2014年度入学の学生は、私が副担任となった学年である。このうち4人の学生が大学院進学時に私の指導を希望することとなった。しかも、4人ともドクター進学を希望しており、実際全員進学した。一般的に同学年の院生を4人同時に指導するのは至難の業である。マスターならまだしもドクターとなるとさらに困難の極みである。

この年度は諸事情あり、このような状況になることはあらかじめ予想されていた。院試面接後に私は腹を括って4人合格とした。M1となった直後から、学位取得を念頭にある程度システマティックに指導をと心がけた。研究テーマはできる限り学生の意思を尊重して決めるのが私の方針で、最終的に4人異なる研究テーマ(ゲージ・ヒッグス大統一理論の模型構築、フラックスコンパクト化された理論におけるWLスカラー場の量子補正、cosmological collider physics、グラディエントフローの超対称QCDへの拡張)をアサインした

修論を順調に仕上げドクターに進学した途端、コロナに突入した。これにより計画が中断したりもしたが、研究を進め、論文を書いていった。最終的に、2022年度にまずD3から学振DC2を獲得していた院生を半年繰り上げで9月に学位取得させ10月からPD学振に変更させた。3人のうち2人を通常の2023年3月取得に成功。残る一人は、論文査読中で受理が間に合わず半年遅れの2023年9月に無事取得することができ、私の最小限の責任を果たした。結局、彼らと書いた論文は12本(unpublished1本)であった。この指導を成し遂げた私は、相当な自信をつけた。Schwingerが10人の院生を同時指導していたことは有名だが(下記添付参照「クォークはチャーミング」Glashow著より)、私もSchwingerに一歩近づいたと自負している。今後は指導人数もさることながら、Georgiのように女性院生を指導し、学位取得者を送り出せるようになれたらと密かな野心を抱いている。