三一建機

建機新聞から

「大キリン」を提供した中国・三一重工ってどんな会社?-1-

「大キリン」を提供した中国・三一重工ってどんな会社?-1-

2011/06/29 10:24   企業   No comments


中国・湖南省長沙市にある工場

 福島原発で「大キリン」と呼ばれている大型ポンプ車。これを無償提供したのが中国の建機メーカー「三一重工」だ。建設通信新聞は、中国まで出向いてこの建機メーカーの工場を訪ね、どんな会社なのかを取材した。
 三一重工は、6万3000人の従業員を抱える。「品質改変世界(品質は世界を変える)」をスローガンに、創業からわずか20年で売上高500億元(約6200億円)の中国を代表する企業に成長した。三一重工を中核とする三一グループ(梁穏根董事長)の売上高は、2005年の約58億元(720億円)から毎年ほぼ倍々のペースで増え、10年度は502億元を達成、11年度は800億元(約1兆円)に手が届く見通しだ。純利益も毎年2桁の伸びだという。
 研究開発を担当する易小剛執行総裁は、品質についてのこだわりを主張する。「品質には2つの意味がある。一つは製品の品質で、これは世界一を目指している。もう一つが人としての素質。誠意を持って仕事をする人材を育成している」という。
 研究開発にかける費用は、売上高の5-7%に及ぶといい、2010年には約350億円を投入、研究開発にかかわる人材は約1万人で、「品質管理やアフターサービスも含めればもっと多い」(易執行総裁)という。
 そんな三一重工だが、建機のエンジンを始め多くの部品を日本から調達している。「日本は技術力が高く、地理的にも近くて効率的。決して安くはないがコストパフォーマンスが高い」(同)と日本に頼る部分は大きいようだ。
 油圧ショベル・クレーン事業を手掛ける梁林河副総裁は、中国での生産体制をはやく確立したいと、今後はエンジン、油圧部品の開発に力を入れる。すでに、10tクラスの小型の電動ショベルを開発したり、ハイブリッドについても研究段階にあるというから、なかなかあなどれない。

 

 三一重工は、油圧ショベルやクレーン、杭打ち機、生コン車など多様な建設機械を生産している。得意とする生コンポンプ圧送車は、中国国内シェアが57%。中国で建てられる高層ビルの80%が同社の機械で、建設中の上海中心大厦(完成高さ632m)にも同社のポンプ車が18台稼働している。
 また油圧ショベルの国内シェアは13%で2位。09年の6位から一気にジャンプアップした。トップはコマツ。
 同社では「1位のコマツとの差は2000台くらい。ことしはコマツを超えて、国内最大の油圧ショベルメーカーになる」と鼻息が荒い。
 2010年の生産台数は1万2000台だったが、11年は3万台までアップさせる計画だ。「08年は3000台、09年は6000台だったので、倍々ペースで増やしているところだ。03年に事業を始め、3年間の開発期間を経て生産を開始した。発展のスピードは業界に驚きを与えた」と梁副総裁は胸を張る。売上高も09年30億元、10年60億元と順調に伸び、11年は180億元(2200億円)まで一気に増える見込みだ。


中国経済の成長とともに、販売台数が大きく伸びた

 中国製品といえば、価格の安さがクローズアップされがちだ。「価格設定の原則は、日本製より安く、韓国製より高いということにしている」と梁副総裁は説明する。日本製との価格差は1割程度という。

2011/07/01 15:20   企業   No comments


同社の生コンポンプ車

 今回は、三一重工が中国から国外へと出て行く意志があるかを探ってみる。中国には、政治的に民間企業が海外へ出ることを許さない時代があったそうだ。しかし現在では国際市場を見通している。
 その際にもっとも重視するのは南半球だという。南米、アフリカ、中東はインフラ整備が遅れており、インドもインフラは中国より15年ほど遅れている。これらをバネに、これまで売上の10%程度だった海外比率を5年後に3割まで増加させたい考えだ。
 同社の生産工場ネットワークは現在、米国、ドイツ、ブラジル、インドで、インドネシアにも工場を新設する。将来は30カ国で工場、販売体制と、アフターサービスのネットワークを構築したいという。
 中国から見たら海外市場となる日本市場については、「進出することで、より良い製品をつくって技術を高めることができると信じている。日本の厳しい要求に応えることができれば、他の国でも信頼される」と技術力アップやブランド価値向上の手段と割り切る。まず得意とする生コンクリートポンプ圧送車の販売を、さらに大型機種をラインアップするクローラクレーンの投入もしていきたいという。
 最後に、同社の考え方をひとつ。「日本企業に提携の意欲があれば、われわれは歓迎する。先進国の進出方策についてはまだまだ検討の余地があるが、日本市場で製品のニーズがあるなら、市場に合わせて考えていきたい」と、提携には前向きの姿勢だ。