小野 道子 (福祉社会デザイン学部 社会福祉学科) 准教授
① リカレント教育の背景
運営代表者および運営協力者は、これまで災害時の子ども支援、特に災害時の子どもの居場所づくりに関する研究や実践に関わってきている。特に昨年度(2024年度)は、運営代表者および運営協力者が研究員・客員研究員等として関わる東洋大学福祉社会開発研究センターこどもグループ災害支援チームが、こども家庭庁の令和6年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業の助成を受け、「災害時におけるこどもの居場所づくり調査研究」事業を実施している。同調査研究事業では、災害時の子どもの居場所の実態調査を実施し、調査結果を基に、「災害時のこどもの居場所づくり」手引きを作成したが、こども家庭庁からも高い事後評価を得ることができた。特に、手引きについては東洋大学が作成したものがこども家庭庁による「災害時のこどもの居場所づくり」手引きとして、同庁HPに掲載され、こども家庭庁から各自治体へも周知されている。近年、日本国内において、激甚災害に指定され災害救助法の適用を受ける大規模災害は多く、今後、南海トラフ沖地震や首都直下型地震などこれまで災害の影響をあまり受けてこなかった地域でも災害に備える必要がある。特に、災害時の子どもの居場所づくりについては、自治体職員やNPO職員などに限らず、地域防災に関わる自治会など一般市民の方々も研修への関心が高く、リカレント教育として実施する意義のあるテーマである。
② リカレント教育の目的
今回申請する「災害時の子ども支援および子どもの居場所づくり研修プログラム」についてのリカレント教育は、東洋大学同窓生を含め、普段から子どもに関わる仕事に関わっている方々や今後関わりたいと考えている方々、災害支援や地域防災に関わっていたり、関心のある方々に対して、災害時の子ども支援および子どもの居場所づくりの必要性と留意点について学んでもらうことを目的としている。災害時の子どもの居場所づくりについては、NPO法人災害時こどものこころと居場所サポートやCFS(災害時のこどもの居場所)協議会などにより研修が行われているが、実際に居場所づくりに関わる方々向けの実践的な研修が主であり、今回こども家庭庁から発行された手引きに基づく研修は他では実施されていない。研修の対象地域としても、これまでNPO等が実施している研修は、すでに大規模災害が発生し、災害時の子どもの居場所づくりの必要性を認識している一部地域(予算措置できる自治体や団体があるところ)に限られており、広範囲で行われているものではない。今回の助成金で、地域の方々のニーズに沿った研修プログラムを構築し、南海トラフや首都直下地震の被害が想定される地域などにも研修を届けていきたい 。
③リカレント教育を進めることで予想される結果と成果
本プロジェクトを実施することで、東洋大学福祉社会開発研究センターが作成に関わった、こども家庭庁の「災害時のこどもの居場所づくり」手引きについて、広く周知することができる。特に、東洋大学同窓会や卒業生のネットワークを使って、都道府県社会福祉士会などの専門職団体や地域に根ざした活動をされている方々の協力得ることで、首都圏だけでなく、地方創生の観点から、地域に根ざした災害時の子ども支援や子どもの居場所づくりについての研修を実施することができる。今回の助成金を使用することで、NPOなどがすでに行っている研修では交通費や宿泊費の支出が難しい遠隔地での研修を実施することができ、オンラインでの研修では実施が難しいグループワークや地域の子ども支援団体同士の対話によるネットワークづくりにも寄与することができる。
なお、リカレント教育の対象地域であるが、日本全国を対象とし、要望のある地域に出向く形とするが、東北地方については東北福祉大学清水准教授、熊本県については森田名誉教授、長野県については小野が既存の災害こども支援に関するネットワーク等とのつながりがあるため、これらの地域ではできるだけ現地のネットワークの独自予算で研修を実施してもらうように働きかけ(研修講師の派遣料や交通費なども原則先方負担、必要な場合に本助成金から補助を行う)、運営代表者や運営協力者と過去のつながりがあまり強くなく、他団体もあまり研修を実施していない、南海トラフ地震による想定被害の大きい地域に優先的に本助成金を使用して研修を実施していく予定である 。
2025年度
活動中。