国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 治療薬開発研究部 室長
「ファージと細菌の攻防から見えてくる絶え間ない進化のサイクル」
ファージは細菌に感染するウイルスです。細菌はファージからの感染を防ぐために、制限修飾系やCRISPR-Casシステムなど、さまざまな防御機構を進化させてきました。一方でファージも、それらの防御を回避するための戦略を巧みに発達させてきました。両者はまさに「絶え間ない挑戦と進化」を繰り広げています。本講演では、この分子レベルでの攻防を、最新の研究成果とともに「どのように発見に至ったか」というプロセスに焦点を当てながら紹介します。
今回ご紹介する成果は、もともと別の目的で行っていた実験中に、「あれ、何かおかしい」という小さな違和感から始まりました。研究の醍醐味は、こうした予想外の現象との出会いにあると思います。こうした「例外」や「違和感」は、実は頻繁に起きているのかもしれません。しかし多くの場合、私たちはそれに気づかずに見過ごしたり、気づいても深く掘り下げずに終えてしまっているのではないでしょうか。日々の基礎実験を丁寧に積み重ねていれば、ちょっとした例外が「異常」として浮かび上がり、やがて「発見」へとつながっていくものだと私は思っています。若い頃に取り組んだ基礎の蓄積は、きっと将来、思いがけない形であなたの力になるはずです。
北島 正章 先生