(内閣衆質190第174号、以下「答弁書」という)は、「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれる」と述べているがこれは間違いではないか。なぜなら今年1月21日に内閣府から発表された「中長期の経済財政に関する試算」試算(以下「試算」という)の4頁には、今後国・地方の債務残高のGDP比は減少していくことが示されているからである。
九、答弁書では「ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政に状況において発生するとは考えていない。」
とある。このことより消費増税を延期しても、あるいは相当な規模の財政出動をしてもハイパーインフレにはならないと内閣は認識していると理解して良いか。
十、答弁書では「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなことがあれば、経済・財政及び国民生活に大きな影響が及ぶと考えている」と述べている。金利上昇が生活に悪影響を及ぼすということであるが、内閣府の「試算」においては、長期金利は2020年には3.9%、2024年には4.6%まで急上昇しており、現在の政策が続くと国民生活は悪化するということか。
十一、それとも「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」は2024年度まではあり得ないということが試算で証明されたと見なすべきなのか。
金利が急激に上昇するということは債券価格の急落を意味するから、債券全般から資金が引き上げられ、他の資産への買いが集中することを意味すると思われる。国債価格の急落による国家財政への懸念増大や、市中銀行の信用の喪失ということか。それは預金、ひいては、通貨への信認の喪失になり、国民全般における換物行動を促進し、物価上昇を高進させる。すなわち、「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」とは、急激なインフレ、ハイパーインフレとほぼ同義になるのではないか。
一方、「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」がハイパーインフレではないということであれば、それは適度なイ ンフレ(適度な債券や通貨の信認喪失によって生じる適度な換物行動に起因する適度なインフレ)になると思われる。その場合、内閣の「長引くデフレからの早期脱却」という目標に資するのではないか。
右質問する。
平成28年5月13日受領
答弁第255号
内閣衆質190第255号
平成28年5月13日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出消費増税が日本経済に与える悪影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出消費増税が日本経済に与える悪影響に関する質問に対する答弁書
1について
平成29年4月の消費税率の10%への引き上げ(以下「消費税率10%への引き上げ」という。)は、社会保障制度を時世帯に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
2について
ご指摘の安倍内閣総理大臣の答弁は、経済をしっかり成長させて、デフレ脱却を確かなものとする中において、税収を増やし、歳出改革も進めながら、財政健全化を進めていくという、経済成長なくして財政健全化なしとの安倍内閣の基本方針を述べたものである。
3について
消費税率の10%への引き上げについては、経済環境を整える中で、実施することとしており、経済の好循環を力強く回すとともに、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要・反動減を標準化するなど、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
4について
消費税率10%への引き上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。その増収分は全額、社会保障の充実・安定化に充てることとしている。引き続き、政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再建計画」に基づき、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むことで、デフレ脱却・経済再生をはかりつつ、財政の持続可能性を確保してまいりたい。
5について
平成26年4月の消費税率引き上げが消費に大きな影響を与えたのは事実である。このため、平成27年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げは18か月延期され、この間、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策を推進してきた。その結果、賃上げも順調に行われ、成長軌道に戻ってきている。政府としては、消費税率10%への引き上げに向けて、経済の好循環を力強く回すことにより、そのための経済状況を作り出していく。また、本年1月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」(平成28年1月21日経済財政諮問会議提出)は平成26年4月の消費税率引き上げが経済に与えた影響を踏まえて作成されており、「その事実を発表していない」とのご指摘は当たらない。
6について
お尋ねの「外国人を優遇し日本人を冷遇するのか」の意味するところが必ずしも明らかでないが、観光立国の推進による訪日外国人旅行者の増加は地方を含む我が国の経済成長に寄与しており、また、アベノミクス「三本の矢」の政策によって、デフレではないという状況を作り出す中で、名目GDPは27兆円増え、雇用・所得環境も確実に改善していると考えている。
7について
日本銀行による金融政策の具体的な手法については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたいが、お尋ねの「金融緩和の限界」については、平成28年4月20日の衆議院財政金融委員会において、黒田東彦日銀総裁が、「当面、今後何年も国債の買い入れについて量的な限界あるいは技術的な限界が来るということはないと思っております」と答弁しているものと承知している。政府としては、平成25年1月22日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」}にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。
8について
お尋ねの「なおも更なる累増が見込まれる」に関しては、国・地方の債務残高の累増が見込まれる旨を述べたものであり、「中長期の経済財政に関する試算」の「経済再生ケース」において国・地方の公債等残高が増加する試算結果となっていることと整合的なものとなっている。
9から11までについて
ハイパーインフレーションに係わるお尋ねについては、先の答弁書(平成28年3月18日内閣衆質190号第174号)八についてでお答えしたとおりである。
また、「中長期の経済財政に関する試算」の「経済再生ケース」における名目長期金利は、経済成長率の高まりとともに上昇していることや、基礎的財政収支が改善していく姿となっていること等から、ご指摘の「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」には当たらないと考えている。一方で、ご指摘の「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するような」事態となった場合には、経済・財政及び国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。
政府としては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、「経済・財政再生計画」に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「再入改革」を三本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。
平成28年9月27日提出
質問第18号
日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こりえなくなったのではないかという疑問に関する質問主意書
提出者 福 田 昭 夫
異次元の金融緩和で日銀が刷ったお金で国債を大規模に買うだけで、円安が進み日本経済はデフレから脱却できるという考えが間違いだったとこが明かになってきている。日銀はマネタリーベースが年約八0兆円に相当するペースで増えるよう国債購入等を行っていたが、政府の思惑とは逆に円高に向かい、輸出企業の業績悪化の懸念が高まり、経済の悪循環が始まっていた。物価下落もあり、二年間で二%のインフレ率を達成するという目標は完全に失敗に終わりデフレ脱却に関しては全く見通しが立っていない。日銀は九月二十一日、金融緩和の目標を長期金利を0%程度とする金利目標に変更した。出口戦略の第一歩と思われるが、これだけでは景気回復は難しいと思われる。一方で、八月二日に閣議決定された二十八兆円の経済対策に関しては、誰もが実質GDPを押し上げる効果があると認めている。問題は経済対策の規模が十分でないという点である。
また、前回の質問主意書(質問第二五五号)に対する答弁書(内閣衆質一九0第二五五号、以下答弁書という)に関しても質問したい。
一.長期金利を0%程度とする金利目標は、国債価格支持政策であり、日銀が指定する利回りで国債を買い入れる「指し値オペ」などで実現する。これによって国債の暴落は起こりえなくなったと考えるが同意するか。
二、答弁書(内閣衆質百九十第百七十四号)の八についてで、ハイパーインフレは我が国の経済・財政状況においては発生しないと断言された。国債暴落もハイパーインフレも起こりえない状況になった現在、これらを防ぐために導入された基礎的財政収支の黒字化は有害無益な目標になったと考えるが同意するか。またデフレ脱却までは財政規律を守る必要がなくなったと考えるが同意するか。
三、例えば日経センターによる日本経済フォーキャスター四十二人(機関)による予測の平均では、二十八兆円の経済対策を織り込んでも実質GDP伸び率は二0一六年度で0.六七%、二0一七年度で0.九四%、二0一八年度で0.九二%にすぎず世界的にも日本の低成長が際立っている。OECDやIMFは更に厳しい見方をしている。政府目標の二%成長を大きく下回るし、二0二0年頃GDP六00兆円はとても無理ということになる。政府目標が達成できる程度にまで経済対策の規模を拡大したらどうか。
四、政府は国の借金が一000兆円を超えていることを気にして、国債発行の規模を抑えようとしていると思われるが、内閣府が二0一0年八月に発表した乗数によれば、国債の発行を増やせば増やすほど、国の借金の対GDP比は減って行くのであり、実質的に国の借金は減るのだから心配しなくてよいのではないか。この乗数の計算では、国債増発で金利は上昇すると仮定されており、今後長期金利は上昇しないことになったのだから、国の借金のGDP比はさらに減少すると思われるが同意するか。金利固定の場合の乗数は一刻も早く発表されるべきだと考えるが同意するか。
五、答弁書の八についてでは、累増が見込まれるのは国・債務残高であって、国・債務のGDP比ではないと答弁の間違いが訂正されたと理解してよいか。
六.日銀は国債を大量に保有している。政府と日銀を統合政府と考え連結させて財政を考えるなら、日銀が保有している国債はもはや国の借金とは言えないのではないか。
七.それでも国の借金を気にするのであれば、日本銀行が保有する国債が償還期限を迎えたとき、借換債として無利子・無期限のものにコンバートすればよいのではないか。そうすれば、返済義務が無くなり、これは完全に国の借金ではなくなる。景気が回復し日銀が無利子・無期限の国債を売らなければならないときは、政府が買い戻せばよいのではないか。
八.内閣府の行っている中長期の経済財政に関する試算によると、毎年長期金利は急騰すると予測していて、下がると予測した年は一度もないが現実はジワジワ下がり続けている。例えば今年七月二六日に出された試算(以下「試算」という)によれば、長期金利は二0一六年度0.三%、二0一七年度0.八%、二0一八年度一.七%、二0一九年度二.七%、二0二0年度三.四%、二0二一年度三.八%、二0二二年度四.一%となっている。過去十数年間、実際の金利低下の傾向を一度も予測できなかったのは、内閣府の能力不足であり内閣府は国民の税金を使って試算を行っているという自覚が感じられない。今後長期金利は0%程度に維持されるのだから、この試算は現実離れしたものになったのではないか。
