紙面には掲載しきれなかった記事を以下に掲載します。
今回の「一般質問」は、昨年度より、質、量ともに内容が充実して来た印象です。新人議員も慣れて来たのか、質問項目も増え、主に福祉、教育等に関連したテーマについて、深く掘り下げた質問が繰り返され、その課題と解決策、今後の方向性などを確認することが出来ました。
◆「音楽のまちにっしん」の長期ビジョンは?
田中議員は、市がめざす「音楽のまちにっしん」について長期ビジョンなどを問いました。市は、「“音楽のまち”は始まったばかりだが、ジャンル、形態にとらわれず音楽にふれ合うことでヒトとヒトとの関わりを深めていく。」との答弁。めざすべき具体的な将来像が見えません。取り敢えず、市主催で「音結祭」等を実施しているレベル。発表の場としての市民会館大ホールは、天井改修のためまもなく使用不可。小ホールは音の反響、展示ホールは防音不備などにより音楽活動には利用しづらい現実があり、発表と練習の場としての福祉会館も東部、南部は音楽活動としては利用できず。「音楽のまち」を標榜するのであれば、田中議員の提案のように、長期マスタープランの作成、市民音楽愛好家、有識者を交えた審議会の立ち上げ等が必要ではないでしょうか!
◆「eスポーツ事業」は活用できそうか?>
大屋議員は、「eスポーツ事業」について市の考え方、今後の取組みを質問。市は「eスポーツがゲームとしての娯楽の要素だけでなく、高度IT社会での可能性を秘めていることから、子どもたちの教育ツール、ADHD等の精神障がい治療、高齢者の認知機能向上、健常者と障害者との共生ツールとしての活用が考えられるが、民間の動きや他自治体の動きを見ながら、調査研究していく。」と答弁。大屋議員は、市内小中学校にeスポーツ部新設、学校対抗eスポーツ大会開催などを提案。加納議員もeスポーツについての質問をしています。
◆困難を抱えた子ども・若者への細やかな配慮を!
ゆきむら議員は、困難を抱えた子ども・若者への細やかな配慮を求めました。進路未定のまま中学卒業した子への支援体制、高校生の不登校・中退の相談対応、孤立する下宿大学生、引きこもりの相談対応、ヤングケアラーの相談支援など子どもたちの抱える様々な困難を総合的に受け止める相談窓口を設ける提案を投げかけています。これらの問題について、制度の狭間に取り残されたヒト、誰にも気づかれず苦しんでいるヒト、複合的な課題に悩んでいるヒトなど誰ひとり取りこぼさないために、重層的な支援体制の構築が必要と訴え、市側もその重要性を認識しているとの答弁。今回もタテ割り行政の矛盾を鋭く突き、反省と改革を促す見事な一般質問でした。
◆「育休退園」はいち早く解決すべき課題!
川嶋議員は、実際に保護者から相談を受けた事例をもとに「育休退園」の問題を取り上げました。第2子出産により育児休暇を取得したことを理由に、1歳児の第1子を退園させられるハメになった。市に相談しても解決に向けての親身な対応がなかったとのこと。「保育園に1歳児を受け入れる余裕がない」との答弁に対し、川嶋議員は、保育士処遇改善による保育士増員、夏休み中の預かり保育が利用できる幼稚園を増やす等の策により、保育園の余裕ができれば0~1歳児受入れ定員を増やせるのではないかと提案。これに対して市は、「定員割れの幼稚園に認定子ども園への移行を促す。預かり保育の活用について調査研究する。」と苦しい答弁。認定子ども園への移行には幼稚園側の負担が大きいので、具体的な支援対策が必要と思われます。
◆「帯状疱疹ワクチン助成」が来年1月から実施へ
白井議員による「帯状疱疹ワクチン助成」についての質問で、来年の1月中の実施に向けて、準備中との答弁を得ています。この件については、川嶋議員もこれまで何度も取り上げて来て、やっと実現に至りました。豊田市、大府市ではすでに実施済みとのことです。
◆日進市は観光地をめざすべきなのか?
