乾燥地作物科学ユニットのホームページへようこそ
鳥取大学乾燥地研究センターは乾燥地科学拠点です。
乾燥地研究センターに所属する、辻本壽(分子育種学)と石井孝佳(植物細胞遺伝学)は作物を改良し、より良い未来を創るために、乾燥地作物科学ユニットを作りました。
当研究室は、遺伝子工学と染色体工学の技術により乾燥などの様々なストレスに強い作物を開発しています。
学内・学外を問わず、様々な分野からの学生を募集しています!特に研究者になりたい人、外国で働きたい人を募集します。
入試情報は修士は、持続性社会創成科学研究科、博士は連合農学研究科のHPを見てください。国際的な雰囲気の中で、DNA解析からフィールドワークまで幅広く学べます。興味のある方は、ぜひ見学にお越しください。
辻本名誉教授「マイ・リサーチ・ヒストリー」
共同研究紹介動画 「イネコムギ」
辻本名誉教授「小麦の品種改良・世界貢献」
研究内容紹介 「細胞遺伝学・作物・改良」
石井准教授「カニジル」
▼2025年8月
▼2025年8月
世界で初めてトウモロコシとコムギの雑種を創りました。詳しくはプレスリリース:世界初!コムギとトウモロコシの雑種植物の創生
▼2025年8月
ナイジェリアからの留学生であるNgoziさん、Graceさんの声がSTUDY in JAPANに掲載されました。留学生の声:OFEM NGOZI PAULINUSさん、Study in Japan 基本ガイド11ページ:ARIKPO GRACE EMMANUELさん。これから我々の研究グループを目指す優秀な学生さん達へ参考になると思います。
▼2025年8月
大学見本市2025 イノベーション・ジャパンに我々の研究室で研究・特許を取得したTFMSAによる花粉制御技術にかんする展示を「花粉を簡便に不活化する技術が開く新たな研究・農業領域」というタイトルで行います。JSTのサイトから発表内容の動画が公開されています。
▼2025年7月
乾燥地研究センターの一般公開が行われ、我々の実験室も一般の方々に公開し、その様子が日本海テレビのニュースで紹介されました。
▼2025年7月
クラウドファンディングを開始しました。高温・乾燥耐性小麦の緊急里帰り! 寄附募集期間:令和7年7月14日 9:00〜9月11日 23:00
本プロジェクトは、鳥取大学に一部保管されていた高温や乾燥に強い小麦のタネを、内戦によってタネが失われたスーダンに送り返し、スーダン国内での普及の再開を支援するというプロジェクトです。本プロジェクトは、アフリカの食糧問題への貢献にとどまらず、将来的には日本における小麦の安定的な生産にも寄与するものです。
▼2025年6月
2025年8月21日、22日金曜日に東京ビックサイト西展示棟西4ホールで開催される 大学見本市2025 イノベーション・ジャパンに我々の研究室で研究・特許を取得したTFMSAによる花粉制御技術にかんする展示を「花粉を簡便に不活化する技術が開く新たな研究・農業領域」というタイトルで行います。
▼2025年5月
我々の研究の一部が「ガイヤの夜明け(テレビ東京)」で取り上げられます。
2025年5月9日(金)22:00~22:54(テレビ東京系)
2025年5月25日(日)22:00~22:54(BSテレ東)
▼2025年3月
寺田晃盛さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程を修了しました。
関口結佳さん(博士学生)と石井孝佳准教授の特許に関する説明会をJSTの新技術説明会(オンライン)で発表しました。詳しくはこちら
▼2025年2月
関口結佳さん(博士学生)と石井孝佳准教授の発明が特許を取得しました。詳しくはこちら
▼2024年12月
第19回ムギ類研究会にて、杉浦李果の研究発表がポスター優秀発表賞に選ばれました。
第16回中国地域育種談話会 において関口結佳さん(博士1年)、杉浦李果さん(修士1年)、の研究発表が優秀発表賞に選ばれました。
UJA留学のすゝめ2024(第47回日本分子生物学会年会内フォーラム 11月27日(水) 19:15~20:30)にて、石井准教授が「石橋を叩いても渡らない人生は嫌だ。まずはやってみる、それから考える」の講演を行いました。
▼2024年8月
鳥取大学とハルツーム大学がエジプトのカイロで対面交流を行うとともに、日本とスーダンでオンラインイベントを開催しました。杉浦李果さんがカイロで登壇し、研究内容や鳥取について紹介しました。詳しくはこちら
▼2024年7月
文部科学省講堂において「トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム」の第16期派遣留学生壮行会が開催され、寺⽥晃盛さんが、イノベーターコース代表として登壇し、挨拶を行いました。詳しくはこちら
▼2024年4月
杉浦 李果さん、村重 佑樹さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
▼2024年3月
令和6年3月で退職する辻本教授の最終講義が3月23日に行われました。NHKのニュースでも紹介されました。
糀 妙子さん、モニール イドレスさんが連合農学研究科・博士課程を修了しました。おめでとうございます!
