スティング 2006 年 8 月 3 日

Blog - Yutaka Yamamoto

はじめに

このブログは日記というより,折々に私山本が感じたことを エッセイにして綴ったものです.あくまで個人的な感想なので, 読まれた方の意見とは異なることも多いでしょうが,それに対して 誹謗中傷(ことに匿名の)などはされないようにお願いします.

スティング

ポール・ニューマン,ロバート・レッドフォード,ロバート・ショウ

監督: ジョージ・ロイ・ヒル

今更言うまでもない,アメリカンニューシネマにして喜劇の傑作. ジョージ・ロイ・ヒルとこの2人の名優の組み合わせはこのほかに "Butch Cassidy and the Sandance Kid" しかない.後者については いずれ書くつもりだが,いまはスティングについて書こう.

といっても,これは最後にあっと驚くどんでん返しの待っている作品で, 観てない方のために種を明かすわけにはいかない.したがって,中で のちょっと小粋な一シーンについてだけ書くことにする.

レッドフォード扮するジョニー・フッカーが,ふとした うまい儲けからの顛末の末マフィアに殺された詐欺師稼業のいわば育ての親, ルーサーの敵を討とうとシカゴにやってきて, ニューマン扮する詐欺師の大物ヘンリー・ゴンドーフを訪ねる.ところがヘンリーは少し前に, ちょっとしたドジを踏んでFED(FBI のことだが,Federal Bureau of Investigaion の最初を略してこう発音 するのが如何にも隠語めいていて格好いい)に追われることになり, 賭博場と遊技場を経営する女のところに身を潜めていて,いまは大がかりな サギを働くどころではないらしい.毎日飲んだくれてばかりいて, 今日も正体もなく酔っぱらってしまって,ベッドから転がり落ちて 大いびきをかいて寝ている.そこへレッドフォードが訪ねてきたという わけだ.でこのご対面だが,まずは呑んだくれて大いびきのヘンリーに フッカーとしては印象が良かろう訳がない."The Great Henry Gondorff" (「こいつがかの偉大なヘンリーゴンドーフというわけだ」)とつぶやいて 失望を露わにする.その後ヘンリーは服ごとシャワーに漬かって酔いを覚まそうと するのだが,フッカーはなにせ印象が良くないから,シャワーを止めろ (Turn it off)というのにも従わない.ヘンリーはもう一度(Turn it off. Will you?)と促してみるのだが,フッカーが動かないものだから,仕方なしに 自分でシャワーを止めるというのが出だし.

そこでフッカーは Luther said I could learn something from you. I already know how to drink. と一発かますわけである.何だい,偉大だと言って来てみたらただの呑んだくれじゃないか, 酒の飲み方なら知ってるぜ,というわけである.その後FBIに追われている下りになるのだが, それを聞いてフッカーの尊敬の念はますます下落して (You mean you blew it.)つまりドジを踏んだって訳だ.と追い打ちをかける. で,ヘンリーは"Luther didn't tell me you had a big mouth"(ルーサーはおまえのことを 大口叩き野郎だとは言ってなかったぜ)と少しお返しをする.フッカーも口が減らないので, "He didn't tell me you was a screw-up either."(あんたがドジ野郎だとも言ってなかったよ.) としっかりお返しをする.(時制の一致とwasに注意して欲しい.)

その後しばらくやりとりがあるのだが,とにかく「朝飯食ってくか?」とヘンリーが言い, その後(If you already know how to eat.)といって最初の "already know how to drink" の仕返しをする辺りは脚本も絶好調である.

絶好調といえば,ヘンリーがマフィアの大親分のドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)を ポーカーではめるところのニューマンの演技も素晴らしい.ここの呼吸は映画を観てもらうよりない.

それになんと言ってもバックにラグタイムを持ってきた着想のすばらしさも特筆されて然るべき であろう.よく考えると時代は15年ほどずれているのだが,とにかくシカゴの町の雰囲気に あのザ・エンタテイナーがぴったりとはまっている.細部のこだわりも含めて,さすが ジョージ・ロイ・ヒルと言わざるを得ない.

続きはぜひ映画を観ていただきたい.

2006 年 8 月 3 日

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