当部門においては、組織上、部門長直下に
新規事業創造機能
既存事業機能
を置く二部制が現実的であり、独立したポートフォリオ統括室の設置は困難である。
この前提に立つ場合、ポートフォリオ統括を独立組織として持つのではなく、新規事業創造機能に「先議権」と「ポートフォリオ運営事務局機能」を段階的に持たせることで、実質的なポートフォリオ統括を実現することが有効と考える。
これは、探索機能と既存運営機能を分けつつ、上位で統合する両利き型の考え方、および新規事業束ね機能に portfolio management を持たせる近年の business building の考え方と整合する。
組織の基本構図は以下とする。
部門長
新規事業創造・戦略機能
既存事業・デリバリー機能
このうち、新規事業創造・戦略機能は、単なる新規テーマ創出にとどまらず、以下の役割を担う。
事業部インテリジェンス
テーマ創出
Discovery / PoC 推進
案件仕分け原案の作成
Go / Hold / Kill 原案の作成
重点人材アサイン案の作成
月次ポートフォリオ会議の事務局
部門横断の先議機能
既存事業・デリバリー機能は、以下の役割を担う。
既存案件の収益・品質・納期責任
顧客対応
標準化・再利用・アセット化
新規事業の量産移管受皿
実装 feasibility の評価
探索と既存運営は異なる原理で回す必要がある一方、上位での統合と資源配分は強く持つ方がよい、という考え方に基づく。
部門長は、最終意思決定者として以下を担う。
重点テーマの決定
Go / Hold / Kill の最終決裁
既存案件の維持・縮小・撤退の最終決裁
重点人材の再配置決裁
金融事業部との優先接続テーマ決定
両機能間の対立時の裁定
部門長は、独立統括室がない体制において、実質的な senior team integration の中核を担う。
新規事業創造・戦略機能は、次の二層の役割を担う。
A. テーマ創出機能
金融事業部の課題探索
顧客・現場ヒアリング
市場・競争・規制インテリジェンス
仮説形成
Discovery
PoC / MVP 設計
対外発信・プレゼンス維持
B. ポートフォリオ運営事務局機能
全案件棚卸し
案件仕分け原案作成
新規テーマの上程前レビュー
月次ポートフォリオ会議の議題設定
Go / Hold / Kill 原案作成
重点人材アサイン原案作成
ポートフォリオ指標の集計・可視化
この機能は、portfolio management を独立組織でなく“運営権限の束”として持たせるものである。
既存事業・デリバリー機能は、収益維持だけでなく、次の役割を担う。
既存案件の品質・納期・採算責任
実装・量産責任
再利用アセット化
標準化
新規テーマの量産移管受皿
既存顧客との関係維持
既存事業機能は、単なる受託継続部門ではなく、キャッシュ創出とアセット供給の母体として位置付ける。 clear ownership を持つ運営単位であることが重要である。
Responsible: 新規事業創造機能
Accountable: 新規事業創造責任者
Consulted: 既存事業責任者、金融事業部スポンサー
Informed: 部門長
Responsible: 新規事業創造機能
Accountable: 新規事業創造責任者
Consulted: 必要に応じ既存事業責任者、法務・リスク、金融事業部
Informed: 部門長
Responsible: 新規事業創造機能
Accountable: 新規事業創造責任者
Consulted: 既存事業責任者、金融事業部スポンサー、法務・リスク
Informed: 部門長
Responsible: 新規事業創造機能が原案作成
Accountable: 部門長
Consulted: 既存事業責任者、金融事業部スポンサー
Informed: 関係者
Responsible: 新規事業創造機能が仕分け原案、既存事業機能が実績データ提出
Accountable: 部門長
Consulted: 既存事業責任者、財務、営業
Informed: 関係PM
Responsible: 既存事業機能
Accountable: 既存事業責任者
Consulted: 新規事業創造機能、金融事業部
Informed: 部門長
Responsible: 新規事業創造機能が原案作成
Accountable: 部門長
Consulted: 既存事業責任者、人事
Informed: 本人、関係PM
ポイントは、新規事業創造側が最終決裁者ではなくても、案件の入口・比較・上申を握ることにある。これは portfolio management の中核である意思決定材料の集約と資源配分原案作成に相当する。
本提案における先議権とは、最終決裁権ではなく、部門長が判断する前に、新規事業創造機能が必ず論点整理・評価・上申を行う権限を指す。
新規テーマは、新規事業創造機能のレビューを経ずに部門長へ上程しない
