Research
研究テーマ:
身体運動制御・身体運動学習
身体運動とは ... リハビリ、スポーツ、楽器演奏、書字など、身体全体ないしは身体の一部を巧みに動かす運動のこと。
研究目的:
どうすれば効果的なリハビリテーション方法、効果的なスポーツトレーニング方法、効果的な音楽トレーニング方法、効果的な書字トレーニング方法が提案できるのでしょうか。
また、優れたスポーツ選手・演奏家は、なぜ我々が感動を覚えるほどの素晴らしいパフォーマンスを達成することができるのでしょうか。
これらの問いに答えるために、身体運動学習・身体運動制御に関わる脳内機構の解明に挑んでいます。
特に、我々は脳内に身体・環境のモデル(内部モデル)を構築しており、内部モデルに基づくシミュレーションを通じて、適切な行動・運動を生成していると考えられています。この内部モデル構築過程の検証が本研究室のメインテーマの一つです。
脳機能は人類に残された最大の謎の一つと言っても過言ではありません。既に非常に高精度な基礎法則が導かれている多くの既存分野と異なり、脳機能の解明の手がかりとなる基礎理論さえ未だ曖昧なものである、と言わざるを得ません。人類初となる新たな発見に挑戦したい、本研究室が取り組んでいる研究分野では挑戦的な人を求めています。
研究ツール:
行動実験、数理モデル、(基礎的な)機械学習・統計、生体計測
研究内容の具体例:
1. 身体運動学習の統一理論モデルの提案
新たな運動パターンを獲得するとき、運動が上達するとき、我々の脳内ではどのような情報処理が行われているのでしょうか?本研究室では、行動実験、脳を模擬した数理モデルの構築を通じ、この基礎的な問題に取り組んでいます。例えば、「我々は運動する前から暗黙の内に誤差を予測している」と想定する誤差の予測モデルを提案しており、誤差の予測モデルは様々な運動学習の性質を統一的に再現するのみならず、効果的なトレーニング方法の示唆も可能であることを示しました。
参考資料: http://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_8153.html [Link to original paper:Link]
参考文献: Takiyama et al., 2015, Nature Comm
2. 全身運動動作の解析とそのスポーツへの応用可能性の追求
アスリートは日々、どうすれば自らの身体運動パフォーマンスを改善することができるのか、という問題を考えていることでしょう。しかしながら、スポーツ動作を始めとした全身運動では、高次元かつ非線形な動力学、同一の結果を達成する身体運動パターンは無数に存在するBernsteinの冗長性問題、といった複雑性が内在しており、我々がどのようにこれらの複雑性を解消し、全身運動を達成しているかは未だ明らかではありません。現在、単純な機械学習手法を利用したデータ駆動型アプローチにより、この問題の解決に挑んでいます。将来的にスポーツトレーニングへの応用を模索していきます。
参考資料: Furuki & Takiyama, submitted
3. 脳機能障害患者の運動学習過程の検証 (*本研究室ではアプリ開発、リハビリテーションは行っておりません。リハビリテーションに繋がる基礎研究を行っています)
既存の運動学習実験系では高価で巨大な実験機器を用います。そのため、被験者の方々に特定の時間に特定の場所(実験室など)に移動していただく必要があります。この特定の場所までへの移動は感覚運動疾患患者(脳卒中患者など)の方々を対象とした実験を行う際、患者に大きな負担をかけてしまいます。特に、リハビリテーション期間中に運動学習実験を行うことは非常に困難であると言わざるを得ません。そこで我々はタブレット・スマートフォン上で動作する、いつでもどこでも運動学習実験を行うことができるアプリを開発しました。現在、アプリを用いてリハビリ施設にて患者を対象とした運動学習実験を行っています。
参考資料: http://www.tuat.ac.jp/disclosure/pressrelease/20160408113238/20160627095637/
参考文献: Takiyama & Shinya, 2016, PLoS One