プロフィール

岡久雄二(Yuji OKAHISA)

人間環境大学環境科学部フィールド生態学科 講師

専門:保全生物学、再導入生物学、鳥類学

ちょっと長めの自己紹介


私自身は物心ついた時からバードウォッチャーであり、野生動物の保護管理と鳥類学を志し、キビタキの研究で博士号を取得しました。若かりし頃の姿については「はじめてのフィールドワーク〈3〉日本の鳥類編」(東海大学出版)などをご一読ください。現在は再導入生物学を専門として、トキ、アカモズ、シロハラサギなどの研究を行っています。

 とくに、トキについては環境省野生生物専門員や希少種保護増殖等専門員として、長年、佐渡島におけるトキ野生復帰を主導し、トキ保護増殖事業およびそれに紐づく計画管理、モニタリング、科学的評価、地域調整などを行ってきました。このなかで、トキの育成方法による繁殖行動の違い(Okahisa et al. 2022)、統合個体群モデルによるトキ野生復帰の評価法の開発(Okahisa & Nagata 2022)、トキ野生復帰が佐渡島にもたらす経済的影響の評価(岡久2023)などを論文としてまとめました。

 また、こうした朱鷺保護活動のノウハウを他種の保全へ応用することを目指し、絶滅の危機に瀕するアカモズの保護増殖に取り組んでいます。アカモズは日本各地に広く生息していましたが、2022年時点において本州と北海道の一部地域に残り200羽程度の繁殖が確認されているのみです。当研究室の行ったシミュレーションに基づけば、本州個体群は2026-2030年にも絶滅すると予測されています。このようなアカモズを救うため、国、地方公共団体、研究機関などと連携し、生息域内における捕食者対策の実施、巣の保護と救護、普及啓発を進めるとともに、緊急避難的措置としての生息域外保全、越冬地および渡り中継地での情報収集、細胞の保存等の取組みを行っています。

 アカモズの生息域内・域外保全の両者について、現場で生じた課題を評価し、解決方法を開発し、実用することで保全を前に進めていくということが私たちのミッションです。とくに、当研究室の重要なパートナーである豊橋総合動植物公園では学生たちがアカモズの行動観察、飼育補助や保全の普及を目指した展示作製等の活動を行っており、多くの方の協力により2023年には世界で初めてアカモズの人工孵卵育雛に成功しました。

 このほかに残り27羽まで減ってしまったブータン王国のシロハラサギ保全を目指した取組みやコウノトリなどの再導入の科学的評価なども行っています。 

 「研究をして良い学術論文を書いて保全へ提言する」ことは研究者の重要な役割ですが、対象種の保全を成功させなければ意味はありません。そして、真に持続可能な保全の取組みを確立するためには、鳥類の保全を実践する専門家を継続的に育成していかねばなりません。こうした考えに基づいて、私が指導する学生たちには研究目的の野外調査だけでなく、生息域内での保護活動や動物園での域外保全の活動などを実践してもらっています。鳥類の保全に熱意のある皆さんは、ぜひ当研究室で一緒に活動していきましょう。 

【学歴】

2010.3.31 東京農工大学農学部卒業

2012.3.31 立教大学大学院博士前期課程 修了

2014.9.19 立教大学大学院博士後期課程 早期修了


職歴

2014.10.1 日本学術振興会特別研究員(PD) 立教大学理学部 

2015.2. 9  環境省佐渡自然保護官事務所 野生生物専門員

2017.4. 1  環境省佐渡自然保護官事務所 希少種保護増殖等専門員

2022.4. 1  人間環境大学環境科学部フィールド生態学科 助教

2024.4. 1  人間環境大学環境科学部フィールド生態学科 講師