九、試算は直ちにやり直して発表されなければならないのは明かだ。このモデルで長期金利を0%に固定し他のパラメーターを変えずにやり直せば、当然のことながら名目GDPも実質GDPも物価も税収もかなり押し上げられ国債費は押し下げられるはずである。また財政収支も改善するはずだと思うが同意するか。そうならなかったらこのモデルは経済を正しく記述できていないことになると思うが、同意するか。いずれにせよ直ちに試算をやり直して発表すべきではないか。
十、長期金利を0%程度に維持する政策はインフレ率が2%を安定的に超えるまでとしているが、その後も長期金利が暴騰しないようにすると理解してよいか。国債暴落という将来不安が日本人を節約志向にさせ消費者マインドの悪化につながっている。国の国債価格支持政策の意味が広く理解されれば、国民に安心感を与え、節約の必要性が感じられなくなり、デフレ脱却への大きな一歩となると考えるが同意するか。
十一.日銀は価格が変動する有価証券を四二二.五兆円保有している。一方で保有資産の損失に対する備えとして
引当金 四.五兆円 (負債の部)
準備金 三.二兆円 (以上、平成二十八年九月十日現在。日銀営業旬報より)(純資産の部)
利益剰余金0.四兆円 (平成二十八年三月三十一日現在。日銀財務諸表より)(純資産の部)
の計約八兆円を保有している。つまり僅か一.九%の価格変動で債務超過になる。これは問題ないと考えるか。
十二.二0一四年度に消費税率は五%から八%に引き上げられたために、実質所得も消費も大きく落ち込み、経済は深刻な打撃を受け、未だに増税前の水準に回復していない。内閣府は二0一二年一月二十四日に消費増税による実質GDPの押し下げ効果は4年間の合計で僅か0.一%だと言っていたが、実際は実質GDPの伸びは二0一三年度二.0%、二0一四年度マイナス一.0%で、何と三%も落ち込んだ。内閣府の予測能力の欠如は二0一九年十月の再増税にも暴露されようとしている。試算によれば、実質GDP成長率は二0一八年度一.九%、二0一九年度二.0%、二0二0年度二.一%となっており、消費増税によって可処分所得が低下した影響は全く無いと主張している。消費増税の時期が十月だから、駆け込みと反動が打ち消すなどという言い訳は許されない。国民から見れば政府は増税しなければならないほど大変な事になっているのかと思い、さらなる節約をする。その結果消費が更に低迷し、経済が停滞、税収減少、GDPは伸びなくなる。政府は前回の消費増税の失敗を繰り返そうとしているように思えるが同意するか。
十三.答弁書の六についてで、アベノミクスで名目GDPは二十七兆円増加したとある。しかし、この中には消費増税によってかさ上げされた分が十兆円程度あり、さらに原油価格下落によって押し上げられた分も除けば、二十七兆円より大幅に少なくなるのではないか。政府目標は名目三%成長であり、三年間では四十五兆円増加していなければならないはずで、客観的に見れば大失敗ということにならないか。
十四.消費税を社会保障の財源としたことが、失敗の原因になっていないか。消費税収ほど、景気に強く左右される財源はない。消費税率を八%から十%へ引き上げる時期は、元々二0一五年十月と決まっていたが、景気悪化が理由で二0一七年四月に延期され、同じ理由でさらに二0一九年十月に再延期されたし、今後再々延期の可能性もある。つまり消費税収は、景気が悪化すれば税率が変化し、税収は大きく変わる。このような極めて不安定な財源を社会保障の財源にすべきではないと考えるが同意するか。
十五.現在の中学の公民の検定教科書では国債が国の借金であり、国民一人当たり巨額の借金を抱えていることになるといった、あたかも家計での借金と同じであるかのように説明されている。しかし実際は国債は家計の借金とは全く異なる面もある。
(一)日銀が刷ったお金で国債を買い取ることができ、償還期限が来るたびに借換債を発行するとすれば、政府は返済の必要がない。
(二)世界の多くの国では国の借金は増え続けているが、GDPも増えていて、その比が一定の値以下なら借金がいくら増えても問題になっていない。この点でも全く異なる。
従って、国債=国の借金=悪という説明は正しくない。こういった捉え方をしている限り、緊縮財政=善、積極財政=悪ということとなり、日本は永遠にデフレ地獄から抜けられなくなると思うが同意するか。
答弁書第18号
内閣衆質192第18号
平成28年10月7日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こり得なくなったのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こり得なくなったのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書
1及び10について
国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債の価格の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長期金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するとしている。政府としては、平成25年1月22日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。
2について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に基づき、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り込むこととしている。
3について
実質GDP成長率2%程度、名目GDP成長率3%程度を上回る経済成長を実現するためには、中長期的に潜在成長率を押し上げていくことが必要である。そのため、「未来への投資を実現する経済政策」(平成28年8月2日閣議決定)により民需主導の持続的な経済成長と1億総括役社会の着実な実現につなげるとともに、働き方改革に取り組むなど、あらゆる政策を総動員してまいりたい。
4、8及び9について
[経済財政モデル(2010年度版)」(平成22年8月内閣府公表)において公表している乗数表では、御指摘の「国債の発行を増やせば増やすほど、国の借金の対GDP比は減っていく」とのケースは示していない。
また、「中長期の経済財政に関する試算」(平成28年7月26日経済財政諮問会議提出)における長期金利は、内閣府の計量モデルに基づき、経済と財政が整合的となる一つの姿として、一定の前提の下で試算を行ったものである。
今後長期金利が上昇しないとの仮定を前提としたお尋ねにお答えすることは困難である。また長期金利は、経済・財政の状況等の様々な要因を拝啓に市場において決まるものであるため、ご指摘の長期金利を固定した場合についての乗数を試算する予定はない。
5について
お尋ねの「国の債務の対GDP比ではないと答弁の間違いが訂正されたと理解してよいか」の意味するところが必ずしも明らかでないが、先の答弁書(平成28年5月13日内閣衆質190第255号)8についてでは、累増が見込まれるのは国・地方の債務残高であることを述べたものである。
6について
お尋ねについては、仮定の御質問であることからお答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、日本銀行が保有している国債も政府の債務として扱うべきと考えている。
7について
日本銀行が保有する国債が償還期限を迎えたときの対応については、同行が、適正に判断するものと考えているが、一般論としては、無利子・無期限の債券に経済的価値を認めることは難しいと考えられることから、ご指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なうおそれがある。
11について
お尋ねについては、仮定のご質問であること、また、日本銀行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、同行の財務の健全性については,まずは同行において関係法令の規定に則して適切な運営が図られるべきものであると考えている。
12について
「中長期の経済財政に関する試算」では、平成31年10月の消費税率引き上げの影響について、駆け込み需要・反動減に加え、物価上昇による消費への影響も試算に織り込んでいる。
また、政府としては、同月の消費税率の10%への引き上げに向けて、確実に成果を生んでいるアベノミクスを一層加速させ、経済財政運営に万全を期していくこととしている。
13について
消費税率引き上げや原油価格の変動が経済に与える影響は様々であると考えられ一概にお答えすることは、困難であるが、デフレではないという状況となり、雇用・所得環境も確実に改善していると考えている。
14について
消費税は、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定している、勤労世帯など特定の者へ負担が集中しない、といった特性があり、社会保障の財源としてふさわしいと考えている。
政府としては、平成31年10月の消費税率10%への引き上げに向けて、確実に成果を生んでいるアベノミクスを一層加速させ、経済財政運営に万全を期していくこととしている。
15について
我が国の財政状況については、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にある。政府としては、引き続き、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、適切な財政運営を行って行くべく、「経済・財政再生計画」に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を三本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。
平成28年10月20日
質問第76号
政府が日銀の金融政策の有効性を疑っている事に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
日銀は、長期金利を0%程度とする金利目標を発表したのだから、もはや国債暴落は起こり得ないのではないかという質問主意書(質問第十八号)に対する答弁書(答弁第十八号、以下答弁書という)の答弁は、長期金利は日銀ではなく市場が決めるということであった。これについて質問する。
一 答弁書の一及び十についてでは、国債の価格は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものと述べている。これは日銀の金融政策は無効であり、日銀の目標にも拘わらず、金利が暴騰し国債が暴落する可能性を述べたものか。
二 例えば外資が長期国債の売りを仕掛けたとしたら、日銀は対抗して買うことができず、金利は三0%とか五0%とかにはね上がるということか。日銀が買うことができる限界は何兆円までと考えているのか。
三 答弁書の二についてで、我が国の財政については、極めて厳しいとある。これは政府が国債を売っても、誰も買い手がつかず、財政が破綻するという意味か。しかし、財務省のホームページには「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」との記載がある。実際には長期国債までも0%以下の金利となっており、事実上タダでいくらでも資金が調達できる状態である。それでも財政が厳しいとは、何を意味するか。
四 答弁書の三についてで、かつて構造改革と称して様々な改革を行ってきたが、潜在成長率は上がってきていないのはなぜか。今後も同じ失敗を繰り返すつもりか。
五 答弁書の四、八及び九についてで、「経済財政モデル(二0一0年度版)」(平成二十二年八月内閣府公表)において公表している乗数表では、御指摘の「国債の発行を増やせば増やすほど、国の借金の対GDP比は減っていく」とのケースは示していないとなっている。しかし、この六頁の②には公共投資を五兆円継続的に削減した場合の乗数があり、増やす場合は符号を変えれば良い。この場合、公債残高のGDP比は一.六五%PTだけ減少するとなっている。金利固定ならもっと減る。更にこの当時より債務残高は更に増加していることから、現在はもっと減少幅は大きくなる。
「長期金利は、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものである」と答弁してあるが、日銀が、長期金利を0%程度とする金利目標を発表したが、それは全く金利に影響を与えない、つまり日銀の金融政策は無効だという主張か。それでは二0一四年に始まった大規模金融緩和で長期金利さえもマイナスになったのはどう説明するのか。
六 答弁書の七についてで、無利子・無期限の国債は価値が無いと述べている。政府発行の国債が価値が無いと発言してもよいのか。政府発行の貨幣も日銀発行の紙幣も無利子・無期限だから価値が無いと言えば価値が無いし、誰もが価値があると思えば価値がある。国債も同様である。無利子・無期限の国債も政府が価値を認め、必要ならいつでも額面で買い戻すと宣言すれば価値がある。日銀が市場に売る場合でも、何年後に一定の利子をつけて買い戻すと言って入札を行えば買い手は出るのだから通常の国債と、価値の面では何ら変わらないのではないか。