▼2024年2月
辻本壽教授が日本農学賞/読売農学賞を受賞しました。おめでとうございます!! 詳しくはこちら
▼2023年12月
国際乾燥地科学専攻の中間発表会にて、寺田晃盛さんが最優秀発表賞に選ばれました。詳しくはこちら
植物細胞遺伝学分野で研究をしている杉浦李果さんが、第18回ムギ類研究会で優秀発表賞を受賞しました。詳しくはこちら
▼2023年10月
関口 結佳さん、ンゴジ オフェムさんが連合農学研究科・博士課程に、キングスレイさんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
10月7日の日本農学会にて、石井孝佳准教授が「人類 100 億人時代到来~作物の細胞を改良して切り拓く未来~」というテーマで発表を行いました。詳しくはこちら
▼2023年9月
杉浦 李果さんの研究発表が第15回中国地区育種談話会にて、優秀発表賞に選ばれました。おめでとうございます!詳しくはこちら
関口 結佳さん、ンゴジ オフェムさんが持続性社会創生科学研究科・修士課程を修了しました。おめでとうございます!
▼2023年7月
研究室で研究するスーダン人が母国へ対する思いが、NHKのニュースになりました 。
▼2023年4月
辻本教授がNHK国際ニュースナビに取材協力しました。→4/28記事
▼NEWS
SATREPSスーダンを紹介したビデオをアラビア語(日本語字幕スーパー付き)で作りました 。You Tubeチャンネル SATREPS Wheat Project Sudan-Japan-مشروع تمام للقمحでご覧いただけます。
▼NEWS
乾燥ストレスに強い作物の品種改良に取り組んでいる現在の研究への思いを話しています。『小麦の品種改良で、世界の食糧危機を防ぐ〜辻本 壽』
▼2023年4月
高 燕さんが連合農学研究科・博士課程に、寺田 晃盛さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
▼2023年3月
高 燕さん、樽谷 英賢さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程を修了しました。おめでとうございます!
静岡大学で行われた第143回春季育種学会大会にて、石井孝佳准教授らの講演題目がプレスリリース題目として選定されました。詳細はこちら
乾燥地研究センターと文科省の会合が開かれ、辻本壽教授、石井孝佳准教授らが最近の動向と研究成果を発表しました。詳細はこちら
▼2023年2月
辻本壽教授が、中海テレビ放送の番組「Road to 2030~SDGsで考える ふるさとのミライ~」に出演しました。「今こそイノベーション」をテーマに、乾燥地研究センターを案内しつつ、乾燥地での農業問題について話しました。
辻本壽教授がNHKの番組「視点・論点」に出演し「次の『緑の革命』を目指して」というテーマで、食糧問題について論じました。
▼2022年12月
樽谷英賢さんが第14回中国地区育種談話会で優秀発表賞を受賞しました。おめでとうございます!
▼2022年10月
第142回講演会日本育種学会優秀発表賞に高燕さんの発表が選ばれました。おめでとうございます!
▼2022年9月
第2回国際コムギ会議において、モハメド・バラさんが優秀ポスター賞を受賞しました。
モハメド・バラさんが連合農学研究科・博士課程を修了しました。おめでとうございます!
▼2022年6月
石井孝佳講師がJST創発研究の融合の場(一般公開)で発表します。詳細はこちら
▼2022年4月
石井孝佳講師が2021年度の『日本育種学会奨励賞』を受賞しました。詳細はこちら
辻本壽教授が乾燥地研究センター長に就任しました
アミール イブラヒムさんが連合農学研究科・博士課程に入学しました。
▼2022年3月
松永幸子さんが連合農学研究科・博士課程を修了しました。おめでとうございます!
加藤颯真さん、塚田美彩子さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程を修了しました。おめでとうございます!
▼2021年12月
持続性社会創生科学研究科・国際乾燥地科学専攻2年 加藤颯真さんが第16回ムギ類研究会でポスター優秀賞を受賞しました。詳細はこちら
▼2021年11月
持続性社会創生科学研究科・修士課程の秋季入学式が行われました。写真はこちら
▼2021年10月
関口結佳さんとオフェム ンゴジ ポリヌスさんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
ベンジャミン ウビ (Benjamin UBI)客員教授が着任されました。
JST 未来社会創造事業に採択されました。採択題名は三大穀物間Cybrid植物を核 とする異種ゲノム育種(代表:岡本 龍史・東京都立大学 )
▼2021年9月
イタム・マイケルさん、マジン・マハジューブさん、ジャミラ・モハメドさんが連合農学研究科・博士課程を修了しました。おめでとうございます!
