田辺市中辺路町の近野(近露、野中)地区は田辺市街から北東へおよそ35km、日置川上流、紀伊半島の中央部を走る果無山脈のふもとに位置し、盆地や傾斜地に民家が点在している。農林業の盛んな土地であったが、産業構造の変化に伴い、人口は昭和35年(1960)ごろをピークに年々減少している。令和6年(2024)1月現在の世帯数は308世帯(近露221世帯・野中87世帯)、人口は508人(近露364人・野中144人)である。
校区にある湧き水『野中の清水』が昭和60年(1985)に環境省「日本名水百選」に選ばれ、『熊野古道』が平成8年(1996)に文化庁「歴史の道百選」に選ばれた。平成11年(1999)に「JAPAN EXPO 南紀熊野体験博」が開催され、これに伴い国道311号の整備と通信設備の改善がされた。
さらに平成16年(2004)7月、『熊野古道』が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産への登録が実現、今年(2024)で登録20年目を迎える。『野中の一方杉』が県の、『野長瀬家の枝垂れ桜』が市の天然記念物にそれぞれ指定されている。地域は協力して、史跡『近露の宝塔』、『牛馬童子』、『近露王子』、『継桜王子』、700年続く文化『野中の獅子舞』を大切に守り続けている。自然と史跡に恵まれた近野は、和歌山県・旧中辺路町が観光行政に力を入れてきたこともあって、世に知られる地域となってきている。
平成17年(2005)5月の五市町村合併(田辺市・中辺路町・本宮町・大塔村・龍神村)により、中辺路町は田辺市になった。この頃より欧米・アジア諸国からの観光客が増加し、バス停や古道にも外国人客が多くみられるようになった。新型コロナウイルス感染症パンデミック宣言がなされた令和2年(2020)3月以降減少するも、状況も変わり、令和5年5月に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」になり、法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重した対応に変わり、熊野古道を歩く海外からの観光客数の復活が認められる。
本校は昭和22年(1947)創立、戦後の財政難から全国で多くの自治体が新制中学校の新校舎建築を断念する中、村民が一致団結し県下最速で校舎を建築。平成30年(2018)度、近野小学校校舎横に中学校校舎を増設するかたちで転居し、近野中学校と近野小学校が小中併設校として再スタート。子供たちは小中9年間の学校生活を同じ校舎とグラウンドで過ごすことになった。体育祭や文化祭、避難訓練などの行事は小中合同で実施し、小中のこどもたちが一緒に育つという縦のつながりの深い人間関係を築いている。生徒の気質は素朴で明るく温和。生活面や行動面で問題行動を起こすことは稀。また、保育所から小学校、中学校と同じ仲間で生活していることもあり、大変仲が良い。少人数のため切磋琢磨する機会や大きな声で発表するなどといった機会が少ないため、ややおとなしい面も見られるが、発表会や生徒会活動、体験学習、部活動などの校内外活動を通じて、意欲的、積極的に表現、行動できるよう教育活動を工夫している。
地域人口が減少する一方で、市立美術館、商店、スーパー、郵便局、農協、飲食店、旅館が揃い、近野校区は落ち着いた農村の雰囲気の中で子育てができる、暮らしやすい生活文化圏を形成している。そのため、Iターンで当地域に居を構える家族が多く、その児童生徒が大半を占めるようになっている。こうした背景から、極小規模校であるが保護者の価値観も多様であり、より一層の丁寧な保護者対応と温かい気持ちで生徒に寄り添う対応が望まれる。
学校教育目標
「故郷を愛し、高き知性、豊かな愛情、たくましい実行力を備えた次世代を育成する」
校訓
「高き知性・豊かな愛情・たくましい実行力 」
めざす生徒像
進んで学び、主体的に考え、自分を表現する生徒
豊かな人間性と感受性をもち、よりよく生きようとする生徒
健やかな心身をもち、たくましさと粘り強さをもった生徒
ふるさとを愛し、発展を願う生徒
学校教育目標の達成のために、以下の運営方針により学校経営を推進する。
➀すべての教育活動の基盤に人権教育を位置づける。
・自己存在感を持たせる工夫・共感的人間関係を育成する工夫・自己選択自己決定の場の設定
➁教職員が専門職としての力量を身につけ、お互いに支え合い、組織的に教育を進める。
③保護者・地域との連携・融合を図り、協力共同体制のもとで教育を進める。
④児童生徒が成長を実感できる義務教育9年間を見据えた教育を進める。
「めざす生徒像」実現のために
基礎・基本的な学習内容をしっかりと身につけた生徒を育成する。
自主的に学び・考え・判断できる生徒を育成する。
自他の生命を大切にし、人権を尊重する生徒を育成する。
自分を表現し、積極的に行動できる生徒を育成する。
心身ともに健康で、自他の安全を図り、事故を鍛える生徒を育成する。
地域の自然や文化を理解し、地域の発展と国際社会に貢献する生徒を育成する。
元気にあいさつし、校歌をしっかり歌える生徒を育成する。
研究主題
「主体的・対話的で深い学びにつながる授業づくり」
~極小規模校の特性を生かして~
➀学年別生徒数(令和6年度)
➁生徒数の推移