イネの収量や玄米品質を制御する遺伝子が複数単離されています。このうち、遺伝子の欠損で農業上有用な形質をもたらす遺伝子に着目し、これらの遺伝子がコードするタンパク質の特異的阻害剤を用いることで、致死性や冗長性を回避した農業形質の化学的制御を目指しています。イネ玄米の粒重を制御するTGW6や玄米のフィチン酸含量を制御するINO1に対する阻害剤候補化合物を選抜しています。
Ishimaru et al. Nature Genetics 45(6), 707-711. (2013)
Perera et al. Scientific Reports 9, 14866 (2019)
Akabane et al. Protein Expression and Purification 188, 105975 (2021)
Akabane et al. Scientific Reports 14, 6778 (2024)
穀物に含まれるフィチン酸はリンの貯蔵形態であり、フィチン酸は発芽時にフィターゼによって分解され、遊離したリン酸は発芽以降の生育に用いられます。一方、穀物中のフィチン酸は亜鉛や鉄などのミネラルと結合し、ヒトのミネラル吸収を阻害します。そのため、穀物からのミネラル吸収効率を改善するためには、フィチン酸やフィターゼの蓄積機構を明らかにする必要があります。研究室では、登熟中のイネのフィチン酸合成にMyo-inositol 3-phosphate synthase 1 (INO1) が鍵となることを明らかにしました。また、フィターゼも登熟中に合成され蓄積されています。両者のバランスや制御機構について研究を行っています。
Perera et al. Rice 11, 1 (2018)
Perera et al. Scientific Reports 9, 14866 (2019)
Perera et al. Journal of Cereal Science 85, 206-213 (2019)
Fukushima et al. Foods, 10,23 (2021)
Fukushima et al. Plants9(2), 146 (2020)
植物は周囲の環境の変化に柔軟に対応して生きています。中でも、陸上でも水中でも生育することができる水陸両生植物は、劇的な環境変化にダイナミックに順応しています。研究室では、アクアリウム入門種として知られるHygrophila difformisやH. polyspermaを用いて、これらがどのような水中順応をみせるのか、どのように水中で光合成するのか、について研究を行っています。
Horiguchi et al. AoB PLANTS 11, plz009 (2019)
Horiguchi et al. Frontiers in Plant Science 12:675507 (2021)
アクアリウムからはじまる光合成研究 アクアライフ 45(9)597、26-27. (2023)
Horiguchi et al. Annals of Botany 133(2):287-304 (2024)
ナガエツルノゲイトウは、再生力および成長が旺盛なことから駆除が困難であり、特定外来生物に指定されています。本種は、河川などの水中や畦畔などの陸上で生育し、茎の断片から個体を再生することで水域を通じて急速に分布を拡大し、河川の船舶往来や農業等への被害が拡大しています。本種は特定外来生物であるため飼養等は禁止されています。研究室では、関東地方環境事務所から飼養許可を得て、本種の旺盛な再生と成長の源泉となる生理機能を明らかにする研究を開始しました。