▼2021年8月
石井講師の研究が鳥取大学の広報誌(風紋)で注目の研究として紹介されました。記事はこちら
▼2021年5月
博士課程大学院生のMichael ItamさんがCIMMYTの基礎小麦改良コースに参加し修了しました。
▼2021年4月
高 燕さん、樽谷 英賢さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
▼2021年3月
内田孝三さんが持続性社会創生科学研究科を修了しました。おめでとうございます!
▼2021年3月
石井講師が鳥取大学科学研究業績表彰を受賞しました。写真こちら
▼2021年2月
石井講師がJSTの創発的研究支援事業に採択されました。採択題名は染色体脱落の克服による遺伝資源概念の拡張 です。
▼2021年2月
石井講師がビル&メリンダ・ゲイツ財団事業 (BMGF)「Hy-Gain for Smallholders」による研究を開始しました。
▼2021年1月
辻本教授らがスーダンでは温暖化に対応するために現在主力の高温耐性品種コムギ比で年あたり2.7%の収量増加が必要であることを明らかにしました。→プレスリリース
▼2020年12月
大学院生Mohammed Ballaさんが12月12日にオンラインで開催された中国地域育種学談話会で、優秀発表賞をとりました。発表の演題は「マカロニコムギの遺伝的改良のために野生エンマコムギの遺伝的多様性を利用する」です。
▼2020年6月
共同研究している「大山コムギプロジェクト」が地元のテレビ番組で紹介されました。映像
▼2020年4月
加藤颯真さん、塚田美彩子さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程に入学しました。
▼2020年3月
兒玉巽さんが持続性社会創生科学研究科・修士課程を修了しました。おめでとうございます。
▼NEWS
研究室活動がTop Researchersで紹介されました。
▼2019年11月
11月21日、22日に開催された中国地域育種学談話会において、松永幸子さんが最優秀発表賞を受賞しました。おめでとう!
▼2019年10月
モハメドバラさんが連合農学研究科・博士課程に入学しました。
▼2019年5月
5月22日~24日に開催された鳥取大学連合農学研究科の科学コミュニケーションIにおいて、研究室のGamilaさんとMichaelさんが、Best Presentation Awardを受賞しました。同賞は、参加者22名のうち3名に授与されたものです。
▼2025年8月
作物に新しい形質を導入するには、遠縁の植物からの遺伝資源の導入が重要です。コムギ(2n= 6x= 42)の遠縁交雑の場合、胚発生の過程でで非コムギ染色体が排除され、利用に制限がある事が知られている。本研究では、顕微授精法(IVF法)を用いてコムギとトウモロコシ(2n= 2x= 20)の配偶子を組み合わせ、受精、胚発生、植物体へと成長させました。その結果、コムギとトウモロコシの受精卵から育った植物は、稔性を持った植物へと成長しました。ゲノム解析の結果、雑種植物は 「細胞質ハイブリッド(サイブリッド)」 であり、コムギの核ゲノムと コムギ+トウモロコシのミトコンドリアゲノムを持つことが判明しました。さらに、これらサイブリッドは次世代(F2)にもトウモロコシ由来のミトコンドリアを安定的に伝達し、コムギとトウモロコシ間でミトコンドリアDNAの組換えが起きていることも示唆されました。光合成特性の解析では、このサイブリッド(Zeawheat)は C3型光合成を行っていることが確認されました。本研究は、C3植物とC4植物間のミトコンドリア遺伝資源の新たな活用法を示し、コムギの改良に新しい可能性を拓く成果となりました。
Nonoka Onda, Aya Satoh, Farzana Nowroz,Tety Maryenti, Offiong Ukpong Edet, Ryosuke Mega, Takayoshi Ishii, Takashi Okamoto
Journal of Experimental Botany, eraf354
DOI: 10.1093/jxb/eraf354
Publish: 20 August 2025
▼2025年7月
ササゲ(Vigna unguiculata L. Walp., 2n=2x=22 )は、乾燥地で重要なタンパク源となる豆類で、アフリカを起源に世界へ広まりました。本研究では、日本の遺伝子バンクに保存された17カ国由来・405系統のササゲを対象に、約2万のDNAマーカーを使って遺伝的多様性と集団構造を解析しました。その結果、ササゲは大きく2つの集団、さらに地理的背景に基づく6つのサブグループに分かれました。特にネパールと日本の系統は独自性が高く、有用な形質を持つ可能性が示されました。一方、東南アジアと西アフリカの系統は遺伝的に近く、共通の祖先を持つと考えられます。本研究は、アジア産ササゲの遺伝資源、特にネパール・日本系統の育種利用価値を示し、環境適応や収量向上に向けた戦略に役立ちます。
Genetic diversity and structure of Asian cowpea germplasm
