現在,行っている研究プロジェクトについて簡単に紹介しています。
Researchmap: a-uemichi
ORCID: 0000-0002-8436-0489
SCOPUS: 36661537900
2014年,東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻に助教として着任したとき,バイオガス燃料対応ガスタービン燃焼器で発生した燃焼振動の実験的研究に着手しました。
そのなかで,燃料組成によって変化する燃焼特性と燃焼振動の関係を明らかにするため,都市ガスに水素を混合した燃料を用いて模擬ガスタービン燃焼器で発生する燃焼振動の実験を行いました。その結果,水素混焼の場合と都市ガス専焼の場合を比較すると,燃焼振動の発振周波数に大きな変化が見られることを発見しました。このとき,水素混焼の場合の発振周波数は,音響的境界条件を燃焼器上流面を閉端とした場合には得られないものでした。
そこで,燃料組成の違いが燃焼器内部での燃焼の状態(温度分布等)を変化させ,音響的境界条件に影響を与えているものと仮説を立て,この仮説のもと,非燃焼条件での音響インピーダンス測定,3次元定常CFD解析,ナイキストの安定判別法といった種々の手法を組み合わせ,発振周波数を算出する過程を考案し,実験で得られた都市ガス専焼条件と水素混焼条件との発信周波数の違いを説明することに成功しました。
加振源である燃焼発熱現象の複雑性を認めながら,意味解釈可能なモデルを構築したいと考えています。具体的には,3D反応流CFDシミュレーションでは燃焼現象の複雑性を保つために素反応を考慮して結果を得ることになりますが,モデル化にあたっては温度のみに着目して平均化処理を行います (Reduced model)。このモデル化手法を確立させ,将来的にはガスタービン燃焼器や周辺の配管を設計するために活用することのできる,1D-CAEのような包括的な手法の構築を行いたいです。
この研究テーマは,科研費基盤C「水素混焼ガスタービン燃焼器で発生する燃焼振動の発振周波数と卓越モードの特定」の助成を受けています。
我が国では,地震や台風・集中豪雨による激甚災害が頻発しています。その被害は尊い人命や日常生活が奪われるだけでなく,経済・社会・文化的な損失にまで及びます。特に,2011年の東日本大震災以降,国土や社会機能のレジリエンス強化は喫緊な課題である。このような背景を受け、事業継続計画(Business Continuity Planning, BCP)が注目されています。なかでも,災害時に電力やガスの供給といったライフラインが途絶した場合であってもエネルギー源を確保することは,事業継続性の観点から最重要課題です。2017年3月に厚生労働省より交付された災害拠点病院のBCP策定ガイドラインでは,平常時の60%の発電容量を有する自家発電設備の保有が要件とされています。
そこで本研究では,病院への分散型電源の最適導入量の組み合わせを提案することのできる,平常時の「経済性指標」と災害時の「エネルギー供給量の期待値」を目的関数として,多目的最適化するツールを構築しました。多目的最適化には,遺伝的アルゴリズムを採用し,ケーススタディでは理想的なパレート最適解群を得ることができました。
これに続いて,最適化シミュレーション結果の妥当性を検証するため,各分散型電源機器の数理モデルから成る,電力システムシミュレータを構築しました。このシミュレータを用いれば,系統途絶時のエネルギー需給バランスを確認することができます。目下,災害拠点病院関係者に対してインタビュー調査を行い,災害医療ニーズに即した「災害時エネルギー需要」を推定する手法を構築中です。
この研究テーマは,鹿島学術振興財団の助成を得ています。
次世代モビリティにおける動力系の高効率化および高性能化を実現するため,CAEシミュレーションへの応用を念頭に置いて,ターボチャージャ(以下,ターボ)の軸受で発生する機械損失モデルの構築を行っています。
このモデルは,1次元圧縮性流体を仮定した数値計算からターボに作用する軸方向のスラスト力を求め(流体計算モデル),その結果を用いてスラストベアリング内の隙間幅を求めて,スラストベアリングおよびジャーナルベアリングで発生する摩擦損失を算出(摩擦損失計算モデル)します。
プラント等の配管設計においては非常に多くの要求を満たすことが求められます。現在,配管ルーティングは熟練技術者の経験に頼る部分が大きいですが,人の手による設計解の探索では,数多くの要求を満たす設計解を得ることができない可能性があります。このような問題を短時間で解決するため,様々な要求を全て満たす,高信頼性配管を自動でルーティングする手法の実現が求められています。
要求事項を目的関数として設定して,最適な配管レイアウトを探索する多目的最適化問題として研究を行います。これまでにLOF (Likelihood of failure) と呼ばれる配管の故障可能性を示す指標に加え,配管長さと配管同士の干渉を指標として遺伝的アルゴリズムを用いて多目的最適化を行いました。今後は最適化のアルゴリズムのなかに強化学習を取り入れることや,配管ルーティングの実務的なニーズに応えた目的関数を新たに提案することを計画しています。