洋上風力発電電力ネットワークや次世代EVが必要とする高耐圧パワー半導体モジュール

 例えば、洋上風力発電の発電電力を効率よく流通する次世代電力ネットワークの構築や次世代EVの実現には、交流-直流/直流-交流電力変換に用いられるパワー半導体モジュールの高信頼性と低損失化が必要です。次世代パワー半導体素子として期待されるSiC素子、GaN素子は、内部電界が現行Si素子に比べて一桁以上高い電界で動作します。素子表面を封止する絶縁体に高い電界ストレスが加わるため、絶縁体の高耐圧化が極めて重要な課題となります。この高耐圧パワー半導体モジュールに資する固体絶縁材料の研究に取り組んでいます。


ナノコンポジット絶縁材料と高耐圧エンジニアリング

 従来の絶縁体では、既存の現象や材料の組み合わせで高耐圧化を行ってきました。私たちの研究グループでは、ナノからマクロまでのメソスケールな構造の制御から新しい現象や固体絶縁材料を創造して、既存の絶縁体の限界を打破し、電力機器や電動モビリティを革新するという野心的なアプローチをとっています。

 研究テーマを一つ紹介します。私たちは、コロナウィルスのサイズと同程度の粒子を固体絶縁材料に添加することで耐圧を高めることに成功しています。私たちは、この新材料を「ナノコンポジット絶縁材料」と呼び、これに関するISO国際規格の開発(ISO/PWI12948(Project Leader:Dr.Muneaki KURIMOTO))も現在進めています。このナノコンポジット絶縁材料を理論・数値計算で設計し、実際に合成・作製し、さらには高耐圧性能を評価しています。これら3つの軸の高耐圧エンジニアリングに加えて、最近では、情報科学、インフォマティクスを加えた4軸にして、さらに高耐圧な固体絶縁材料の開発を加速しようということに取り組んでいます。