Ngozi Paulinus Ofem, Nasrein Mohamed Kamal, Sofie Pearson, Tracey Shatte, David Jordan, Emma Mace, Takayoshi Ishii
Scientific Reports, Article number: 27909
DOI: 10.1038/s41598-025-13511-4
Publish: 31 July 2025
▼2025年7月
気候変動と肥料コスト高騰の中、高温と窒素欠乏は世界のコムギ収量を大きく脅かしています。本研究は日本品種「農林61号」に野生種Ae.tauschii由来染色体を導入したMSD145系統を、スーダン中部の高温6環境で十分な窒素(HS-HN)/無施肥(HS-LN)環境で栽培し比較ました。農業形質を18項目測定してゲノムワイドなマーカーを使用し、BLUP・GWAS解析を実施しました。HS-LNでは平均穀物収量14%、穀物窒素吸収量28%減でしたが、千粒重と収穫指数は上昇し資源再配分を示唆しました。MSD26・181・485は広域適応的に高収を示し最も優れた系統で有ることが明らかになりました。HS-HN 条件では、MSD53・450、HS-LN条件 ではMSD192・383が高い収量を維持しました。GWASで12染色体34座(62%はDゲノム)を検出しました。5A染染色体には粒成長・収量、3D染色体には穀物窒素吸収量を制御していることが示唆されました。これらの染色体領域にはMAPKやDELLA(Rht-1)等候補遺伝子を含み、持続可能でN効率型の耐暑コムギ育種に活用できる成果であり、肥料節減と環境負荷低減にも貢献します。
Amir Ibrahim Ismail Emam, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Nasrein Mohamed Kamal, Yasir Serag Alnor Gorafi, Hisashi Tsujimoto, Takayoshi Ishii
Front. Plant Sci. 16:1621916,
DOI:10.3389/fpls.2025.1621916
Publish: 16 July 2025
▼2025年2月
Stay-green(SG)形質をもつソルガム(Sorghum bicolor 2n=2x=20)系統のB35 は、灌漑条件(CON)でも干ばつ後(DR)でも、ソルガム系統のWad Ahmed(WA)や非SGのソルガム系統のTabat(TAB)とは一線を画しました。B35 は両条件下で共通した代謝・無機元素プロファイルを示し、Ca・Cu などのミネラルとプロリン・GABA などのアミノ酸を平時から高濃度で保持していました。この「常時準備」状態により、DR 時の浸透調節や抗酸化に必要な物質を追加合成せずに即座に活用でき、エネルギーと時間を節約している事が明らかになった。B35 の耐乾メカニズムは ①抗酸化システムによる酸化ストレス軽減、②オルニチン経路でのプロリン蓄積と Ca・Zn を用いた浸透調節、③TCA 回路維持によるエネルギー確保、④老化抑制による葉緑維持、の四本柱で構成されていました。結果として SG は DR だけで発現する特殊形質ではなく、「常時準備」状態に存在する系統であり、「常時準備」状態を欠く植物は干ばつ適応が後手に回ることが示されました。CON と DR で応答が酷似するため、灌漑下での代謝指標を利用した一次スクリーニングが可能で、乾燥耐性育種の効率を高められると期待されます。本研究は同様の包括的解析を他の穀類にも拡張し、汎用的な耐乾メカニズム解明への道を拓くものです。
Nasrein Mohamed Kamal, Yasir Serag Alnor Gorafi, Mostafa Abdelrahman, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Hisashi Tsujimoto
Plant Stress volume 16, Article number: 100840
DOI: 10.1016/j.stress.2025.100840
Published:11 April 2025
▼2025年2月
小麦(Triticum aestivum L.)の穀粒充填期における高温ストレスが収量と品質に及ぼす悪影響に注目し、特に穀粒中のミネラル含有量の変異とその遺伝子座を明らかにすることを目的としました。コムギのDゲノム提供親である、Aegilops tauschii由来の遺伝子を持つ145系統のMultiple Synthetic Derivatives (MSD)を用い、スーダンでの高温環境下(2018/19および2019/20シーズン)で、13種類のミネラル濃度と千粒重を評価し、さらにGWAS解析を実施しました。解析の結果、MSD系統でミネラル濃度に顕著な変異が見られ、一部系統ではコムギ品種のNorin 61に比べ30~50%多くのミネラルが確認されました。GWASにより合計188件の有意なマーカー・形質関連(MTA)が検出され、特にMg、Mn、P、Baに関する安定した領域が示されました。また、ミネラル移動に関与するTraesCS5D03G0728800や高温応答に関連するTraesCS5D03G0723300といった候補遺伝子も特定されました。これらの成果は、高温環境下での小麦改良に向け、ミネラル濃度向上と耐熱性強化の育種資源として大いに期待されます。
