優先活動からみた、30代から50代への変化は・・・
本調査では毎回、「優先する活動」の第一位から第三位までを、選択肢から選ぶ形式で回答してもらっています。「職業・仕事」「夫もしくは妻としての活動」「親としての活動」「子どもとしての活動」「友人・恋人との交際」「仕事関係者との職場外での交際」「ボランティア活動・社会活動」「趣味・娯楽」「知識・技術の習得」「健康・美容のための活動」「その他」の11の選択肢から、「現在、優先している活動」の第一位と第二位、第三位を回答いただきました。昨年ご回答いただいた方に限定し、みなさまが30歳直前だった1998年時点のご回答と、30歳代を迎えた2002年時点のご回答、そして今回(2022年)のご回答を並べてみた結果をご紹介します。
男性の優先活動は・・・
いずれの時点でも「もっとも優先する活動」として挙げられたのは仕事に集中していました。6~7割の人が第一位に仕事を挙げていました。30歳前後でも50歳を超えても、仕事中心が明らかです。次いで第二位に挙げられたのは、若い時期には「友人・恋人との交際」も挙げられていましたが、その後は「夫もしくは妻としての活動」と「親としての活動」がそれぞれ2~3割でした。第三位には、「趣味・娯楽」が挙げられることが3割と多いですが、50歳代になると、多様化しています。
いつの時点でも、第1に仕事、次に家族、その次に趣味が優先されているようです。
女性の優先活動は・・・
いずれの時点でも「もっとも優先する活動」として第一位に挙げられたのは、「仕事」と「親としての活動」でした。30代前半には4割の人が仕事を、同じく4割の人が「親としての活動」を挙げ、あわせて8割の人が仕事と母親としての活動を選んでいました。50歳を超えても、「親としての活動」を選んだ人の割合が3割にとどまった以外、変化はありません。まだ若かった30歳直前の時点では、まだ子どもがいなかった人が多いことから、「親としての活動」は2割にとどまっていますが、女性の場合、仕事と母親役割の二本立てという優先活動の構造は一貫しています。
30歳前後では「親としての活動」が第一位になっているために、第二位には「妻としての活動」がクローズアップされ、第三位に「趣味・娯楽」が挙げられました。
男性は仕事中心、女性は仕事と親役割優先でしたが、30歳前後でそれに次いでいたのが夫婦としての活動(「夫ないしは妻としての活動」)でした。しかしながら、50歳代になると、その夫婦としての活動は、第三位にあげられるものに後退しています。
一昔前なら、50歳代だと子どもはすでに成人している頃でしょう。本調査では、子どもがいない人が16%、そして、子どもの年齢は多岐にわたり、まだ学齢期前の子どもがいる人も複数いらっしゃいます。仕事と親という中年期の課題が継続しており、高年期への移行はまだまだなようすがうかがわれます。
この25年間の心理的変化は・・・
1998年と2002年、そして今回(2022年)の結果からとらえられた、この25年間の心理的な側面での変化をご紹介します。「人生は生きるに値する」「新しいことに関心がある」など30項目に「非常にそう思う」から「そうは思わない」までの5点尺度で回答いただいています。これを、心理的福利状態が高い方を5点、低い方を1点となる1~5点に統一しました。
2023年6月末時点でご回答いただいている197名の方に限定し、20歳代の1998年、30歳になった2002年、50歳を超えた2022年の3時点での平均値をみたところ、ほとんどの項目で安定していました。
自己の受容は安定
とくに「信念・信条と呼べるものをもっている」「自分という人間を気に入っている」「自分は順調な人生を歩んでいる」「自分は有能な人間である」の4項目は、3時点を通じて平均値に大きな差異はみられませんでした。自分自身を受け入れる心理的側面はきわめて安定している様子が読み取れます。
将来へのチャレンジ意欲は鈍化
これに対し、この25年間で低くなっているのが、「自分の能力をもっと伸ばしたい」「自分にはまだ人間として成長する可能性がある」「実現したい夢がある」「その気にさえなればチャンスはある」「将来のことを考えるのが楽しい」の5項目でした。これらの項目は、20歳代から30歳代になったときに大きく下落し、その後もさらに低くなっています。年齢を経るにつれ、将来にむけてチャレンジする意欲が鈍化していくのでしょう。
つながる心理は30歳代以降に低下
30歳前後には安定していたけれど、30歳代以降に低下していたのが「信頼できる友人がいる」と「家族と気持ちが通じ合っている」でした。中年期以降、人とのつながりに関する充足感が満たされなくなる傾向にあるようです。これが、実際の友人との交流あるいは家族生活の負担などと関連するのかどうか、これから分析を深めていきます。
自律性は年をとって上昇
逆に50歳をこえて上昇していたのは3項目でした。「他人の目を気にしないほうである」は30歳代以降に顕著に増え、「周囲の意見に左右されることは少ない」もじわりと増えています。また、「いま自分がおかれている状況は変えようと思えば変えることができる」は、30歳代でいったん下がったものの、その後に上昇しています。自分に自信を持ち、自律性が高まっていることがわかります。