一定基準以下の既存案件は、新規事業創造機能が「見直し対象」に指定できる
小口PoC投資は、新規事業創造機能の推薦を必須とする
重点人材アサイン変更は、新規事業創造機能が毎月原案を提出する
月次ポートフォリオ会議の議題設定は、新規事業創造機能が担う
Go / Hold / Kill の一次判定案は、新規事業創造機能が作成する
このように、統括室がなくても、先議権を持つことで、新規事業創造機能は実質的に portfolio secretariat として機能しうる。 gated governance は、投資対効果だけでなく学習文化の形成にも資する。
位置付け: 部門全体のポートフォリオ意思決定会議
議長: 部門長
事務局: 新規事業創造機能
主な決定事項
既存案件の維持・縮小・撤退
新規テーマの Go / Hold / Kill
重点人材の再配分
小口PoC投資の可否
金融事業部との優先接続テーマ
位置付け: 探索案件の進行管理・仮説検証会議
議長: 新規事業創造責任者
主な確認事項
誰のどの課題を解くか
共同スポンサーの有無
MVPで何を検証するか
実装・規制上の制約
次の学習テーマ
Kill条件の確認
位置付け: 既存案件の収益・品質・再利用管理会議
議長: 既存事業責任者
主な確認事項
売上・粗利
納期・品質
再利用率
アセット化件数
標準化対象
移管受入準備状況
探索と既存運営は別会議で回しつつ、Portfolio & Growth Review で統合するのがよい。両利き型組織は分離と senior-level integration の組み合わせで機能する。
新規テーマ群の統括
先議権運用責任
ポートフォリオ会議の事務局統括
部門長への上申責任
金融事業部との高位接続
顧客課題と自社能力の翻訳
仮説形成
テーマの構造化
大型提案・役員説明
必要に応じポートフォリオ資料の論点整理
各テーマの進行責任
Discovery / PoC / MVP の実務推進
共同スポンサーとの調整
学習の記録と次論点設定
全案件棚卸し
指標集計
会議体運営
Go / Hold / Kill 原案と人材配置原案の整理
既存案件レビュー対象の抽出
収益・品質・納期責任
標準化・アセット化責任
移管受入責任
feasibility 観点からの助言
再利用資産の整理
共通化
属人性の低減
新規テーマからの移管受けに向けた整備
McKinsey の調査では、venture building では product / design / commercial / data 系の不足が起きやすいとされるため、新規事業創造側は“考える人”だけでなく“進める人”も必要である。
元コンサル人材は、初期には以下の二類型で使い分けるのが望ましい。
仮説形成に強い
事業部との対話が得意
新規テーマの立ち上げに向く
兼任比率の目安は テーマ創出70 / ポートフォリオ30
経営論点整理に強い
比較・優先順位付けが得意
会議体運営と人材配置案に強い
兼任比率の目安は ポートフォリオ70 / テーマ創出30
推奨は A を主流とし、B は少数にとどめること。
テーマを持った経験のある人がポートフォリオも見る方が、判断の質が上がりやすい。 clear ownership を持った現場経験がある方が、単なる管理に寄りにくい。
小型受託、単発調査、雑多な社内依頼を無制限に引き受けると、先議権もポートフォリオ事務局機能も空洞化する。
新規事業創造機能は、売上だけでなく
起案数
上程数
PoC移行率
Kill判断の質
移管数
で見る。
既存事業機能は
売上
粗利
品質
再利用率
アセット化件数
で見る。
既存事業責任者との衝突を避けるため、「新規事業創造機能が最終決定する」のではなく、「新規事業創造機能を通さずに部門長へ上がらない」と定義する。
兼任者については、比率と役割を明示し、固定化を避ける。
恒常兼任は ownership を弱めやすい。
金融事業部側の共同スポンサーがいないテーマは、原則着手しない。
Go/Kill は“失敗判定”ではなく、資源再配分の仕組みとして扱う。 gated governance は学習文化を強める。
本体制が機能した状態とは、次を指す。
新規事業創造機能が、単なる企画・営業支援ではなく、部門の入口管理と論点整理を担っている
既存事業機能が、惰性的な案件継続ではなく、収益とアセットを供給している
部門長が、個別案件対応でなく、ポートフォリオ判断に集中できている
新規テーマと既存案件が同じ物差しで混在せず、別の原理で管理されている
統括室を置かずとも、新規事業創造機能が準ポートフォリオ統括として機能している
これは、探索と既存運営の分離、上位統合、明確な ownership、portfolio management の原理を、二部制のまま実装した状態である。
必要なら次に、この文書をそのまま**「部門長説明用の1〜2枚の要約版」と、「社内検討用の詳細版」**に分けて整えます。