下村 えり
あいおい子ども園 2歳児クラス担任
・出身:三重県
・保育士歴:2年目
・最近癒されること:松岡修造の日めくりカレンダーを見る事
園外での活動を通して子ども達は自然との出会いを深めていきますが、まず初めにあいおい子ども園の0.1.2歳児での園外活動についての必要性を整理しました。
0歳児では、主に園内での活動を中心とし、少しずつ活動の幅を広げていけるようにまずは園生活の安定を大切にしています。
1歳児でも、園内での活動を中心としながら排泄着脱食事など基本的生活習慣の獲得が出来る事を大切にしています。
2歳児になると、身の回りの事が出来るようになってきて活動の幅がぐっと広がる事で活動の充実という所を大切にしています。
今回は、園内だけでなく園外活動が増える2歳児を対象に研究を進めていきました。
2歳児の園外活動では、公園遊びや散歩、雨の日に散歩に出かける事も活動に取り入れています。
今回の研究の動機は、
園外活動の中で見つけたミミズ。ミミズとは一体どんな生き物なのか、何を食べてどのように過ごしているのか、子ども達と一緒にミミズについて観察を行なった事がきっかけです。
子どもたちに聞いてみました。
園庭には、やまぼうしの木があります。
子ども達はやまぼうしの実を毎日沢山拾い集めていたので、一番最初に声が挙がったのはやまぼうしでした。
ひとつ意見が出ると次々と子ども達からの発信がありました。
この時、私から自然とはこういうものだ!という事は伝えていなくて、子ども達と外にあるものってなんなんだろう~とゆるい雰囲気の中話を進めていると、
自然って外にしかないもの?と声があがりはじめ、子ども達の言葉をそのままボードに書き込んでいきました。
中には、線路!ごみすてるところ!など人工物な物もありますが「みみずのうんち」などは私が思う自然よりもとても具体的な自然物だなぁと感じた一コマでした。
今回のテーマによって研究を進めていくと3つの姿が見えてきました。
・興味関心の姿
・観察する姿
・発展していく姿
それぞれに広がっていく姿に違うものが見られたので、詳しくどんな姿があったのかご紹介していきたいと思います。
子どもたちが興味関心を示す時に出てくる物、言葉には
「なにこれ、なんで、どうして、ねえみて」など様々なサインとなる言葉があります。
聞こえると
お!興味でてる!関心を向けてる!と感じ、私がワクワクする瞬間です。
興味関心について深く掘り下げてみました。
自分の目で見た物によって導かれていたり、
頭の中でイメージする物から、なんで?どうして?と疑問を抱く姿、言葉や概念の数によって意味を確かめようとする姿。が見られます。
これらの姿から見えたもの。
それは子ども自身が持っている知識と照らし合わせながら周囲を見ようする。
また、自分の世界を広げていく瞬間だという事も分かりました。
世界を広げていく、経験を重ねていく事で子ども達の内面的世界の広がりが見えてきたエピソードがあるのでご紹介したいと思います。
公園で遊んでいた時。
「あ!ありさん!」と嬉しそうに見つけた事を報告してくれる子ども達。その表情と共に体が勝手に動くかのようにアリを見つけては踏んで見つけては踏んでを繰り返していました。
一人の男の子が潰れたアリを見て「かわいそうだよ」と言っている姿を見て、思いが伝わっていったかのように何人かの子ども達が「ありさん潰れちゃった…」としゅんとしながら言っていました。これは、2歳でありながらも、子どもながらに生き物の死を感じとっているのだと思う場面でした。
私自身も幼少期の時、沢山のアリさんを犠牲にしてきた記憶があります。
今となっては我が子がアリを踏んで笑っている姿をみると何て残酷なんだろうか。と感じますが、その反面この経験も自然に触れるという事に含まれて、自然界を理解していく事に繋がっていくのだという風に思います。
遠足で公園に行った時、子ども達がミミズを見つけました。
このミミズは、今回の研究を進めるにあたってメインとなるミミズとなります。
ミミズを園に持ち帰り、子ども達に名前を付けてもらいました。
まず私がミミズをみんなに見せながら「これ、ミミズっていう生き物なんだけど、名前つけてみない?なにがいいと思う?」と問いかけてみました。
そうすると、
「アンパンマン!ぷーさん!バイキンマン!」と自分の知っているイメージを発信して自由な発言タイムが始まりました。
1人の男の子が
「うーん。ミミズのミーはどうかな?」
と発言しました。
この発言を聞いていた周りの子ども達に変化が現れ始めました。
「へび!にょろにょろ!」
自由な発見タイムから、実際のミミズを見て見た目や動きから連想して名前を考え始めました!
もう1人、静かに「じゃあミミズのズーがいい」と言う子がいました。
私が何気なく「ズーさんかぁ!そうかぁなるほどー!」と反応すると、私がズーの事をズーさんと言った事から、音を拾って、
「ぞうさん!」と意見が出てきました!
