実はわたくし数年間TVアニメの制作というものをやっていました。
(SHIROBAKOとかのあれです)
そしておそらくたぶん、もう戻ることもないと思うので
少し思い出話をしたいと思います。
【More・・・】
とある演出さんの話をします。
僕が入社した会社は当初マンションの一室にあるスタジオでした。
そこは僕が入って一週間もしないで事務所的な所に引っ越してしまうのですが
TVで見てるアニメがこんなマンションやアパートの一室から作られるのかと
カルチャーショックを受けました。
(小さいアニメ関係の会社はこういう物件は多いです)
その方は勉強部屋くらいの部屋の作画机で仕事をしていました。
「関田 修」さん。
僕が生まれて初めて出会ったアニメ演出さんでした。
「『クロスロード』(原作:あだち充)の監督だよ」
「ああ、あれ観てましたよ」
と先輩から紹介されました。
正直、このとき僕は直接知るまではあまり存じてなかったです。
ぐぐっても『いちご100%』の監督という情報ばかりヒューチャーされてしまうのですが
この方はザンボット3より富野アニメで演出を手掛けたベテラン演出さんでした。
何といっても初代「機動戦士ガンダム」の演出でした!
担当話数は
第19話 ランバ・ラル特攻! [ペンネーム行田進 名義]
第21話 激闘は憎しみ深く [ペンネーム行田進 名義]
第24話 迫撃! トリプル・ドム
第28話 大西洋、血に染めて
第32話 強行突破作戦 [表記ミスで関田進になってる](ザクレロ登場回!劇場版では一番好きな戦闘シーン!)
第36話 恐怖! 機動ビグ・ザム
第40話 エルメスのララァ
第43話 脱出 (最終回)
の計8話担当。
上司「マチルダさんを殺した人だよ」
関田さん「あれは(冨野)監督のコンテがそうなってたんだよ!」
と話してたのを覚えています。
また劇場版2作、
「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」
「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」
フロアーディレクター
でもあります。
フロアーディレクターってのはアニメではあまり聞かない役職で
何ぞや?と思うのですが、
つまりは冨野監督を総監督とすると監督!
(1作目では監督表記ですし)
TVアニメ表記で言い換えると
総監督:冨野 演出:関田
ということになります。
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では演出って何をする人かを少し説明します。
コンテ(設計図)を基に映像を組み立てるのが演出です。
テロップではよく「絵コンテ」「演出」と表記されていますが、
これはつまり
絵コンテ:この話数の設計図を作った人
演出;この話数を作った人
という意味になります。
(元来コンテと演出はセットで一人がやるものでしたが、
実質分業になってしまって久しい様です。)
例えば絵コンテで
①→②→③
と動く指示になっていた時に
①から②、②から③までの動きの間や見せ方などを
調整してるのが演出さんです。
あとは
レイアウトとか、声や音のタイミングとか、
カメラワークとか、一話内でのバランス調整とか、
見てるところは多岐に渡ります。
要はその話数の映像を統括してる
1話数単位の監督が演出です。
逆にアニメ一話数単位で監督が何をしているかというと
・シナリオの決定とチェック
・コンテの最終チェック
・作画作業IN前の演出との打ち合わせ(演出同席)
・カッティング(尺決め)、アフレコ(声入れ)、ダビング(効果音やBGM入れ)時のタイミングと音のチェック(演出同席)
・ラッシュチェックの映像を見てリテイク出し(演出同席)
以上が基本的に監督がチェックしている部分です。
映像をどうするかの実務作業は基本、演出の裁量に任されるのです。
(作品や監督によってはチェックが増えたりもします)
では監督が直したいところがあった場合、
または演出が監督に確認を取りたい場合はどうするか?
同じスタジオにいた場合は直接あった時に話せばいいのですが、
外部の人の場合
またはカッティングなどの演出と同席する場面で
「ここを直してほしい」「ここの見せ方はこうしてほしいorしたい」
と直接指示を伝えたりします。
それ以外では制作を通して連絡したりします。
直接話す機会は実はそれほど多くないのです。
基本的には、
コンテに監督指示が凝縮されているという事が前提になります。
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説明が長くなってしまいましたが、
要は40年経とうというのに未だに語り草にされるエピソードを演出したということは、
けして無視できない、
関田修さんという人は凄い人なんだよ!
という事です。
関田さんのやった「ジェットストリームアタック」なんて
映像作品でのリメイク、オマージュ、パロディ何度されたことか!!
本当にWikipediaにページがないのは僕はおかしいと思うのですよ!