Amir Ibrahim Ismail Emam, Nasrein Mohamed Kamal, Yasir Serag Alnor Gorafi, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Mohammed Yousif Balla, Hisashi Tsujimoto, Takayoshi Ishii
Scientific Reports volume 15, Article number: 5624 (2025)
DOI: 10.1038/s41598-025-89144-4
Published:15 February 2025
▼2025年1月
高温はコムギの生産性を脅かし、高温耐性品種の開発が急務です。本研究では、デュラムコムギ(パスタ用の4倍体のコムギ)「Miki 3」と野生エンマーコムギ(4倍体の野生種)(北部系統・南部系統)の9アクセッションを戻し交雑し、日本とスーダンで評価しました。結果、高温下でも高い収量指数や葉緑素含量、低いキャノピー温度を示す系統や、高いバイオマス・種子数を示す系統が見つかり、これらは野生エンマー由来の染色体片断片を保有していました。野生エンマーコムギには高温耐性に関する重要な遺伝的多様性がある一方、北部系統・南部系統間に顕著な差はありませんでした。これらの知見は、高温ストレスに強いコムギ育種には野生エンマーの種内多様性を活用する必要性を示しています。
Intraspecific variation for heat stress tolerance in wild emmer-derived durum wheat populations
Mohammed Yousif Balla, Nasrein Mohamed Kamal, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Yasir Serag Alnor Gorafi, Modather Galal Abdeldaim Abdalla and Hisashi Tsujimoto
Front. Plant Sci. 16:1523562
DOI:10.3389/fpls.2025.1523562
Publish: 23 January 2025
▼2024年12月
地球温暖化の進行は,乾燥地における干ばつや熱波などの異常気象の頻度を高め,コムギに代表される作物の生産性を低下させます。人口増加や気候変動に対する食料供給の安定した確保は緊急の課題であり、例えば,乾燥に強い品種を作るための育種研究が盛んに行われています。本研究では,乾燥地におけるコムギ育種の効果を継続的に評価することを目的として、分光反射と放射温度(群落面温度)の観測データを用いて、異なるコムギ品種(対照区とイネコムギ)間のフェノロジーと水分効率(moisture availability)を評価する方法を提示、検討しました。
中尾 里菜, 木村 玲二, 杉浦 李果, 石井 孝佳
沙漠研究34-3, 93-103 (2024)
Published online: 30 Dec 2024
▼2024年8月
雑種は遺伝的多様性を生み出し、作物の改良に非常に重要です。しかしながら、生物には交雑障壁があり人間の自由に交雑出来ない場合があります。イネとコムギは人類にとって非常に重要な種であるが、交雑することはできませんでした。近年、植物の顕微授精法を用いることによりこの交雑障壁を打破することに成功しています。本論文では、イネとコムギの雑種イネコムギのゲノム組成をゲノム科学、細胞遺伝学、分子生物学的手法により詳細に調べました。その結果、イネコムギの持つミトコンドリアはイネとコムギの雑種であり、次世代にも種を通じて伝達することが明らかになりました。さらに、1個体ではイネの1番染色体がコムギの6A染色体に転座したキメラ個体も発見されました。本発見により、イネ科の亜科間での遺伝資源の相互利用への突破口を見つけることに成功しました。
本論文の内容は8月7日にプレスリリースしました。
Tety Maryenti, Shizuka Koshimizu, Nonoka Onda, Takayoshi Ishii, Kentaro Yano, Takashi Okamoto
Plant and Cell Physiology (2024), pcae074
DOI:10.1093/pcp/pcae07
Published: 7 August 2024
▼2024年6月
動原体はヒストンH3タンパク質がCENH3/CENP-Aに置き換わることによって規定されています。異質倍数性種の異なるゲノムがコードするCENH3がどのように機能的な動原体を形成するかは、ほとんど理解されていません。我々は、異質倍数性種であるArabidopsis suecicaと、そのゲノムの祖先親であるA. thaliana, A. arenosa、この2種を交雑した雑種を用いてCENH3の異質倍数性種における制御機構を調べました。その結果、異質倍数性種ではA. arenosaのCENH3遺伝子がより多く発現しており、CENH3の動原体上への局在もA. arenosaに偏っている傾向が明らかになりました。これらの結果は異質倍数性種における異なる動原体配列に対する異なるCENH3の進化的な適応状況を理解するのに役立ちます。
