東北大学高度教養教育・学生支援機構グローバルラーニングセンター
髙松美能
Mino Takamatsu
Mino Takamatsu
グローバル化する社会において、コミュニティの構成員である人と人の共生、自己と他者の関係性構築はますます重要な課題となってきています。身近な社会を見ると、例えば私が住む宮城県では、全国に先駆けて2007年7月に「多文化共生社会の形成の推進に関する条例」を制定、その理念には「国籍、民族等の違いに関わらない県民の人権の尊重と社会参画」が掲げられています。
世界では、社会の中で文化的多様性があることを脅威ではなく好機と捉え、都市の活力や革新、創造、成長の源泉とする新しい都市政策として、欧州評議会が主導するインターカルチュラル・シティというアプローチがあります。日本では、浜松市がこの先進的な活動を取り込みながら、住民との共生を図っています。
その他、1990年以降、組織や一人ひとりの個人が、世界人権宣言に掲げられた人権を実現するために、社会の中で直面する、住居、生活水準、教育、不平等の是正、健康や社会的ケアなどの課題に対して、具体的な解決策を考え、取り組むことを目標とした、ヒューマンライツシティがあります。日本にヒューマンライツシティはありませんが、仙台市と姉妹都市の韓国の光州市はヒューマンライツシティに認定されています。
これらの地域・世界的な取り組みには、一人ひとりが互いに人権を尊重し、国籍や民族の違いに関わらず、共に生活していくこと、このような社会を築いていく、という共通の目標があります。
私は多様なバックラウンドを持つ学生が対等な立場で、共通の目標に向かって学ぶ合う状態を「多文化共生」と考えて、これまで大学教育における多文化共生の実現方法を検討してきました。その中でも教室という小さな空間の中で、参加者間に多文化共生の関係性を築いていくことを目標に、共生と人権が密接な関係にあると考えて、大学で留学生と日本人学生が共に学ぶ授業(国際共修授業)の中でクラス内に多文化共生を築く環境を整えること、そして人権教育を実践すること、また、その効果を検証することに取り組んできました。
このような小さなレベルでの取り組みが、多文化共生社会の実現に少なからず寄与すると信じて、今後も国際共修授業において、多文化共生の実現に向けた私なりの人権活動を続けていきたいと思っています。
Topics
2025年9月1日 発行(単著)「豪州の大学における人権教育の実践ー日本の大学の人権教育に対する示唆ー 」
『人権教育研究』,第25巻,97-110 頁,2025年
2025年6月21日 (口頭発表)「大学の国際共修授業における人権教育の実践-指導言語の違いによる学生の学びの相違と共通性」,
第46回異文化間教育学会研究大会
2024年7月25日 発行(単著)"Human Rights Education in Japanese Universities: Challenges and Opportunities" ,Human Rights Education in ASIA-PACIFIC, Volume 13, https://www.hurights.or.jp/archives/asia-pacific/
2024年6月23日 (口頭発表)「日本の高等教育における国際共修ルーブリックとその活用 」,第45回異文化間教育学会研究大会,
末松和子, 村田晶子, 米澤由香子, 髙松美能, 渡部留美, 新見有紀子, 小嶋緑, 北出慶子, 湊 洵菜
2024年6月22日 (口頭発表)「多文化共生と人権教育-大学の億歳共修授業で取り上げる学習テーマとは- 」,第45回異文化間教育学会研究大会
2024年3月31日 発行(単著)「オンラインと対面のハイブリッドで実践した国際共修授業の事例分析-対等な関係性を構築するために- 」
『留学生交流・指導研究 』,第26号,41-54 頁,2024年
2024年3月31日 発行(単著)「国立大学における国際共修授業の実施状況と先行研究の動向 ―東北大学の取り組み― 」『東北大学高度教養教育・
学生支援機構紀要』,第10号,137-146頁,2024年
2024年3月20日 (公開講演)"Fostering an Inclusive and supportive research culture: Reflecting from Tohoku University and the Japanese research context"
International Seminar at IOE, University College London, Joint presentation with Professor Kazuko Suematsu and Professor Midori Kojima
2023年11月10日 (公開講演)「国際共修の環境で人権教育を実践する意義と課題」,「国際共修」授業実践セミナー, 2023年11月
2023年03月31日 発行(単著)「対面とオンラインのハイブリッドで実践する国際共修授業の課題-参加する学生間の意識と
参加態度の違い-」『東洋大学国際センター紀要』,創刊号,99-113頁,2023年
2022年06月21日 発行(単著)「オンラインでの学生交流のポテンシャル-イギリスの学生とA大学の学生が共に取り組む
プロジェクトの事例分析を基に-」『留学生交流・指導研究』,24号,81-98頁,2022年
2022年06月20日 (口頭発表)「多様なバックグラウンドを持つ学生が『人権』を学ぶ意義と効果-対面とオンラインで実践した
国際共修授業を比較して-」,第43回異文化間教育学会研究大会,2022年6月
2022年06月20日 発行(単著)「対面による国際共修授業の意義と効果-新型コロナウイルス流行前の実践から-」
『東北大学高度教養教育・学生支援機構紀要』,第7号,331-343頁,2021年