2025年のプロジェクトでは
2024年のプロジェクトではリポソームとDNAを用いて「Bilayer Gel Bilayer(BGB)」という構造体を開発しました。リポソームはドラックデリバリーシステム(DDS)のキャリアーや分子ロボットのリアクターとして利用されます。通常のリポソームは熱や浸透圧変化に弱く、耐久性に問題がありましたが、リポソームの内側の脂質膜にDNAハイドロゲルを裏打ちすることで耐久性を強化したリポソームの開発がされました。しかし、この構造体はポア形成により物質輸送可能なリポソームの構築を試みる際に、DNAハイドロゲルが物質の輸送を妨げる可能性があります。そこで私たちのプロジェクトでは、DNAで裏打ちしたリポソームの内側に更にリポソームを構築し、リポソーム(Bilayer)、DNAハイドロゲル(Gel)、リポソーム(Bilayer)の三重構造を持つBGBの開発を行いました。さらに、内側のリポソームをチューブ状に変形させ、外側のリポソームと膜融合することでポアを形成するためのDNA折り紙構造体の設計も行いました。結果的に、BDB(DNA鎖をDNAハイドロゲルに用いた)、DNAハイドロゲルの構築、BGBの構築、BGBの耐久性の確認、BGBのポア形成に成功しました。これにより、極限環境下でのリポソームの利用や経口投与型のリポソーム薬の実現に貢献します。
BIOMOD Gold Project Award
BIOMOD YouTube Video 1st Place
2023年のプロジェクトではリポソームなどの小さなカプセル内でDNA折り紙構造を折り畳む「SynthePHERE」というプロジェクトを実行しました。分子ロボットの実現には、生体分子を用いて単一または複数の入力に対して適切な出力を生み出すことが必要です。しかし、今日までに報告されている分子ロボットは大量の入力を処理することが難しく、適切に処理されるかどうか十分に検証がされていません。そこで、本プロジェクトでは分子ロボットのシャーシモデルとしてリポソーム、入力信号としてDNA鎖を採用し、様々なDNAナノ構造を折り畳むことのできる入出力システムの開発を目指しました。結果として、ストレプトマイシンO(SLO)を用いたリポソームへのポア形成とカルシウムイオンによるポアの閉孔、3次元DNA折り紙ナノ構造の設計とその構造形成の確認に成功しました。リポソーム内でのDNA折り紙の構造形成の確認は出来ませんでしたが、ショ糖がDNA折り紙の構造形成を妨げることを特定しました。SymthePHEREを実現させることで、複雑な反応系を持つ分子ロボットの開発に貢献できる可能性があります。
BIOMOD Silver Project Award