七 答弁書の十一についてで、日銀の財務の健全性に関しては日銀に丸投げをし、また日銀のイールドカーブコントロールや十年物国債の利回り0%維持方針を否定しており、日銀は無能であると宣言しているが、日銀総裁・副総裁は、日銀法二十三条に基づき、国会の同意を得て内閣が任命しているわけで、内閣が全く責任を負わないというのはおかしくないか。
八 本主意書冒頭で「日銀は、長期金利を0%程度とする金利目標を発表したのだから、もはや国債暴落は起こり得ないのではないかという質問主意書(質問第十八号)に対する答弁書(答弁第十八号)の答弁は、長期金利は日銀ではなく市場が決めるということであった」と述べた。これに関して、答弁書の答弁は内閣の日銀に対する不信の表れであり、すなわち、黒田日銀総裁の任期が満了する平成三十年四月以降、内閣には黒田総裁を再任する意思がないことの表れであると受け止めて良いか。
九 答弁書の十三についてで行われた答弁は問題のすり替えである。アベノミクスで名目GDPが二十七兆円増加したという主張は国民を欺くものである。例えば平成二十八年五月十八日に内閣府から発表された平成二十八年一~三月期四半期別GDP速報を見ると、平成二十七年度の名目GDP成長率は二・二%だが、そのうち外需が一.七%、内需が0.五%となっていて、外需の大部分は原油価格の値下がりからくる。よってこの年の名目成長率の多くは原油価格の値下がりからくるのであり、アベノミクスの成果ではない。また平成二十七年十二月二十二日に内閣府から発表された「平成二十八年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度の八頁には「物価関係指数の変化率」が示めされており、消費税率引き上げの影響を機械的に除いたものも示してある。消費税率引き上げにより税率分だけ物価が上がり、その分だけGDPが膨らむ。これは国民にとっては、迷惑な膨らみであり、アベノミクスの成果として自慢すべきものではないと考えるが、同意するか。アベノミクスで名目GDPが増えたと自慢したいなら、消費増税による迷惑なGDP増加分と原油価格の下落によって生じたGDPの増加分を除いた数字を示さなければ国民を騙したことになると思うが同意するか。当然のことながら、将来消費税率の引き下げがあったり、原油価格の上昇があったりすれば、見かけ上増えているように見える部分は消えるのである。
十 答弁書の十五についてで、「我が国の財政状況については、国・地方の債務残高がGDPの二倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれる」という表現は適切でないとすでに以前の質問主意書で指摘した。二倍が三倍、四倍に増えていくことを意味しているように思えるからである。それに対して答弁書の五についてで、「先の答弁書(平成二八年五月一三日内閣衆質一九0第二五五号)八についてでは、累増が見込まれるのは国・地方の債務残高であることを述べたものである。」と答弁している。そうであれば、誤解が生じないような表現になぜ変えないか。全く異なる質問に全く同じ文で答えるのは不誠実と思わないか。しかも表現が適切で無いと指摘を受けた文を再度使うべきではないと考えるが同意するか。
十一 日銀は「量」で失敗し「金利」に金融政策の目標を転換したが、その長期金利の制御は不可能だと政府は主張し、また政府の経済財政諮問会議では歳出削減を検討しデフレを加速しようとしている。このことで、第一の矢も第二の矢も失敗に終わり、アベノミクスは失敗を宣言したらどうか。
十二 石原伸晃経済財政・再生相は十月五日「消費税は十%では賄いきれない。次は十二%、十四%、十五%という形で上げることを国民に問いかけていかなければならない」と発言したが、この考えに同意するのか。
十三 外国人投資家による株の売越額は六兆円を超え、一~九月としてはこれまでの最高だった。これはアベノミクスに失望したからだと言われているが、このことをどのように考えるか。
十四 日銀は十月三十一日~十一月一日に開く金融政策決定会合で物価見通しを下方修正しようとしている。これにより黒田日銀総裁の任期中に物価上昇率二%の目標は難しくなった。これもアベノミクスの失敗を意味しているのではないか。
十五 九月の総括的な検証の直後、日銀内から黒田日銀はレームダック(死に体)だという声がもれたが、これに同意するか。
十六 FRBのフィッシャー副議長は十月十七日のニューヨークでの講演で、先進国が低金利・低成長から脱するには「政府支出の拡大と減税による財政政策が重要だ」と指摘したが、これに同意するか。
右質問する。
答弁書第76号
内閣衆質192第76号
平成28年10月28日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出政府が日銀の金融政策の有効性を疑っている事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出政府が日銀の金融政策の有効性を疑っている事に関する質問に対する答弁書
1,5及び8について
先の答弁書(平成28年10月7日内閣衆質192第18号。以下「前回答弁書」という。)1及び10について及び4,8及び9についてでは、国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであるとした上で、日本銀行は、2パーセントの「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(平成28年9月21日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)を継続するとしている旨を述べたものである。したがって、お尋ねのような「日銀の政策は無効であり、日銀の目標にも拘わらず、金利が暴騰し国債が暴落する可能性」や「日銀の金融政策は無効だという主張」を述べたものではなく、また、内閣の「日銀に対する不信の現れや」「黒田総裁を再任する意思がない事の表れ」とは認識していない。
2について
「外資が長期国債の売りを仕掛けたとしたら」とのお尋ねについては、仮定の御質問であることからお答えすることは差し控えたい。「日銀が買う事が出来る限界は何兆円までと考えているのか」とのお尋ねについて、日本銀行による金融政策の具体的な手法については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えるが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、同行が適切に対応されるものと認識している。
3について
前回答弁書2についてにおいて「我が国の財政については、極めて厳しい」とお答えした趣旨は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなどの状況にある旨を述べたものである。
4について
お尋ねの「様々な改革」の意味するところが必ずしも明かではないが、これまで成長戦略において、様々な分野で改革を断行してきた。
例えば、農業協同組合法等の一部を改正する法律(平成27年法律第63号)により、農業協同組合制度を抜本的に改革し、企業が農業に参入しやすくした。環太平洋パートナーシップ協定では、原署名国になった。観光では、査証緩和措置に加え、継続的な訪日プロモーション、免税店や名税対象品目の拡大等観光客誘致のための取り組みを実施しており、昨年、訪日外国人観光客は、過去最高となった。加えて電力の小売市場を全面自由化した。更に法人実行税率を二十%台に引き下げた。
今後の潜在成長率を向上させるための焦点は、働き方改革と第4次産業革命を通じた「Society5.0」の実現である。国民生活を豊かにしながら、企業の生産性を向上させるため、必要な改革をちゅうちょなく断行してまいりたい。
6について
前回答弁書7についてでは、一般に、利子が付されておらず、かつ、元本の償還が約束されていない債権には経済的価値がみとめられないことを踏まえ、先の質問主意書(平成28年9月27日提出質問第18号)においてご指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なうおそれがある旨を述べたものであるが、御指摘の国債の価値については、仮定のご質問であることから、お答えすることは差し控えたい。
7について
前回答弁書11についてでは、日本銀行法(平成9年法律第89号)第5条第1項において、「日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない」としており、同条第2行において、「この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない」とされていること等について述べたものである。
また、金融政策について、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、平成25年1月22日に政府及び日本銀行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」(以下「共同声明」という。)を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために必要な施策として決定されたものと認識している。
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現は、政府及び同行共通の重要な政策課題であり、引き続き、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、同行とも緊密に連携しつつ、金融政策、財政政策及び構造改革を総動員し、一体となって取り組んでいく。
9について
消費税率引き上げや原油価格の変動が名目GDPに与える影響については、消費税率引き上げや原油価格下落等による物価変動だけでなく、それらに伴う需要の変化や政策対応による変化等が複合的に影響し合って発生すると考えられることから、一概にお答えすることは困難である。
10について
先の答弁書(平成28年5月13日内閣衆質190第255号)8についてでは、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれることを述べたものであり、「表現が適当でない」とは考えていない。
11及び13について
政府としては、共同声明にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組んできたとことであり、こうした安倍内閣の経済財政政策により、デフレではないという状況となり、雇用・所得環境も確実に改善していると考えている。
また、ご指摘の外国人投資家の認識について政府としてお答えすることは差し控えたい。
12について
お尋ねの発言については、石原国務大臣が政治家としての見解を述べたものであると承知してお答えする立場にない。
14について
ご指摘の「10月31日~11月1日に開く金融政策決定会合」で議論される内容を前提としたお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、総括的な検証を行った上で、金融緩和強化のための新しい枠組みとして導入されたものであり、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために必要な施策として決定されたものと認識している。
政府としては、共同声明にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでまいりたい。
15について
ご指摘の「日銀内から黒田日銀はレームダック(死に体)だという声がもれた」との事実を承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。いずれにせよ、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長期金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するとしており、平成28年10月12日の衆議院予算委員会において、黒田東彦日本銀行総裁は、経済、物価及び金融情勢を踏まえ、必要な場合には追加緩和を行う旨の答弁をしているものと承知している。
16について
安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しており、成長戦略の実行等を通じて、民需主導の持続的な経済成長を実現していくとともに、財政健全化の取組を進めることとしている。
平成28年11月9日提出
質問第126号
政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
2%のインフレ目標、実質2%名目3%のGDP成長率目標のいずれも達成に失敗したアベノミクスだが、それは政府が国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのが原因ではないかという疑問が生じている。経済再生も財政健全化も国民の将来不安の解消が無ければ実現は不可能である。特に国の借金1000兆円が国民の将来不安を引き起こし、国民は節約に走り、それが経済再生を不可能にしているのではないか、そして結果として財政健全化ができなくしているのではないかという疑問が生じていることに関し質問する。