Raheleh Karimi Ashtiyani, Ali Mohammad Banaei Moghaddam, Takayoshi Ishii, Oda Weiss, Jörg Fuchs, Veit Schubert & Andreas Houben
Plant Molecular Biology, Volume 114, article number 74, (2024)
DOI: 10.1007/s11103-024-01474-5
Published: 14 June 2024
▼2024年5月
いくつかのマメ科植物において、複葉形成を支える分子機構がササゲにおける複葉形成の分子遺伝学的制御に関する研究はこれまでありません。複葉の形成には発達中の葉の原基で発現されるクラス1のKNOTTED-LIKE HOMEOBOX遺伝子が形態形成活性を維持し、葉の解離と発達を制御しています。タルウマゴヤシのSINGLE LEAFLET1やトマトのTrifoliateのような他の遺伝子も、複葉パターニングの制御に関与しています。ササゲの複葉形成の遺伝学的理解を深めるために、圃場で発見した、ササゲの単葉変異体を用いたRNA-seqおよび全ゲノムショットガン配列情報を用いて解析を行いました。その結果、LATE ELONGATED HYPOCOTYLの上流およびREVEILLE4、BRASSINOSTERIOD INSENSITIVE1およびLATERAL ORGAN BOUNDARIESの下流に存在するゲノム変異は、ササゲの概日リズムとブラシノステロイドのシグナル伝達の主要な構成要素の低下をもたらすことが示唆されました。その結果、葉は単葉になり、ブラシノステロイド欠乏症のような表現型になります。
Offiong Ukpong Edet, Benjamin Ewa Ubi, Takayoshi Ishii
Scientific Reports, Volume 14, article number 10654, (2024)
DOI: 10.1038/s41598-024-61062-x
Published: 09 May 2024
▼2024年1月
これまで、私たちの研究室では、コムギ近縁種タルホコムギの遺伝的多様性を含む系統を用いて、GWAS(Genome Wide Association Study)法で高温耐性関連遺伝子の座位を推定してきました。本論文では、新たに開発した、2集団の戻し交配組換え近交系統(BIL)を用いて高温耐性に関する遺伝子座を詳細に調査しました。これら集団に含まれる合計231系統を、気温の異なるスーダンの4地域で栽培し農業形質を調査しました。一方で、これら系統を多数の分子マーカーで遺伝子型を解析しました。これらのデータを合わせ、農業形質や高温耐性指数に関する量的遺伝子座(QTL)を同定しました。その結果、39の高温耐性関連QTLが見いだされ、これらと、これまでに報告された遺伝子座を比較して、育種に利用すべき遺伝子座について議論しました。本研究から、野生種の遺伝子を利用して栽培コムギのジーンプールを拡大することが、高温ストレス耐性に寄与することが確かめられました。
Monir Idres Yahya Ahmed, Nasrein Mohamed Kamal,Yasir Serag Alnor Gorafi, Modather Galal Abdeldaim Abdalla, Izzat Sidahmed Ali Tahir and Hisashi Tsujimoto
Plants 2024, 13(3), 347
DOI: 10.3390/plants13030347
Published: 24 January 2024
▼2023年11月
パンコムギのDゲノムの遺伝的多様性は非常に低く、そこでパンコムギのDゲノム供与体であるタルホコムギ43系統を日本のパンコムギ、農林61号に交雑によって導入したMSD系統が開発されました。本研究では、MSD集団を用いて種子休眠形質を解析しました。その結果、9系統のタルホコムギ系統を導入したMSD系統で種子休眠性が確認されました。特に、KU-2039(アフガニスタン由来)が最も高いレベルの種子休眠性を示しました。166系統の戻し交雑近交系(BIL)を作成し、QTLマッピングにより、表現型変異の41.7%に寄与する新規の休眠性QTL、Qsd.alrc.5Dを同定しました。多様なタルホコムギ由来の個体群を用いたMSDプラットフォームは、遺伝的多様性の導入とともに、気候変動に対応した植物育種に重要な新規QTLや対立遺伝子を探索する上でも非常に強力です。
Monir Idres Yahya Ahmed, Yasir Serag Alnor Gorafi, Nasrein Mohamed Kamal, Mohammed Yousif Balla, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Lipeng Zheng, Naoto Kawakami and Hisashi Tsujimoto
Front. Plant Sci.14:1270925.
