Decentralized Control for Caterpillar-like Soft-bodied Robot

各モジュールが楽をした結果として這行運動を生成する自律分散制御則

従来のロボティクスは線形近似した世界の中で対象を制御しようとしてきた。しかしながら現実世界、特に我々の生活環境や自然環境は非線形な力学応答性を示すものが沢山ある。さらに、安全性をハードウェアで担保するため、また生物のようにしなやかに動くロボットを作るためにソフトロボティクスが近年注目されているが、この機械システムはボディそのものが大変形やそれに伴う非線形力学特性を示す。つまり、日常生活や自然環境でロボットを駆動させるためには、ソフトロボットを制御するには非線形性力学特性を扱えるような制御器は必須であるといえる。

この問題を解く鍵は生物が用いている自律分散制御にあると考えられる。自律分散制御は、除脳猫の歩容遷移実験、ヤツメウナギの脊椎神経のリズム発火現象、真正粘菌変形体を始めとする単細胞生物のリズミックなアメーバ運動など、哺乳類などの高次の生物から単細胞生物に至るまで普遍的に用いられている制御様式である。筆者らは、自律分散制御こそが、筋肉、腱、皮膚などの柔らい素材を自在に操るための、また環境からの非線形力学特性をもありがままに受け入れてしぶとく強かに駆動するための鍵であると考えている。

本研究では、生物のボディデザインの基礎となる円柱形の柔軟なボディを持つイモムシに着目する。明示的な骨格のない柔軟なボディの変形を駆使して、這行運動を始めとする多様な振る舞いを生成するイモムシの制御メカニズムを構成論的に理解するというアプローチを取る。イモムシの柔軟なボディを模すためにゴムライクな素材を用いて3D造形し、筋肉を模すためにバックドライバビリティを持つモータでワイヤーを周期的に巻き取ることで、ボディに曲げが生成されれるようにモジュールを設計し、2つつなげることで1つのロボットとした。1つひとつのモジュールの制御器は、それぞれのワイヤー長の目標値と実長のみが計測可能で、その差がなるべく小さくなるように(個々のモータやワイヤになるべく負荷がかからないように)ワイヤを周期的に巻き取るタイミングが変化する自律分散制御速を実装した。そして後部のモータのPゲイン(巻き取る力)を少し上げると、各モジュールはボディの曲げを介して各モジュールがあたかも通信をしてるかのように協調し、這行運動を生成することが確認された。この制御器は独立で、通信はしない。にもかかわらず、這行運動が生成されるのは、各モジュールがワイヤを巻き取るタイミングをずらしたほうがお互いに楽がが出来るからである。このような各アクチュエータが、柔らかいボディを介して力学的に相互作用し、お互い少し楽をしようとすることで、全体としての振る舞いが生成されるようなソフトロボットの自律分散制御則は、ヘビ型、四足型のロボットにも適用可能であることが確かめられており、非常に汎用性の高い制御則である。