1 国の借金は家計の借金と同じと考えるか。
2 財務省のホームページには日本の財政を家計に例えた場合について説明がある。それによると月収30万円の家計でローン残高は5143万円なのだそうである。このような家計では、新たな借金をしようとしてもとても貸し手が現れないような印象を受ける。しかし、現実はそれでも政府は0%あるいはそれ以下で新たな借金ができる。ということは国の借金と家計の借金とは全く意味が違うと言えないか。
3 日銀はお金を刷って国債(国の借金)を買い取っている。これを家計に例えるとこの家庭ではお金を刷って使っても良いと認められていることになると思うが同意するか。
4 月収30万円の家計でローン残高が5143万円であれば、確実に自己破綻する。つまり借金踏み倒しである。国の借金もそれが起きると考えているのか。
5 一方で「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と財務省のホームページに書いてある。これを家計に例えると、日本の家計でどんなに借金が多くなっても破産することはないということになる。このことから国の財政を家計に例えるのは無理があると言えるのではないか。
6 終戦直後には、国の借金は膨大であった。それを税金で返したのでなくインフレのお陰で実質的に激減した。実際、大多数の国々ではインフレのお陰で国の借金を実質的に減らしている。このことを家計に例えるとどのような借金の返済の方法に対応するのか。
7 国の借金を実質的に減らす方法は2つあるというのが伊藤元重氏が今年6月27日に読売新聞に載せた説である。第一の方法は例えば毎年借金を10兆円ずつ減らす方法で1000兆円の借金を半分にするのに50年かかるだけでなく、大恐慌を引き起こす。第二の方法は経済を発展させ毎年3%の成長をすればGDPは20年で約2.4倍になり、借金のGDP比は2.4分の1となる。伊藤氏は第一の方法は非現実的だが、第二の方法は現実的だと主張している。国の財政を家計に例えている限り、借金返済の方法は非現実的な第一の方法しかあり得ず、多くの国で採用されている第二の方法が見えなくしてしまうと思わないか。
8 国の財政を家計に正しく例えるならば次のようになる。借金は多いが、この家庭では離れでお札を印刷することが許されていて、大量に印刷し年間借金の10分の1程度を返済している。かなり返済が進んでいるが、貸し手である銀行はそのような返済を続けることを必ずしも望んでおらず、このペースでの返済はあと1~2年で困難になると考えられている。その理由としては銀行がこの家庭に貸出をし、それに対する利息が貴重な収入源となっており、それが無くなると銀行の経営が成り立たなくなる恐れがあるからである。またこの家庭から銀行に返済したお金の多くは、この家庭に預ける仕組みになっている。この家庭は銀行がこの家庭にそんなに多額のお金を預けて欲しくないと考えており、なんとこの家庭は銀行に対し、この家庭に預けたお金の一部にマイナス0.1%の金利を支払えと命令し銀行は強制的に受け入れさせられたのである。国の財政を家計に例えるなら、このように説明しなければ誤解を受けると思うが同意するか。
9 このような疑問に関する政府の正式な回答を財務省のホームページに書くべきではないか。
10 政府が国の借金を家計に歪曲した形で例えることで、国民に将来不安を生じさせ、節約に走らせる。それが消費を冷え込ませ経済再生を遅らせ、結果としてそれが財政健全化の妨げになっていると考えるが同意するか。
11 日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こりえなくなったのではないかという疑問に関する質問主意書(質問第18号、以下質問1という)と政府が日銀の金融政策の有効性を疑っている事に関する質問主意書(質問第76号、以下質問2という)の質問の主旨は、国債の暴落という国民の将来不安を解消し経済再生と財政健全化を追求しようとするものであった。しかし両質問に対する答弁書はこの主旨を否定し経済再生と財政健全化を阻害しようとした。政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないか。
12 質問1の7で、日銀の保有する国債を無利子・無期限の国債にコンバートすればどうかと提案した。無利子・無期限の国債でなくても政府貨幣(例えば500円玉とか1兆円玉等)にコンバートする案も考えられる。多くの識者からこのような提案がなされるのは、1000兆円という国の借金に対する不安で消費が抑えられ日本経済の再生が不可能になっている窮状を救い、日本人に自信を取り戻させ、経済を活性化させ、財政の健全化を目指すものである。しかし、答弁書ではこの提案を否定した。これは政府が国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っている現れではないか。
13 コンバートは通貨の信認を失わせると質問1の答弁書(以下答弁書1という)と質問2の答弁書(以下答弁書2という)では答えている。「通貨の信認が失われる」という事実を家計に例えようとしても無理である。そもそも家計の場合インフレに相当するものが無く、例えるのが不可能である。国の借金と家計の借金が似ても似つかぬものであるのに、無理に比較しようという試みは単に国民の持つ将来不安を増大させるだけであり、結果として経済再生と財政健全化を遅らせるだけではないか。
14 答弁書2の4についてで、成長戦略において、様々な分野で改革を断行してきたとある。確かに改革は必要であり生産性を高める努力はすべきである。ただし、国民の将来不安の解消を行わないままだと逆に不安の増大につながる可能性がある。貿易の自由化や生産性向上は、一部の労働者を切って捨てるということになりかねない。財政が厳しいという理由で「痛みに耐えよ」と言って弱者切り捨てを行えば、国民の将来不安は増大するだけだと思うが同意するか。
15 答弁書2の11及び13についてで、雇用は確実に改善しているとある。しかし改善したのは非正規だけである。いつでも解雇できる非正規の人しか採用しないのは、企業が将来不安を持っているからだと考えるが同意するか。
16 世界中で長期間デフレを続け名目GDPが上がらない国は日本だけである。その理由は政府が国の借金が多いと言って将来不安を煽っている事が原因で国民は消費を抑え、企業は国内投資を抑えているからだと考えるが同意するか。
17 国の借金が日本以上の速度で増加している国は世界中に数多く存在する。しかし、それらの国々の名目GDPの増加速度は借金の増加速度に匹敵するものであり、その結果借金のGDP比は日本よりはるかに低いものとなっている。このことが意味するのは、日本の問題は国の借金が増えることではなく、名目GDPが増えないことである。そしてそれは財政が厳しいなどと言って国民に将来不安を煽り、緊縮財政を行ったことが原因していると考えるが同意するか。
18 答弁2の一、五及び八についてで「国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであるとした上で、日本銀行は、二パーセントの『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』(平成28年9月21日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)を継続するとしている旨を述べたものである」とある。これは、インフレ率が2%になるまでは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による長短金利の操作が有効、すなわち、長短国債の価格操作が有効であるものの、インフレ率が2%を超えれば途端に無効となり、「国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まる」ため、いずれ国債が暴落することになる、つまり、いずれこのような操作は必ず破綻を迎えることになるという趣旨か。もしくは、このような操作によってインフレ率が安定的に2%を超えてゆくことになれば、公的債務GDP比が低下し、政府財政が健全化するので問題にならないという趣旨か。
右質問する。
平成28年11月18日受領
答弁第126号
内閣衆質192第126号
平成28年11月18日
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 麻生太郎
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問に対する答弁書
1,2,4から6まで、9、10及び13について
御指摘の「月収30万円の家計でローン残高が5143万円」という例えは、平成26年度当初予算において我が国の税収及び税外収入の合計額が54.6兆円程度である一方、当時の国の長期債務残高が780兆円程度であることを分かりやすく示したものである。
国の財政と家計に関して、それぞれの債務はいずれも期日までに返済する必要があるという共通点を踏まえ、我が国の財政状況について国民の理解を深めることを目的として、財務省のホームページにおいて我が国の財政を家計に例えた資料を掲載しているところであり、「国民の持つ将来不安を増大させる」とのご指摘は当たらない。
また、このような趣旨に鑑み、政府として、御指摘の「インフレのお陰で国の借金を実質的に減らしている」ことを家計に例えて示すことは考えていない。
我が国の財政状況は、極めて厳しい状況にあるが、政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に沿って引き続き財政健全化の取組を着実に進め、国債に対する信認を確保していくとともに、今後とも、財政について、国民に理解を深めていただくよう取り組んでまいりたい。
3及び8について
ご指摘の「日銀はお金を刷って国債(国の借金)を買い取っている」及び「この家庭では離れでお札を印刷することが許されていて」の意味するところが必ずしも明かではないが、財政法(昭和22年法律34号)第5条本文においては、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされており、これに抵触する日本銀行による公債の引受け等については禁じられている。したがって、ご指摘のような例えを使用することは不適切である。
7について
御指摘の「国の財政を家計に例えている限り、借金返済の方法は非現実的な第一の方法しかあり得ず」の意味するところが必ずしも明かではないが、我が国の財政は、極めて厳しい状況にあり、政府としては、経済・財政再生計画に基づき、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むこととしている。
11について
先の答弁書(平成28年10月7日内閣衆質192第18号。以下「18号答弁書」という。)1及び10について及び先の答弁書(平成28年10月28日内閣衆質192第76号。以下「76号答弁書」という。)1、5及び8についてでお答えしたとおり、国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるのであると考えている。黒田東彦日本銀行総裁も、長期金利について、平成28年9月21日の記者会見において、「短期金利と同じように完全にコントロールできるかという議論であれば、それは短期金利と全く同じようにできるとは言っていません」と発言している。その上で、平成25年1月22日に政府及び日本銀行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」にもあるように、「持続的な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」ことを含め、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んでいくこととしており、「政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っている」とのご指摘は当たらない。
12について
76号答弁書6についてでお答えしたとおり、18号答弁書7についてでは、一般に、利子が付されておらず、かつ、元本の償還が約束されていない債券には経済的価値が認められないことを踏まえ、先の質問主意書(平成28年9月27日提出18号)7においてご指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なうおそれがある旨を述べたものであり、「政府が国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っている現れではないか」との御指摘は当たらない。
14について
成長戦略において、国民生活を豊かにし、企業の生産性を向上させるため、必要な改革をちゅうちょなく断行してきた。