水野議員は、ジブリパーク周遊観光策として、どんな戦略を立てているかと質問。毎回のように保守系議員は、ジブリパークからのおこぼれ集客策を質問していますが、そのようなことは民間事業者がそれぞれに智恵を絞るべきこと。昨年、市が3千万円以上もかけて岩崎城にプロジェクションマッピングをしましたが、税金をそんな一時的な娯楽イベントに使うべきではないでしょう。そもそも日進市には観光スポットが乏しい。無い袖は振れないことをいい加減に理解してもらいたい。日進市が緑と自然に囲まれた住み良い街をめざすことが最も相応しいことを理解し、市側に向き合ってほしいものです。
◆「こども家庭センター」設置で支援が手厚くなるか?
加納議員は、改正児童福祉法に基づく同センター設置の方向性について質問。「現在、母子保健は保健センター、児童福祉は子育て支援課と別々に対応しているが、今後は、一体的かつ継続的な支援の強化をめざして両部署の一体化を検討中。」との答弁があり、「こども家庭センター」設置により、乳幼児と母親への包括的な支援が、よりスムーズに実施されるものと期待します。同センターについては、小出あさこ議員も質問しています。
この他にも注目すべきテーマが幾つも有ります。市民の不安と疑問を抱えながら開駅が遅延している「道の駅」、多くの市民の関心をよそに、地元にしか説明のない「スマートインター」、どこを走らせるか疑問苻を積みながら実証運転中の「自動運転バス」などです。いったん動き始めたら止まらない市の姿勢は、かつての帝国陸軍の姿と重なるものがあり猛省を促したいものです。
「一般質問」は議員別にも視聴することができ、各議員の発言内容がわかる『一般質問通告書』を日進市ホームページから見ることも可能です。
〇各議員の質問タイムの上限は20分
〇所要時間は、各議員の質問タイムと市側の答弁時間の合計
9月議会でも一般質問の議員別質問時間を比較するグラフを作成しました。
5分長い代表質問がないことが影響しているのか、9月議会での一般質問平均時間は31.2分で6月議会の37.8分からは短くなりました。しかし、令和4年9月議会の平均時間25.6分よりは長くなっており、今年度は積極的に質問をする議員が増えていることを示しています。
残念なのは、質問をしなかった議員が6月議会の1名から2名に増えたことです。市民の代表である議員にとって、議会での質問は、市民の声を行政に届け、政策の改善を促す重要な仕事です。質問をしないことには、議員としての責任を果たせません。
一般質問の所要時間は、各議員の質問上限時間20分に行政側の答弁時間X分を加えたものです。限られた時間内で、市の実施している広範囲の業務の中から、あるテーマにつき質問を繰り返すことで、そのテーマが抱えている問題の解決を図るべく、行政側の真意を引き出し、解決に向け動くように働きかけることが大事なポイントになります。
そのために、議員は事前準備が必要で、行政職員に対するヒアリングと意見交換をしておくことが必須になってきます。これが不十分な場合には、所要時間は大幅に短くなります。逆に準備が十分できていれば、行政側から効果的な答弁を引き出すことができ、問題解決につながります。
したがって、一般質問の所要時間の長さは、その中身に比例していると言っても過言ではありません。よくあるケースは、例えば『DX について』、『第6次総合計画について』等と大きなテーマを持ち出し、大雑把に市の方針と実施済のこと、今後の予定について質問するものの、それより先の議論に繋がらず、5分程度の短い時間で終了する場合も見受けられます。
一般質問を充実させるには、日頃から広い方面での現場の情報を集めたり、近隣市町の議員と情報交換したり、様々な分野での知識を深めるべく各種行政委員会や審議会を傍聴するなど研鑽を積んでおくことが求められます。議員の仕事は夏祭りや盆踊りで挨拶したり、ボランティア活動するだけでは務まらないのです。