テーマ 学びの質センシング

先進教育デザイン研究室では、教育学にて重要視されている「教育の質」の中でも教育現場での日々の授業や活動の「振り返りの質」に着目し、その評価の人工知能(AI)技術による支援を目指しています。そのため私たちは小学校低学年や幼稚園の教室に「行動センシングシステム」と呼ばれる装置を設置し授業や活動の様子を日々記録しています。こうした授業中の子ども達の映像からAI技術により個々の子どもの成長に関連する行動要素を抽出・分析し、教員にフィードバックして成長との関係を検証しています。

サブテーマ : 位置向きから判る子どもの関心(山田徹志)

※18人の子ども達の教室内の位置・向きから計算された、教室中の個々の子どもの行動の、集団活動からの尤度距離。この計算には、集団活動および個々人の行動の確率モデルによるモデル化が行われている。

保育分野(就学前教育・養育)において「子どもの育ち」を解釈する為の新たな方策として、子どもの位置・向き情報から関心を推定する分析手法の開発について報告します。私たちはこれまでの研究から、保育者が経験的に子どもの関心を読み取る際、子どもの位置・向きという行動特徴量を参照することを示してきました。また同時に、人による関心状態の評価に対してベイズ推定を用いることで定量化できることが示唆されています。これらをうけ本研究では、記録した保育活動場面の映像データ中の子どもの位置・向き情報と関心の対象について保育者によるアノテーションを実施した後、人手による関心記述の行動尤度と機械学習(HMM法,LDA法)による行動尤度を比較分析しました。結果、取得した保育活動場面における幼児18名の関心の傾向は位置・向き情報から推定可能であることが示されました。

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サブテーマ2:  センシングシステムの開発(宮田真宏)


本研究ではこれまでに、教育現場で日々行われている振り返りには子どもたちの特性を考慮することが重要であると考え、これを推定するための特性リフレクション支援システムを提案してきました。ここではまず、授業中の子どもたちの行動を録画して顔認識技術により顔の検出とその向き情報を取得し、3次元的な情報として取り出しました。その後、各子どもの行動を分析することで個人の参加状態が推定できること、および検出されたすべての子どもの行動分析をすることで、教師の意図した見るべき場所の推定を示唆する結果を示しました。本稿ではこれらを合わせることで個人の特性が推定可能となること、および複数人の子どもの分析結果を比較することで個々人の授業への参加時の特性が取得できることを示し、教育現場へフィードバックするための方法について検討しています。

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サブテーマ3: 視線から判る授業参加(宮田真宏)


近年、質的な研究を用いて教育の質の向上を試みる研究が多くなされています。しかしその多くでは、教育の質の見える化は困難とされてきました。この問題に対して本研究ではこれまで、小学校の授業を録画して顔認識技術で分析し、その見える化を試みてきました。その結果、子どもの位置や向きを用いることで子どもたちの関心推定が可能であることを示してきました。これを踏まえて本稿では、授業内場面を推定するために子どもたちの顔の向きから視線想定交点を算出し、その分布マップを作ることで授業活動の見える化を試みました。本発表では記録した映像を意味付けし、見える化した授業活動中における個々の子どもの行動特性の解釈について報告します。

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