例えば、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律(平成27年法律第63号)により、農業協同組合制度を抜本的に改革し、企業が農業に参入しやすくした。環太平洋パートナーシップ協定では、原署名国になった。観光では、査証緩和措置に加え、継続的な訪日プロモーション、免税店や免税対象品目の拡大等観光客誘致のための取組等を実施しており、平成27年、訪日外国人観光客は、過去最高となった。加えて、電力の小売市場を全面自由化した。さらに、法人実行税率を20%台に引き下げた。
こうした構造改革は、意欲ある者の創意工夫を促し、個人一人一人がその潜在力を開花する「生産性革命」につながり、日本経済の成長に貢献するものである。
さらに、経済成長の果実を生かして、安心できる社会基盤を築き、成長と分配の好循環を強固なものとするものとしており、御指摘の「弱者切り捨て」を行うものではない。
15について
企業がどのような雇用形態の者をどの程度採用するかは、個別の事情によって様々であることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。なお、正規雇用労働者数は、平成27年に8年ぶりに対前年比で増加に転じていることから、「改善したのは非正規だけである。いつでも解雇できる非正規の人しか採用しない」とのご指摘は当たらない。
16及び17について
我が国においては、安倍内閣の経済財政政策によって、名目GDPは増加している。
また、我が国の財政状況については、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らんでいることは事実であり、「国の借金が多いと言って将来不安を煽っている」及び「将来不安を煽り、緊縮財政を行った」との御指摘は当たらない。一般論としては、経済再生を実現しGDPを拡大することと債務残高を抑制することが債務残高対GDP比の安定的な引き下げにつながることになる。したがって、経済再生と財政健全化の両立に向けて、引き続き、基礎的財政収支の黒字化を目指し、その改善に取り組んでまいりたい。
18について
76号答弁書1、5及び8についてでは、日本銀行は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(平成28年9月21日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)を継続する旨を述べたものであり、お尋ねのような、インフレ率が2%を超えれば途端に金融政策が無効となり、国債が暴落することになることやインフレ率が安定的に2%を超えていくことにより財政が健全化する旨を述べたものではない。なお、政府としては、今後とも、財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認の確保に努めてまいりたい。
トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問主意書と答弁書(No.227)
平成28年12月1日提出
質問第179号
トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
トランプ氏が次期米国大統領に選出され、超積極財政政策が発表されたことを市場は好意的に受け止めダウ平均株価は史上最高値を更新した。またOECDはトランプ氏の掲げるインフラ投資など、各国の財政政策が世界経済を押し上げると予測している。一方日本においては財政が厳しいとして1982年9月に当時の鈴木善幸首相は「財政非常事態宣言」を出し、1995年11月にも村山富市内閣時代「財政危機宣言」が出されている。国の借金のGDP比は小さかったのに本当に財政は危機的だったのかという疑問が生じるがそれに対し政府は納得できる説明を行っておらず、積極財政は悪、緊縮財政は善と決めつけている。このように政府が財政に対する異常な考えを持つ国は世界的にも例がない。財政が厳しいなどと言って国民を騙し続けた政府はひたすら緊縮財政を続けた。その結果かつて奇跡の経済復興と言われた日本経済だが、一転して失われた20年と言われる深刻なデフレ不況に追い込まれてしまった。このことに関して質問する。
1.1982年9月に当時の鈴木善幸首相により「財政非常事態宣言」が出され、1995年11月に村山富市内閣で「財政危機宣言」が出された。当時本当に財政は危機的だったのか。
2.アメリカで超積極財政が市場に好意的に受け止められている。アメリカでは積極財政が許されて日本では許されない理由は何か。
3.日本でもアメリカと同様に積極財政に転じれば、株価上昇、デフレ脱却、インフレ目標達成、景気回復が期待できるのではないか。その場合通貨の信認や国債の信認が失われると考えているかもしれないが、アメリカでは通貨の信認や国債の信認が失われていない。
4.もしもこのまま日本が積極財政に転換せず内需拡大を怠り、一方でアメリカが積極財政を行えば、ドル高円安のため貿易不均衡が拡大する。製造業をアメリカに取り戻すと公約したトランプ氏だから、現在の日本の金融政策を円安誘導策と見なし対抗策をとると、日米の通商摩擦が再燃する恐れが出てくるのではないか。
5.アベノミクスは3本の矢ということになっていたが、事実上は金融政策だけで景気を回復しようとしていた。その理論的な支柱であった浜田宏一氏は、その考えが間違いであり金融政策だけでは不十分だったということを11月15日に日経新聞で明かにした。浜田氏の考えに同意するか。
6.ジャクソンホール会合の基調講演でノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ氏(プリンストン大教授)が「金融政策が効果を発揮するには財政政策の裏付けが必要」と主張した。その論文を読んで浜田氏は自分の考えの誤りに気づいたという。「シムズ氏の論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。」というシムズ氏と浜田氏の主張をどのように考えるか。
7.浜田氏は国の借金のGDP比に関して「政府の負債である公債と中央銀行の負債である貨幣は国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産でもある。借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる。」と述べている。この考えに賛成するか。
8.政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問主意書(質問第126号)の答弁書(以下答弁書という)の3及び8についての答弁は間違いである。質問主意書では「この家庭では離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している。」と例えた。答弁書では日銀による国債引受は財政法で禁止されていると主張したが、日銀が市場から国債を買うことはもちろん許されているわけであり、この答弁は間違いであると考えるが同意するか。
9.日銀は11月7日、ホームページ上で公表していた金融政策と長期金利の関係に対する見解を修正した。これまでは長期金利について日銀の金融市場調節で誘導することは「容易ではない」としていたが、マイナス金利と大規模な国債買い入れの組み合わせが「長短金利全体に影響を与えるうえで有効」と証明されたということで、長期金利を0%程度に誘導するという目標が可能であるとした。これは国債価格支持政策と呼ばれ、アメリカでもFRBは、国債利回りが上昇することを抑制するために、1942年から1951年まで米国債を買い支えた。これによって米国の長期金利は概ね2.5%以下に抑制された。この国債価格支持政策により、現在政府はほぼ0%の金利で資金を調達することができるのだから、これは財政が厳しくないことを意味しているのではないか。近い将来、金利の誘導目標が0%から引き上げられることがあったとしても、アメリカの例もあり、かなり長期間低金利に抑えられると考えられるので、財政は厳しくないということには変わりはないのではないか。
10.現在0%の金利であっても、将来金利が上がるかも知れないから財政が厳しいという論理は正しくない。将来金利が上がる可能性があるのは世界のすべての国にも言えることであり、世界中すべての国の財政が厳しくて、緊縮財政を行ったら世界大恐慌になる。長期金利が高い国は財政が厳しいが、低い国は財政が厳しくない。長期金利が低い国が率先して積極財政を行い世界経済の牽引役にならないと世界経済の発展はないと考えるが同意するか。
11.国の財政を家計に例える場合、例えば、銀行が家計Aに対し0%で金を貸すと判断し、その銀行が別の家計Bに10%の金利でなければ貸さないと判断した場合、Aの家計は厳しくないがBの家計は厳しいと言えるのではないか。その意味で現在の日本は世界で最も財政が厳しくない国の一つと言えるのではないか。
12.十二 答弁書の「一、二、四から六まで、九、十、及び十三について」で国の財政と家計に関して、それぞれの債務はいずれも期日までに返済する必要があるという共通点があると述べている。共通点はたったこれだけであり、質問主意書の二から八まで、相違点を詳しく説明した。共通点だけをホームページに書き、相違点を隠すということは国民を騙していることにならないか。
13.答弁書の12についてで、「コンバート」を行えば、通貨に対する信認を著しく損なうとある。通貨の信認が失われた場合、日本国内では日本円が全く使えなくなるという意味か。そうなれば、物々交換を除き国内のすべての経済活動が停止すると考えるが、政府はそのような事態が我が国で発生すると考えているのか。
14.答弁書の14についてで、政府の成長戦略において様々な改革を断行しているのは理解できる。ただ、この程度の改革で失われた20年からの脱却はできない。これなら経済が上向くと誰もが考え始めるようなトランプ氏並の大胆な積極財政政策を行わない限り、日本経済の停滞は続くのではないか。
15.積極的な財政政策により、国の借金のGDP比は下がるということは内閣府が平成22年8月に発表した乗数により示されている。類似した見解は2003年5月31日の日本金融学会60周年記念大会でのバーナンキ前FRB議長の講演の中でも述べられているし、二階俊博氏の二階ペーパーにも同様な記述があるが、このことに同意するか。
平成28年12月9日受領
答弁第179号
内閣衆質192第179号
平成28年12月9日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森殿
衆議院議員福田昭夫君提出トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出トランプ氏の超積極財政に市場が好意的だったこと事に関する質問に対する答弁書
1について
ご質問の「財政非常事態宣言」とは、昭和57年9月16日における鈴木内閣総理大臣(当時)の記者会見を、ご指摘の「財政危機宣言」とは、平成7年11月14日における竹村大蔵大臣(当時)の記者会見を指すものと考えるが、これらの記者会見においては、極めて厳しい我が国の財政状況について国民に対し適切にお答えしたものと認識している。
2から4まで及び14について
お尋ねについては、米国の次期政権における積極的な財政政策を前提とする仮定のご質問であることからお答えすることは差し控えたい。政府としては、引き続き、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、適切な財政運営を行っていくべく、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。
5及び6について
政府は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策を一体的に推進してきたところであり、引き続き、金融政策だけではなく、あらゆる政策を総動員していくこととしている。
また、政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下に、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えている。
7について
お尋ねについては、仮定のご質問であることからお答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、公債は、その保有者にかかわらず政府の債務であることに代わりはない。
我が国の経済財政運営に当たっては、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なお更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい財政状況にあることを踏まえ、経済と財政双方の一体的な再生を目指す必要があると考えている。
8について
