東洋大学では知的財産ポリシーを定め、研究活動から生み出される知的財産を積極的に発掘、管理、発信することを通じ、産官学連携を強化、推進するという方針を打ち出しています。知的財産ポリシーでは、知的財産の範囲を次のとおり定めています。
①発明(特許権)
②考案(実用新案権)
③意匠(意匠権)
④商標
⑤回路配置の創作(回路配置利用権)
⑥植物新品種(育成者権)
⑦プログラム及びデータベース等の著作物(著作権)
⑧ノウハウ等の技術的創作のうち秘匿することが可能な財産的価値のあるもの
上記いずれもが本学が取り扱う知的財産ですが、ここでは主に特許権の対象となる発明について説明いたします。
■職務発明
「学校法人東洋大学発明等の取扱いに関する規程」において、本学に所属する教職員等は、職務に係る発明等を行った場合、これを届け出ることとなっています。大学に所属する研究者は、その職務の一環として研究を行っていますので、実施している研究に関連して発明等が創出された場合は、その発明等を届け出ていただく必要があります。産官学連携推進センターでは届け出るべき発明等に該当するかどうかについて、ご相談を承っております。アイデアの段階でもかまいませんので随時ご相談ください。職務発明と認定された場合、その発明等に係る権利は大学に帰属することとなりますが、この権利を実施許諾あるいは譲渡などすることにより、大学に収益が生じた場合、発明者に対して報奨を行います。
■発明者
本学規程では職務発明等の対象者は以下のとおり定められています。
①本法人の専任教職員
②本法人と雇用契約又は委嘱契約を締結している者
③本法人の設置する大学の学部又は大学院の学生であって、かつ、本法人との間で発明等の取扱いについて、
この規程の適用を受けることに同意している者
④前3号のほか、本法人との間で発明等の取扱いについて、この規程の適用を受けることに同意している者
厳密には雇用関係のない学生が行った発明は、特許法で定める職務発明には該当しませんが、研究室において教員と共同で研究を進めていく中で、学生が当該発明に寄与する場合もあります。その場合、学生の同意に基づき本学の職務発明等として取り扱えるようにしています。誰が発明者に該当するかの判断基準は、発明の創作にどのように寄与したかによって決まります。単なる補助者、助言者、資金の提供者は発明者には該当しませんので、教員の指示に従いただ実験データを取得しただけの学生であれば、発明者には該当しません。
■発明の要件
発明は特許法上、以下のとおり定義されています。
「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法第2条第1項)
《自然法則を利用》
● NG 経済法則など自然法則以外の法則、ゲームのルール、数学上の公式
● NG 自然法則に反するもの(永久機関など)
● NG 自然法則自体(エネルギー保存の法則など)
《技術的思想》
● NG フォークボールの投げ方など
● NG 情報の単なる提示(化学物質の使用マニュアル、プログラムリストなど)
《創作》
● NG 天然物(鉱石等)や自然現象等の単なる発見
● OK 天然物から人為的に単離した微生物・化学物質(イベルメクチンなど)
■発明が特許を受けるための要件
発明が特許を受けるためには、発明の定義を満たすことに加え、以下の要件が求められます。
《新規性》
出願まで公然と知られていないこと
● NG 授業で学生に話した
● NG 卒論発表会で公表した(参加者に守秘義務を課していない場合)
● NG 論文で発表した(要旨集に発明の技術的詳細が掲載された場合もNG)
● NG インターネットで公開した
● OK 論文投稿をしたが、まだ発表されていない
● OK 卒論発表会・学会等で公表したが、参加者に守秘義務を課している
《進歩性》
その発明の属する技術分野の通常の知識を有するものが容易に発明不可
● NG 公知の材料から最適な材料を選択
● NG 数値範囲の最適化
● NG 複数の技術の単なる寄せ集め(例:鉛筆の端に消しゴムをつけた)
● OK 上記の場合であっても顕著な効果がある場合は進歩性が肯定される
◎発明相談
研究を進めていく中で発明等に該当するアイディアが生まれた場合は、産官学連携推進センターにご相談ください。権利化できるか判断できない場合など、どんなことでもかまいません。相談内容については、極秘扱いとしいたしますので外部に漏洩することはありません。
■発明の届出
発明の届出は、発明者による発明届出書及び発明内容説明書の提出に基づき行われます。届け出られた発明は、知的財産委員会において、職務発明等に該当するかどうか、特許を受けるための要件を満たすか、発明者の発明の寄与率はそれぞれいくらか等について審議いたします。審議の際には、発明を届け出た研究者にご出席いただき、詳細をご説明いただきます。審議の結果、職務発明と認定され大学に承継された発明は、特許事務所を活用しながら大学が出願手続きを進めます。出願した発明は3年以内に特許庁に審査請求を行います。特許庁から拒絶理由が通知された場合には、特許事務所と調整をしつつ、発明者及び産官学連携推進センターで協力してこれに対応します。拒絶理由が解消され、特許を受けるための要件を満たしていると判断された発明だけが特許として登録されます。知的財産委員会での審議は、出願前(職務発明としての適否)のほか、出願から3年の審査請求期限前(審査請求の要否)、特許登録後4年目、7年目、10年目(権利維持の要否)のタイミングで行なわれます。
◎発明が含まれる研究内容の公表
発明が含まれる研究内容を公表してしまうと、その発明は「新規性」がないため特許を受けられなくなってしまいますが、以下の条件を満たせば、例外的に救済措置が受けられます。ただし、外国での権利化が困難になるなど、特許の効果が制限されるという問題点もありますので、本学では公表よりも前に出願することを原則としています。
◎新規性喪失の例外(特許法第30条)
条件
①発明者本人が公表した場合、または発明者の意に反して公表された場合
②公表されてから1年以内に出願
③出願後30日以内に、条件1の公表の経緯を記載した証明書を提出
問題点
①例外の適用範囲は日本限定。外国出願ではほとんどの国で認められない
②公表後にその発明を第三者に出願されたら対抗できない
卒論発表会での発表などで新規性を失わないようにする方法もあります。発明が含まれると思われる研究成果を発表する予定がある場合は、新規性を失わないために必要な手続きをご案内いたしますので、お早めに産官学連携推進センターまでご相談ください。
■発明の創出から出願後の手続き
①発明の創出~委員会審議(1~2ヶ月)
②委員会審議~出願(1~2ヶ月)
③出願~審査請求(36ヶ月)
④審査請求~特許査定(24ヶ月)
⑤特許査定~権利維持(出願~20年)