DOI:10.3389/fpls.2023.1270925
Published: 30 November 2023
▼2023年10月
観賞用緑化植物であるPhedimus takesimensisの常緑性系統、休眠性系統、94個体のF1植物に対して、一年間を通した表現型解析とQTL解析を行いました。マルチスペクトルイメージングを用いた経時的な測定によって得られたデータを多角的に解析することにより、一年間を通した成長、老化、休眠、休眠打破といった形態変化を捉えられることが明らかになりました。また、QTL解析により、季節的に出現するQTLが7個検出されました。一時点のみではなく経時的に測定解析を行った本研究の手法は、植物の形態変化を捉えるのに適しており、他の植物種の解析にも適用可能であると考えられます。
Genetic Dissection of Seasonal Changes in a Greening PlantBased on Time-Series Multispectral Imaging
Taeko Koji, Hiroyoshi Iwata, Motoyuki Ishimori, Hideki Takanashi, Yuji Yamasaki and Hisashi Tsujimoto
Plants 2023,12, 3597.
DOI: 10.3390/plants12203597
Published: 17 October 2023
▼2023年9月
ギンセンカ(Hibiscus trionum)はアオイ科の植物で地中海から中央アフリカを起源とする乾燥地由来の植物です。有名なアオイ科の植物にはオクラなどがあげられます。また、このギンセンカは花弁に構造色を持つ植物の1つでもあります。ギンセンカの花は、中心部が紫色、外側が薄い黄色を示します。紫色はアントシアニンの色素由来ですが、紫色を示す花弁の表皮細胞には微細な凹凸構造が存在するため、構造色も発色しています。構造色とは物質表面の微細な構造により発色する色を言い、昆虫や鳥類など様々な生物で観察されています。構造色は植物の花弁にも見られ、昆虫の誘引に寄与すると言われています。写真では分かりづらいですが、角度を変えると色が変化して見えます。本研究では、ギンセンカのゲノム解析やトランスクリプトーム解析を行い、構造色の発色に必要な微細構造の形成に関わる因子の絞り込みに成功しました。
Shizuka Koshimizu, Sachiko Masuda, Arisa Shibata, Takayoshi Ishii, Ken Shirasu, Atsushi Hoshino, Masanori Arita
DNA Research, dsad019, https://
DOI: 10.1093/dnares/dsad019
Published: 11 September 2023
▼2023年9月
近年の気候変動によるパンコムギ生産地を直撃する干ばつは、農作物減収の主な要因となっています。パンコムギは種子成熟期にストレスがかかると、結実する種子の品質が損なわれ、商品価値が下がってしまうことが懸念されています。耐乾性に関与するアブシシン酸(ABA)受容体をパンコムギの植物体内で多く作らせた耐乾性系統(TaPYLox)と野生型系統にたいして、開花1週間後の植物に乾燥ストレスあたえて、系統間での違いを、遺伝子発現、メタボローム解析、電子顕微鏡による細胞遺伝学的な解析で詳細に調べた。その結果、コムギの種子貯蔵タンパク質の主要構成アミノ酸であるプロリンに差が大きくでており、種子の形成に必要な成分の蓄積が、非ストレス下と変わらないことが重要であることが示唆されました。本研究成果は、干ばつ下においても品質を維持できるパンコムギ系統開発の際の育種目標となる形質について明らかにし、気候変動に対応できる系統開発に一石を投じると期待されます。
Ryosuke Mega, June-Sik Kim, Hiroyuki Tanaka, Takayoshi Ishii, Fumitaka Abe & Masanori Okamoto
Scientific Reports volume 13, Article number: 15001 (2023)
DOI: 10.1038/s41598-023-42093-2
Published: 11 September 2023
▼2023年9月
ソルガムの種子中の栄養を強化することは重要です。本研究では世界のソルガムの遺伝資源における種子の栄養強化に寄与する遺伝子領域をGWASにより特定しました。本研究により、世界のソルガムの遺伝的な多様性を使ったソルガムの種子形質の改善する育種が展開されることが期待されます。
Nasrein Mohamed Kamal, Yasir Serag Alnor Gorafi, Hisashi Tomemori
, June-Sik Kim, Gamila Mohamed Idris Elhadi, Hisashi Tsujimoto
BMC Genomics volume 24, Article number: 515 (2023)
DOI: 10.1186/s12864-023-09613-w
Published: 02 September 2023
▼2023年7月