先の答弁書(平成28年11月18日内閣衆質192号、以下「先の答弁書」という。)3及び8についてでお答えしたとおり、財政法(昭和22年法律第34号)第5条本文においては、「すべて、公債発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、また、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされている。
現在、日本銀行が行っている国債買い入れは、2%の物価安定の目標の実現という金融政策を目的とし、同行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているものであり、ご指摘の「この家庭は離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している」という例えを使用することは不適切である。
9及び10について
国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、御指摘の金利水準の動向を前提としてお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
また、我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。
11及び12について
お尋ねの「国の財政を家計に例える場合、例えば銀行が家計Aに対し0%でお金を貸すと判断し、その銀行が別の家計Bに10%の金利でなければ貸さないと判断した場合、Aの家計は厳しくないが、Bの家計は厳しいといえるのではないか。その意味で現在の日本は世界で最も財政が厳しくない国の一つと言えるのではないか。」については、国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであるため、一概にお答えすることは困難である。
我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。
また、ご指摘のホームページについては、こうした我が国の財政状況について国民の理解を深めることを目的として、我が国の財政を家計に例えた資料を掲載しているものであり、「共通点だけをホームページに書き、相違点を隠すということは国民を騙している」とのご指摘は当たらない。
13について
先の答弁書12についてでお答えした「通貨に対する信認を著しく損なう」とは、我が国の通貨に対する内外からの信認の低下を通じて激しいインフレが生じるような状況を述べたものであり、ご指摘の「日本国内では日本円が全く使えなくなる」及び「物々交換を除き国内すべての経済活動が停止する」という状況になるとは考えていない。
15について
ご指摘の「積極的な財政政策」の意味するところがかならずしも明かではないが、我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。
政府としては、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済・財政再生計画に沿って、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を三本柱として、「経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。
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コメント
1について
1982年も1995年も、日本の財政は極めて厳しかったのだそう。つまり34年間ずっと財政は極めて厳しかったのだと主張している。
国の債務のGDP比が1982年は62%、1995年は95%であった。ということは、国の債務のGDP比が62%以上なら、財政は極めて厳しいということになる。諸外国の債務のGDP比を見ると
アメリカ 105%
イタリア 138%
ベルギー 106%
スペイン 99%
フランス 96%
カナダ 91%
イギリス 88%
ドイツ 70%
オランダ 65%
というわけで、先進国は軒並み62%以上なので、財政が極めて厳しいことになる。しかし、財政が極めて厳しいなどと言って緊縮財政を続け、その結果デフレ経済が続いている国は日本だけだ。どんなに頑張っても62%以下になる可能性は無く、頑張る意味がない。62%から200%以上に増えても、国債暴落とかハイパーインフレとか通貨の信認の喪失とかという惨事は起きなかった。財政は厳しいと言ったのはウソだったに違いない。
2から4まで及び14について
トランプの積極財政が市場に好意的に受け止められたということは、「財政が厳しいから積極財政政策を行われれば大変なことになる」ということがウソであることを明確に証明することなので、答えようがなかったということだ。
5及び6について
アベノミクスの教祖が、間違えていたと言ってしまったのでは、反論しようもないですね。
7について
これはアベノミクスの教祖である浜田先生の意見であり、仮定の質問ではない。日銀が保有者の場合、利子は日銀納付金として政府に返してもらうことになっている。さらに借換債を発行しいくらでも繰り延べが可能である。その意味で政府の債務というのは適当ではない。実際家計の債務において、そのようなことはあり得ない。
8について
「この家庭は離れで(つまり日銀が)お札を印刷することが許されていて、そのお金で借金を返している」という例えを使用することは不適切だと主張するのだが、なぜ不適切なのかの説明が一切ない。だったら、適切に例えてみよ。例えられないなら、家計を国の財政に例えるのを止めよ。
9及び10について
国債金利に言及したら、市場に混乱を与える??何を言っているのだろう。日銀がホームページで長期金利の記述を変えたことを聞いているのであり、それが前回の答弁書の記述と矛盾していることを追及しているだけだ。なぜ逃げるのか。
11及び12について
何を馬鹿な事を言っているのだろう。家計Aと家計Bが銀行から借り入れをするときの金利について話しているだけで、ここでは市場に決まる金利とは全く関係ない。中学生でも分かるくらいの易しい質問だ。
13について
日銀保有の国債を無利子無期限の国債に替えてやったらどうかという質問に対し「通貨の信認が失われる」と答弁した。そうなると、日本円が国内で使えなくなり、あらゆる経済活動がストップするということかと質問したら、そうではない。ハイパーインフレになるということだと答えた。しかし内閣衆質190第39号において「 ハイパーインフレ-ションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。」と答えているので明らかに矛盾している。
15について
質問には答えられないという答弁である。
答弁の中で「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり」という文章が3回出てくる。しかし「1について」で、債務のGDP比は62%でも財政は極めて厳しいのだと言っている。結局日本はどんなに増税をやろうと、どんなに歳出削減をやろうと決して財政が極めて厳しい状況から抜け出すことはあり得ないということを言いたいのだろう。だったら何のための増税・歳出削減か。
平成29年1月25日提出 質問第30号
現在の日本で激しいインフレになるのかという疑問に関する質問
提出者 福田昭夫
平成二十八年十二月九日の答弁書(以下答弁書という)答弁第一七九号の十三についてで、日銀保有の国債を無利子・無期限のものにコンバート(以下コンバートという)すると、通貨の信認が損なわれ激しいインフレ(ハイパーインフレ)が生じるとしていた。
平成二十八年三月八日の答弁書第一七四号の八について、ではハイパーインフーションが起きるのは「戦争等を背景とした極端な物不足」の際であるとあった。コンバートによって極端な物不足が生じるということか。物不足が生じるには需要が多すぎるか供給が少なすぎるときに起きる。コンバートによって農家や自動車会社、電気会社等の企業が生産を一気に何分の一かに減らすとは考えられない。そうだとすれば、コンバートで米、テレビ、車などの需要が一気に数倍になって極端な物不足になると政府は考えていると推測される。
これらのことに関連して質問する。
一 コンバートによって激しいインフレが起きるということは消費が激増するということだ。それは賃金が急上昇し可処分所得が激増する結果なのか、それとも可処分所得は変わらないにも係わらず消費が激増するのか。利益が大きく増えても賃金を上げなかった企業が、コンバートで賃金を本当に大幅アップするのか。
二 コンバートによって消費・需要が大きく拡大するということは、国民生活は大きく改善するということであり、それに対応して企業は生産を拡大し経済は活性化すると考えて良いか。
三 黒田日銀総裁による異次元の金融緩和は金融機関の経営状態を悪化させ、輸入物価の上昇を引き起こし消費を減少させるという副作用があり、2%のインフレ目標の達成に失敗した。また出口戦略の不透明さが国民を不安にしている。一方、コンバート政策であれば絶大なる消費促進効果により簡単にインフレ目標を達成でき、デフレ脱却を可能にする。コンバート政策のほうが、異次元金融緩和より優れているのではないか。
四 もしもコンバートによってインフレ率を簡単に押し上げることが可能であるなら、コンバートの量を調節することにより、国の借金を増やす事なく悲願のインフレ率2%を達成することができる。そうなれば、失われた20年からの脱却、デフレ脱却が可能となり、その場合名目GDPは4~5%程度になるだろうから国の借金のGDP比は4~5%減ることになる。1000兆円の借金を4~5%減らそうと思えば、40兆円~50兆円も減らさなければならず、増税よりコンバートのほうがケタ違いに国の借金減らしには効果的であると考えるが同意するか。
五 コンバートを行った後にインフレになったとき、無利子・無期限の国債は市場で売れないから景気の調整ができなくなると主張するかもしれない。しかし、インフレ抑制には歳出削減、増税、預金準備率引き上げ、金利引き上げ等の手段があり十分インフレは抑えられる。インフレになり財政が黒字化すれば、政府は余った予算で日銀の無期限国債を買うことも可能である。一方でコンバートしなかった場合、インフレになれば日銀の保有する国債の市場価格が下落し、日銀が債務超過に陥り、円の信認が失われるという主張がある。またインフレ時に市場で日銀が国債を売ろうとすると国債が暴落するわけで、国債を売れない。このような事情を考えればコンバートはインフレ時に金利急上昇もなく理にかなっていると考えるが同意するか。なお、同様な議論はスティグリッツ氏も行っている。
六 コンバートを行えば、国民は日銀保有の国債はもはや国の借金ではないと考えられ、国民一人当たりの借金は激減するわけで、国民に安心感を与え節約をしなくてもよいと考えるようになると思うが同意するか。
七 日銀保有の国債の利払いの大部分は日銀納付金として国庫に返されるし、借換債でいくらでも繰り延べが可能である。つまり事実上無利子・無期限の国債と同じである。それ故にコンバートによって事実上の変化はほとんど無いと考えるが同意するか。その意味で日銀保有の国債は国の借金ではないと言えるし、日銀による市場からの国債の買い入れは事実上国の借金の返済と言えるのではないか。
八 日銀の最新の営業毎旬報告(平成28年12月20日現在)を見ると、株、株式指数ETF、REITの保有高が12.5兆円となっている。株、ETF、REITは償還期限の定めも、保証価格もない無期限の債券であり利子率が不定である債券である。日銀がこのようなハイリスクの金融商品を買っても通貨の信認が落ちず、無期限で政府による価値保証ある無期限国債を保有すると通貨の信認が激しく低下し激しいインフレが起こるのはなぜか。
九 内閣官房参与である浜田宏一氏の「今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ」、「政府の負債である公債と中央銀行の負債である貨幣は国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産でもある。借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる」という主張につき、答弁書の五及び六についての内容から判断して内閣としては間違いであると認識していて、内閣は浜田宏一氏を内閣官房参与として信用していない、と理解して良いか。
十 答弁書1についてに関してIMFのデータによれば、日本の公的債務のGDP比は昭和57年(1982年)が59・3%、平成7年(1995年)が95・1%であり、本年平成28年(2016年)の推計値が250・4%となっている。昭和57年、平成7年において我が国の財政状況が「極めて厳しい」のであったとするのであれば、政府としては公的債務GDP比がいくらであれば「我が国の財政は極めて厳しくない」と判断するのか。政府は「どの段階から財政が極めて厳しい」と判定する明示的な基準を国民に対して開示すべきではないか。「財政が厳しい」と主張する意図は緊縮財政を行うという意思表示であり、それを撤回しない限りインフレ目標達成は困難であると考えるが同意するか。