つまり、初めは自由な発言だったものが実物から連想する発言になり、最後には言葉の音から連想して名前を考えている事という事に気がつき子ども達の熱気がヒートアップするとともに私自身一緒に楽しい時間を過ごしました。
この名前を想像する出来事があってから面白かったエピソードがあるのでご紹介します。
公園に向かっている途中、1羽の鳥を見つけて「鳥だ!」と反応する子ども達を見て、保育士から「あの鳥に名前付けてみようよ」と提案をしました。すると、「おばあちゃん、ぴっぴー、あきこさん!」と名前が挙がっていて、まさかまさかの「あきこさん」に大笑いな私達。それから保育士も一緒に参加して名前を想像しながら歩いて楽しかったです。この名前を想像する遊び、まさかの名前が出てくる事があって面白いので是非みなさんも保育の中でやってみて下さい!
この名前を想像するという姿には
・自由な発想の芽生え
・物事の発信
・表現する喜びの拡大に繋がる事
が分かりました。
ミミズが部屋に来てから、興味津々な子もいればミミズに抵抗感を持つ子もいます。
怖い、嫌い、気持ちわるい、その子なりの理由を持って、感情を抱いています。
自然に親しみを持つきっかけ作りとして部屋に図鑑を置いてみたり、写真絵本を置いてみて実際に手で触れなくても、目で見て、まずは知る環境を用意しました。
こちら側からミミズを触るように促したり
関わるように促す事はありません。
ただいつでも、子どもが触りたい!見てみたい!と思った時にはok!って構えられるようにwelcome姿勢は続けました。
ミミズを触るも触らないも子ども自身が決めること。子どものタイミング次第だと考えています。
それは、こわいから触りたくない!という気持ちや行動も子どもの主体的な姿だと捉えているからです。
まず、いつでもミミズについて知る事ができるようにミミズの本を子ども達が自由に読める場所に用意して観察を続けました。
ある日、ミミズが入ったケースを園庭で出して、じっと見つめたり、ちょんちょんって触っていると環帯を見つけて「ねえ、これってさ、ばんそうこう?」と言ってばんそうこうを貼っているように見えた子がいて不思議そうに見ていたり
公園で見つけたミミズを見て「ズーさんよりちっちゃい!」って言って、園にいるミミズと大きさの違いに気づく子もいました!
ミミズの本を見ながら実物のミミズを見比べていると子どもたちは様々な事に気づき始めていました。
公園に行くと、まずミミズのうんち探しをしていたり、毛どこ?光るかな?と本に載っていた事と同じなのかどうか、疑問を持つ姿には、とても興味深いものを感じました。
また、ミミズを飼うにあたって必要な環境を子ども達が用意するようにもなっていきました。
例えば、土を湿らせるために水を入れてあけだり、食糧となる落ち葉を入れるなど熱心に
お世話をする様子も見られました。
観察をする子ども達、様々な気づきがありました。へびのようににょろにょろと前にすすむのではなく、伸び縮みして動き前に進む事も体で真似している子がいたり、ミミズが生きるための環境作りを用意する姿。
これらの姿によって生き物に対する興味の深まり、そして知的な事柄が広がるという事が分かりました。
園庭で、「ズーさんと一緒にあそぶ!」「足のトンネル作ってズーさんが通るの待ってる!」とズーさんと遊ぼうとする事がありました。この時は、ズーさんが足のトンネルを通るという奇跡は起きませんでしたが、T君は足のトンネルを通ると信じて足を開き続けてズーさんを待っていました。
この時T君は、結構長く待ち続けていました。
私は、ミミズと一緒に遊びを共にするという発想がなかったので、この遊びの姿にはビックリして、面白いなぁと感じる場面でした。
最初は触れる事に怖がっている子もいつのまにかどんどん触れるようになっていたり、
公園に行くとまずミミズのうんちを探すというシュールな姿も見られるようになっいきました。
これらの姿から、生き物を身近な存在に感じられるようになったと感じました。
ここまで、興味関心、観察、発展という3つの姿をご紹介してきました。
今回の研究を通して、これまでの3つの姿と合わせて結果と考察が見えました。
自然に触れる子ども達には、どのような育ちが見られたのか?
生き物を知って感覚的思考の芽生えがあったり、生き物が身近な存在として受け入れるようになっていました。
また、観察や飼育など全てを子ども達に任せるのではなくって、保育士自身も子どもの興味に共感して意図的に展開を持っていく事で更に関心が広がっていく事が分かりました!
自然を通して発見する出来事には、子ども達に感動や喜びを引き起こすものが沢山詰まっているという事が研究によって実感する事が出来ました。
最後に、課題と展望について説明していきます。
自然に対して興味がない子や自然物が苦手な子に対してのアプローチや配慮についてです。
手に土や泥がつく事に苦手意識を持つ子もいます。
クラスでもk君が自然物に抵抗感があって、ミミズに対してもあまり興味を示さずにいました。
部屋に置いてある図鑑やミミズの本を少しの時間見る姿も見られましたが、実際のミミズに触りに来るという事はありませんでした。
でも、一回だけ、園庭でズーさんの観察をしている時に近くに来る時があって、さりげなくスコップを置いてみたらk君がスコップで土を入れる事がありました。
苦手だから近づきたくない。参加したくない。
そんな気持ちもありのままの心情であって、
その心の思いは大切にしながらも、自然物に親しみを持つというきっかけ作りをいろんなシーンで用意していけるとどんな姿が見られるのかなぁと、さらなる興味に繋がりました。