2026年6月30日(火)に、国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部長の宮武晃司氏をお招きし、第5回ワークショップ『日本の水資源管理、水循環から沿岸環境を考える』を開催しました。水資源施策の変遷から最新の課題、そして地下水マネジメントに至るまで、多岐にわたる知見を共有いただきました。また、陸域の水管理と沿岸環境の繋がりについて深い議論が行われました。
■ 講演のポイント
・水循環基本法と「公水」の概念:平成26年に制定された水循環基本法により、水は「国民共有の貴重な財産」と位置付けられた。かつて土地に付随する私権性が強かった地下水も、現在は適切な保全と利用が求められる公共性の高いものとなっている。
・気候変動による渇水リスク:気候変動により、降水パターンの極端化(降る時は激しく、降らない時は全く降らない)が進んでいる。特に気温上昇による蒸発散量の増加が水資源賦存量に与える影響は大きく、将来的な渇水リスクの増大が懸念されている。
・社会構造の変化と新たな水需要:近年、半導体工場やデータセンターの誘致に伴い、特定の地域で膨大な水需要(特に地下水)が発生している。これらを適切に管理し、地域経済と環境保全を両立させる「流域総合水管理」の重要性が増している。
・地下水と海域の繋がり:これまでの水循環政策は主に表流水に焦点を当ててきたが、近年は海底湧水が沿岸の磯焼け防止や生態系維持に果たす役割に注目が集まっている。三重県鳥羽市の事例などを通じ、地下水を通じた陸と海の繋がりを政策に組み込んでいく必要性が示された。
ディスカッションでは、田中氏から、岡山県の苫田ダムでの弾力的放流によるノリの色落ち改善事例や、昨年の記録的渇水によるカキやアマモ場への甚大な被害が紹介され、「陸からの水」が沿岸漁業にとっていかに重要であるかが強調されました。
また、清野氏からは、流域治水や水循環政策において「海」に対する意識が乏しい現状について指摘がありました。今後エコロジカルネットワークの中に沿岸域を明確に位置づけることの必要性について議論がなされました。
宮武氏との対話を通じて、陸と海を繋ぐ「水循環」という大きな枠組みの中で新たな展望が開けました。目に見えない地下水を含め、陸域の管理が海にどう響くのか。今後も沿環連は、科学的知見を政策にフィードバックし、現場の課題解決に繋げる活動を続けてまいります。