十一 諸外国の債務のGDP比を見るとアメリカ 105%、イタリア 138%、ベルギー 106%、スペイン 99%、フランス 96%、カナダ 91%、イギリス 88%、ドイツ 70%、オランダ 65%となっている。先進国は軒並み59.3%以上なので、財政が極めて厳しいことになる。ということは、これらの国々はすべて緊縮財政をすべきであって、トランプ氏の積極財政は間違いだと主張するのか。
十二 債務のGDP比が僅か59.3%しかなくても、不健全で良くない状態とする政府の考えは、国債の役割そのものを否定し、さらに日銀の役割まで否定しているのではないか。
十三 国・地方の債務のGDP比が2倍ということは、国債に対する信認が失われたと言えるのか。2倍ならまだ失われていないのであれば何倍になれば失われたと言えるのか。
十四 積極的な財政政策により、国の借金のGDP比は下がるということは内閣府が平成二十二年八月に発表した乗数により示されている。類似した見解は二00三年五月三十一日の日本金融学会六十周年記念大会でのバーナンキ前FRB議長の講演の中でも述べられているし、二階俊博氏の二階ペーパーにも同様な記述がある。政府はなぜこれらの見解に従って国の借金のGDP比を下げる努力をしないのか。
十五 答弁書八について現在の日銀のいわゆる「異次元緩和」は市場から間接的に国債を購入しているが、財務省から国債を直接購入している市中銀行はその国債をすぐに日銀に転売できることを百も承知で国債を購入しているのであるから、直接引受と実質的な違いはほとんどないと考える。ゆえに直接引受に害があるのであれば現在の「異次元緩和」にも害があることになると考えるが、政府はこの点についてどのように考えるか。
十六 伊勢志摩サミットで安倍首相は現在の世界情勢は「リーマン・ショック前に似ている」として各国に財政出動を呼びかけた。しかし、現在考えられている日本の財政出動はリーマン・ショックに対抗するには余りにも小粒ではないか。なぜもっと大規模にしないのか。
十七 最近の円安は輸入物価を押し上げることにより、低迷が続く消費を更に押し下げ、家計は益々苦しくなることが予想される。消費拡大に向けて政府の取り組みが足りないのではないか。
十八 産経ニュースで2016年12月29日、浜田宏一氏は次のように述べている。「政府が財政赤字をつくることは、必ずしも悪くない。少なくともデフレ経済ではよいことかもしれない。最近は米国の学会で物価の財政決定理論というのが有力になっている。民間部門が不況やデフレに悩んでいるときには公債を発行してお金を見せるという意味での一種の「見せ金」をみんなに持たせることも有効ではないかという考えに、米国の経済学者は最近どんどん移っている」。この考えに同意するか。
答弁書
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平成29年2月3日受領
答弁第30号
内閣衆質193第30号
平成29年2月3日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出現在の日本で激しいインフレになるのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福田昭夫君提出現在の日本で激しいインフレになるのかという疑問に関する質問に対する答弁書
1から八までについて
先の答弁書(平成28年3月18日内閣衆質190第174号)8についてでお答えしたとおり、ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足だけでなく、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものである。その上で、先の答弁書(平成28年12月9日内閣衆質192第179号。以下「前回答弁書」という。)13についてでは、御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なう結果、激しいインフレが生じる旨を述べたものである。したがって、御指摘の「コンバートによって極端な物不足が生じる。」コンバートによって激しいインフレが起きるということは消費が激増する」及び「コンバートによって消費・需要が大きく拡大する」とは考えていない。
また、御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認が著しく損なわれる結果、金利の急騰や激しいインフレが生じ、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶおそれがあるため、政府としては、御指摘の「コンバート」を行うつもりはない。
さらに、御指摘の「株、ETF,REIT]については、その裏付けとなる資産が存在し経済的な価値が認められる一方、一般論としては、無利子・無期限の債券に経済的価値を認めることは難しいと考えられるため、御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認を著しく損なうおそれがある。
9及び18について
お尋ねは、浜田宏一氏個人としての発言に関するものであり、政府としてお答えする立場にはない。なお、前回答弁書5及び6について及び7については、政府の経済財政政策の基本方針について述べられたものである。
10及び11について
財政状況を1つの数量的基準を用いて図ることは困難であるが、我が国においては、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれている中、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要であり、「「財政が厳しい」と主張する意図は緊縮財政を行うという意思表示」といった御指摘は当たらない。
また、お尋ねの「トランプ氏の積極財政は間違いだと主張するのか」については、米国の財政運営に関することであり、政府としてお答えする立場にはない。
12について
御指摘の「債務のGDP比が僅か59.3%しかなくても、不健全で良くない状態とする政府の考え」の意味することころが必ずしも明かではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
13について
我が国の財政状態は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増がみこまれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。
14について
御指摘の「積極的な財政政策」の意味するところが必ずしも明かではないが、我が国の財政状況は、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。
これまでも、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化など歳出削減にも取り組んできたところであり、この結果、社会保障関係費については、安倍内閣発足後の平成25年度以降の5年間において、その実質的な伸びを年平均5000億円に抑えることができるなど、歳出改革の取り組みは着実に成果を上げている。
政府としては、平成32年度の財政健全化目標の達成に向けて、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済・財政一体改革」に取り組んでまいりたい。
15について
全回答弁書8についてでお答えしたとおり、現在、日本銀行が行っている国債買い入れは、2%の物価安定の目標の実現という金融政策を目的とし、同行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているものであり、財政法(昭和22年法律第34号)第5条本文が禁じている同行による公債の引受には当たらない。
16について
御指摘の「現在考えられている日本の財政出動」の意味するところが必ずしも明かではないためお答えすることは困難である。
17について
個人消費が持続的にのびていくためには、雇用・所得環境の改善が更に続くことが重要であり、政府としても、引き続き、雇用・所得環境の更なる改善に努めてまいりたい。
消費が増えなくても激しいインフレが起きるのかという疑問に関する質問主意書
提出者 福田昭夫
先の答弁書(平成二十九年二月三日内閣衆質一九三号、以下答弁書という)の一から八までについてでコンバートによって消費・需要が大きく拡大することはないが、通貨の信認が損なわれ激しいインフレが起きると述べた。通貨の信認が損なわれるとよく言われる例としては、政府貨幣が発行されたとき、日銀の国債引受が行われたとき、財政ファイナンスが行われたときなどであり、政府はこれらの際には、消費は拡大しないが激しいインフレが起きるという矛盾に満ちた主張をする。
平成十四年五月九日の日経新聞でのノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツの政府貨幣発行に関する発言に注目して頂きたい。「増発された紙幣は消費を刺激せず、インフレにつながるだけだとする矛盾に満ちた主張も一部に見受けられる。消費に回らなければ、どうやってインフレを促進することになるのか。」このような矛盾に満ちた考えが財政拡大を妨げ「失われた20年」と言われる世界に類を見ない大不況に日本を陥れている。
特にコンバート時ではあるが、もっと一般に通貨の信認が失われた時に何が起きるかに関して質問する。ただし後半はそれ以外の質問も行う。
一、消費は拡大しないままで、激しいインフレが突然現在の日本で起きるのか。
二、消費が拡大しない時、一企業あるいは一商店が全製品・全商品の大幅な値上げを行ったとすると、それらが売れなくなるのは明かで倒産に追い込まれるのではないか。
三、全企業、全商店が一斉に同率で値上げしても、やはり消費者は購買力の低下のため売れなくなり、結局値下げに追い込まれるだけではないか。
四、例えば、トヨタや東京電力や郵便局や百円ショップやガソリンスタンドや書店などが本当に突然大幅値上げをするのか。それ以外に具体的に大幅値上げをすると言っているところを政府は一箇所でも把握しているのか。もし一箇所も把握できていないとしたら、通貨の信認が失われると激しいインフレが起きるという政府の主張は間違いだと結論できるのではないか。
五、コンバートで激しいインフレになったとき、消費性向はどのような影響を受けるのか。我が国における消費性向は年金を取り崩して生活する世帯の増加のためゆるやかに増加する傾向があるもののほぼ〇・八程度である。例えば物価が二倍になり消費性向が〇・八のままだと消費は実質的に半減するのか。それとも可処分所得も一気に二倍になると主張するのか。
六、例えば政府が通貨を大規模に増発すれば激しいインフレになるのは明かである。あるいはデフォルトの際、一気に通貨安が進み、輸入が滞り深刻な物不足になった際にも激しいインフレになることは知られている。また戦後の極端な物不足の際にも激しいインフレが起きる。デフォルト、通貨安、あるいは通貨の増発、戦後の物不足などの場合を除くとしたとき、消費の拡大もない時に突然激しいインフレに見舞われた例はあるのか。
七、円の信認が失われたら円が暴落し、輸入物価が上昇しインフレになるという主張か。アベノミクスが始まって一ドルは八十円台から百二十円台へと円は急落したが、インフレ率の上昇は僅かだった。円がどれだけ下がれば激しいインフレになるというのか。ベネズエラは通貨急落から激しいインフレになったが、これには外貨不足から輸入が途絶え、それを代替する国内産業が無かったため深刻な物不足が引き起こされた結果であり、巨額の外貨を保有する日本の現状とは全く異なるが同意するか。現状を放置すれば、景気が回復し金利が上昇に転じたとき、国債価格の下落で日銀資産が毀損し、円への信認が失われ過度の円安を招く。それを防ぐためにもコンバートが有効なのではないか。
八、答弁書ではコンバートによって金利が急騰するとしている。一方で、中曽日銀副総裁は二月九日に高知市内で記者会見し、日銀がゼロ%程度への誘導を目標としている長期金利の操作について「長期金利をコントロールすることは十分可能だ」と述べた。また二月三日には日銀があらかじめ決めた利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペを日銀が実施している。無制限の指し値オペを続ければ金利は固定され急騰するわけがないが同意するか。
九、答弁書一から八についてで無利子・無期限の債券は無価値だとしているが、日銀券(紙幣)や政府貨幣(硬貨)も無価値だと主張するか。
十、トランプ大統領は日本の為替政策を厳しく批判している。金融緩和で円安誘導を行って輸出を伸ばそうとしているとの批判しておりかつての貿易摩擦が再燃する可能性がある。一九八九年~一九九〇年の日米構造協議ではアメリカは日本に内需拡大を要求した。日本に対しGNPの十パーセントを公共事業に配分することを要求した。海部内閣はこれに応え、十年間で総額四三〇兆円という「公共投資基本計画」を策定した。
もちろん、アメリカの要求をすべて要求を飲む必要はないが、デフレが続き消費が落ち込み、輸入が減って経常黒字が続くのがよいわけはない。ゼロサムゲームであり、黒字国があれば赤字国もある。日本が黒字を続けることで赤字国を苦しめることになる。そうであれば、日本は財政を拡大し、景気をよくし、消費を伸ばし、輸入を増やせば、アメリカなど赤字国にとっても、日本にとってもよいことであり世界経済の健全な発展にも貢献すると考えるが同意するか。
