第 19回九州遺伝子診断研究会に寄せて
九州遺伝子診断研究会会長
末岡 榮三朗
佐賀大学医学部 臨床検査医学講座 教授
佐賀大学医学部附属病院 検査部・輸血部 部長
私たち人類は、科学の進歩が災害や戦いにより加速することを経験してきました。新型コロナパンデミックにおいても、ワクチンに代表される感染予防医学、遺伝子解析技術、遠隔連携技術など緊急的ニーズに対応して、迅速な社会実装が行われてきました。その結果、感染症拡大予防や治療手段の進歩など、様々な恩恵を得ている一方で、実装された技術や体制整備の精度に関する対策が十分でない技術や資材も存在します。
本研究会は九州地区の臨床検査医学の先達たちが、将来を見据えた先見的な構想からスタートし活動を続けてまいりました。今回のパンデミックにおいても着実に検査体制を整備することができたのは、本研究会のネットワークの支えが大きいと感じています。今後は、ここ5年間の振り返りと、今後の遺伝子検査体制整備に向けての議論を進める時期と考えます。
今年度の本研究会は、国際医療福祉大学の佐藤謙一教授に大会長をお願いし、すでに素晴らしい企画が進行中です。がん遺伝子パネル検査が保険診療として実施されるようになって約5年が経過し、昨年には「全ゲノム解析等実行計画2022」が制定され、今後、ゲノム医療はがんや感染症にとどまらず、様々な分野に展開されていくと思われます。そのような流れの中で、本研究会も今後のゲノム医療を見据えた活動方針を議論する時期にあるとも思っています。今回ご講演いただく日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野の中山智祥教授も、かずさDNA研究所遺伝子診断グループ長の糸賀栄先生も、日本のゲノム検査学を支えてこられた先生方であり、臨床検査医学をリードされている重鎮でもあります。九州地区の臨床検査に携わるスタッフが、これらの先生方の熱い思いを受け止めて、活発な議論を展開されることを期待します。とはいえ、本会は職種や専門性を超えて気軽に集まり、参加者が遠慮なく意見交換や質疑を行える、敷居は低い集まりでもあります。今回も職種や施設の枠を越えた活発な意見交換や情報共有ができれば幸いです。