劇場版ガンダムも
結構任されていた部分は多かったんじゃないかと
僕は思っています。
ちなみに
劇場版ガンダムの第1作の監督は
藤原良二さんという方で、
この方も関田さんと同じくTVシリーズでもメイン演出の一人でした。
僕は運良くこの方ともお仕事させて頂きました。
と言っても出会った当初は
この方もガンダムの演出やっていたとは知らなかったのですが
たまたま関田さんと会った時に
「おう久しぶり!」
「お互い年取りましたね」
と話していたその時は
「あぁ、古い知り合いなんだなぁ」
位にしか思っていませんでした。
実はガンダム劇場版1作目と2&3作目の監督同士のプチ同窓会になっていたという!
(しかもこの人たち20代でガンダムやっていたという…)
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またある時、
アマゾンプライムで『聖戦士ダンバイン』を観ていた時
「この新宿が破壊されるという話数が面白いなー」
と思ってたら
「演出:関田修」
の文字。
「!」
これは直接さっそく聞いてみたのですが、
「覚えてないよー」
という答え、
寂しいですが仕方がないのです。
関田さんは本当に手が早い演出で
現在も現役で芸歴40年くらい(最近はヘボットとかやってました)
手がけた話数は数百にも及び
日本でトップクラスの演出話数の筈です。
演出話数が多すぎて一つ一つを記憶していないのは無理からぬ事なのです。
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またある時。
関田さんの机の各社から送られるサンプル置き場あり
そこでSDガンダムのDVDBOXを発見しました。
「え?なんで関田さんサンプル貰ってるの?何か関わってるの?」
とクレジットを調べてみたら…
演出:関田修
「!!」
SDガンダム最初のアニメ!
しかも監督表記がないから実質監督じゃないかー!!
初代ガンダムの全てを知っている演出が
初代ガンダムのパロディである『ガンダム大地に立てるか!?』を作っていたのかーーー!!
と胸が熱くなりました。
そして僕が退社時に選別としてもらったのが
こいつ↓でした。
(本当は付録のカードダスが欲しかったのですが
DVDは棚から移動されていました)
ちなみにキャラデザの佐藤元さんのことは「元ちゃん」と呼んでいました。
あと実はSDガンダムレジェンドの
大河さんとも実は交流があったりします
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といくつかエピソードがあったのですが、
本当お世話になりましたし、迷惑もかけましたが、
本当に関田さんは尊敬していました。
「大丈夫かい?早い人は3日で辞めるからね」
と関田さんから言われ
絶対そんな簡単には辞めないぞと誓ったあの日
なんとか数年やることが出来ました。
そして関田さんと仕事が出来たことが、
アニメをやってよかったと言える事の一つでした。
最近、自分も含め経歴を顧みる機会がありまして、
いろいろ調べてみると
やはりいろいろやっており、改めてその経歴に驚かされます。
ガンダムで抜粋します。
『機動戦士Ζガンダム』
第02話 旅立ち
第06話 地球圏へ
第10話 再会
第15話 カツの出撃
第20話 灼熱の脱出 [コンテ・演出]
第24話 反撃
第28話 ジュピトリス潜入
第33話 アクシズからの使者
第38話 レコアの気配
第43話 ハマーンの嘲笑
第48話 ロザミアの中で
『機動戦士ガンダムΖΖ』
第04話 熱血のマシュマー
第09話 宇宙のジュドー
第15話 幻のコロニー(後)
第20話 泣き虫セシリア(前)
第25話 ロンメルの顔
第31話 青の部隊(後)
第38話 鉄壁、ジャムル・フィン
第45話 アクシズの戦闘
『機動戦士Vガンダム』
第26話 マリアとウッソ
第36話 母よ大地にかえれ
第43話 戦場の彗星ファラ
第49話 天使の輪の上で
流石にVガンダムになると少ないな・・・と思ったら
第36話 母よ大地にかえれ
「!!!!」
当時スイミングスクールでリアルタイムで見れなかった僕が最初に見たVガンダム!
「…母さんです」
で有名な
Vガンダム最大のトラウマ回!
ちなみに「第49話 天使の輪の上で」も
裸のおねーさんが、ちゃべーして、ビームサーベルでジュッ!されちゃうトラウマ回!
なんでよりによってエグイ回ばかりやってるんですか関田さん!
正直初代ガンダム以上に衝撃でした。
う、うわああああーーーーっ!!!!
なんで、今気づくんだよおおおおおおあああああああああ!!!!
これは直接話を聞きたかった・・・orz