鉄(Fe)はすべての生物にとって必須元素です。鉄欠乏は植物の成長を制限し、人間に貧血を引き起こします。Fe ホメオスタシスの改善により、両方の問題が解決されます。本研究では、パンコムギの D ゲノムドナーであるタルホコムギ(Aegilops tauschii)42 系統の Fe ホメオスタシスを分析しました。その結果、ムギネ酸ファミリーのフィトシデロフォア (MA)、フェニルアミド、SPAD 値、金属濃度に多様性がありました。また、ゲノムワイド連関解析によってこれらに関する候補遺伝子が存在することを示唆しました。8 系統は鉄欠乏下で根から未知の生成物を分泌しました。鉄欠乏根では15種類のフェニルアミドと2種類のパン小麦フィトアレキシンが生産されていることが明らかになりましたた。多変量および主成分分析により、クロロフィル含有量が苗条の鉄濃度と相関していることが示されました。この結果は、タルホコムギに、パンコムギの鉄のホメオスタシスを改善に貢献する対立遺伝子が存在することを示しています。
Tomoko Nozoye, Yasir S. A. Gorafi, Naoki Ube, Fan Wang, Hiromi Nakanishi, Atsushi Ishihara, Takayoshi Ishii, Hisashi Tsujimoto
Plant Genetic Resources , First View , pp. 1 - 13
DOI: 10.1017/S1479262123000424
Published online: 18 July 2023
▼2023年6月
観賞用緑化植物であるPhedimus takesimensisの常緑性系統、休眠性系統、94個体のF1植物に対して、春の休眠打破の季節における表現型解析とQTL解析を行いました。マルチスペクトルイメージングによる測定解析により、F1集団の葉色の変異を効果的に捉えられることが明らかになりました。また、葉色と休眠打破の早さには関係性があることも明らかになりました。更にQTL解析により、休眠打破の早さに関係すると思われる2つのQTLを検出しました。本研究で確立した測定解析の手法は、他の植物種の表現型解析や遺伝的解析にも適用可能であると考えられます。
Multispectral Phenotyping and Genetic Analyses of Spring Appearance in Greening Plant, Phedimus spp.
Taeko Koji, Hiroyoshi Iwata, Motoyuki Ishimori, Hideki Takanashi, Yuji Yamasaki, and Hisashi Tsujimoto
Plant Phenomics 2023;5:Article 0063
DOI: 10.34133/plantphenomics.0063.
Published: 26 June 2023
▼2023年6月
動原体は細胞分裂の際に紡錘糸が接着し、染色体を正確に分配するときに重要です。動原体の構造は生物によって異なることが分かっています。染色体の一か所に動原体が形成するタイプをmonocentricと言い、染色体の全体に動原体が形成するタイプをholocentricと言います。異なる動原体のタイプは生物の進化の中で複数回独立に出現してきています。本論文では、シュロソウ科のシライトソウ(Chionographis japonica)の保有する動原体の構造をゲノム解読、細胞遺伝学、分子生物学、構造シミュレーションなどの研究手法により詳細に解析しました。その結果、シライトソウはholocentricタイプの動原体を保有していますが、その構造はこれまで報告のあったmonocentricの特徴も持ち合わせており、非常に稀な動原体構造であることを明らかにしました。この発見により、生物の持つ多様な動原体構造の理解が深まりました。
Holocentromeres can consist of merely a few megabase-sized satellite arrays
Yi-Tzu Kuo, Amanda Souza Câmara, Veit Schubert, Pavel Neumann, Jiří Macas, Michael Melzer, Jianyong Chen, Jörg Fuchs, Simone Abel, Evelyn Klocke, Bruno Huettel, Axel Himmelbach, Dmitri Demidov, Frank Dunemann, Martin Mascher, Takayoshi Ishii, André Marques & Andreas Houben
Nature Communications volume 14, Article number: 3502 (2023)
DOI: 10.1038/s41467-023-38922-7
Published online: 13 June 2023
▼2023年5月
植物の進化に伴う多様性の創出や作物の遺伝的改良において、交配は欠くことのできない役割を担っています。本論文では、自殖植物において雑種を作る際に必要な作業である、おしべを除去する作業の代わりとなる薬品が双子葉類であるササゲ、シロイヌナズナ、タバコで適用可能なことを新たに示しました。この薬品を用いることで、幅広い種で大規模に花粉を不稔化することが可能となり、新しい育種手法、受精前後の雑種胚で起こる研究の加速などが期待されます。
Yuka Sekiguchi, Benjamin Ewa Ubi, Takayoshi Ishii
Plant Reproduction,
DOI: 10.1007/s00497-023-00469-4
Published online: 25 May 2023
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