十一、答弁書の十及び十一についてで「財政状況を一つの数量的基準を用いて測ることは困難である」と述べているが、これは国・地方の債務残高のGDP比だけで、財政が厳しいかどうかを言うことはできないという意味か。
十二、平成二十九年一月二十五日に内閣府より発表された「中長期の経済財政に関する試算」(以下内閣府試算という)によれば、「二〇一七年現在、国・地方の債務残高のGDP比は一八八・五パーセントであるが、この比は今後次第に減少し二〇二五年には一六九・六パーセントにまで下がると見込まれている」ということで間違いないか。そうであれば、「国・地方の債務残高がGDPの二倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれている」などというわざと誤解を招き、明らかに国民を騙そうとする意図が見える表現は今後答弁書では使うべきではないと思うが同意するか。
十三、内閣府試算ではGDP推計の抜本的な変更が行われた。この試算で使われた計量経済モデルの変数・方程式リストや乗数はいつ公表されるのか。
十四、内閣府の「今週の指標 No・一一五九 基準改定等を反映した二〇一六年七─九月期四半期別GDP速報(二次速報)を踏まえたGDPギャップ及び潜在成長率について」では研究開発への支出が含められたために約三十兆円だけGDPが上振れした。これは総需要が研究開発で二十兆円、他の要因も含めると三十兆円増加した場合の試算したことに相当している。つまりこの試算では、これらを増やす前と後では潜在成長率は〇・四から〇・八に増加することを示すこととなった。ということは総需要を増やせば潜在成長率は増えることを示したことになった。これは「潜在成長率を増やすには構造改革によって供給サイドを強化するしかない」「現在の低成長は、潜在成長率が低いためであるから致し方ない」という従来の考え方が間違いだったことを証明した。つまり財政を拡大すれば、潜在成長率が低くても経済は発展することができることが証明されたと考えるが同意するか。
十五、内閣府は前述の「今週の指標」で用いた方法に従って、財政を拡大した場合としない場合で全要素生産性をそれぞれ計算し、国民に示すべきである。内閣府試算では全要素生産性が高い場合に相当する「経済再生ケース」と、低い場合に相当する「ベースラインケース」を示しているが、そもそも全要素生産性は財政規模に依存するのだから、この二つのケースを示すことは意味が無い。むしろ、財政を拡大した場合と拡大しない場合を計算し比較し「中長期の経済財政に関する試算」を国民に示すべきだと考えるが同意するか。
十六、日米政府の政策は対照的である。アメリカ政府は様々な形で国内産業の後押しをしている。トランプ大統領は企業が国内から海外へ移転するのを阻止し大規模減税や公共投資で需要を喚起し国内産業の発展を目指している。一方で日本政府は逆に国内産業の足を引っ張っている。デフレが脱却できていないのにも拘わらず、増税で消費を停滞させているし二年後に更なる消費増税を予定している。これでは消費が低迷し、国内企業の経営を悪化させ発展を阻害する。発展しない国に企業は投資したくない。しかも総理が企業に賃上げを求めることにより、企業の採算を更に悪化させ、もっと賃金の安い海外への工場移転を促す結果となる。アメリカは「アメリカ第一」という政策だが、日本は「日本二の次」という政策になっているのではないか。日本も米国に倣って大型減税、財政拡大を行って経済を発展させ「日本第一」という政策に転換してはどうか。
十七、答弁書十五についてで、日本銀行の行っている国債買い入れは、二パーセントの物価目標の実現という金融政策を目的にするものであり、公債の引受には当たらないとのことである。しかし物価目標は達成されていない現状を考えれば、国債の買い入れ増加や財政拡大などあらゆる手段をつくして目標達成の努力をすべきではないか。
右質問する。
平成29年2月24日受領
答弁第73号
内閣衆質193第73号
平成29年2月24日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員福田昭夫君提出消費が増えなくても激しいインフレが起きるのかという疑問に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
1及び6について
お尋ねの「消費は拡大しないままで、激しいインフレが突然現在の日本で起きるのか」及び「消費の拡大もない時に突然激しいインフレに見舞われた」の意味するところが必ずしも明かではないため、お答えすることは困難であるが、御指摘の「激しいインフレ」については、先の答弁書(平成28年3月18日内閣衆質190第174号)8についてでお答えしたとおり、ハイパーインフレーションは、戦争等を背景として極端な物不足や財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものである。
政府としては、財政運営及び通貨に対する信認が失われることのないよう、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)第3章に定めた「経済・財政再生計画」に沿って引き続き財政健全化の取り組みを着実に進めてまいりたい。
2から4までについて
お尋ねについては、企業の商品の値上げに関する特定の行動を仮定したご質問であることからお答えすることは差し控えたい。
なお、通貨の信認が失われることによる激しいインフレは、通貨1単位当たりの購買力が低下することによって発生するため、「もし1カ所も把握できていないとしたら、通貨の信認が失われると激しいインフレが起きるという政府の主張は間違いだ」といった御指摘はあたらない。
5について
お尋ねについては、仮定の御質問であることからお答えすることは差し控えたい。
7について
先の答弁書(平成29年2月3日内閣衆質193第30号。以下「前回答弁書」という。)1から8までについてでお答えした「財政運営及び通貨に対する信認が著しく損なわれる結果、金利の急騰や激しいインフレが生じ」については、我が国の通貨に対する内外からの信頼の低下を通じて、金利の高騰や激しいインフレが生じる旨を述べたものであり、御指摘の「円が暴落し、輸入物価が上昇しインフレになる」といった特定の経路を念頭に置いたものではない。
お尋ねの「巨額の外貨を保有する日本の現状」の意味するところが必ずしも明かではないため、お答えすることは困難である。
前回答弁書1から8までについてでお答えしたとおり、御指摘の「コンバート」を行えば、財政運営及び通貨に対する信認が著しく損なわれる結果、金利の急騰や激しいインフレが生じ、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶおそれがあるため、政府としては、御指摘の「コンバート」を行うつもりはない。
8について
「無制限の指し値オペを続ければ金利は固定され急騰するわけがないが同意するか」とのおたずねについては、日本銀行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたい。同行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(平成28年9月21日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)を継続するものとしており、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、同行が適切に対応されるものと認識している。
なお、国債の金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱をしょうじさせないことから、国債の金利の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
9について
前回答弁書1から8までについてでは、「一般論としては、無利子・無制限の債券に経済的価値を認めることは難しい」旨を述べており、一般的に、日本銀行券や貨幣が無価値であるとは考えていない。
10及び16について
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現は、政府の重要な政策課題であり、安倍内閣の経済財政政策により、デフレではないという状況となり、雇用・所得環境も確実に改善していると考えている。政府としては、引き続き、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、金融政策、財政政策及び構造改革を総動員することとしている。
11について
御指摘の「財政状況を一つの数量的基準を用いて測ることは困難である」とは、例えば国・地方の債務残高のGDP比について、1つの数量的基準をもってその厳しさをお答えすることは困難であることを述べたものである。
12について
「中長期の経済財政に関する試算」(平成29年1月25日経済財政諮問会議提出。以下「1月試算」という。)では、経済再生ケースにおいて国・地方の債務残高対名目GDP比が平成29年度に188.5%程度、平成37年度に169,6%程度となる姿をお示ししている。
御指摘の「わざと誤解を招き、明らかに国民を騙そうとする意図が見える表現」の意味するところが必ずしも明かではないが、御指摘の「国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれる」に関しては、前回答弁書当において、国地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らむと共に、国・地方の債務残高の累増が見込まれる旨を述べたものであり、1月試算において国・地方の最高裁残高が増加する試算結果となっていることと整合的なものとなっている。
13について
お尋ねの「計量経済モデルの変数・方程式リストや乗数」の公表時期については未定である。
14について
潜在成長率は、算出の方法や用いるデータの改訂等により、推計値は異なるものであることから相当の幅をもって見る必要がある。その上で、平成23年基準改定等を反映した「2016(平成28年)年7~9月期四半期別GDP速報(2次速報値)」(平成28年12月8日内閣府公表)に基づく潜在成長率の試算値はプラス0.8%となり、「2016(平成28)年7~9月期四半期別GDP速報(1次速報値)」(平成28年11月14日内閣府公表)に基づく試算値であるプラス0.4%と比べ、上方改訂となったが、これは、基準改定を通じて、各種の推定手法の開発や、より詳細な基礎統計の取り込みのほか、「国際基準(2008SNA)]に対応したことなどにより、直近のGDP成長率が上方改訂されたため、足下のGDPのトレンドの伸びが上向き、全要素生産性の伸びとして潜在成長率の推計に反映された結果であり、「総需要増やせば潜在成長率は増えることを示した」との御指摘は当たらない。したがって、「財政を拡大すれば、潜在成長率が低くても経済は発展する事ができることが証明された」とは考えていない。
15について
1月試算は、政府の掲げる経済再生と財政健全化のこれまでの進捗状況とともに、今後、目標実現のために必要となる取組の検討に必要な基礎データを提供するため、デフレ脱却・経済再生に向けた経済財政政策の効果が着実に発現することで、日本経済がデフレ前のパーフォーマンスを取り戻す経済再生ケースと、経済が足下の潜在成長率並で将来にわたって推移するベースラインケースの2つのケースを比較考量できるようお示ししているものである。
したがって、これらのケースとは異なる前提で数値を試算する予定はない。
17について
政府としては、平成25年1月22日に政府及び日本銀行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」にもあるように、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、政府及び同行の政策連携を強化し、一体となって取り組んできたところであり、こうした安倍内閣の経済財政政策により、デフレではないという状況となり、雇用・所得環境も確実に改善していると考えている。
その上で、同行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続するとしており、平成28年10月12日の衆議院予算委員会において、黒田東彦同行総裁は、経済、物価及び金融情勢を踏まえ、必要な場合には追加緩和を行う旨の答弁をしているものと承知している。
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現は、政府及び同行共通の重要な政策課題であり、引き続き、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、同行とも緊密に連携しつつ、金融政策、財政政策及び構造改革を総動員し、一体となって取り組んでいく。